201号室（ 〆 ）

…ふ、何で充電出来てるかの匙加減があんたに握られてるんだか＿＿良いよ、どうせ今月は忙殺されて外出れる程の時間も体力も無くなりそうだしね。ん、確りメモを見て貰えてる様で…其れは好都合だ、だったらツケ払いの為に土日は全部僕に寄越して貰う…あんたに会えなかった分。（　首振った相手に緩い笑声と呟き零しては手握った儘でマンションに入り、エレベーター内でされた結論に表情緩め。耳裏を擽る様な囁きに今度は鼓動高鳴って、小生意気な台詞も擽ったげに述べつつ降り。着いた部屋の鍵開けて入室果たすなり繋ぐ手を引いて抱き締め、首に顔を埋める様に相手の匂いや体温を貪り充足感心満ちれば眠気が回り始め"眠い"と小さく付言して　）

了解、そんじゃ俺も今月は癒し系路線で行くわ。放っとくとすぐ無理しちゃう彼氏の体力ゲージ握っとかないと。──そりゃもう当然、今週も来週も皆君のモンだって。そうと決まれば今日はサクッと寝とこうか、土日エンジョイする為に。（ 入室し靴を脱いだ側から抱きしめられれば燻ったままの感情が熱を持ち、背中へ腕を回し引き寄せながらも疲労の色濃く凭れる相手にそれ以上手は出せず。やがて付け足された一言に最もだと苦笑しては簡潔に話を纏め、足元に荷物を置くと"そのまま掴まってな"と頼んでから無理矢理相手を抱え上げ。寝室まで運びベッドへ寝かせると先日のように軽く着替えさせ、仕上げとばかりに口付けて自身も横になり ）──久々でも運べるモンだな、君が激務で痩せたってオチじゃない事を祈っとくよ…シャワーは朝まで我慢してもらうとして、ひとまずおやすみ芳樹くん。返事要らねえからただただゆっくり寝てちょうだい。草臥れてるとこありがとうね。

（ 腕の中で眠る相手に手を伸ばしかけるも思い留まり、指先で一撫でしただけで起こさないようベッドを抜け出し。シャワーを済ませリビングへ移ればアイスコーヒー片手に相手の定位置に腰下ろし、ややあって昨夜の会話を思い出すと開いたばかりのPCを閉じ机の隅に置いやって。結局読みかけの本を拝借しつつ恋人の起床待ち ）

(　甲斐甲斐しく寝かし付けられる儘意識飛び、軈て己を撫でる感触を夢見半分で甘受したのを繋に何時の間にか消えた温もりと遠くから水音聞こえて来れば徐々に覚醒し。何度か微睡んでは起きるを繰返し漸く起床出来ては倦怠感苛む鈍い頭を片手で抑えつつ、壁伝って歩き水を飲みにリビングへ眉寄せた傍目には不機嫌な顔出して　)

おはよう芳樹くん、良い朝──…じゃねえな、どう見ても。大丈夫？湿気で頭やられてる感じ？（ 緩やかな足音が近づいてくれば本を閉じてにこやかに振り返り、そこに立つ不調の色濃い様子につい"うわ"と声を上げ。早く座れとばかりにソファ叩き、自身はさっさと立ち上がるとひとまず水でも用意しようとキッチンへ歩いて行き ）

…おはよ…いや、そう言うんじゃ無いけど…＿＿御免、取り敢えず水くれないかな。（　朗らかな声音に其処で初めて存在に気付き顔を上げ、見合せると僅に眉の皺が解き掠れ声で挨拶し。だが心配に立つ相手認め、瞬きの後否定しようとするも頭回らず。早々に口を畳み、鈍々とソファまで歩き腰落とせば背凭れに頭預けつつ水を求めて　）

──はいよ、愛情たっぷりの水。おかわりあるからガブガブ飲んどきなよ。熱…は無えな、オッケー。（ 切れの悪い口ぶりに心配が増せば茶化す事もなくグラスにミネラルウォーターを注ぎ。ぐったりとする相手の隣へ足音も控えめに戻り、その手にグラスを持たせては念を押すように自分の手も添えたままもう一方の掌を額に当て、ついでに寝乱れた髪を直して ）

有難う、…って…ふは、熱何かある訳無いよ。＿＿単に寝起きが悪いから怠かっただけ、少しすれば治るし心配する程の事じゃない。（　控えた動作で隣に座る相手から心配の声とグラスを受取れば礼述べ、緩慢と頭を起こし。重なる手の促しの儘一口飲むも額で熱を測られた所で遂に可笑しそうに肩揺れ。其れでも手櫛で髪直される心地好さに暫く身を任せ、水を嚥下しつつ意識がしゃんとして来れば今度は明瞭な声で説明して　）

それならそうと…いや、言えなかったんだっけか。相変わらずえげつない低血圧だよねえ、そんなんじゃ学生時代大変だったろ。（ 細い肩が揺れれば安堵と照れ臭さにつられて笑声漏らし、グラスから手を離し水を飲む姿を見届けて。声がはっきりしてくるのを確かめてから己も自分のコーヒーに手を伸ばし、唇をつけたまま想像しては我が事のように苦い表情浮かべ ）

悪いね…まァ僕としては、あんたの中々見れない姿を堪能出来て良かったかな。…いや？そうでも無いよ、学校は車で通学していたし。（　漸く笑顔を見られ安堵得て眦緩めるも、其の表情に調子が戻った事で悪戯心擽られ揶揄い。相手の声に耳傾けつつ飲み干し、グラスを卓上置き前屈みの儘其方へ振り向くと苦い顔捉え。優しさに心和めば寄添いたくなり淡々と答える傍ら、徐に上半身を傾けると相手の腿に頭乗せて　）

本当柄にも無いってレベルじゃねえよ、誰かさんの母性が移ったかなあ……お、さりげないVIP発言。いいのかね、良いとこの坊ちゃんがこんな無防備で。（ 揶揄に目を逸らしコーヒーを飲み干せば仕返しがてら軽口挟み。横になる相手へ瞳丸めつつ、頭がずり落ちないよう触れながらそろりと腕を伸ばしてグラス置き。改めて自由になった指で柔らかな髪を弄び、茶化す言葉に合わせてその指先を唇へ滑らせて ）

其の台詞は何方かと言えば僕の方なんだけどね。…ふ、御節介焼きが何か言ってる…＿＿良いんだよ、VIPって程でも無いから。日本と違って国面積の広い向こうじゃ車通学は主流でしょ…。 (　目の逸れた相手に満悦感で口許緩め、返答に片眉上げるも微笑保った儘太太しく流して見せ。己を落さぬ為に頭を抑える掌が嬉しく、細めた双眸で下から相手の表情伺いつつ夢心地な心境で弄ぶ指を某受すれば唇に移動した其れに吐息が触れる様に囁き　）

何、男やもめのせいでどんどんママになってくって？…俺ん中じゃどうにも深窓のイケメンってイメージなんだけどなあ。ま、だからこそ真っ黄っ黄のスクールバスに揺られてるよりかは車のがしっくりくるけども、ね。（ 凛と受け流す様が美しくも可笑しく喉奥で笑いを押し殺し、此方も悠々と弧を描いた唇で聞き返して。指先から吐息と共にぞくりと熱が這い上がり、無意識に双眸細めては他愛ない会話の傍ら普段舌で触れるような動きで際や縁を緩く撫で。それでも最後には戯れに収めようと下唇をくいとつまんで ）

せめて主夫にしろって言ってるでしょうが、大体何で直ぐ其方の方向に飛躍すんの…＿相変わらず僕のイメージ昇華されてる様で。まァ態々乗る事も無かったしね……あんたは？どんな風に過ごしてたの、学生時代 (　悠々と訊き返す相手のママ部分に矢張り不服気な反応すれば表情も若干顰めて。切れ長な双眸が初月を作る様を見惚れ、キスを彷彿とさせる様な指遣いに息が詰まると共に情動高まり。然し突如唇を摘ままれ戯れに収められては僅にむっとし手首掴んで引き剥がす片や、逡巡した後徐ながら少しずらした尋ねを返して　）

いやー怖いね、刷り込みってのは。とんと顔出してないのに芳樹くんイコールママの図式は色褪せないんだから。…あれだ、好きな子にゃフィルターかけちゃうのが男の性──……あぁ、文武両道才色兼備で通ってたよ、ご想像の通り。芳樹少年とはさぞお似合いのカップルだったろうなあ。（ ようやく端正な表情が乱れれば悪童じみた達成感で得意げに唇歪ませ、白々しくも喫煙所へと責任転換して。一連の反応を愉快な心地で見下ろしながら剥がされまいと形だけ争うも、意外な問いに目を丸めては無駄口と抵抗止め逡巡し。やがて胡散臭く語り出し、果ては口説くように掴まれた手をするりと握ってみせ ）

刷り込みと言うか、妙な団結力発揮したあんた達が布教したからだろうに…其れならもう少しマシな色眼鏡掛けて欲しい物だよ。……ふふ、優秀だったんだ。そうだね、子供時代でも多分あんたに惚れるだろうから…そしたら今の道も外れて、似合いのカップル所か全然違う風になってるんじゃないかな（　悪戯っ子の様なしたり顔で責任転換し出す相手に、最早諦め過ぎ呆れた声音で呟けば軽く肩竦ませて見せ。抵抗する手に負けじと引くも、其の動きが止まれば此方も止めて言葉を待ち。軈て口説き含む口上に控め目な笑声零し、指を固く絡めて甲に唇寄せつつ有り得もしない事に想像巡らせる儘紡いでは緩りと目を伏せて　）

どんだけ布教しようがしっくり来なけりゃ広まんねえのよ、ひとえに君の人情の賜物。…マジで？あんなんにハマるっつー事はよっぽどピュアな子なのかね、芳樹少年は。で、その子次第じゃ＊＊とツッコミが真逆だった可能性も──あー、駄目、徹夜で延々語れるわ。（ 呟きを上書きするように堂々と口八丁並べ、最後のみ微笑ましげな本音添え。手の甲へのキスも相まって不覚にも絵空事に胸が高鳴り、緩む顔を逸らしつつ好奇心に言葉弾ませて。相手が語るまま想像を膨らませるも視線戻せば伏せられた目に気づき、眠気故と受け止って"そろそろ休もうか"と囁いてみて ）

人情、ね…まァ無いよりは良いから別に反論唱えたりはしないけども。残念ながら天真爛漫とは真逆な子供だけどあんたがあんたである以上、僕は好きになるよ。…そんなピンポイントで変わんの…？後、言ってもう徹夜所か朝（　並ぶ御託に緩く手を払って遇らうも最後の付言に遠回しだが妥協して。相手が身動ぐ気配感じつつ、目を伏せた事で余裕生じ静な声調で断言すれば閑話休題とばかりに好奇心で弾む声へ対し緩い指摘を入れ。囁きに漸く目を開けると名残惜しくも頷いた頭を腿から上げ、立ち上がる傍ら白む空を横目で見遣り"…今日、1回シャワー浴びに起きた以外何もして無いな"と小さくぼやけば以前繋いだ手を引き、申し訳無さそうな眼差しを相手に向け　) あんたに無駄な心配掛けたし色々と御免…明日って言うか起きた時には調子戻ってるだろうから其れで免除して貰えると有難いかな。此方は蹴って良いから兎に角あんたも身を休ませて。それじゃあ1足先ながらもお休み、春彦さん…久々にこんなゆっくり長時間話せて嬉しかったよ。

ありがとう、ついでに無いよりマシってレベルを軽ーく超えてる良い子ってのも覚えといてくれると助かる。…まさかパラレル芳樹くんから告られるとは。ぐうの音も出ないけどね、俺だってどのタイミングで出会おうが追っかけやってる自信あるわ…で、がっつきすぎて最低一回は振られてそう。（ 妥協に嬉々と表情緩めては本人へ向かって惚気じみた賞賛まで付け足して。静かに言い切られる告白が胸を揺さぶり、切り替えられた話題にも着いて行けずに吐息零すと弱ったような照れ笑い浮かべ。おどけた言い回しで取り繕い、ようやくどうにか平静に近づいては相手に続いて立ち上がり、向けられる眼差しに緩く首傾げ。やがてその意味に気付き寝室への道中打ち明けると挨拶代わりに口付け、手を繋いだままベッドへと連れ込んで ）──正直好きだからさ、あれこれ君の心配すんの。弱ってるとこ見せてくれんのは俺くらいなモンだって自惚れられるしね…っつー訳でご褒美みたいな一日をありがとう、おはようからおやすみまで膝枕でゴロゴロなんざ全男子の夢よ。芳樹くんこそゆっくり休んで日曜エンジョイしてちょうだい。そんじゃ一旦おやすみ、また後で。

(　黎明頃に交わされた言葉とキスで満ちる多幸感を抱えて微睡んだ意識が浮き、先に目覚めては隣で眠る其の寝顔を眺めて。起こさぬ様髪へ唇寄せてから低い血圧に半睡半醒ながらもベッドを抜け出し、シャワー含め身支度を整えて軽い家事を済ませると時間の頃合いも良く相手の起床を待つ傍らキッチンに立ち　)