匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
通報 |
我に不可能は大抵ない故な。造作もないことよ。
そうじゃ、今日の晩飯は油揚げを出してくれんかの?
(店の方向に意気揚々と歩きながら、余裕そうにベラベラ喋る。また人混みに揉まれない限りはいつもの調子でいるだろう。イナリは大変に気分が良かった。最大の難所を攻略し、残すは彼女の洋服などを購入するのみ──今のイナリなら乞われれば、どこへでも行こうとするだろうが──となり、夕食は彼女の至高の料理が待っている。こんなにも充実感のある日は久しぶりだ。長年神社で独りだったせいもあるのだろうが、かつて人間たちと共存していた時の、あの充足感が再び蘇ったようだ。そんなこんなで今のイナリは気分が良いので、少し鈍感になっていた。どのぐらい鈍感になっていたかと言うと、境内に居る時のような声量で喋っているため、少ないながらも通行人に奇異な目を向けられている。そしてその事に全く気付いていない程に鈍感だった。人間の視線が恐ろしくないのは、やはり彼女が隣に居るからだろうか。他の人間も彼女みたいなら良いのに。なんてことを思う。判断基準がすっかり彼女に移行しつつあることは相変わらず気がついていないが、少なくとも彼女は人間の中でも特異な存在で、イナリ自身は大変興味があることは自覚していた。だから彼女がどんな店で、どんな洋服を買い、どんな表情をするのか、楽しみで仕方がなかった)
…………読めぬ。
(歩みを進めていればいつの間にか彼女が指差した店に到着した。看板に書かれた英語の店名を見て一言呟く。イナリは外国人を見たことはあっても、話したことは無かった。だから外国語に酷く疎かった。唯一知っているのは「あるふぁべっと」という古代文字のような代物だが、ABCは理解出来ても、単語は一つとして理解できなかった。日本なのに日本語じゃない。大丈夫なのかこの店は。文句の一つも言いたくなったが、彼女が選んだ店だから大人しく口を噤んでおく。店の中を一瞥すると恐る恐る中に足を踏み入れる)
トピック検索 |