主 2020-09-28 23:06:45 |
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> 景( >40 )
( 俺の返答に、彼女が悲しそうな顔をする。そんな彼女の顔を、しばらく何も考えずに眺めていたけれど、……そうか。『不幸』というのは悲しいことなのか。あまりにも不幸が身近にあり過ぎて、当たり前に苦しくて、忘れてしまっていた。出会って間もない彼女に、こんな顔をさせてしまう程には悲しいことなのだ。何か言わなければ、と言葉を探すけれど、何を言ってももっと悲しい顔をさせてしまいそうで、口を噤む。そうこうしているうちに、彼女の方が口を開き、自身の名前の由来を話す。日の光。影のような自分。皮肉。まるで自分を否定するような由来に、名前の付け方にも個性が出るものだなと他人事みたいに考えた。そんな発想は突然浮かんでくるものではない。彼女は、きっと記憶を失う前からずっとそんなことを考えていたのだろうと思うと、少し苦しくなる。自分は不幸で居たいなんて言うくせに、他人には幸せで居て欲しいなんて、我ながら変な話だ。彼女と自分は似ている、と思う。だからこそ、こんな時に掛けるべき言葉が慰めなんかではないと分かる。 )
……ふ、面白いね。俺好きだよ、そういうの。
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