【 指名制 】香撫町の住人。【 日常 / シリアス / NBL 】

【 指名制 】香撫町の住人。【 日常 / シリアス / NBL 】

主  2020-09-28 23:06:45 
通報




 香撫町。『第二の人生を送る場所』と銘打たれたその場所は、外からの情報の一切が遮断され、地図にも記載されない秘匿された町。

「 記憶喪失、か。……羨ましいな。 」

 この町の住人は、皆捨て去りたい過去や秘密を抱えている。

「 ───思い出してはいけないよ。 」

 少年は囁いた。
 その時の彼の表情が、ずっと頭に残って離れない。


>1 規則
>2 世界観
>3 住人達
>4 移住届

 ( / しばらくレス禁止。 )




コメントを投稿する

  • No.43 by 幸 / コウ  2020-10-18 17:39:05 





             > 景( >40


 ( 俺の返答に、彼女が悲しそうな顔をする。そんな彼女の顔を、しばらく何も考えずに眺めていたけれど、……そうか。『不幸』というのは悲しいことなのか。あまりにも不幸が身近にあり過ぎて、当たり前に苦しくて、忘れてしまっていた。出会って間もない彼女に、こんな顔をさせてしまう程には悲しいことなのだ。何か言わなければ、と言葉を探すけれど、何を言ってももっと悲しい顔をさせてしまいそうで、口を噤む。そうこうしているうちに、彼女の方が口を開き、自身の名前の由来を話す。日の光。影のような自分。皮肉。まるで自分を否定するような由来に、名前の付け方にも個性が出るものだなと他人事みたいに考えた。そんな発想は突然浮かんでくるものではない。彼女は、きっと記憶を失う前からずっとそんなことを考えていたのだろうと思うと、少し苦しくなる。自分は不幸で居たいなんて言うくせに、他人には幸せで居て欲しいなんて、我ながら変な話だ。彼女と自分は似ている、と思う。だからこそ、こんな時に掛けるべき言葉が慰めなんかではないと分かる。 )
 ……ふ、面白いね。俺好きだよ、そういうの。




 

  • No.44 by 主  2020-10-18 18:04:05 





 > 湊くん本体様

 ( / PFのご提出ありがとうございます! 設定自体には問題ないのですが、世界観にある通り、キャラクターは(ループエンド以外では)『白紙のままの移住届を持って町の前に倒れていた』という設定ですので、白紙の移住届を持っていた理由というのが必要になります。恋人が持っていた移住届が何らかの拍子でポケットに入ってしまっただとか、何でもいいので理由をつけていただけると助かります。主に直接伝えていただければ、PFの再投稿はしなくて大丈夫ですので、何卒よろしくお願いいたします! )



 

  • No.45 by 41匿名  2020-10-18 18:33:06 


>主様(>44)
(/設定漏れ申し訳ありません……!設定にズレが無いよう再度練り直しますので、一度持ち帰らせていただきますね。また白紙の住民票を持っていた理由が決まり次第、お相手願いたいと思います。今回はここで失礼します!ありがとうございました。)

  • No.46 by 主  2020-10-18 20:23:31 




 > 湊くん本体様

 ( / かしこまりました! 細かくてごめんなさい、湊くんと絡める時を心待ちにしておりますね。 )


 

  • No.47 by 月  2020-10-18 21:21:13 



> 來さん

一生、ずっと……そっか。( どんなに快適な場所だとしても、代わり映えのしない風景に同じ日常が永遠と繰り返されるとしたら、いつかは飽きてしまうのかもしれない。誰にも邪魔されることのない安寧の地。幸せを得られるユートピア。誰かに話したら消えてしまいそうな空間が、今はとても心地良いのだ。彼の言葉から感じとれる重さに眉を下げ、ただ頷いた。言葉を重ねることは真っ向から否定することに繋がる気がして、簡単には出来なかった。出られない、つまりは縛りつけられるともとれる。見たところ彼も、その兄も若い。自分とそう変わらない年齢の彼らが一生を此処で過ごすしかないだなんて、きっと苦しい。安定があってもその代わり、冒険なんて言葉とは無縁。変化出来ないのはつまらない。何も言えないのは、自分もこの場所に居場所を求めているからだ。「 何で、なのかな。私もわからない。だから……まずはいる意味を見付けたいかな 」移住する理由云々以前に、どうして飛ばされたのかすら定かではない。思い出せない現状では、上手く答えられる気がしなかった。彼の兄に対して答えたように、ふんわりと曖昧な答えを返す。それが今の自分に出来る精一杯の誠実。嘘で固めた言葉が本当になったら自分を見失う。せめてそれは避けたい。自我さえ持っていれば、記憶もおのずと思い出せる。確信なんて、ないけれど。譲られるままお菓子屋を覗き込んで、そして驚く。値札が彼の言っていたのと異なり、現実と同じくらい安い。何ならそれよりも安いのではなかろうか。「 ちょっ、ええ!?ねえ、さっきぼったくろうとしたでしょ! 」つい大きな声を出してしまってから、目を白黒させる店員に気付いてぺこぺこと頭を下げる。それから目についたメープル味と檸檬味の2つを手に店を出て。不満を表すようにぷくりと頬を膨らませ )
私も同じ。甘いものは生き甲斐だよねえ……だけど、でも騙すのはだめだってば!



( / 悩みますが、取り敢えずこのまま〆までお相手して頂いても宜しいでしょうか。未だにお互い名前すら知らない状態ですし、名乗ることくらいは済ませてから変更したいなと考えております……! )


  • No.48 by 匿名さん  2020-11-01 16:12:50 

支援

  • No.49 by 來 / ライ  2020-11-01 22:58:27 





             > 月( >47


 ( やっぱり、この子、何かがおかしい。自分で望んでここに来たのならば、一生ここから出られないことも、得体の知れない町への恐怖も、全て覚悟の上で来たはず。それなのに、目の前の彼女は、まるでたった今そのことに気が付いたような反応をする。どこか抜けているところはあるようだけれど、話した限りではリスクを考えられないような頭の弱い子ではない。だとすれば、誰かに強制的に入れられたのか、それとも、おれのように正常な判断が出来ない状態なのか──。率直な印象だけで言ってしまえば、どちらも考えにくいように思う。しかし、人なんて見掛けに依らないもの。この町にいると良く分かる。何より、おれが一番そうだ。笑って、笑って、笑って、壊れるまで、笑って。あの日、泣きそうな顔をした兄さんに「逃げよう」と言われるまで、おれは自分が異常だなんて分からなかった。そんなおれの考えを証明するように、彼女の口から語られた移住理由は『分からない』。『分からない』けれど、『保護する必要があった』から、町役場は彼女を住民として認めたのか。自分の中で、何かが繋がったような感覚。とすると、あの色の違う住民証は仮のものというところか。もちろん、こんなのは単なるおれの想像にしか過ぎないけれど、一度辻褄が合うとそれ以外の可能性が考えられなくなってしまう。この子も色々なものを抱えているんだな、と、同情……と言うより、共感に近い感覚を覚える。今しがた駄菓子屋の値札を見て大声を上げている様子も、そう思うと何だか健気に見えてしまって、意地の悪い気持ちがすっと引いていく……ことは、さすがに無かった。悪びれもしない様子で、いつも通りのへらりとした笑みを浮かべる。 )
 おれにとっては、誰かを騙すことも生き甲斐なんだけどなあ。


 ( / お返事が遅くなってしまってごめんなさい……! 通知設定をしていたのですが、調子が悪かったようで、気付くのが遅れてしまいましたという言い訳をさせてください……
 キャラクター変更の件、承知いたしました。このまましばらくは來でお返事させていただきますね。 )



 

  • No.50 by 主  2020-11-01 23:01:11 




 >48

 ( / 支援ありがとうございます。危うく見逃してしまうところでした……  )

 

  • No.51 by 月  2020-11-03 12:27:29 




( / お久し振りで御座います。少々時間を要する為、今週末までにはお返し出来るようにしたいなと考えております。ゆっくり続けていきたいですし、お待ち頂けると幸いです……!背後のみで失礼致しました。 )


  • No.52 by 主  2020-11-03 18:11:45 




 > 月ちゃん本体様

 ( / お久しぶりです、ご迷惑をおかけいたしました……。わざわざご連絡をありがとうございます。こちらもゆっくり続けていけたら良いなあと考えておりますので、無理のないペースでご返信いただけると幸いです。お待ちしておりますね。 )



  • No.53 by 月  2020-11-06 20:34:33 



> 來さん

騙すの、楽しい?
( 飴を片手にはたと気付いてぴたりと停止。ゆるゆるとした笑顔を浮かべる彼は信用ならなくて、それでも、だからといって疑う気にもならなかった。単純といえばそれまで。確かに頭は弱いけれど、善悪くらいはわかるはずで。つい口をついた言葉は飾らない言葉。それでいて、傷付けるかもしれない言葉。きっとこの人は疲れきって、大変な思いをしてきたのだろう。誰よりも泣きたいはずなのに、我慢しているような。直感だけれど、そんな風に感じた。離れてはいけない。此処で退いては蜂蜜色の彼に何も言えない。「私は月っていうの。あなたは?」ゆったりとした口調で、唐突に問い掛ける。お兄さんについても知らないのに、彼に対して踏み込むのはいかがなものか。一瞬そう考えたものの、手掛かりを掴むきっかけになるかもしれないと思い直したのだ。もし兄弟仲があまり宜しくなかったとしたら、仲を取り持つことをさせてほしい、なんてお人好しだとわかっているのに。それでも止められないのだから仕方ない。飴を手提げに仕舞うと、近くの金木犀の匂いに心を躍らせる。「良い匂い。これだけで幸せかも」本音の中に潜ませるは、少しでも自分が安全だと示したい思い。くるりと回転するとスカートがふわりと揺れる。柔らかな笑みを浮かべて、再び言葉を重ねた )ねえ。あなたはこの町のどこが好き?良かったら案内してよ。


  • No.54 by 來 / ライ  2020-11-08 00:10:16 





             > 月( >53


 ……楽しいとか、楽しくないとか、そういうことじゃない。そうじゃなくて、ただ…… ( 彼女の言葉に、ぴたりと動きが止まる。張り付いていた笑みは剥がれ、いつだってよく回る口も、今は何も言えずにいた。やっと吐き出した言葉は、自分でも驚くほど頼りなくて、『ただ』に続く言葉を探すように視線が地面を彷徨う。──「そうしないといけなかったから」。ぽつり、と、気付けばほぼ無意識にその一言が漏れていた。そこで初めて、自分でも知らなかった自分の気持ちを悟る。そうだ、騙さなければいけなかった。周りのことも、兄さんのことも、あの人のことも。笑っていなければいけなかった。それがどうしてなのかは、もう忘れてしまったけれど。努めて明るく、あるいは諭すように、名前を問う彼女の声に視線を上げる。おれは、その声に短く「……來」とだけ答えた。今は、自分の気持ちを整理することに精一杯で、他のことは何も考えられなかった。今なら何を聞かれても素直に答えてしまいそうだ、という危機感を覚えながら、それでも心の中は凪いだように静かだ。重ねて問い掛けられた質問にも、余計な思案をすることなく、頭に浮かんだ風景をそのまま口に出す。 )
 丘の上。……少し遠いけど、行ってみる?



 

  • No.55 by 月  2020-11-10 09:07:42 




> 來さん

……うん。そっか……頑張ったんだね。 ( 途中で止まった言葉に、確かにこの人はあの蜂蜜色の彼と兄弟なのだと思い知る。同じように悲しそうな目をしている二人を救うことができたなら。忘れた夢も、過去でさえも、どうでもよくなる気がした。大変だね、お疲れ様、だなんて軽い言葉は口に出せない。陳腐な言葉ひとつでは片付けられないくらい、きっとずっと辛くて重い。一言労うような、それでいて他人事のような言葉を口にする。共感性の強さから、知らず知らずのうちに表情が悲しげなものに変わっているかもしれなかった。視線を地面に落としてから真っ直ぐ彼を見る。笑い掛けるのは出来なかったけれど、瞳に穏やかさを交えて。「 來さん。來くん……どっちの方が良いのかなあ 」信頼してくれたとは言わないまでも、固い警戒があるわけではないらしい。名前を復唱しながら、淀んだ雰囲気を明るくするように少しだけふざけた調子で言葉を紡いだ。お気に入りの場所を伝えてくれたことに安堵し、つい笑みが溢れる。良かった、なんておかしいかもしれないけれど。何とかやっていけそうだと思い始めている。こくこくと頷くと、距離は詰めないまでも明らかな肯定の意を示して )
うん、行ってみたい。案内、してくれる?


  • No.56 by 來 / ライ  2020-11-11 20:28:56 





             > 月( >55


 ……なんてね。冗談。びっくりした? ( 湿気を含んだような重苦しい空気に、はっと我にかえる。まだぐるぐると何か考えそうになる思考を無理やり断ち切って、普段と変わらぬ様子でからりと笑った。真面目な話は苦手だ。嘘だけでいい。頑張れてなんかいない、何一つ変えられやしなかったおれを、見つけられてしまうくらいなら。丁度良く軽い調子で呼び方を尋ねてきた彼女に、「堅苦しいのは苦手だから來でいいよ。特別にキャンディーひとつで」と同じく冗談混じりに軽い調子で返す。これで、同情なのか、同調なのか、どこか気遣うような彼女の視線が、おれの心ではないところに向いてくれればいいけれど。おれにあんな表情を向ける相手、兄さん一人だけでもうたくさんだ。丘の上までの彼女の案内役になったおれは、近くのバス停から彼女と共にバスに乗り込んだ。道中、おれのことをあれこれと聞かれるのも厄介なので、車窓から見える住人たちを指差して、あることないことをつらつらと喋る。……まあ、今話した内容は、ほとんどが本当だけれど。 )
 あの子は自分がいると両親が離婚できないからってここに来た子で、あのお爺さんは過去に人を殺してる。それから、あの人は鏡の中の自分しか愛せない。



 

  • No.57 by 月  2020-11-13 18:20:31 




> 來

うん、びっくりしちゃった。上手だねー、偉い偉い。 ( 彼にとって守りたいものがこの平穏だとしたら。重たい空気を弾き飛ばして、調子を合わせるのが正解だろう。今つっこんでもはぐらかされてしまうだけ。心の奥の思い出は、その時がきたら聞くことにすれば良いのだ。ふざけた調子で賛辞を贈ると、髪を撫でようと手を伸ばした。もし嫌がられなかったのなら、そのまま手はその青紫に触れるだろう。「 じゃあ、來。キャンディは……そっちの方がいっぱい持ってるね 」緩く手で彼の持つキャンディの入った袋を指し示す。中身のないふんわりした会話が何だか楽しい。彼もそう思ってくれたら良いのに、なんてただの我が儘か。ともかく、お気に入りの場所に案内して貰えることになって安堵した。名前すら教えて貰えなかった蜂蜜色の彼に伝えて、その名前だけでも聞いておかなければ。あなたの弟は大丈夫だよ、って。二人の肩の荷が下りれば。その手伝いができたらどんなに良いだろう。窓の外に広がる景色はどれも目新しく映り、相槌を打ちながら話を聞いて、ひとつの仮説が浮上した。自分も目の前の彼も。そして町の人たちも。皆何らかの事情を抱えているのだ。きっと、だから凸凹で。完璧じゃないから、逆に生きやすいのだ。刺激しないように、失礼に当たらないように。言葉を選んで、精一杯の感想をぽつりと )
皆色々あるんだねえ……凄いな。何かを乗り越えてきたんだ。


  • No.58 by 來 / ライ  2020-11-14 22:34:16 





             > 月( >57


 なんか馬鹿にしてない? ( もっとこう、怒ったり驚いたり、そんな反応を期待していたのだけれど、彼女は『びっくりしちゃった』と言いながら全くそんな様子は見せない。それが深くまでは立ち入らない彼女なりの優しさだと分かるから、ここは厚意に甘えさせてもらうことにする。子ども扱いするような言動にむすっと唇を尖らせて、大袈裟に拗ねたような表情。内心では、あまり触れられたくない話題が終わることにほっとしていた。しかし、そのせいで、こちらに伸びてくる手に気付くのが遅れる。おれを殴るあの人の顔がフラッシュバックして、骨髄反射で構えるように固く目を瞑った。直後、体の中を伝うのは、衝撃と鈍い痛み──ではなく、手のひらの柔らかい感触。恐る恐る目を開けると、目の前にはオリーブベージュの髪。そうだ、あの人は……母さんは、ここには居ないんだ。彼女に気付かれないように、そっと息を吐き出す。はっきりと自覚してしまった。おれは今でも、あの頃に囚われている。丘に向かうバスの中、彼女は一度も遮ることなくおれの話を聞いていた。驚くでも怯えるでもなく相槌を打っていたのが意外だったけれど、それよりももっと意外だったのがその後だ。彼女はこの町の住人達を『凄い』と、そう言った。どんなに言葉を選んでも、おれなら絶対にそんな言葉は出ない。何せ、住人達の秘密を知った時、真っ先に考えたことは『出来るだけ関わらないようにしよう』だ。彼女の感性とはほぼ対極にあると言っていい。 )
 月って面白いね。こんな話聞いて引いたりしないんだ?



 

  • No.59 by 月  2020-11-15 18:02:45 




> 來

ええ、してないよ。シンプルにこう……凄いなって。上手く言えないけど、來は凄いね。
( 子ども扱いしている自覚はなく、それでもそんな話し方になるのは夢が関係しているから。そのことには気付かないまま、へにゃりと緩い笑みを見せる。重く苦しいのは嫌いだ。平和が一番良い。仲良くなりたいからといって、深く踏み込んでいくのには時期尚早すぎる。ゆっくり、ゆっくりと進んでいけたらそれで問題ない。柔らかい髪を撫でて、それとなく反応を窺う。彼の震えるような感覚。過去に怖いことがあったのだろうか。何となく察してしまうも、さすがに口には出さないでおく。事情があるのだろうことは兄の様子で既にわかっていたのだから。自分にできることは束の間の休息と優しさを与えることだけ。良い子良い子、ともう一度撫でてからそっと離れて。「 引くというか……怖いなって、思わないわけじゃないよ。でも、だからって何もない人なんていないじゃない? 」関わりたくない、早く人気のないところに行きたい。そんな風に思う人もいるのだろうが、自分は違う。危ない好奇心といったらアウトかもしれないけれど、その相手と関わることで得られるものがあるかもしれないから。自分にないものを持った人は皆素敵に見える。無い物ねだり、結局はただそれだけなのかもしれない。窓枠に指を添えて風景を見詰めた後、何でもないことのように呟いて )
風が気持ち良い。來のお気に入りの場所も素敵なところなんだろうなあ。


  • No.60 by 來 / ライ  2020-11-18 03:20:40 





             > 月( >59


 ……本当に上手く言えてないね。( 『凄い』を繰り返す彼女に、揶揄うような、呆れたような口調で言いつつ、歪めていた表情を軟化させる。何が凄いのかはさっぱり分からないけれど、まあ気分は悪くないかな。彼女と居るのは、比較的気が楽だ。それは、恐らく彼女の裏表のない性格から来るもので、言葉の意図は分からなくても、その奥の想いは信じられる……気がした。これでもし全てが嘘だったのなら、彼女が一枚上手だったという話で、おれの完敗だ。あたたかい手が、そっと髪を撫でる。初対面の相手の、初めて触れる手。そのはずなのに、どこか懐かしい感じがした。「……かあさん」、唇をほとんど動かさずに、口の中で呟く。頭を過ったのは幼い頃の記憶。あたたかい手、優しい笑顔。──取り戻せなかった。優しい母さんも、おれの愛しい家族も。『お前のせいだ』、殴られる度に言われた言葉が、脳内で何度もリフレインする。……そうだ、おれのせいだ。おれが、上手く笑えなかったから。彼女の手がおれの頭から離れる。その手を掴む勇気はおれにはもう残っていなくて、ただ、また、いつも通りの笑顔を貼り付けるだけだった。バスの中、どこまでも伸びやかな彼女の言葉に、「ふうん」と相槌を一つだけ返す。言っていることは分かるけれど、感覚的には分からないから簡単に頷けもしなかった……と言うより、この町に来るような人物が、防衛本能よりも先に他人を慮るというのが単純に事実として受け止められなかった。本当にどうしてこんなところへ、という彼女への疑問は深まる一方だ。ふいに、外の景色を眺めていた彼女が独り言のように零す。おれも、彼女に倣って同じ調子で返す。 )
 何もないところだから、あんまり期待されても困るけど。



 

  • No.61 by 月  2020-11-21 22:55:25 



> 來

上手く言うのって難しくない?私の語彙が少ないだけかもしれないけど……
( 彼のことを決めつけるのは勿論のこと、適当な推論をするべきではないと感じていた。うーん、と悩んで顎へと当てた手を何度か角度を変えて動かしつつ、結局は大したことのない平凡な結論へと落ち着いた。それでも彼が本気で嫌そうにしていないからまあ良いか、と楽観主義で。想いに少しだけでも触れることができたなら、何がが変わるかもしれない。記憶を思い出す手掛かり、なんてそんなものはいらないけれど。単純に楽しく過ごすことができればそれで良い、なんて緩すぎて笑われてしまうだろうか。家族を求める小さい声はどうにも頼りなくて、心もとなくて。だからといって、まだ踏み込むわけにはいかなくて。何もかもわかっていたら、距離が縮まっていたのなら、すべて丸めて抱きとめてあげられたのに。あえて何も言わずにそっと目を伏せるだけに止める。気付かないとでも言うように、無言のまま。何も言わない優しさ、と言えるほど上手くはできていないけれど。バスは揺れ、目的地に向けてただ走る。乗客のいない静かな空間が心地良かった。自分たちの他には誰もいない。運転手を覗けば、二人ぼっち。彼の方へと身体を向けて、期待100%とは言わないまでも緩い期待が滲む視線を投げ掛ける。受け入れてくれたという事実だけでも充分すぎるものだけれど。緩い笑みを浮かべて言葉を重ねる。何が待っていようと、その殆どを前向きに捉えられるような、そんな気がした )
でも、お気に入りなんでしょう?何もなくたって、きっと來が落ち着けるような何かがあるんだよ……それが何かはわからないけど。


  • No.62 by 匿名さん  2020-12-24 21:35:41 

支援

[PR]リアルタイムでチャットするなら老舗で安心チャットのチャベリ!
ニックネーム: 又は匿名を選択:

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字 下げ
利用規約 掲示板マナー
※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※必ず利用規約を熟読し、同意した上でご投稿ください
※顔文字など、全角の漢字・ひらがな・カタカナ含まない文章は投稿できません。
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください

[お勧め]初心者さん向けトピック  [ヒント]友達の作り方  [募集]セイチャットを広めよう

他のトピックを探す:オリジナルキャラなりきりチャット







トピック検索


【 トピックの作成はこちらから 】

カテゴリ


トピック名


ニックネーム

(ニックネームはリストから選択もできます: )

トピック本文

トリップ:

※任意 半角英数8-16文字

※トリップに特定の文字列を入力することで、自分だけのIDが表示されます
※メールアドレスや電話番号などの個人情報や、メル友の募集、出会い目的の投稿はご遠慮ください
利用規約   掲示板マナー





管理人室


キーワードでトピックを探す
初心者 / 小学生 / 中学生 / 高校生 / 部活 / 音楽 / 恋愛 / 小説 / しりとり / 旧セイチャット・旧セイクラブ

「これらのキーワードで検索した結果に、自分が新しく作ったトピックを表示したい」というご要望がありましたら、管理人まで、自分のトピック名と表示させたいキーワード名をご連絡ください。

最近見たトピック