匿名さん 2024-01-05 19:35:07 |
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( 思ったことを口にした、という彼の言葉には尚も気まずそうな視線を逸らしたままだったが、差し出された袋をみると慌てて其れを受け取った。言い方に多少問題を感じる時はあるものの、彼は確かに感情を表に出すタイプだと思う。…ということは、さっきの発言は本心なのだろうか。
しかし、そんなことをまた考えるとせっかく取り戻した冷静さをまた欠いてしまいそうなのですぐさま追い出し、本来の姿に戻ってしまったその背を静かに見守っておく。
繧繝縁の上で丸くなる彼はよほど疲れているようで、途切れ途切れになる言葉を拾えば「分かったわ」と頷きとともに短い返事を。すぐさま聞こえてきた寝息には、この隙に頭を撫でてもバレないのではないか、なんて邪な考えが浮かぶものの、怒られるのも嫌なのでぐっと我慢しておく事にした。
少しの間だけ近くに腰掛け自分も休息を取ると、すぐにまた社務所へと向かい買ってきた食材を袋から取り出して整頓する。飴玉は本殿に持っていこう、と全種類を抱えては、パタパタとまた戻ってくる。
次に購入した衣服を袋から取り出すと、下着類はさっさと自分の鞄の中へとしまい込んで、一着のワンピースを取り出す。ふんわりとしたシンプルながらも細かな花柄の入ったピンク色の可愛らしいワンピース。可愛らしいものは好みに反して似合っていない気がしてあまり着てこなかったが、これはなんだか気に入ってしまい買ってもらった。せっかくだからと彼が寝ている間に着替えてしまうと、ワンピースの上に薄いベージュのカーディガンを羽織る。新しい服を着ると、少しばかりウキウキしてしまうのは何故だろう。
買い物のお礼にどんな油揚げ料理が良いものかと考えながら、彼が起こして欲しいと言っていた時間までは料理の下ごしらえをしておく。きっちり時間通りになると、また本殿へ帰ってきて、柔らかな毛並に手を埋めると、恐らく彼の肩あたりを揺さぶった。)
───ねぇ、イナリ様。起きて。
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