人もをし、人もうらめし。(〆)

人もをし、人もうらめし。(〆)

匿名さん  2024-01-05 19:35:07 
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御相手様決定済み

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  • No.123 by 日向 静蘭  2024-02-12 19:52:03 


……そう、よね。ごめんなさい。気にしないで。

(無事に精算を終えた彼が一瞬、止まるのが見えた。しかし、返ってきたのは肯定の言葉ではなく、とぼける様な、取り繕われたような言葉だった。心当たりはあるのかも、いやでも、本当に違う人だったのかも。そんなことを頭の中でグルグルと考えるが、何方にせよ、過去の事を暴いたところでこの状況が変わるわけでもあるまいし…それでも少し残念なような複雑な心境を抱えながら、静かに視線を動かすと小さく呟いた。
それよりも、店員に袋を要求していたぎこちない姿が不意に脳内再生され、思わず吹き出してしまう。
荷物の入った袋を持つことも出来ず、申し訳なさを積もらせながらもなんとかスーパーでの役目を終え外へ。
店から出てしまえば人混みも大分落ち着き、ゆっくりと彼の腕から自身の手を離した。まだ境内に戻った訳では無いが、街中もこれから向かう洋服屋もスーパー内ほど混んでは居ないだろうし、腕を組まずとも隣にいれば大丈夫だろうと勝手に判断した。
…というのは建前で、彼の温もりに安心していたのは自分の方だった。本音を言えば離したくはないのだが、自分はとことん甘え下手だと思う。いつまでも彼にくっついて、ひ弱で無力だと言われるのが嫌なのだ。それに、今まで誰にも甘えずに自分を律して──強がって生きてきた自分には、この“甘え”が普通になることを恐れていた。其れが普通になってしまっては、自分が本当に弱くなったように感じるから。)

…イナリ様、結構人が多かったし、疲れてないかしら?
洋服はまた今度でも良いけれど…。

( 自分の本意には目を向けず、彼の隣に立ったまま。服も欲しいとは言ったが、そういえば彼は疲れていないだろうかと上記を述べた。久しぶりに人混みを見ると人酔いすることもあるし、服屋はいつでも来れる距離でもある。)

  • No.124 by イナリ  2024-02-12 20:41:03 

(彼女の反応を見て何故だか罪悪感がやってくる。此方はただ体面を守ろうと嘘をついただけなのに、何故そんなに残念そうにするのか。彼女は表情自体は変わらないが視線は変わる。視線の動かし方で感情を判断するとすれば、どこか寂しそうだった。そう思った直後、突然に彼女が吹き出せばギョッとした顔で見つめる。突然笑い出して可笑しくなってしまったか。一瞬そんなことを思ったが、良く考えると先程の自分の振る舞いについて笑っているのかと予想する。自分は普通の対応をしただけなのに。先程の表情が杞憂だと思い込むと、彼女と共に店を出る。
外は来た時よりも人が居なかった。ようやっと落ち着けるようになったことで心の余裕が生まれた。するすると彼女の腕が離れていくと僅かばかりの不安が芽生えたが、この程度の人数ならば大丈夫だろうと高を括る。
ふと彼女から訊ねられると、慢心からか「問題ない!」と高らかに言う。とは言ったものの、いつまでもスーパーの袋を持っているのは疲れるため、一度置きに戻ろうと決める)

暫しここで待っておれ。買った物だけ置いてくる故な

(言うが早いか彼女の返事も待たずに、サッと瞬間移動する。社務所に移動してくると、食品などや野菜を分かりやすい場所にある壺に納める。冷蔵庫がないため、壺の中に入れておくしか保存方法がないが、妖術で腐らせないようにすることも出来るので特に不便さは感じていない。油揚げは壺には納めず、台所に目立つように丁寧に置いておく。彼女には問題ないとは言ったが、実際のところはそれなりに疲労は蓄積されている。だが、あれ以上の人混みに揉まれない限りは大丈夫だろう。買ってきた飴は本殿の木箱の中に納めると、手で顔をぱちぱちと叩き気合を入れる。再び瞬間移動をすると、彼女の目の前に現れる)

ちと待たせ過ぎたか?

  • No.125 by 日向 静蘭  2024-02-12 21:29:57 


( どうやら疲労の具合は大丈夫なようで、高らかな彼の返事を聞けば安心したように頷く。しかし、荷物を置いてくると告げ早々に彼の姿が目の前から無くなってしまっては一瞬動揺を。妖術とは改めて便利なものだと感心するのと同時に、目の前を過ぎ行く人々の姿を視線で追いながらただそこに佇んでいた。
最初はまるで幽霊のようだと、魂を封じられたこの状況に戸惑いこそしたが、誰の目にも留まらないのは以前と同じでは無いかと冷静に考えれば、その戸惑いもゆっくりと落ち着いてきた。それでも心細さは薄まることなく、両腕を自分の手で擦りながら彼の帰りを待っていた。
──ふと、通り過ぎた男性の後ろ姿が昔の友人に重なった気がして背筋が伸びる。スマホのあの写真、あの中にいた一人。本人では無いのだろうが懐かしむようにその背を暫く眺めていた。
すると、戻ってきたのであろう突然現れた彼によって、追っていたあの姿は見えなくなってしまった。少し名残惜しさはあったものの、彼が戻ってきてくれた事に安堵のため息をつきつつ、その言葉には首を横に振った。)

そんなに待ってないわ。…それにしても便利ね、一瞬で荷物を置きに戻れるなんて。

(そんな事を言って小さく笑ってみせると、早速店の方向を指さし再度歩き始める。洋服を買うと言っても実際に買ってくれるのは自分ではなく彼なので、比較的店内も落ち着いていて、静かに商品を選べる店へ向かうようだ。)

  • No.126 by イナリ  2024-02-13 19:30:06 

我に不可能は大抵ない故な。造作もないことよ。
そうじゃ、今日の晩飯は油揚げを出してくれんかの?

(店の方向に意気揚々と歩きながら、余裕そうにベラベラ喋る。また人混みに揉まれない限りはいつもの調子でいるだろう。イナリは大変に気分が良かった。最大の難所を攻略し、残すは彼女の洋服などを購入するのみ──今のイナリなら乞われれば、どこへでも行こうとするだろうが──となり、夕食は彼女の至高の料理が待っている。こんなにも充実感のある日は久しぶりだ。長年神社で独りだったせいもあるのだろうが、かつて人間たちと共存していた時の、あの充足感が再び蘇ったようだ。そんなこんなで今のイナリは気分が良いので、少し鈍感になっていた。どのぐらい鈍感になっていたかと言うと、境内に居る時のような声量で喋っているため、少ないながらも通行人に奇異な目を向けられている。そしてその事に全く気付いていない程に鈍感だった。人間の視線が恐ろしくないのは、やはり彼女が隣に居るからだろうか。他の人間も彼女みたいなら良いのに。なんてことを思う。判断基準がすっかり彼女に移行しつつあることは相変わらず気がついていないが、少なくとも彼女は人間の中でも特異な存在で、イナリ自身は大変興味があることは自覚していた。だから彼女がどんな店で、どんな洋服を買い、どんな表情をするのか、楽しみで仕方がなかった)

…………読めぬ。

(歩みを進めていればいつの間にか彼女が指差した店に到着した。看板に書かれた英語の店名を見て一言呟く。イナリは外国人を見たことはあっても、話したことは無かった。だから外国語に酷く疎かった。唯一知っているのは「あるふぁべっと」という古代文字のような代物だが、ABCは理解出来ても、単語は一つとして理解できなかった。日本なのに日本語じゃない。大丈夫なのかこの店は。文句の一つも言いたくなったが、彼女が選んだ店だから大人しく口を噤んでおく。店の中を一瞥すると恐る恐る中に足を踏み入れる)

  • No.127 by イナリ  2024-02-17 18:40:06 

(/上げです!)

  • No.128 by 日向 静蘭  2024-02-18 12:36:43 


(/ すみません!ちょっと1週間ほど更新が厳しそうなので、ご連絡しておきますね;
既におまたせしているのにごめんなさい!!)

  • No.129 by イナリ  2024-02-18 13:15:49 

(/全然大丈夫ですよ!では更新があるまでスレ上げは止めますので、更新の際は検索などでスレッドを見つけていただけると幸いです!)

  • No.130 by 日向 清蘭  2024-03-02 11:38:49 


( 店内なら出た途端意気揚々と楽しそうに話す彼の姿に小さく口元を綻ばせながら、夕食に油揚げを催促されると頷いて。やっぱり好物だったのかしら、と内心考えながらも料理のメニューをいくつか頭の中で思い浮かべていた。
彼が得意げに話していても特に気にしていなかったが、ふと、周囲の人々の視線が気になり首を傾げる。そして自身の姿が見えていないことを再度思い出すと、まるで独り言を唱えているかのような彼の姿に1つ笑い声を零した。声量を諭すことも出来たが、敢えてそれをしなかったのは何度も尊大な態度を取られていた腹いせだろうか。何にせよ、ちょっと面白がっていた。)

ここの店員さんはあまり声をかけて来ないから、商品を物色しているフリをしておけば大丈夫よ。
…Tシャツと上着、ワンピースと、ズボンと、あと…────ぁ。

( いざ店を前にするとまたも緊張している様子の相手に少しばかり首を傾げながら励ますように言葉をかける。店員が甲斐甲斐しく話しかけて接客してくるような店は自分も苦手なので、そういう所には配慮しているつもりだ。
おまけに長々と服を選ぶと彼の体力も消費してしまうだろうとある程度欲しい物を考えていたらしく、彼と共に店内へ入ってから、お目当ての衣服が置いてあるコーナーへ目線を送る。ラフなTシャツと上着…カーディガンとかがいいかな、それに着やすいワンピースとストレッチ素材のスキニージーンズ…。あと必要不可欠なものと言えば、と考え、下着の置いてあるコーナーへ視線を置いたところで、さて、どうしたものか、と小さく声を漏らす。)

………えっと、下着。買えるかしら?





(/おまたせしました!!お待ち頂いてありがとうございます!!)

  • No.131 by イナリ  2024-03-02 14:20:30 

…そうか。存外種類があるのだな。現代の衣服は。

(店員に声を掛けられる心配がないと分かると、胸を撫で下ろし彼女の忠告通り、商品を見ているフリをしている。彼女が目を付けた商品を手に取りながら、感心したように呟く。「わんぴーす」などという衣は初めて見た。他にもイナリにとっては馴染みにのない服ばかりで、興味が惹かれ、キョロキョロと店内を見回す。彼女のことだから恐らくは自分に気を遣って、テンポよく商品を選んでいるのだろうが、今のイナリはこの空間が物珍しく、己の体力のことなんてさっぱり忘れていた。そうやって観察をしていると聞こえてきた彼女の小声に「どうした」なんて首を傾げ、返ってきた彼女の返答に一瞬、目を見開く)

……必要なもの故、買わん訳にはいかんじゃろ…。
可及的速やかに選べ…良いな?

(イナリは狐であって鬼では無い。生活に必要なものを買い与えない訳はない。それに彼女は女性で、何かと入用が多いことも知っている。だから彼女に耳打ちすると、重い足取りで下着売り場へ歩みを進める。観察していて分かったが、どうも服屋というのは男性用と女性用のものを分けて売っているようだ。例によって下着売り場も女性と男性のは分けられている。性別で分けることで混雑を解消したり、「ぷらいばしー」に配慮したりなど様々な事情があるのだろうが、ことここに至っては、いっその事売り場を混同してしまえと思う。言ったそばから付近を歩いていた人間から奇異な目で見られた。普段だったら女子に化けることなど造作もないが、流石にそんな体力は残されていなかった。己の体力の無さを嘆きつつも、あまり目に入らないように出来るだけ遠くを見ながら彼女が選び終わるのを待っていた)

(/ お待ちしておりました!)

  • No.132 by 日向 清蘭  2024-03-02 14:40:11 


…なんか、ごめんなさい。ありがとう。

( 買わない訳にはいかない、と言ってくれた彼には頷きつつ謝罪と感謝を述べ、言われた通りサイズだけしっかり確認すればあれこれと数着分選んで指を指す。
いくら自分が周りから見られていないとはいえ、男性に衣服を買ってもらうなんて初めての事で。おまけに、最初は仕方の無いことだしやらざる負えないと、彼への申し訳なさと使命感みたいなものだけを感じていたのだが、よくよく考えれば下着のサイズやらデザインやら色々な事がバレる訳で、冷静にそんなことを考えた途端に段々と体温が上昇してくるのが感じられた。
自分の選んだものをさっと手に取ってくれる彼の動作をちらりと横目で見ながら、とりあえずはこんなものだろうと共にレジへ向かう。
この店のレジは有人で、少しばかり怪訝そうにしながらも丁寧に商品を袋へと詰めてくれているが、上昇した体温のせいでこの静かな待ち時間がなんだか落ち着かなくて、手持ち無沙汰の片手で思わず彼の袖をきゅっと掴む。
そして、もう片方の手で自身の頬を包み込むと、耳ばかり赤くなった顔を俯くようにして隠しつつ、小さな声で観念した。)

…やだ。今更だけれど、ちょっと…恥ずかしくなってきたわ。

  • No.133 by イナリ  2024-03-02 16:23:43 

(彼女が選び終わると速やかに手に取って逃げるようにレジへ向かう。実際にはさして時間も取られていなかったのだろうが、こういう時に限って時間が永遠に感じられる。現代の女子は難儀だと思った。昔だったら湯文字一つで事足りたものを、今では一々このようなものを付けなければならないのだから。レジで会計をする際に案の定店員から怪訝な目を向けられた。なんだか良くないレッテルを貼られた気がしたから「妻のお使いというのも大変でございますな」と聞かれてもないのに愛想笑いをしながら言う。すると不自然な日本語のせいで更に怪訝な目を向けられる。気まずそうに咳払いをして店員から視線を逸らした時、袖を握られた。黙っていろという合図なのかと思ったがどうも違うようだ。彼女の方に視線を遣ると、いつもとは違う表情にドキッとした。笑った顔、泣いた顔、驚いた顔。色々な表情を今日まで見てきたが、まさかこんな表情をするとは思わなかった。可愛い──普段とのギャップに心奪われれば、そんなことを思っていた。人間の女子を可愛いと思ったことなんて一度もなかった。彼女はこんな風に恥じらうのか。この表情を見ているのは自分だけ。そんなことを思うと妙な高揚感と胸の高鳴りで頭がパンクしそうだった。ハッと我に返るととっくに袋詰めは終わっていたので、金銭を出して、袋片手に服屋から足早に出ていく)

…わ、我の方が恥ずかしかったぞ。会計の際に恥をかいたでは無いか。
お主は…気にすることないでは無いか。衆人環視に見られる訳じゃなし。我にしか関知できぬのじゃから

(服屋を後にすると恥じらっている彼女に抗議をする。大半は自業自得なのだが、奇異な目で見られることに耐えられなかったのだから仕方がないという論理らしい。皆に見られる訳では無いのだから案ずるなとフォローにもなっていないフォローを入れると「他に用はあるか…?」と首を傾げる)

  • No.134 by 日向 清蘭  2024-03-02 17:11:28 


そ、それはそうだけど。皆から見られない代わりに、貴方に全部見られてる気分で…。
いや、気にしないで頂戴。

(彼と共に足早に店を後にする際も握った袖は離さず、店の外に出て立ち止まるとやっとのことその手を話した。しかし、離したかと思えば今度は両手で自身の顔を覆いもごもごと上記を言い返す。しかし、自分は何を言っているんだとまたも羞恥心に駆られれば、長い黒髪を揺すりながら、気にしないで、と必死に冷静を装おうとする。
次には静かにパタパタと火照った顔を仰ぐような動作を行い、彼の方が恥ずかしかったという話にはそれもそうだと納得できるので、再度「ごめんなさい」と小さな声で呟いた。
はぁ、と少しばかり火照りが落ち着くと息を吐いて、“他に用はあるかと”問われれば、少しばかり考えた後に首を横に振った。とりあえず食料に衣服も買えたし、今のところ急ぎで必要なものもないだろう。また何か必要そうなものが思い浮かんだ時は彼に相談するとしよう。)

… もう大丈夫よ。帰りましょうか。

  • No.135 by イナリ  2024-03-02 22:28:24 

……うぅ

("貴方に全部見られている"なんて言われれば、抗議の一つもしたくなったが、実際自分は知ってしまっているので何も言い返せない。その後も羞恥心に悶える彼女を不覚にも可愛いと思ってしまい、何だか気まずかった。イナリは同じ妖に胸ときめくことはあっても、人間の女子にそのような感情を抱くことなんて初めての事だった。だから自分が抱いている感情が不適切な気がして、それを彼女に隠しているのが背徳な気がして、心落ち着かなかった。
彼女が用が済んだと言うと小さく頷いて、来た道を引き返し始める。来た時のように雑談でも出来れば良かったのだが、勝手に気まずさを感じていたので無言のままで。本当なら先程のように瞬間移動で神社まで帰りたかったが、彼女に心奪われている間に体力まで奪われてしまったようで、妖術を使うことが出来ない。人間たちに奪われるかと思っていた体力が、自分の命綱にも等しい存在の彼女に一番奪われた事実はこれ以上ない皮肉だった。そう考えると何だかおかしくて小さく笑い声を洩らす。一頻り笑うと隣の彼女に視線を向け、つい言ってしまった)

お主があんなカオをするとは思わなんだ。はは…お主、存外可愛いのじゃな。

  • No.136 by 日向 静蘭  2024-03-02 23:07:27 


か…ッ、………な、何を言っているの!

( 特にこれといって話すことも無く、静かに相手の隣を歩きながら段々と平常心に戻っていく。気がつけば神社までもう一息という所で、突然隣の彼が笑い出すものだから何事かと少し怪訝そうに視線を向けると、丁度向けられた彼の視線と交わった。
その時、思いもよらない言葉が飛んできたものだから、思わずまた耳が赤くなる。普段あまり動揺なんてしないのに、先程酷く平常心が崩れたものだからその延長に違いはない。
しかし、“可愛い”だなんて、自分が覚えている限り言われたことなんて無いし、一体自分はどんな顔をしていたと言うのだ、と恥ずかしくなるのと同時に、正直いうと嬉しくて思わずその言葉を鵜呑みにしそうになる。
動揺を隠すように早足になると、近付いてくる神社の境に飛び込むようにして逃げ帰りながら、1つ息を吐き、浮かれそうになる胸のざわめきを追い出すように、自分より少しだけ後方にいる彼へ生意気にも顔を見ず言葉を返した。)

…私が可愛いなんて、貴方、可笑しいわ。きっと疲れているのよ。

  • No.137 by イナリ  2024-03-03 12:03:31 

思ったことを口にして何の問題がある。
…じゃが、そうかもしれぬな。今日は特に疲れた。故におかしなことを言うているのかもしれんのう

(言ってから怒られるかな、と思っていたが予想とは違って彼女は再び赤面した。先程の件もあって、まだ免疫を獲得していないのか、面白いくらいに取り乱す彼女はやはり可愛かった。ただ小動物を愛でる時の"可愛い"とは少し違う。それよりももっと見ていて自分の庇護下に置きたいような、そんな感覚だった。彼女より少し遅れて境内に入ると返答をしながら服屋の袋を手渡す。渡した瞬間、変化を解いて本来の妖としての姿に戻る。本殿へ入り繧繝縁の上に座る。前足でくしくしと毛繕いをしながら九つの尻尾を揺らして動きを確かめる。人間に長時間化けていると耳や尻尾の動かし方を忘れてしまいそうになるため、変化を解いた後は必ず行う。それにしてもこんな風に疲れたのは久しぶりだった。今までは買い出しの時にしか疲れなかったが、今は普段から疲労が溜まりやすくなったかもしれない。イナリは疲れることが嫌いではなかった。疲れたりするのは生きている証拠だから。ただあまりに体力を消耗し過ぎると妖にとっては毒だ。耐え難い眠気が襲ってくることもある。丁度今のように)

のう…我は疲れた。少しだけ…眠る。半刻経ったら起こす…のじゃ……よい…な…。

(大きく欠伸をすると繧繝縁の上で丸くなり、途切れ途切れながら伝える。言い終わると電池が切れたように動かなくなり、すぅすぅと寝息を立てながら眠ってしまう)

  • No.138 by 日向 静蘭  2024-03-03 13:01:36 


( 思ったことを口にした、という彼の言葉には尚も気まずそうな視線を逸らしたままだったが、差し出された袋をみると慌てて其れを受け取った。言い方に多少問題を感じる時はあるものの、彼は確かに感情を表に出すタイプだと思う。…ということは、さっきの発言は本心なのだろうか。
しかし、そんなことをまた考えるとせっかく取り戻した冷静さをまた欠いてしまいそうなのですぐさま追い出し、本来の姿に戻ってしまったその背を静かに見守っておく。
繧繝縁の上で丸くなる彼はよほど疲れているようで、途切れ途切れになる言葉を拾えば「分かったわ」と頷きとともに短い返事を。すぐさま聞こえてきた寝息には、この隙に頭を撫でてもバレないのではないか、なんて邪な考えが浮かぶものの、怒られるのも嫌なのでぐっと我慢しておく事にした。
少しの間だけ近くに腰掛け自分も休息を取ると、すぐにまた社務所へと向かい買ってきた食材を袋から取り出して整頓する。飴玉は本殿に持っていこう、と全種類を抱えては、パタパタとまた戻ってくる。
次に購入した衣服を袋から取り出すと、下着類はさっさと自分の鞄の中へとしまい込んで、一着のワンピースを取り出す。ふんわりとしたシンプルながらも細かな花柄の入ったピンク色の可愛らしいワンピース。可愛らしいものは好みに反して似合っていない気がしてあまり着てこなかったが、これはなんだか気に入ってしまい買ってもらった。せっかくだからと彼が寝ている間に着替えてしまうと、ワンピースの上に薄いベージュのカーディガンを羽織る。新しい服を着ると、少しばかりウキウキしてしまうのは何故だろう。
買い物のお礼にどんな油揚げ料理が良いものかと考えながら、彼が起こして欲しいと言っていた時間までは料理の下ごしらえをしておく。きっちり時間通りになると、また本殿へ帰ってきて、柔らかな毛並に手を埋めると、恐らく彼の肩あたりを揺さぶった。)

───ねぇ、イナリ様。起きて。

  • No.139 by イナリ  2024-03-03 14:51:43 

…ん。

(夢を見ていた。もう百年以上前の日常の夢。神社に人間が訪れてはイナリに供物と共に祈りを捧げる。彼らの供物を受け取りながらくだらない問答に時を費やし、日暮れには娶ったばかりの妻と晩酌をする。イナリは楽しかったが彼らはどうだったのだろうか。「人間様の気持ちなんてお前には分からないよ」いつの日か酒を煽りながら妻が言った。並大抵の女子よりも肝っ玉が据わっていたあの妻が寂しそうに。その言葉はイナリの心を傷付けたが忘れたフリをしていた。そんなことを夢で思い出してしまったからだろうか。彼女の言葉で一瞬起きるが、すぐに眠気が襲ってくる。僅かに感じていた寂しさを紛らわせたくて、彼女の手から感じた温もりを感じたくて、一瞬だけ頭を上げたかと思うと、それを縋るように彼女の身体に預けて再び眠ってしまう。自分の体温で眠っていた時と違って、こちらの方が心地よかった。暫くはどんどん深くなる眠気に支配されていたが、やがてなんの前触れもなくパッと眠気が無くなると、目をパチッと開ける)

ん…? 何しておる…?
…ああ。一刻経ったのじゃな
…お主、十分"おしゃれ"では無いか

(目が覚めると、彼女に自ら縋っていたことなど覚えていないのか怪訝な表情をしながらも、ゆるゆると身体を起こす。眠っている間に体力は幾分か回復したようなので、再び耳と尻尾だけを残して人間に変化する。ふと眠る前と彼女の衣服が違うことに気付くと、慣れないお洒落という言葉を使って感想を述べる。尤もお洒落という状態がどのような状態を指すのかはイマイチ分からなかったが、彼女の服が似合っているのは事実なのできっとこれはお洒落なのだろうと判断した)

  • No.140 by 日向 静蘭  2024-03-03 18:07:24 


(起きたかと思ったが、彼はすぐさま眠りの縁へと落ちていってしまった。おまけに、その体を此方に預けすやすやと。もう一度名を呼ぼうと口を開いたが、心地よさそうに眠る狐の顔を見ると起こすのがなんだか忍びなくて開いた口を閉じる。これは不可抗力だと自分に言い聞かせながら、ずしりと伸し掛る毛並みをゆっくり撫でる。目が覚めたらまた怒られるだろうか、なんて考えながら毛並みを堪能していると、暫くして彼の目が開き、慌てて撫でていた手を退ける。
何をしているのかと問われれば、少しだけ口を尖らせて「貴方が二度寝したのよ」と此方に非が無いことをアピールするが、勿論しれっとその毛並を堪能していたことは黙っておく。)

……そう、かしら。ありがとう。

(ゆっくり身体を起こし変化する様子を目で追っていると、服装について褒められ──勝手に褒めてくれていると思っているのだが── 一瞬視線を外して長い髪を耳にかけた。だが、既に平常心と冷静さを取り戻していたようで先程のように照れることはなく、淡々と礼を述べた。しかし、その口元は少しだけ弧を描き、どことなく嬉しそうで。
自身も立ち上がり、彼の近くへと歩み寄ると今度は此方から口を開いた。)

それはそうと、もう変化して大丈夫なの?

  • No.141 by イナリ  2024-03-03 21:18:51 

この程度の変化であれば少し眠るだけで大丈夫じゃ。それにお主も、この姿の我の方が良いじゃろう?

(元々イナリは治癒能力が高い。例え刀で斬られても、鉄砲で撃たれても、三日程度で傷口が塞がってしまう程だ。それに彼女がいるからか、いつもよりリラックスしていたので変化できる体力が早く戻ったのだ。彼女がイナリの毛並みを堪能していたことなど露知らず、妖の姿のままでは彼女が萎縮すると思って。だから配慮してやったんだぞなんて傲慢な響きを隠そうともせずに言い放つと尻尾を揺らしながら、すくっと立ち上がる)

お主も疲れたじゃろう。風呂の場所を教えてやる故、ついて参れ

(それだけ言うとスタスタと本殿から出て行く。彼女が付いてこれているかは足音で分かるので、特に後ろを振り返ることも無く歩みを進める。買い物中にイナリの言葉通り片時も離れないでいてくれたから、その礼のつもりだった。本殿のすぐ裏の森を一直線に進むと開けた場所が見えてくる。そこにある露天の温泉が見えてくると歩みを止める。"どうじゃ。我の作った湯は見事じゃろう?"とでも言いたげに彼女の方を振り返ると鼻を鳴らす。湯に近付くと手を入れて温度を確かめる。常に一定の温度に保っているはずだったが、少し温かったので指先に術を展開し、少しだけ温度を上げる。尤もこれは自分にとっての適温で、彼女にとってはどうなのかは分からないが。湯の調節を終わらせると顎でしゃくりながら彼女に言う)

ここは我の結界が張ってある故、安心して入るが良い。見ての通り周囲に明かりがない。湯に浸かる時は日が沈むまでに済ませよ。

  • No.142 by イナリ  2024-03-10 11:21:41 

(/上げです!)

  • No.143 by 日向 静蘭  2024-03-10 14:36:58 


………、狐の方が、可愛いわ。

( 大丈夫であるならよかった、と内心安堵しながら、変化した姿の方が良いだろうと言われると少しばかり考える素振りをみせ、ボソリと短く上記を呟いた。
正確には人型だと勿論接しやすいし有難いとは思うものの、狐の方が珍しく毛並みも拝見できるし、動物好き故に可愛い、と言ったまでなのだが。この短い言葉が相手の配慮を諸共せず踏みにじって聞こえてしまうことには気づいておらず。
特に悪びれる様子もなく平然とした態度で言われるままについて行けば、裏の森を進んでいく。
こんな所にお風呂があるのだろうか、と半信半疑ではあったものの、大きな露天風呂を見つけると彼の隣で足を止めて“おぉ”と小さく声を漏らした。表情では分かりにくいものの、これでも感嘆しているらしい。
温度を確かめているのか、湯にそっと手を差し入れる彼の動作を見守りながら続く言葉には頷いて、相手の方を見上げながら小さく微笑んで。)

…ありがとう。とても素敵な湯ね。
タオルや着替えを持ってきて、早速入ってもいいかしら?

  • No.144 by イナリ  2024-03-10 17:53:00 

(彼女が呟いた一言を聞き漏らさず拾ってしまうとゆっくりと首を動かして彼女を見つめる。口には出さないが目で非難の色を浮かべるも、すぐに目を逸らす。彼女のこういう一言は今に始まったことでは無いので、ここは年上の自分が我慢するかと無理やり自分を納得させる)

勿論じゃ。とくと楽しみが良い。
……我は本殿に戻っている故、何かあったら──まあ何も無いとは思うが──呼ぶと良い

("良いかしら?"なんて律儀に尋ねる彼女にクスリと笑うと頷く。背を向けて去る際に、念の為に伝えておく。一帯はイナリの結界のおかげで物怪の類は入って来れないが、万が一ということもある。イナリのお気に入りの場所で何かあったら縁起が悪い、なんて表向きは思っているが、実際のところは彼女が危険に晒されるのが怖いのだ。彼女も人間である以上、脆い存在だろうから。
本殿へ戻ると彼女が持ってきてくれたのか社務所に置いてきた筈の飴玉に目がいく。苺が好きだが、折角なので他の味を試してみることにする。りんご味の飴玉を口に放り込むと、やはり口中に広がる甘味に目を輝かせる。舌で飴を転がしながら、繧繝縁に腰を下ろすと変化を解いて本来の姿に戻る。先程の発言を気にしてか、くしくしと毛繕いを丹念にする。人間の姿の何が気に入らないのだ、なんてぶつぶつ呟きながら前足を巧みに使って毛を丁寧に繕っていく)

  • No.145 by イナリ  2024-03-17 11:16:52 

(/上げです)

  • No.146 by イナリ  2024-04-03 19:17:33 

(/上げです!)

  • No.147 by 日向 静蘭  2024-04-14 14:41:01 


(彼の言葉には引き続き頷いて「分かったわ」と簡単に返事をすると、一度本殿へ戻って2枚のタオルと着替えを手に取る。着替えに選んだのは新しい衣服ではなく彼がくれた小袖で、なんだかんだ着やすいし気に入ったらしい。ゴムで髪の毛を頭のてっぺん近くへ結い上げると、そのまま踵を返して露天風呂へ。
──結界が張ってあるとはいえ、よく考えてみればこんな開放的な空間で洋服を脱ぐのは些か気が引けるが、かと言って洋服を着たまま入る訳にも行かず、1人羞恥心に耐えながら服を脱ぎ、すぐさまタオルを1枚身体に巻き付けた。
荷物を傍らに置いてゆっくり脚から湯の中へ入っていくと、程よい湯加減に小さく息を吐く。大自然の中故なのか空気も澄んでいてとても心地よい。
暫く目を瞑り木のざわめきや風の音を聞きながら温まっていると、ふと姿勢を変えたくなって、湯の縁へ重ねた腕を置いてさらに頭を乗せようとゆっくり目をあける。
すると、遠くではあるが1人の男性の姿を捉えて思わず叫びそうになる。結界の向こう側にいるようなので此方に気付くことも入ってくることも無いはずだが、此方の方向へ近付いてる相手と目があった気がして思わず後ずさる。)

……い、イナリ……ッ!

(恐怖心と羞恥心が入り交じり、思わず彼の名を零した時、湯の中でつるりと足が滑ると次の瞬間には頭の先まで湯の中へ落ちていた。
転んだ衝撃で結び目が緩んだのか、体を離れ視界の端を漂うタオルを見つめながら“私、こんなに鈍臭かったかしら…”なんて冷静な自分が心の中で呟いた。)





(/大変お待たせしておりました;すみません!!)

  • No.148 by 日向 静蘭  2024-04-15 12:02:25 

(/上げておきます)

  • No.149 by イナリ  2024-04-15 18:22:55 

……!
どうした!何事じゃっ!?

(大方毛繕いが終わり、人の姿に戻った時だった。露天風呂の方からバシャンと大きな音が聞こえてきた。一瞬ピクリと耳が反応し動きが止まるも、顔から血の気が引く感覚と共に一目散に風呂場へ向かった。明らかに尋常ならざる事態が起きたと思った。まさか気を失って湯に沈んだか、誰かに襲われて湯に沈められたか、はたまた別の問題が起きたか。頭の中で瞬時に最悪の事態の予想が次々と出てくる。イナリは身なりに殊更気を遣っていた。他の妖から奇異な目で見られる程に。そのイナリが着物が汚れるのも乱れるのも気にせずに必死で走っていた。頼む、何事もなくあれ。力強く祈ると同時に露天風呂へ辿り着いた。着くや否や声を張って彼女の無事を確かめる。
無音だった。争う声も聞こえない。他の存在の気配も感じない。そして当の本人は湯の中にいる。溺れているわけでも気を失っているわけでもなかった。湯に浮かぶタオルをじっと捉えながら、イナリは自分の行動が取り越し苦労であることを知った。途端に張り詰めていた緊張の糸がどっと解けてしまい、その場に座り込んでしまう。仮にも入浴中の女子が目の前にいるのにも関わらず。はぁと大きく息を吐くと暫くしてから口を開く)

…あまり我を驚かせるな。寿命が縮む。何故、風呂に落ちたのだ

(/ お待ちしておりました!)

  • No.150 by 日向 静蘭  2024-04-15 19:22:54 

(水中の中で体勢を整えればゆっくりと水面から顔を出す。すると、今度は見慣れた姿が目の前にあり思わず悲鳴をあげそうになる。慌てて流れゆくタオルを掴んで手繰り寄せれば、目元の水滴を払い深呼吸を1つ。
思い出したようにさっと周囲を見渡すが、先程の男性の姿はそこには無くどうやら去っていったらしい。目の前にあるのは溜息を吐いて心底呆れたように此方を覗く2つの眼だけだった。)

──そこに、男の人がいたの。びっくりして足を滑らせてしまって……。驚かせてしまってごめんなさい。

(何故落ちたのか、という質問にはちらりと視線で方向を示しつつ経緯を正直に白状して。恐らく、驚いて駆けつけてくれたのであろう相手には申し訳なさそうに眉尻を下げつつ謝っておく。
すると、ふと相手に違和感を抱き何故だろうかと首を傾げ、その違和感が着物の乱れと汚れだと気がつくと、そういえば常に身なりには気を遣われていたような、と思案する。ゆっくりと手を伸ばすと座り込む相手の足にそっと触れて)

…着物が汚れているわ。貴方、走ってきたの?

  • No.151 by イナリ  2024-04-15 20:42:24 

男じゃと…?珍しいこともあるものじゃな。
…妖や怪異の類でなくて良かったのう

(この辺りは以前は参拝目的でそれなりの人間が来ていたが、今となっては肝試しとかそういう目的で来る人間が稀にいるくらいだった。自分と同じ妖怪や怪異の気配はしなかったので、そういう人間に違いない。兎も角正体が分かると途端に脳に冷静さが蘇る。そこでやっと気付いた。自分は今入浴中の彼女と相対している。相手はタオル一枚しか纏っていない。それを意識した途端、自分の不埒さに再び冷静さを欠きそうになる。腰を上げてすぐにでも退散したかったが、目敏い彼女が足に触れながら着物について言及すると、平静を装いながら口を開く)

…我の風呂場で逝かれても困るし…他の妖に喰われても面白くない。念の為に走ってきただけじゃ。別にお主を案じての行動では無い。我の風呂を案じてじゃ。
…新しい着物を出さねばな。

(少しバツが悪そうに汚れた部分を手で払いながら早口でまくし立てる。黙っていれば良いのに下手に誤魔化そうしたり、要らない言葉で飾ったりするのがイナリの悪癖だった。妖術で着物の汚れなんて簡単に落とせるが、彼女の為に付けた汚れを落としてしまってはいけないような気がした。着物の乱れを整えながらスクッと立ち上がると、くるりと背を向ける)

  • No.152 by 日向 静蘭  2024-04-15 21:51:31 


……そうよね。
でも、少し怖かったから、貴方の顔を見て安心したわ。ありがとう。

(早口で捲し立てるその言葉には小さく笑い、肯定するように頷くと再度ゆっくりと肩まで湯に浸かった。
発言の裏に隠してある真意を受け取ったのか、はたまた言葉をそのまま受け取ったのか定かでは無いが、此方からは思ったことをその通りに伝え礼を述べる。彼はきっと素直じゃないとなんとなく分かってはいるが、だからといって期待するのは嫌だった。これまでもさり気ない気遣いを与えてくれたが、根拠なく期待するのは、後々自分の首を絞めるだけだとこれまでの経験上 重々承知している。
再度暖かな湯に浸かり気持ちを鎮れば、普段通りの冷静さを取り戻したような気がして大きく息を吸う。)

…もう少ししたら私も上がるわ。
そうしたら夕食の準備をするから…あ、鍋に湯だけ沸かしておいてもらえるかしら。

(背を向ける相手に伝言をとばかりに口を開くと、火元を準備してもらうついでに湯を沸かして欲しいとおまけのお願いも付け加えて。)

  • No.153 by イナリ  2024-04-16 20:03:31 

心得た。
…逆上せたりするでないぞ

(去り際に彼女からのお願いを聞くと、後ろを振り返りながら頷く。同時に少しばかりの嫌味を加えて。逃げるようにその場を後にすると本殿へ向かう。帯を解き、するすると着物を脱ぐと木箱の中から別の着物を取り出す。と言っても黒を基調とした着物で、今まで着ていたのと大した違いは無い。唯一異なっているのは柄が雪輪から藤に変わった位だ。イナリは見た目に気を遣うが、着物のバリエーションは、さして重要視していなかった。されどとにかく黒い着物を好む。一度着物を献上してきた人間がいたが、彼は赤色の派手な柄を持ってきた。イナリは赤が嫌いだ。あんまり気分が悪かったので「次からは黒一色にせよ」と言い放った。
先程来ていた着物は木箱に戻し、社務所へと向かう。鍋に水を入れると指先に火を灯らせ、火を移す。続いて釜に米を入れ、何回か水洗いし、釜を竈に置くとそこにも火をつける。薪を放り込み火の加減を調節する。ぼおっと火を見つめながら、最近は変化ばかりだと考える。彼女の来訪、言われるがままに神隠し、二人での買い物。どれも以前の生活からは想像もできなかった。古く錆び付き、もう動くことは無いと思っていた環境が新しくなっていく。これがイナリの運命なのだろうか。だとしたらイナリ自身も変わることがあるのだろうか──そんなことを考えていた時だった。とっくに米が炊けていたことに気付き、慌てて火を消す。少しばかり米をお焦げができた白米を覗きながら大きくため息を一つ零す)

  • No.154 by イナリ  2024-04-17 18:31:18 

(/上げておきます!)

  • No.155 by 日向 静蘭  2024-04-17 20:01:04 


──あら、お米も炊いてくれたの?

(彼が溜息を零した直後、その背後からひょっこりと顔を見せれば鍋の中身を見て声を掛ける。どうやら、彼が着替えを済ませ考えを馳せている間に、此方も湯から上がって着替えを済ませ戻ってきていたらしい。髪を再度結い直し貰った小袖を身につけているその姿は、充分に温まったらしくほんのりと血色良く頬が赤らんでいた。
そのまま食事の準備に取り掛かろうかと袖が汚れないように折りながら、またちらりと相手へ視線を移す。先程声をかけた時には気づかなかったが、少しの違和感を抱いて着物へ目をやると、風呂まで駆け付けてくれた時の着物とは柄が変わっている事に気が付いた。どれも黒い着物故に大きな違いはないように思えるが、この着物も立派なもので、彼にはよく似合っていた。同時に自分の所為で着物が汚れてしまったことを思い返すと少しばかり申し訳なさそうにして。)

…さっきの着物。本当にごめんなさい。後で綺麗にしておくわ。あと、藤柄もよく似合うのね。

(買い出しでたくさん購入した油揚げの袋を2袋ほど手に取ると、野菜や調味料なんかも取り出して料理の準備を進めていく。)


  • No.156 by イナリ  2024-04-17 21:28:38 

(溜息を零した直後、声を掛けられると少しだけ驚き耳がピクリと動く。いつもならば大層に上から目線で米を炊いてやったなどと言うが、考え事をして米を焦がしたことに気まずさを感じてか、彼女の問いに「ああ」と小さく頷きながら返すだけだった。ちら、と彼女に視線をやると、風呂上がりだからだろうか頬が赤らんでいた。昼間は彼女に怒られてしまったが、やはり彼女は可愛い──イナリは心の中で呟く。女子の容姿を評価するのは不適切な気がしたが、それでもイナリはそう思っているのだから仕方がない。イナリは公では素直じゃない反面、心中では自分の感想には素直な妖だった。公言すると怒られるが、イナリからすれば彼女は可愛いのだ。)

……ん?気にするでない。着物の汚れなぞ術でどうとでもなる。
…知っておるか。藤の花の花言葉は「決して離れない」と言ってな。藤の成長は早く、ツルはあらゆるものに巻き付く。…あまり無防備だと気が付いたら逃げられなくなっておるかもしれんの

(暫く彼女の顔に視線をやっていたが、申し訳なさそうにする彼女に気が付くと首を横に振った。着物が汚れたことなど、これまで何回もあった。その都度、妖術を駆使して新品同然にしてきたから、無問題だ。しかし今回に限っては術で落とすのが憚られる。自分の手で落とすのが道理に合っていて、彼女にやらせるのは気が引けた。
自分の着物の柄を一瞥するとぽつりと呟くように言う。なぜ唐突にこのようなことを言い出したのか、自分でも分からない。ただ、この言葉は彼女を脅かしているようで、イナリが自身にも言い聞かせているような響きを含んでいた。何にも執着するな、と。)

  • No.157 by イナリ  2024-04-20 17:16:38 

(/上げです)

  • No.158 by 日向 静蘭  2024-04-20 18:53:05 


( 着物の汚れに関しては気にするなと言う彼に、申し訳なさは残りつつも他に食い下がることはせずに小さく頷きを返して。続く言葉には、夕食の準備をする手を止めることはなく視線もそのままに、考えているような間を挟んで口だけを動かした。)

──キツく巻かれると息苦しそうね。
でもね、藤の花の美しさを知ってしまったら、私、逃げられなくても平気だと思うの。
…それに植物は、私が傍に居続けても「気持ち悪い」なんて何も言わないから、きっと心地が良いわ。

(藤の花言葉に習った訳では無いが、“決して離れたくない”そう思ったことなら過去に1度だけあった。スマホのホーム画面に映っていたあの海辺を何度も一緒に歩いた思い出がちらりと脳裏に蘇る。複数人の後ろ姿は同じサークルの人達。そこに混ざっていた1人に告白されて、1年ほど付き合った。学生時代から人付き合いが苦手で浮いていた私にそんな縁なんかあるわけないと思っていたし驚いたけど、優しい笑顔を見せてくれる彼に惹かれて行って、私もそれなりに彼が喜んでくれるように努力した。
けれど、付き合って1年が経った時、私と付き合ったのは他のサークル仲間と賭けをして負けた『罰ゲーム』だったと聞かされ、そんな事に1ミリも気付かずに浮かれていた私に、彼は心底嫌悪するような顔でその言葉を吐き捨てて去っていった。
彼の優しさも私の滑稽な姿を引き出すためで、それを裏で笑われて馬鹿にされていたのかと思うと惨めで悔しくて、執着するのは格好悪い事だと学んだ。それと同時に、やはり、自分を本気で好いてくれる人など居ないのだと思った。だけれど、その分羨ましいと言う気持ちも大きくなった。逃げなくても良くて、諦めなくて良くて、自分の中にある愛を受け入れて貰えたらどんなに素敵な事だろうか。
そんなことを考えていると、包丁で野菜を刻みながら呟くようにして質問を投げかけた。)

……ねぇ、イナリ様。貴方は私に、ここに居て欲しいと思う?

  • No.159 by イナリ  2024-04-20 20:21:19 

(イナリには読心術の心得がある訳ではない。人の心ほど曖昧で複雑で恐ろしいものは無い。時には人間自身にも分からないのだから、中級妖怪のイナリには分かるはずも無い。それでもイナリは彼女の言葉を聞いて、誰かに裏切られた過去があるのではと推測した。根拠は薄弱、裏取りもない、全てイナリの主観で考えたことだが、そんな気がした。誰かに裏切られ、それがトラウマになってしまったのでは無いか。だから愛が欲しいと願ったのでは無いか。だとしたら悲しい程に不幸な人間だった。そう考えると、益々彼女を放っておけなくなる。この女子がせめて自分の魅力や利点に気付き、自己を肯定する能力を得るまで、この手に置いておかなくてはならない。そんな使命感にも似た感覚に駆られた。だがイナリは分かっていなかった。使命感とは裏腹に彼女に執着したいという昏い感情が育ち始めているのを。
彼女からの問い掛けに暫時、中空を仰いで思案する。この問い掛けは恐ろしく慎重にならなくてはならない。中途半端なことを言えば、聡い彼女に見抜かれ、信を喪うであろう。しかし本心を吐露しても、それを嫌悪されてしなうやもしれぬ。堂々巡っていく思考に陥る。沈黙が続き、恐らく一分は経つであろうという寸前、どうせ信を喪うのであれば本心を伝えるべきかと決心し、大いなる羞恥心を隠しながら彼女の方に向き直る)

…お主を置いておくか否かを決めるは我次第。その判断基準は、お主が己を好くことができるようになるまでじゃ。己を愛すれば、嫌なことも忘れられる。
それまではここに居ると良い…いや、居て欲し…い……

  • No.160 by 日向 静蘭  2024-04-21 09:39:00 


(流れる沈黙に意地悪な事を言ってしまっただろうかと考える。質問を訂正しようと口を開きかけたが、彼がそれよりほんの少し先に口を開いた。
“己を好くことが出来るようになるまで”その言葉を聞いて、動かしていた手を止めて相手の顔を見る。彼の中でそのような基準があったなんて知らなかったし、彼は、自分に自信がないこんな私を気にかけていてくれたのだろうか。
正直に言うと、自分を愛するなんてどうしていいのか分からないし、それがいつ達成されるかなんて分からない。もしかしたら達成することなくこの命が尽きるかもしれない。
どちらにせよ、達成したならまた厳しい社会の中に放り出されてしまうと思えば、彼は酷く、厳しくて寂しい事を言っていると思う。しかし、それと同時になんとも言えない嬉しさがあった。
いつも尊大な言い方をする彼が、“居てほしい”と此方に願うような言い方をするものだから、思わず2.3度瞬きを繰り返してしまった。言い慣れていないものだから少しばかり歯切れが悪いのもまた愛しいと感じてしまう。)

……ふふ、分かったわ。それまで、ここにいてあげる。イナリ様は私の料理が好きみたいだし。

…私、自分を好きになる努力をするわ。約束よ。

(ふわりと柔らかな笑顔を浮かべると、彼の真似をしているのか少し恩着せがましい言い方をしつつ、料理をしていた手を洗い綺麗な布で水を拭き取ると、“約束”の言葉で右手の小指を差し出した。)

  • No.161 by イナリ  2024-04-21 12:35:21 

嗚呼…約束するが良い。
偽りだったら術で二度と口を聞けなくする

(言葉の途中で羞恥心が顔を覗き、最後で歯切れが悪くなってしまったことを後悔していると、自分の真似をしたような口調で彼女が小指を差し出してきた。一瞬困惑したが、すぐに指切りだと理解すると、彼女の物言いに少し口角を上げながら、自身も小指を差し出し指切りをする。人間と指切りなんて何百年もしていない。最後にしたのはいつだったか、なんて思い出せない。誰かから願いを乞われ、それを実行してやることはあったが、それは約束とは言えない一方的なものだった。対等な立場で互いに約束をしたのは、彼女が初めてかもしれない。
とは言え、イナリに具体的なプランはなかった。何をすれば、どう接してやれば彼女が自分を好きになれるのか。言い出したのはイナリだから、主導する義務がある。このままではイナリの方が二度と口を聞けなくなってしまう。とりあえず褒めれば良いのか? 我ながら浅い考えだとは痛感しているが、彼女を褒めて様子見をしてみることにする)

…お主は…誠に料理が上手いのじゃな。我は古今東西の一級品や珍味なぞはあらかた食ったが…お主の料理の足元にも及ばぬ。何故じゃ?

  • No.162 by 日向 静蘭  2024-04-21 15:45:13 


(口を聞けなくする、という言葉には「それは困るわ」と片手を口元に添えながら小さく笑って。指切りを済ませるとまた自身の手元へと視線を戻して食事作りを再開する。味噌汁に野菜の和え物、そして中を開いた油揚げには細かく切った野菜や魚のほぐし身を入れ、甘辛いタレに染み込ませておく。
ふと、彼に料理のことを褒められると、首を傾げて「知らないわ」と言うように首を横に振った。彼が此方に気を使って褒めてくれていると言うのに、パッとその事に気付けずにとりあえず礼は伝えるが、相変わらず冷めきったような事を言ってしまう。)

そう?ありがとう…。でも、何故と言われても…、貴方の口に合うだけじゃないかしら。高かったり珍しかったら美味しいという訳でもないでしょうし。

(暫くタレに付けていた油揚げに今度は火を通そうと焼き始めるが、そうしている内に、あ、と顔を上げて、今度は「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にした。相手が自分のために言葉を選んでくれていることにやっと気付いたようで、それでいてその心意気を自分が無下にする態度をとった事にも気が付いたらしい。まぁ、それもあくまで約束を守るためであり、イナリの本心にまでは気が付いていないが。)

…もしかして、今の質問じゃなくて、私の料理を褒めようとしてくれていたの?

  • No.163 by イナリ  2024-04-22 18:30:48 

そ、そうか。口に合っているだけか。うん…。それもそうじゃな

(彼女が自分の意図したものとは別の解釈すると、無念そうな表情を懸命に隠しながら小さく何度も頷く。聞き方が悪かったのだと自分に言い聞かせる。彼女はイナリが思っているよりも難しい人間かもしれない。一体どうすれば彼女に気付かせられるのか。当分はこれがイナリの課題だと思っていた矢先、小さく声を上げた彼女の方を何事かという風に見ると、今度は謝罪をされ益々困惑する。怪訝そうに「なんじゃ?」と尋ねると、どうやら自分の意図に気付いたらしかった。自分で質問したはずだが、改めて彼女から意図を晒されると最前より抱いていた羞恥心が一層増す。同時に自己嫌悪に陥る。"お主の料理の方が遥かに美味い"とストレートに言えば良かった。少なくともそれは、イナリの偽らざる本音なのだから)

…難しいものじゃな。
…人を褒めたことが無い故、不慣れなのは許せ。…お主の料理の方が美味いというのは真じゃ。

(皿を用意しながらぽつりと呟く。妖として生を受けてイナリが素直だったのは幼少の時しかない。成長と共に自尊心が膨れ上がり、尊大な物言いを繰り返す中でいつしか"素直"という状態を忘れてしまっていた。妖術だけでなく、こういうコミュニケーション術も学んでおくべきだったと今激しく後悔している)

  • No.164 by 日向 静蘭  2024-04-22 19:01:48 

(彼が用意してくれた皿を受け取り料理をよそう準備をしていると、ぽつりと呟かれた言葉に動きを止めて瞬きを数回繰り返す。小さく笑うと、手に持っていた皿や菜箸を一度置き彼へと向き合い背伸びをして、彼の頭に優しく自身の手を乗せると、まるで小さい子をあやす様に撫でてみて。)

…ふふ、ありがとう。『美味しい』って言ってくれるだけで、こう見えてとても喜んでいるのよ?
私は褒められ慣れていないから、疎いし、上手く反応出来なかったりするけれど、ごめんなさいね。

(上記を述べるとゆっくりと手を離し、食事の準備を終わらせようとまた食器や鍋と向き合うべく身体の向きを戻そうとする。
彼が自分の事を褒めようとしてくれているのは素直に嬉しいし、ましてや人を褒めたことが無いという彼が一生懸命それを行おうとしている姿は愛しいものだ。彼はなんだか申し訳なさそうに言ったけれど、自分だって褒めるのは上手くないし、褒められたからと言って可愛らしい反応ができるわけでもない。
もしかしたら、これまでも素直に褒めてくれていたのに、自分の受け取り方が悪くひねくれた返ししかしていなかったかもしれない。そう思うとなんとなくやるせない気持ちになる。自分も素直に正直に生きているつもりなのだが、この世はどうも正直すぎても生きづらい。)

  • No.165 by イナリ  2024-04-23 18:48:45 

……褒められ慣れていないのに、斯様に不敬なことは出来るのだな。

(彼女の手が頭に乗せられるとビクッとするが、やがて撫でられると耳がぺたりと垂れそうになる。彼女の撫で方は実に心地よく、まるで稚児のようになってしまいたくなる感覚に襲われる。一瞬だけ安心したように目を細めるも、すぐにキリッとした目付きになり、嫌味のように上記を言う。イナリの両親は既に物故しているが、彼女の表情は母親と重なるところがある。先程の彼女の撫で方もそうだが、表情も。だからつい気を抜きそうになる。今にでも幼い頃に回帰してしまいたくなる。だがそれはイナリの沽券に関わるので決して叶わぬ願いだが。
彼女の手が離れていくと少しばかりの寂しさに気づかないフリをしながら、食事の準備に勤しむ彼女の背を見つめる。傍から見れば夫婦か何かだ。実際はそんな単純な関係では表せない程、面妖な関係なのだが。ふと、これを彼女に伝えたらどんな顔をするのか気になった。無表情か照れるのか。思い付いたらやってみたくなるのがイナリの性質だったが、そのまま伝えると顰蹙を買いそうなので、少し言い回しを変えて伝えてみる)

お主はいい母になるやもしれんの。

  • No.166 by イナリ  2024-04-27 18:00:09 

(/上げです)

  • No.167 by 日向 静蘭  2024-04-28 00:37:09 


あら、不敬な事をするのは慣れてるもの。

(嫌味を言う相手対し、肩を竦めて揶揄うような笑みを零すと上記を返す。実際、彼と出会ってから既に何度も不敬なことをしてしまっているし嘘ではない。頭を撫でられるのがそんなに嫌だったのかしら、と思考するが、先程の様子を思い返しても本気で怒っている訳では無い、と思う。
2人分の食事の準備を終え、配膳をしようと盆を両手で持ち上げた時、いい母になる、との言葉を受けて一瞬動きが止まる。料理が作れるからか、はたまた別の理由があるのか、彼がそう言った経緯を詳しくは知らないが、良い意味で言ってくれたことぐらいは分かる。だが、母親との良い思い出があまりない故にいい母親になる自分自身を想像するのは難しかった。)

…いい母親ってどんなものか分からないけれど、でも、まぁ、そうね。なれたら、嬉しいかもしれないわ。

(ただ、想像はできなくても、そうなりたいと感じる。その気持ちをそのまま伝えると、柔らかく口角を上げて少し照れくさそうにして。それでいて「──もし、私に旦那と子供ができたら、ここへお参りにでも来ようかしら。」なんて、それこそ今は想像できないが、有り得るかもしれない未来をただ、何となく口にして。)

  • No.168 by イナリ  2024-04-28 14:02:59 

(意外に素直な反応にぴくりと眉を動かす。別に素直な反応だったから悪い訳では無い。ただ、もっと素っ気ない反応をされるかと思っていた。良き母親が分からない、というのは同感だった。尋ねておいて何だが、イナリ自身も良い母親がどのようなものかよく分かっていなかった。イナリの母親は別に難がある訳ではなかったが、他者の母に興味を示したことがないため、比較してのデータがない。だからイナリの母が誰かと比較して良い母親なのか否かが分からない。さて、彼女の母親はどんな人なのだろう。
そんなことを考えていると彼女の何気ない一言に、用意していた箸を落としかける。一先ずは箸を置いて、その様子を想像してみる。ここを出た彼女が久方ぶりに戻ってきたと思ったら、見知らぬ男と子と歩いてくる。別に彼女はイナリの何でもないのに、些かの嫉妬と心の痛みを覚える。少しばかりの不快感と共に溜息を吐き出すと、取り繕いながら彼女を揶揄う)

その時が来れば、我がもてなしてやろうぞ。
…或いはお主の子だけ隠してしまおうかのう…

  • No.169 by 日向 静蘭  2024-04-28 21:27:05 

(ほんの一瞬、視界の端に見えた彼が動揺したように見えた。単に箸を落としそうになっただけかもしれないし、関係ないかもしれないけれど。もし、ほんの一瞬歪めた顔が私のせいならば、ずるいわ。と胸の中で呟いた。
自分で何となく想像して口走った事であったが、其れは自分自身にとっても違和感しか無くて。出来るならばこの先も隣にてくれるのは彼がいい、なんて、胸の奥で考えてしまった。そんなこと彼自身はきっと望んでいないし、口にするつもりも無いけれど。傍に居てくれるのだって、自分自身を愛せるようになるまでと言っていたはず、なのに…そんな反応をするなんて、ずるい。
思考がぐるぐると回っている時、彼が此方を揶揄うように言葉を返すものだから、つい、真っ直ぐ瞳を見つめて言ってしまう。)

…一度社を出たら。もう、私を連れて行ってはくれないの?

(言い終えて一間して、ハッと視線を逸らすと「なんてね」と惚けるように付け加え、そそくさと逃げるように食器を運んでいく。段々と、無自覚だった気持ちの蓋が少しずつズレていく気がして、なんだかソワソワしてしまう。
期待はしたくない。勝手に期待して裏切られた時、また自分自身に失望してしまうから。そんなことをしたらまた自分を愛せなくなるから。
1度でいいから“愛”がほしい。いつか願った其れは今でも変わらないけれど、彼からの愛は、あの時の抱擁で十分。自分自身を愛せるようにと言ってくれた彼を、これ以上我儘で邪な気持ちを持って困らせたくはない。
大きくズレて中身が溢れてしまわないように必死に気持ちの蓋を押さえ、深く深呼吸をして食事の用意を終わらせる。)

さぁ、冷める前に食べてしまいましょう。

  • No.170 by 日向 静蘭  2024-04-29 17:19:25 

(/上げです)

  • No.171 by イナリ  2024-04-29 17:47:28 

(彼女からの一言に今度こそ動揺を隠せず、「は…?」と声を漏らしてしまった。慌てて咳払いをして、目の前に配膳された食事に目を合わせる。もう私を連れて行ってくれないのか。そんな真っ直ぐな瞳で訊ねられたら、思わず"そんなことは無い"と言ってしまいたくなる。だが言える訳ない。何故ならイナリは彼女を自分自身を愛せるまでという条件の元、ここに置いているのだから。それを破ってしまえばイナリは願いを叶える社の主として失格だ。何より、我が物にしたいという理由で彼女を置いておくのは、あまりに身勝手だ。そこまで考えてようやく分かった。自分はこの女子を我が物にしたい──そう思っているのだ。何百年と生きてきて初めて芽生えた感情だった。つまりそれはイナリがこの女子に恋を──そこまで考えて慌てて思考に蓋をする。莫迦なことを。こういうことは結論ありきで考えてはならないのだ。慎重に考えるべきことなのだ。イナリは大変に臆病者だった。そして単純だった。一度蓋をすると決めたら、容易には開かない。だから彼女が食べようと言うと大きく頷く)

……美味い!

(油揚げに箸を付けると1口大に切って咀嚼する。嚥下すると目を輝かせながら叫ぶように言う。ピコピコと嬉しそうに左右に振る尻尾から見ても分かる通り、先程の思考や動揺はすっかり雲散霧消してしまった)

  • No.172 by 日向 静蘭  2024-04-29 18:23:24 


(早速油揚げを口にし目を輝かせる相手をみて、「それは良かったわ」と小さく微笑んだ。先程までの考えを払拭して箸を取れば、此方も手を合わせてから食事に手をつける。野菜や魚を油揚げで包む料理なんて正直作ったことは無かったのだが、これは確かに我ながら美味しくできたと思う。
片手を口元に添えながら咀嚼を行いそれを飲み込むと、今度はこれまた油揚げの入った味噌汁に口をつけ、温かな味噌の風味にほっと一息をつく。ちらりと目前の相手を見ると、その尻尾が嬉しそうに揺られていて、これまた安心する。)

……1つ気になったのだけれど、妖同士の交流ってやつはあるの?…ほら、社って他にも幾つかあるでしょう?そこにも誰かいるのかしら。

(暫く食事が進んだ頃、ふと、気になったことをそのまま尋ねてみる。この社には彼が居るように、人間に気付かれて居ないだけで他の妖もたくさんいるのだろうか。もし居るのなら、彼らは面識があったりするのだろうか。街にも出れると言うのなら、ふとした時に同種と出会うこともあるのでは…なんて、書物の読みすぎだろうか?)

  • No.173 by イナリ  2024-04-29 21:55:17 

やはりお主の料理は美味じゃ! 我は最早、これ以外は食えぬな

(まるで子供のように夢中で食べると味噌汁を啜りながら大仰に言う。仕草こそ大袈裟だが、言葉は偽らざる本音で。人間の手料理を口にしたことが無い訳では無い。今までが不味すぎたということもない。ただ彼女の料理は、一級品ばかりの豪華絢爛な料理をも凌駕するものがあった。味付けなのか、イナリの味蕾が変化したのかは分からない。ただ彼女の料理はいつもイナリを酷く感動させる)

む…?
ふん…。昔はようおった。社だけでなくどこにでも妖がおった。それが時代の流れと共に多くが没落し、今この辺りでは数える程度しかおらぬ。
…ここより西に荒れ果てた社がある。そこに狸が棲んでおる。無礼千万で礼儀のれの字もなき妖よ。万が一来ても相手にするでないぞ

(味噌汁を啜りながら眉間に深い皺を作る。それはかつてイナリを「変化バカ」と罵って笑い者にした妖だった。イナリと同じ時を生きている妖で、向こうはイナリが好き──揶揄いの対象として──だが、イナリは大の苦手だった。折角の食事で悪友の存在を回想すると、ゾワッと尻尾と耳が逆立つ。悪友の回想を打ち消すように首を振ると、味噌汁を一気に飲み下す)

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