瀬戸 綾人 2013-01-11 21:56:16 |
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「何もしていませんよ、早く席に戻って下さい。」
ふぇ …?
別になにもされてないよ …。
(いきなり声を掛けられ驚くが、今は貴方の顔を見たくないのか俯いたまま応えて、執事も貴方が来たことに驚いたのか丁寧な口調ながらも少しきつく言って)
・・・ああ、はいはい分かりましたー。
(俯いたままの相手と、いつも通り丁寧な口調の同僚にヒラリと手を振れば元の席に戻る。そこで客がいろいろ聞いてくるのは仕方の無いこと)
「ねぇ、本当に綾人君の彼女じゃないの?」「どうみても・・・ねぇ」「私にとっては好都合だけど?」
お嬢様方・・・本当に何もありませんよ。私はただの執事ですから。あの方はただの幼馴染でございます。
(何度も言ってんだろ、心の中でそう呟きながらも対応して。さりげなく手や腕、髪を触ってくる客に寒気と苛立ちを感じながらも、我慢。姫華の方は気になるが、ついている執事があいつなら大丈夫だろう、と。)
「綾人は本当に心配性ですね。」
はい 、昔からなんです 。
(同僚執事は心配するな、と言わんばかりに貴方に目線を送り、私は執事と談笑しながらももう此処にいることが耐えられなくなってきて、常に例え作り笑いだとしても笑顔だった顔からは笑顔が消えて)
(同僚から目線が送られて来れば申し訳なさそうに苦笑を浮かべる。今度何か奢ってやるか、なんて考えて。ふと視線を姫華に移せば笑顔が消えていて。あのいつでも元気がとりえ、のような女から笑顔が消えるとは。どうしよう、なんて考えていれば隣から盛大な溜息が聞こえてきて)
「はぁ・・・情けないですわ、綾人様。大切な人なんでしょう?・・・私達のことはお気になさらず、帰ってくださいな。店長からは私から。」
は?あ、い、いえ、そんな・・・
「いいから、早く。・・・今度、奢ってくださればそれで結構ですわ。一番高価な物でお願い。」
・・・・サンキュ。
(ふ、とバイトで初めて客に笑みを浮かべて見せればそいつの頭をぽんぽんと撫でて、控室に引っ込んだ。他の女と違いキャーキャー騒がずそしてさっぱり、というかキッパリしているあの常連客、自分が唯一気に入っている客だ。早く戻らねェと、なんて思いながら着替えをして)
「もうすぐ貴女の執事が迎えにきますよ。」
え …?
(貴方が控え室に行ったのを見ると執事はそう声を掛けてでは、と言ってお辞儀をすると何処かに去って、私はきょとんとしながら執事が去って行くのを見つめて)
・・・サンキュ。後で奢ってやるよ。
(着替え終わり、同僚執事の傍に行けばニッと笑みを浮かべて肩を叩いて。ということは、今度自分、同僚、常連の三人でお茶会だろうか?・・・妙な光景だ。その光景を浮かべ笑みを零しながらも姫華の元へ行き)
帰るぞ、お嬢様。
(冗談でお嬢様、なんて付け足せば相手の荷物を持ち、椅子を引いて。店長が出てくればすんません、帰りまーすなんて言って、店長は笑顔で手を振っていて。)
綾人 …。
(お嬢様、と声を掛けられると声のする方を見上げて貴方の名前を呼ぶと、椅子を引かれ荷物を持たれると立ち上がり俯き加減で後を歩いて)
・・・・どうしたんだよ。
(店から出て、少し歩くがまだ俯き暗い相手、心配するように立ち止まり、声をかけた。あそこで緊張している、というわけでもなさそうだったし、同僚が何かするはずもない。だったら一体、なんなのか。)
・・・何イライラしてんだか。なんでもないってことはねぇだろ。
(珍しくイライラしている様子を見ればはぁ、と溜息をついて。女の気持ちなんて分からないし、どうしたらよいのかも分からない、なんて話かけたらよいのかも。だから率直に問い詰めるしかない、再びどうした、なんて問いかければもしかして俺が何かしたのか、という可能性が浮かんできて。だが、思い当たる節は無い。)
なんであんな所で働いてるの ?
どうして姫に教えてくれなかったの ?
(わかってくれないもどかしさと素直になれない悔しさから瞳に大粒の涙を浮かべながら問い掛けて)
は、はぁ?どうしてって・・・金が無くて、んでスカウトされて・・・
って、お、お前だって俺に教えてなかったじゃねーか・・・
(相手の瞳に涙が浮かんでいるのを見れば思わず後退り、本当に自分が何かしてしまったのか、と。続く問いを聞けば教えて貰えなかったから拗ねてんのか、なんて考えながら、逆に相手に同じようなことを返す。スカウトされた理由は、単に給料がよかったからで。料理も一品、町に一つだけの執事喫茶、客はたくさん来る。なのに執事が足りない、だから執事やってくれたら給料3倍、なんて言われて少し悩んだがやることにしたのだ)
だからって …、執事喫茶なんかで働かなくたっていいじゃん !
姫は教えたじゃん …!
綾人は姫が聞いても教えてくれなかったし …。
(本当はこんなことを言いたいわけではないのにこんな言葉しかでてこない、悔しさでボロボロと涙を流して)
お、俺だって好きで働いてるわけじゃねーよ!金の問題だ、金の!
ぐっ・・・・だ、誰にも言ってなかったんだよ・・・ってか執事喫茶で働いてるなんて言えるわけねーだろ・・・
・・・秘密にしてたぐらいで泣いてんじゃねーよ・・・
(涙を零す様子を、ただ見ていることしかできず。執事喫茶で働いてることを言わなかっただけで、こんなにも泣かれるとは思っていなかったのだ。困ったように相手を見ながら、どうすればいいのかも分からず、ただ言い訳のように言葉を紡いで立っているだけで)
秘密にされてたから泣いてるんじゃないの …。
綾人が執事喫茶で働いているのがイヤなの …!
胸がぎゅって締め付けられるの …。
(泣きたくない、泣いたら貴方を困らせるだけだと涙を止めようと手で涙を拭おうとするがどうしても涙が止まらず)
っ・・・俺だって・・・・!
(俺だって、お前があんな所で働いているのは嫌だ。喉まで来たその言葉を、一気に飲み込んだ。昨日見たあの笑顔、あんなに楽しそうな相手に止めろ、なんて言えない、言えるわけがない。涙が止まらない相手を見れば乱暴に相手の頭に腕を回し、抱きしめるような形で相手の顔を自分の胸に押し付けて)
・・・分かった。お前が嫌なら、止める。
(ボソリ、呟いた)
俺だって …なに ?
もう隠し事はしないで …。
(抱き寄せられると涙を流しながら見上げて隠し事をされるのが余程辛かったのか貴方の言葉の続きを待って)
っ …!
でも …、
(止めると聞くとびくっとして、彼女でもないただの幼馴染みの自分が貴方の仕事を辞めさせるような真似をしていいのかと戸惑い)
・・・俺だって、お前にあんなとこで働いて欲しく無い。・・・が、お前は止める必要は無い。
お前がやりたいってことを、俺の我儘で止めさせたくは無い。
(見上げた相手、相手の目を手で塞ぎ、表情を見られないようにして言葉を紡いだ。足枷にはなりたくない、邪魔もしたくない、守ると決めたのに、自分で笑顔を消してどうするのだ)
気にすんな。別にお前の為じゃない、俺が止めたいから止めるだけだ。
(な?なんて言えば苦笑を浮かべ、だから気にするな、と。あそこでのバイトは慣れてきた所だったが、バイトなんてまた探せばいい。この町探せばバイトを雇ってくれるところなんてたくさんあるはずだ)
綾人 …。
ありがとう 、本当にありがとう 。
(貴方の優しさに更に溢れる涙、しかしもう泣きじゃくることは止めて笑顔を浮かべて)
うんっ 。
(な?と言われれば少し笑顔が戻り、でも心の中では本当にこれでいいのかと少しわだかまりが残り)
おう。
(ようやく泣き止み、笑顔が戻る相手に、自分も薄く笑みを浮かべて。まさか相手がそんなことを思っていたなんて知りもしなかったから、驚いたのはあったが。相手を離せば店の方を向いて)
じゃ、俺止めるって言ってくるから、ちょっと待ってろ。
もし変な奴に声かけられたら、大声で人を呼べ。あと、ほら。持ってろ。
(渡したのはスタンガン。こういう時に相手が変な奴に絡まれる確率は異常なほど高い。だから念の為、だ。おとなしく待ってろよ、と再度釘を差せば店の方に駈け出して)
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