グラサンオールバックの悪魔(♀) 2023-07-02 08:48:30 |
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…ハッ、アイツも義理堅いこったなァ。
(彼女はアリシアの呟きに、同僚が急いで立ち去ったドアを見つめてそう洩らした。堕天して来た時にまじまじと見た、澄んだ海のような、透き通った宝石のような、彼の─天使特有の、柔らかな色彩をした青い瞳が脳裏に浮かぶ。煙草の箱から一本抜き出し、火を点けてからライターのオイルが切れたらしく、苛立ったように何度かカチカチと音を鳴らしたものの、諦めたようにそれを部屋の隅に据え付けられてある、肉塊やら壊れた拷問器具やら、良くわからないものがごちゃごちゃと覗いているゴミ箱にホールインワンで投げ捨てる。ふと何かを思いついたかのように「…アリシアも吸うか?火は…そうだな、オレの煙草からだけどよ」とそちらに箱を傾けながらアリシアに問いかけ、薄く悪戯っぽい笑みで微笑んだ。疲れたようにぐっと背を伸ばし、若干身体を起こすと銜え煙草のまま「ま、そろそろ戻れや。天界のクソ天使サマ達が心配してる頃だろ」と腕時計にちらりと目線を遣る。確かにかなりの時間が経過しているようで、─二人はまだ預かり知らぬことだが─アリシアを探しに来た下等天使が数人いるらしく、関わり合いになりたくないらしい悪魔たちの話し声で地獄の門の前がザワザワと潮騒のようにさざめき始めていた。その騒ぎは拷問課にもやがて入ってきたらしく、3号室の外が騒がしくなり始め)
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