人もをし、人もうらめし。(〆)

人もをし、人もうらめし。(〆)

匿名さん  2024-01-05 19:35:07 
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  • No.140 by 日向 静蘭  2024-03-03 18:07:24 


(起きたかと思ったが、彼はすぐさま眠りの縁へと落ちていってしまった。おまけに、その体を此方に預けすやすやと。もう一度名を呼ぼうと口を開いたが、心地よさそうに眠る狐の顔を見ると起こすのがなんだか忍びなくて開いた口を閉じる。これは不可抗力だと自分に言い聞かせながら、ずしりと伸し掛る毛並みをゆっくり撫でる。目が覚めたらまた怒られるだろうか、なんて考えながら毛並みを堪能していると、暫くして彼の目が開き、慌てて撫でていた手を退ける。
何をしているのかと問われれば、少しだけ口を尖らせて「貴方が二度寝したのよ」と此方に非が無いことをアピールするが、勿論しれっとその毛並を堪能していたことは黙っておく。)

……そう、かしら。ありがとう。

(ゆっくり身体を起こし変化する様子を目で追っていると、服装について褒められ──勝手に褒めてくれていると思っているのだが── 一瞬視線を外して長い髪を耳にかけた。だが、既に平常心と冷静さを取り戻していたようで先程のように照れることはなく、淡々と礼を述べた。しかし、その口元は少しだけ弧を描き、どことなく嬉しそうで。
自身も立ち上がり、彼の近くへと歩み寄ると今度は此方から口を開いた。)

それはそうと、もう変化して大丈夫なの?

  • No.141 by イナリ  2024-03-03 21:18:51 

この程度の変化であれば少し眠るだけで大丈夫じゃ。それにお主も、この姿の我の方が良いじゃろう?

(元々イナリは治癒能力が高い。例え刀で斬られても、鉄砲で撃たれても、三日程度で傷口が塞がってしまう程だ。それに彼女がいるからか、いつもよりリラックスしていたので変化できる体力が早く戻ったのだ。彼女がイナリの毛並みを堪能していたことなど露知らず、妖の姿のままでは彼女が萎縮すると思って。だから配慮してやったんだぞなんて傲慢な響きを隠そうともせずに言い放つと尻尾を揺らしながら、すくっと立ち上がる)

お主も疲れたじゃろう。風呂の場所を教えてやる故、ついて参れ

(それだけ言うとスタスタと本殿から出て行く。彼女が付いてこれているかは足音で分かるので、特に後ろを振り返ることも無く歩みを進める。買い物中にイナリの言葉通り片時も離れないでいてくれたから、その礼のつもりだった。本殿のすぐ裏の森を一直線に進むと開けた場所が見えてくる。そこにある露天の温泉が見えてくると歩みを止める。"どうじゃ。我の作った湯は見事じゃろう?"とでも言いたげに彼女の方を振り返ると鼻を鳴らす。湯に近付くと手を入れて温度を確かめる。常に一定の温度に保っているはずだったが、少し温かったので指先に術を展開し、少しだけ温度を上げる。尤もこれは自分にとっての適温で、彼女にとってはどうなのかは分からないが。湯の調節を終わらせると顎でしゃくりながら彼女に言う)

ここは我の結界が張ってある故、安心して入るが良い。見ての通り周囲に明かりがない。湯に浸かる時は日が沈むまでに済ませよ。

  • No.142 by イナリ  2024-03-10 11:21:41 

(/上げです!)

  • No.143 by 日向 静蘭  2024-03-10 14:36:58 


………、狐の方が、可愛いわ。

( 大丈夫であるならよかった、と内心安堵しながら、変化した姿の方が良いだろうと言われると少しばかり考える素振りをみせ、ボソリと短く上記を呟いた。
正確には人型だと勿論接しやすいし有難いとは思うものの、狐の方が珍しく毛並みも拝見できるし、動物好き故に可愛い、と言ったまでなのだが。この短い言葉が相手の配慮を諸共せず踏みにじって聞こえてしまうことには気づいておらず。
特に悪びれる様子もなく平然とした態度で言われるままについて行けば、裏の森を進んでいく。
こんな所にお風呂があるのだろうか、と半信半疑ではあったものの、大きな露天風呂を見つけると彼の隣で足を止めて“おぉ”と小さく声を漏らした。表情では分かりにくいものの、これでも感嘆しているらしい。
温度を確かめているのか、湯にそっと手を差し入れる彼の動作を見守りながら続く言葉には頷いて、相手の方を見上げながら小さく微笑んで。)

…ありがとう。とても素敵な湯ね。
タオルや着替えを持ってきて、早速入ってもいいかしら?

  • No.144 by イナリ  2024-03-10 17:53:00 

(彼女が呟いた一言を聞き漏らさず拾ってしまうとゆっくりと首を動かして彼女を見つめる。口には出さないが目で非難の色を浮かべるも、すぐに目を逸らす。彼女のこういう一言は今に始まったことでは無いので、ここは年上の自分が我慢するかと無理やり自分を納得させる)

勿論じゃ。とくと楽しみが良い。
……我は本殿に戻っている故、何かあったら──まあ何も無いとは思うが──呼ぶと良い

("良いかしら?"なんて律儀に尋ねる彼女にクスリと笑うと頷く。背を向けて去る際に、念の為に伝えておく。一帯はイナリの結界のおかげで物怪の類は入って来れないが、万が一ということもある。イナリのお気に入りの場所で何かあったら縁起が悪い、なんて表向きは思っているが、実際のところは彼女が危険に晒されるのが怖いのだ。彼女も人間である以上、脆い存在だろうから。
本殿へ戻ると彼女が持ってきてくれたのか社務所に置いてきた筈の飴玉に目がいく。苺が好きだが、折角なので他の味を試してみることにする。りんご味の飴玉を口に放り込むと、やはり口中に広がる甘味に目を輝かせる。舌で飴を転がしながら、繧繝縁に腰を下ろすと変化を解いて本来の姿に戻る。先程の発言を気にしてか、くしくしと毛繕いを丹念にする。人間の姿の何が気に入らないのだ、なんてぶつぶつ呟きながら前足を巧みに使って毛を丁寧に繕っていく)

  • No.145 by イナリ  2024-03-17 11:16:52 

(/上げです)

  • No.146 by イナリ  2024-04-03 19:17:33 

(/上げです!)

  • No.147 by 日向 静蘭  2024-04-14 14:41:01 


(彼の言葉には引き続き頷いて「分かったわ」と簡単に返事をすると、一度本殿へ戻って2枚のタオルと着替えを手に取る。着替えに選んだのは新しい衣服ではなく彼がくれた小袖で、なんだかんだ着やすいし気に入ったらしい。ゴムで髪の毛を頭のてっぺん近くへ結い上げると、そのまま踵を返して露天風呂へ。
──結界が張ってあるとはいえ、よく考えてみればこんな開放的な空間で洋服を脱ぐのは些か気が引けるが、かと言って洋服を着たまま入る訳にも行かず、1人羞恥心に耐えながら服を脱ぎ、すぐさまタオルを1枚身体に巻き付けた。
荷物を傍らに置いてゆっくり脚から湯の中へ入っていくと、程よい湯加減に小さく息を吐く。大自然の中故なのか空気も澄んでいてとても心地よい。
暫く目を瞑り木のざわめきや風の音を聞きながら温まっていると、ふと姿勢を変えたくなって、湯の縁へ重ねた腕を置いてさらに頭を乗せようとゆっくり目をあける。
すると、遠くではあるが1人の男性の姿を捉えて思わず叫びそうになる。結界の向こう側にいるようなので此方に気付くことも入ってくることも無いはずだが、此方の方向へ近付いてる相手と目があった気がして思わず後ずさる。)

……い、イナリ……ッ!

(恐怖心と羞恥心が入り交じり、思わず彼の名を零した時、湯の中でつるりと足が滑ると次の瞬間には頭の先まで湯の中へ落ちていた。
転んだ衝撃で結び目が緩んだのか、体を離れ視界の端を漂うタオルを見つめながら“私、こんなに鈍臭かったかしら…”なんて冷静な自分が心の中で呟いた。)





(/大変お待たせしておりました;すみません!!)

  • No.148 by 日向 静蘭  2024-04-15 12:02:25 

(/上げておきます)

  • No.149 by イナリ  2024-04-15 18:22:55 

……!
どうした!何事じゃっ!?

(大方毛繕いが終わり、人の姿に戻った時だった。露天風呂の方からバシャンと大きな音が聞こえてきた。一瞬ピクリと耳が反応し動きが止まるも、顔から血の気が引く感覚と共に一目散に風呂場へ向かった。明らかに尋常ならざる事態が起きたと思った。まさか気を失って湯に沈んだか、誰かに襲われて湯に沈められたか、はたまた別の問題が起きたか。頭の中で瞬時に最悪の事態の予想が次々と出てくる。イナリは身なりに殊更気を遣っていた。他の妖から奇異な目で見られる程に。そのイナリが着物が汚れるのも乱れるのも気にせずに必死で走っていた。頼む、何事もなくあれ。力強く祈ると同時に露天風呂へ辿り着いた。着くや否や声を張って彼女の無事を確かめる。
無音だった。争う声も聞こえない。他の存在の気配も感じない。そして当の本人は湯の中にいる。溺れているわけでも気を失っているわけでもなかった。湯に浮かぶタオルをじっと捉えながら、イナリは自分の行動が取り越し苦労であることを知った。途端に張り詰めていた緊張の糸がどっと解けてしまい、その場に座り込んでしまう。仮にも入浴中の女子が目の前にいるのにも関わらず。はぁと大きく息を吐くと暫くしてから口を開く)

…あまり我を驚かせるな。寿命が縮む。何故、風呂に落ちたのだ

(/ お待ちしておりました!)

  • No.150 by 日向 静蘭  2024-04-15 19:22:54 

(水中の中で体勢を整えればゆっくりと水面から顔を出す。すると、今度は見慣れた姿が目の前にあり思わず悲鳴をあげそうになる。慌てて流れゆくタオルを掴んで手繰り寄せれば、目元の水滴を払い深呼吸を1つ。
思い出したようにさっと周囲を見渡すが、先程の男性の姿はそこには無くどうやら去っていったらしい。目の前にあるのは溜息を吐いて心底呆れたように此方を覗く2つの眼だけだった。)

──そこに、男の人がいたの。びっくりして足を滑らせてしまって……。驚かせてしまってごめんなさい。

(何故落ちたのか、という質問にはちらりと視線で方向を示しつつ経緯を正直に白状して。恐らく、驚いて駆けつけてくれたのであろう相手には申し訳なさそうに眉尻を下げつつ謝っておく。
すると、ふと相手に違和感を抱き何故だろうかと首を傾げ、その違和感が着物の乱れと汚れだと気がつくと、そういえば常に身なりには気を遣われていたような、と思案する。ゆっくりと手を伸ばすと座り込む相手の足にそっと触れて)

…着物が汚れているわ。貴方、走ってきたの?

  • No.151 by イナリ  2024-04-15 20:42:24 

男じゃと…?珍しいこともあるものじゃな。
…妖や怪異の類でなくて良かったのう

(この辺りは以前は参拝目的でそれなりの人間が来ていたが、今となっては肝試しとかそういう目的で来る人間が稀にいるくらいだった。自分と同じ妖怪や怪異の気配はしなかったので、そういう人間に違いない。兎も角正体が分かると途端に脳に冷静さが蘇る。そこでやっと気付いた。自分は今入浴中の彼女と相対している。相手はタオル一枚しか纏っていない。それを意識した途端、自分の不埒さに再び冷静さを欠きそうになる。腰を上げてすぐにでも退散したかったが、目敏い彼女が足に触れながら着物について言及すると、平静を装いながら口を開く)

…我の風呂場で逝かれても困るし…他の妖に喰われても面白くない。念の為に走ってきただけじゃ。別にお主を案じての行動では無い。我の風呂を案じてじゃ。
…新しい着物を出さねばな。

(少しバツが悪そうに汚れた部分を手で払いながら早口でまくし立てる。黙っていれば良いのに下手に誤魔化そうしたり、要らない言葉で飾ったりするのがイナリの悪癖だった。妖術で着物の汚れなんて簡単に落とせるが、彼女の為に付けた汚れを落としてしまってはいけないような気がした。着物の乱れを整えながらスクッと立ち上がると、くるりと背を向ける)

  • No.152 by 日向 静蘭  2024-04-15 21:51:31 


……そうよね。
でも、少し怖かったから、貴方の顔を見て安心したわ。ありがとう。

(早口で捲し立てるその言葉には小さく笑い、肯定するように頷くと再度ゆっくりと肩まで湯に浸かった。
発言の裏に隠してある真意を受け取ったのか、はたまた言葉をそのまま受け取ったのか定かでは無いが、此方からは思ったことをその通りに伝え礼を述べる。彼はきっと素直じゃないとなんとなく分かってはいるが、だからといって期待するのは嫌だった。これまでもさり気ない気遣いを与えてくれたが、根拠なく期待するのは、後々自分の首を絞めるだけだとこれまでの経験上 重々承知している。
再度暖かな湯に浸かり気持ちを鎮れば、普段通りの冷静さを取り戻したような気がして大きく息を吸う。)

…もう少ししたら私も上がるわ。
そうしたら夕食の準備をするから…あ、鍋に湯だけ沸かしておいてもらえるかしら。

(背を向ける相手に伝言をとばかりに口を開くと、火元を準備してもらうついでに湯を沸かして欲しいとおまけのお願いも付け加えて。)

  • No.153 by イナリ  2024-04-16 20:03:31 

心得た。
…逆上せたりするでないぞ

(去り際に彼女からのお願いを聞くと、後ろを振り返りながら頷く。同時に少しばかりの嫌味を加えて。逃げるようにその場を後にすると本殿へ向かう。帯を解き、するすると着物を脱ぐと木箱の中から別の着物を取り出す。と言っても黒を基調とした着物で、今まで着ていたのと大した違いは無い。唯一異なっているのは柄が雪輪から藤に変わった位だ。イナリは見た目に気を遣うが、着物のバリエーションは、さして重要視していなかった。されどとにかく黒い着物を好む。一度着物を献上してきた人間がいたが、彼は赤色の派手な柄を持ってきた。イナリは赤が嫌いだ。あんまり気分が悪かったので「次からは黒一色にせよ」と言い放った。
先程来ていた着物は木箱に戻し、社務所へと向かう。鍋に水を入れると指先に火を灯らせ、火を移す。続いて釜に米を入れ、何回か水洗いし、釜を竈に置くとそこにも火をつける。薪を放り込み火の加減を調節する。ぼおっと火を見つめながら、最近は変化ばかりだと考える。彼女の来訪、言われるがままに神隠し、二人での買い物。どれも以前の生活からは想像もできなかった。古く錆び付き、もう動くことは無いと思っていた環境が新しくなっていく。これがイナリの運命なのだろうか。だとしたらイナリ自身も変わることがあるのだろうか──そんなことを考えていた時だった。とっくに米が炊けていたことに気付き、慌てて火を消す。少しばかり米をお焦げができた白米を覗きながら大きくため息を一つ零す)

  • No.154 by イナリ  2024-04-17 18:31:18 

(/上げておきます!)

  • No.155 by 日向 静蘭  2024-04-17 20:01:04 


──あら、お米も炊いてくれたの?

(彼が溜息を零した直後、その背後からひょっこりと顔を見せれば鍋の中身を見て声を掛ける。どうやら、彼が着替えを済ませ考えを馳せている間に、此方も湯から上がって着替えを済ませ戻ってきていたらしい。髪を再度結い直し貰った小袖を身につけているその姿は、充分に温まったらしくほんのりと血色良く頬が赤らんでいた。
そのまま食事の準備に取り掛かろうかと袖が汚れないように折りながら、またちらりと相手へ視線を移す。先程声をかけた時には気づかなかったが、少しの違和感を抱いて着物へ目をやると、風呂まで駆け付けてくれた時の着物とは柄が変わっている事に気が付いた。どれも黒い着物故に大きな違いはないように思えるが、この着物も立派なもので、彼にはよく似合っていた。同時に自分の所為で着物が汚れてしまったことを思い返すと少しばかり申し訳なさそうにして。)

…さっきの着物。本当にごめんなさい。後で綺麗にしておくわ。あと、藤柄もよく似合うのね。

(買い出しでたくさん購入した油揚げの袋を2袋ほど手に取ると、野菜や調味料なんかも取り出して料理の準備を進めていく。)


  • No.156 by イナリ  2024-04-17 21:28:38 

(溜息を零した直後、声を掛けられると少しだけ驚き耳がピクリと動く。いつもならば大層に上から目線で米を炊いてやったなどと言うが、考え事をして米を焦がしたことに気まずさを感じてか、彼女の問いに「ああ」と小さく頷きながら返すだけだった。ちら、と彼女に視線をやると、風呂上がりだからだろうか頬が赤らんでいた。昼間は彼女に怒られてしまったが、やはり彼女は可愛い──イナリは心の中で呟く。女子の容姿を評価するのは不適切な気がしたが、それでもイナリはそう思っているのだから仕方がない。イナリは公では素直じゃない反面、心中では自分の感想には素直な妖だった。公言すると怒られるが、イナリからすれば彼女は可愛いのだ。)

……ん?気にするでない。着物の汚れなぞ術でどうとでもなる。
…知っておるか。藤の花の花言葉は「決して離れない」と言ってな。藤の成長は早く、ツルはあらゆるものに巻き付く。…あまり無防備だと気が付いたら逃げられなくなっておるかもしれんの

(暫く彼女の顔に視線をやっていたが、申し訳なさそうにする彼女に気が付くと首を横に振った。着物が汚れたことなど、これまで何回もあった。その都度、妖術を駆使して新品同然にしてきたから、無問題だ。しかし今回に限っては術で落とすのが憚られる。自分の手で落とすのが道理に合っていて、彼女にやらせるのは気が引けた。
自分の着物の柄を一瞥するとぽつりと呟くように言う。なぜ唐突にこのようなことを言い出したのか、自分でも分からない。ただ、この言葉は彼女を脅かしているようで、イナリが自身にも言い聞かせているような響きを含んでいた。何にも執着するな、と。)

  • No.157 by イナリ  2024-04-20 17:16:38 

(/上げです)

  • No.158 by 日向 静蘭  2024-04-20 18:53:05 


( 着物の汚れに関しては気にするなと言う彼に、申し訳なさは残りつつも他に食い下がることはせずに小さく頷きを返して。続く言葉には、夕食の準備をする手を止めることはなく視線もそのままに、考えているような間を挟んで口だけを動かした。)

──キツく巻かれると息苦しそうね。
でもね、藤の花の美しさを知ってしまったら、私、逃げられなくても平気だと思うの。
…それに植物は、私が傍に居続けても「気持ち悪い」なんて何も言わないから、きっと心地が良いわ。

(藤の花言葉に習った訳では無いが、“決して離れたくない”そう思ったことなら過去に1度だけあった。スマホのホーム画面に映っていたあの海辺を何度も一緒に歩いた思い出がちらりと脳裏に蘇る。複数人の後ろ姿は同じサークルの人達。そこに混ざっていた1人に告白されて、1年ほど付き合った。学生時代から人付き合いが苦手で浮いていた私にそんな縁なんかあるわけないと思っていたし驚いたけど、優しい笑顔を見せてくれる彼に惹かれて行って、私もそれなりに彼が喜んでくれるように努力した。
けれど、付き合って1年が経った時、私と付き合ったのは他のサークル仲間と賭けをして負けた『罰ゲーム』だったと聞かされ、そんな事に1ミリも気付かずに浮かれていた私に、彼は心底嫌悪するような顔でその言葉を吐き捨てて去っていった。
彼の優しさも私の滑稽な姿を引き出すためで、それを裏で笑われて馬鹿にされていたのかと思うと惨めで悔しくて、執着するのは格好悪い事だと学んだ。それと同時に、やはり、自分を本気で好いてくれる人など居ないのだと思った。だけれど、その分羨ましいと言う気持ちも大きくなった。逃げなくても良くて、諦めなくて良くて、自分の中にある愛を受け入れて貰えたらどんなに素敵な事だろうか。
そんなことを考えていると、包丁で野菜を刻みながら呟くようにして質問を投げかけた。)

……ねぇ、イナリ様。貴方は私に、ここに居て欲しいと思う?

  • No.159 by イナリ  2024-04-20 20:21:19 

(イナリには読心術の心得がある訳ではない。人の心ほど曖昧で複雑で恐ろしいものは無い。時には人間自身にも分からないのだから、中級妖怪のイナリには分かるはずも無い。それでもイナリは彼女の言葉を聞いて、誰かに裏切られた過去があるのではと推測した。根拠は薄弱、裏取りもない、全てイナリの主観で考えたことだが、そんな気がした。誰かに裏切られ、それがトラウマになってしまったのでは無いか。だから愛が欲しいと願ったのでは無いか。だとしたら悲しい程に不幸な人間だった。そう考えると、益々彼女を放っておけなくなる。この女子がせめて自分の魅力や利点に気付き、自己を肯定する能力を得るまで、この手に置いておかなくてはならない。そんな使命感にも似た感覚に駆られた。だがイナリは分かっていなかった。使命感とは裏腹に彼女に執着したいという昏い感情が育ち始めているのを。
彼女からの問い掛けに暫時、中空を仰いで思案する。この問い掛けは恐ろしく慎重にならなくてはならない。中途半端なことを言えば、聡い彼女に見抜かれ、信を喪うであろう。しかし本心を吐露しても、それを嫌悪されてしなうやもしれぬ。堂々巡っていく思考に陥る。沈黙が続き、恐らく一分は経つであろうという寸前、どうせ信を喪うのであれば本心を伝えるべきかと決心し、大いなる羞恥心を隠しながら彼女の方に向き直る)

…お主を置いておくか否かを決めるは我次第。その判断基準は、お主が己を好くことができるようになるまでじゃ。己を愛すれば、嫌なことも忘れられる。
それまではここに居ると良い…いや、居て欲し…い……

  • No.160 by 日向 静蘭  2024-04-21 09:39:00 


(流れる沈黙に意地悪な事を言ってしまっただろうかと考える。質問を訂正しようと口を開きかけたが、彼がそれよりほんの少し先に口を開いた。
“己を好くことが出来るようになるまで”その言葉を聞いて、動かしていた手を止めて相手の顔を見る。彼の中でそのような基準があったなんて知らなかったし、彼は、自分に自信がないこんな私を気にかけていてくれたのだろうか。
正直に言うと、自分を愛するなんてどうしていいのか分からないし、それがいつ達成されるかなんて分からない。もしかしたら達成することなくこの命が尽きるかもしれない。
どちらにせよ、達成したならまた厳しい社会の中に放り出されてしまうと思えば、彼は酷く、厳しくて寂しい事を言っていると思う。しかし、それと同時になんとも言えない嬉しさがあった。
いつも尊大な言い方をする彼が、“居てほしい”と此方に願うような言い方をするものだから、思わず2.3度瞬きを繰り返してしまった。言い慣れていないものだから少しばかり歯切れが悪いのもまた愛しいと感じてしまう。)

……ふふ、分かったわ。それまで、ここにいてあげる。イナリ様は私の料理が好きみたいだし。

…私、自分を好きになる努力をするわ。約束よ。

(ふわりと柔らかな笑顔を浮かべると、彼の真似をしているのか少し恩着せがましい言い方をしつつ、料理をしていた手を洗い綺麗な布で水を拭き取ると、“約束”の言葉で右手の小指を差し出した。)

  • No.161 by イナリ  2024-04-21 12:35:21 

嗚呼…約束するが良い。
偽りだったら術で二度と口を聞けなくする

(言葉の途中で羞恥心が顔を覗き、最後で歯切れが悪くなってしまったことを後悔していると、自分の真似をしたような口調で彼女が小指を差し出してきた。一瞬困惑したが、すぐに指切りだと理解すると、彼女の物言いに少し口角を上げながら、自身も小指を差し出し指切りをする。人間と指切りなんて何百年もしていない。最後にしたのはいつだったか、なんて思い出せない。誰かから願いを乞われ、それを実行してやることはあったが、それは約束とは言えない一方的なものだった。対等な立場で互いに約束をしたのは、彼女が初めてかもしれない。
とは言え、イナリに具体的なプランはなかった。何をすれば、どう接してやれば彼女が自分を好きになれるのか。言い出したのはイナリだから、主導する義務がある。このままではイナリの方が二度と口を聞けなくなってしまう。とりあえず褒めれば良いのか? 我ながら浅い考えだとは痛感しているが、彼女を褒めて様子見をしてみることにする)

…お主は…誠に料理が上手いのじゃな。我は古今東西の一級品や珍味なぞはあらかた食ったが…お主の料理の足元にも及ばぬ。何故じゃ?

  • No.162 by 日向 静蘭  2024-04-21 15:45:13 


(口を聞けなくする、という言葉には「それは困るわ」と片手を口元に添えながら小さく笑って。指切りを済ませるとまた自身の手元へと視線を戻して食事作りを再開する。味噌汁に野菜の和え物、そして中を開いた油揚げには細かく切った野菜や魚のほぐし身を入れ、甘辛いタレに染み込ませておく。
ふと、彼に料理のことを褒められると、首を傾げて「知らないわ」と言うように首を横に振った。彼が此方に気を使って褒めてくれていると言うのに、パッとその事に気付けずにとりあえず礼は伝えるが、相変わらず冷めきったような事を言ってしまう。)

そう?ありがとう…。でも、何故と言われても…、貴方の口に合うだけじゃないかしら。高かったり珍しかったら美味しいという訳でもないでしょうし。

(暫くタレに付けていた油揚げに今度は火を通そうと焼き始めるが、そうしている内に、あ、と顔を上げて、今度は「ごめんなさい」と謝罪の言葉を口にした。相手が自分のために言葉を選んでくれていることにやっと気付いたようで、それでいてその心意気を自分が無下にする態度をとった事にも気が付いたらしい。まぁ、それもあくまで約束を守るためであり、イナリの本心にまでは気が付いていないが。)

…もしかして、今の質問じゃなくて、私の料理を褒めようとしてくれていたの?

  • No.163 by イナリ  2024-04-22 18:30:48 

そ、そうか。口に合っているだけか。うん…。それもそうじゃな

(彼女が自分の意図したものとは別の解釈すると、無念そうな表情を懸命に隠しながら小さく何度も頷く。聞き方が悪かったのだと自分に言い聞かせる。彼女はイナリが思っているよりも難しい人間かもしれない。一体どうすれば彼女に気付かせられるのか。当分はこれがイナリの課題だと思っていた矢先、小さく声を上げた彼女の方を何事かという風に見ると、今度は謝罪をされ益々困惑する。怪訝そうに「なんじゃ?」と尋ねると、どうやら自分の意図に気付いたらしかった。自分で質問したはずだが、改めて彼女から意図を晒されると最前より抱いていた羞恥心が一層増す。同時に自己嫌悪に陥る。"お主の料理の方が遥かに美味い"とストレートに言えば良かった。少なくともそれは、イナリの偽らざる本音なのだから)

…難しいものじゃな。
…人を褒めたことが無い故、不慣れなのは許せ。…お主の料理の方が美味いというのは真じゃ。

(皿を用意しながらぽつりと呟く。妖として生を受けてイナリが素直だったのは幼少の時しかない。成長と共に自尊心が膨れ上がり、尊大な物言いを繰り返す中でいつしか"素直"という状態を忘れてしまっていた。妖術だけでなく、こういうコミュニケーション術も学んでおくべきだったと今激しく後悔している)

  • No.164 by 日向 静蘭  2024-04-22 19:01:48 

(彼が用意してくれた皿を受け取り料理をよそう準備をしていると、ぽつりと呟かれた言葉に動きを止めて瞬きを数回繰り返す。小さく笑うと、手に持っていた皿や菜箸を一度置き彼へと向き合い背伸びをして、彼の頭に優しく自身の手を乗せると、まるで小さい子をあやす様に撫でてみて。)

…ふふ、ありがとう。『美味しい』って言ってくれるだけで、こう見えてとても喜んでいるのよ?
私は褒められ慣れていないから、疎いし、上手く反応出来なかったりするけれど、ごめんなさいね。

(上記を述べるとゆっくりと手を離し、食事の準備を終わらせようとまた食器や鍋と向き合うべく身体の向きを戻そうとする。
彼が自分の事を褒めようとしてくれているのは素直に嬉しいし、ましてや人を褒めたことが無いという彼が一生懸命それを行おうとしている姿は愛しいものだ。彼はなんだか申し訳なさそうに言ったけれど、自分だって褒めるのは上手くないし、褒められたからと言って可愛らしい反応ができるわけでもない。
もしかしたら、これまでも素直に褒めてくれていたのに、自分の受け取り方が悪くひねくれた返ししかしていなかったかもしれない。そう思うとなんとなくやるせない気持ちになる。自分も素直に正直に生きているつもりなのだが、この世はどうも正直すぎても生きづらい。)

  • No.165 by イナリ  2024-04-23 18:48:45 

……褒められ慣れていないのに、斯様に不敬なことは出来るのだな。

(彼女の手が頭に乗せられるとビクッとするが、やがて撫でられると耳がぺたりと垂れそうになる。彼女の撫で方は実に心地よく、まるで稚児のようになってしまいたくなる感覚に襲われる。一瞬だけ安心したように目を細めるも、すぐにキリッとした目付きになり、嫌味のように上記を言う。イナリの両親は既に物故しているが、彼女の表情は母親と重なるところがある。先程の彼女の撫で方もそうだが、表情も。だからつい気を抜きそうになる。今にでも幼い頃に回帰してしまいたくなる。だがそれはイナリの沽券に関わるので決して叶わぬ願いだが。
彼女の手が離れていくと少しばかりの寂しさに気づかないフリをしながら、食事の準備に勤しむ彼女の背を見つめる。傍から見れば夫婦か何かだ。実際はそんな単純な関係では表せない程、面妖な関係なのだが。ふと、これを彼女に伝えたらどんな顔をするのか気になった。無表情か照れるのか。思い付いたらやってみたくなるのがイナリの性質だったが、そのまま伝えると顰蹙を買いそうなので、少し言い回しを変えて伝えてみる)

お主はいい母になるやもしれんの。

  • No.166 by イナリ  2024-04-27 18:00:09 

(/上げです)

  • No.167 by 日向 静蘭  2024-04-28 00:37:09 


あら、不敬な事をするのは慣れてるもの。

(嫌味を言う相手対し、肩を竦めて揶揄うような笑みを零すと上記を返す。実際、彼と出会ってから既に何度も不敬なことをしてしまっているし嘘ではない。頭を撫でられるのがそんなに嫌だったのかしら、と思考するが、先程の様子を思い返しても本気で怒っている訳では無い、と思う。
2人分の食事の準備を終え、配膳をしようと盆を両手で持ち上げた時、いい母になる、との言葉を受けて一瞬動きが止まる。料理が作れるからか、はたまた別の理由があるのか、彼がそう言った経緯を詳しくは知らないが、良い意味で言ってくれたことぐらいは分かる。だが、母親との良い思い出があまりない故にいい母親になる自分自身を想像するのは難しかった。)

…いい母親ってどんなものか分からないけれど、でも、まぁ、そうね。なれたら、嬉しいかもしれないわ。

(ただ、想像はできなくても、そうなりたいと感じる。その気持ちをそのまま伝えると、柔らかく口角を上げて少し照れくさそうにして。それでいて「──もし、私に旦那と子供ができたら、ここへお参りにでも来ようかしら。」なんて、それこそ今は想像できないが、有り得るかもしれない未来をただ、何となく口にして。)

  • No.168 by イナリ  2024-04-28 14:02:59 

(意外に素直な反応にぴくりと眉を動かす。別に素直な反応だったから悪い訳では無い。ただ、もっと素っ気ない反応をされるかと思っていた。良き母親が分からない、というのは同感だった。尋ねておいて何だが、イナリ自身も良い母親がどのようなものかよく分かっていなかった。イナリの母親は別に難がある訳ではなかったが、他者の母に興味を示したことがないため、比較してのデータがない。だからイナリの母が誰かと比較して良い母親なのか否かが分からない。さて、彼女の母親はどんな人なのだろう。
そんなことを考えていると彼女の何気ない一言に、用意していた箸を落としかける。一先ずは箸を置いて、その様子を想像してみる。ここを出た彼女が久方ぶりに戻ってきたと思ったら、見知らぬ男と子と歩いてくる。別に彼女はイナリの何でもないのに、些かの嫉妬と心の痛みを覚える。少しばかりの不快感と共に溜息を吐き出すと、取り繕いながら彼女を揶揄う)

その時が来れば、我がもてなしてやろうぞ。
…或いはお主の子だけ隠してしまおうかのう…

  • No.169 by 日向 静蘭  2024-04-28 21:27:05 

(ほんの一瞬、視界の端に見えた彼が動揺したように見えた。単に箸を落としそうになっただけかもしれないし、関係ないかもしれないけれど。もし、ほんの一瞬歪めた顔が私のせいならば、ずるいわ。と胸の中で呟いた。
自分で何となく想像して口走った事であったが、其れは自分自身にとっても違和感しか無くて。出来るならばこの先も隣にてくれるのは彼がいい、なんて、胸の奥で考えてしまった。そんなこと彼自身はきっと望んでいないし、口にするつもりも無いけれど。傍に居てくれるのだって、自分自身を愛せるようになるまでと言っていたはず、なのに…そんな反応をするなんて、ずるい。
思考がぐるぐると回っている時、彼が此方を揶揄うように言葉を返すものだから、つい、真っ直ぐ瞳を見つめて言ってしまう。)

…一度社を出たら。もう、私を連れて行ってはくれないの?

(言い終えて一間して、ハッと視線を逸らすと「なんてね」と惚けるように付け加え、そそくさと逃げるように食器を運んでいく。段々と、無自覚だった気持ちの蓋が少しずつズレていく気がして、なんだかソワソワしてしまう。
期待はしたくない。勝手に期待して裏切られた時、また自分自身に失望してしまうから。そんなことをしたらまた自分を愛せなくなるから。
1度でいいから“愛”がほしい。いつか願った其れは今でも変わらないけれど、彼からの愛は、あの時の抱擁で十分。自分自身を愛せるようにと言ってくれた彼を、これ以上我儘で邪な気持ちを持って困らせたくはない。
大きくズレて中身が溢れてしまわないように必死に気持ちの蓋を押さえ、深く深呼吸をして食事の用意を終わらせる。)

さぁ、冷める前に食べてしまいましょう。

  • No.170 by 日向 静蘭  2024-04-29 17:19:25 

(/上げです)

  • No.171 by イナリ  2024-04-29 17:47:28 

(彼女からの一言に今度こそ動揺を隠せず、「は…?」と声を漏らしてしまった。慌てて咳払いをして、目の前に配膳された食事に目を合わせる。もう私を連れて行ってくれないのか。そんな真っ直ぐな瞳で訊ねられたら、思わず"そんなことは無い"と言ってしまいたくなる。だが言える訳ない。何故ならイナリは彼女を自分自身を愛せるまでという条件の元、ここに置いているのだから。それを破ってしまえばイナリは願いを叶える社の主として失格だ。何より、我が物にしたいという理由で彼女を置いておくのは、あまりに身勝手だ。そこまで考えてようやく分かった。自分はこの女子を我が物にしたい──そう思っているのだ。何百年と生きてきて初めて芽生えた感情だった。つまりそれはイナリがこの女子に恋を──そこまで考えて慌てて思考に蓋をする。莫迦なことを。こういうことは結論ありきで考えてはならないのだ。慎重に考えるべきことなのだ。イナリは大変に臆病者だった。そして単純だった。一度蓋をすると決めたら、容易には開かない。だから彼女が食べようと言うと大きく頷く)

……美味い!

(油揚げに箸を付けると1口大に切って咀嚼する。嚥下すると目を輝かせながら叫ぶように言う。ピコピコと嬉しそうに左右に振る尻尾から見ても分かる通り、先程の思考や動揺はすっかり雲散霧消してしまった)

  • No.172 by 日向 静蘭  2024-04-29 18:23:24 


(早速油揚げを口にし目を輝かせる相手をみて、「それは良かったわ」と小さく微笑んだ。先程までの考えを払拭して箸を取れば、此方も手を合わせてから食事に手をつける。野菜や魚を油揚げで包む料理なんて正直作ったことは無かったのだが、これは確かに我ながら美味しくできたと思う。
片手を口元に添えながら咀嚼を行いそれを飲み込むと、今度はこれまた油揚げの入った味噌汁に口をつけ、温かな味噌の風味にほっと一息をつく。ちらりと目前の相手を見ると、その尻尾が嬉しそうに揺られていて、これまた安心する。)

……1つ気になったのだけれど、妖同士の交流ってやつはあるの?…ほら、社って他にも幾つかあるでしょう?そこにも誰かいるのかしら。

(暫く食事が進んだ頃、ふと、気になったことをそのまま尋ねてみる。この社には彼が居るように、人間に気付かれて居ないだけで他の妖もたくさんいるのだろうか。もし居るのなら、彼らは面識があったりするのだろうか。街にも出れると言うのなら、ふとした時に同種と出会うこともあるのでは…なんて、書物の読みすぎだろうか?)

  • No.173 by イナリ  2024-04-29 21:55:17 

やはりお主の料理は美味じゃ! 我は最早、これ以外は食えぬな

(まるで子供のように夢中で食べると味噌汁を啜りながら大仰に言う。仕草こそ大袈裟だが、言葉は偽らざる本音で。人間の手料理を口にしたことが無い訳では無い。今までが不味すぎたということもない。ただ彼女の料理は、一級品ばかりの豪華絢爛な料理をも凌駕するものがあった。味付けなのか、イナリの味蕾が変化したのかは分からない。ただ彼女の料理はいつもイナリを酷く感動させる)

む…?
ふん…。昔はようおった。社だけでなくどこにでも妖がおった。それが時代の流れと共に多くが没落し、今この辺りでは数える程度しかおらぬ。
…ここより西に荒れ果てた社がある。そこに狸が棲んでおる。無礼千万で礼儀のれの字もなき妖よ。万が一来ても相手にするでないぞ

(味噌汁を啜りながら眉間に深い皺を作る。それはかつてイナリを「変化バカ」と罵って笑い者にした妖だった。イナリと同じ時を生きている妖で、向こうはイナリが好き──揶揄いの対象として──だが、イナリは大の苦手だった。折角の食事で悪友の存在を回想すると、ゾワッと尻尾と耳が逆立つ。悪友の回想を打ち消すように首を振ると、味噌汁を一気に飲み下す)

  • No.174 by イナリ  2024-05-01 17:31:19 

(/上げです)

  • No.175 by イナリ  2024-05-05 11:20:08 

(/上げです!)

  • No.176 by 日向 静蘭  2024-05-07 20:48:45 

(味噌汁を啜る相手に“大袈裟すぎだわ”と呆れたように言うが、その口元は少し綻んでいて、やはり褒められるというのは擽ったい気持ちになるものの嬉しいもので。
再度黙々と箸を動かしていると、相手の口が開いたところで一度動きを止め、味噌汁をこくりと飲んだ。)

そう…。やっぱり減っているのね。
……西の社?もしかしたら、前に行ってたことがあるかもしれないわ、柱に彫られた狸の紋章を見た気がするもの。

(妖の数が減っていると話す相手には小さく相槌を打ちつつ、続けて聞こえてきた社や狸の話には幾つかの心当たりを探る。嫌なことがあったり悩みがあると度々神社を訪ねていた頃があった、その時に行っていたのが確か西の社だった気がするのだが──おまけに、前に彼へ“狸寝入り”という言葉を使った際に嫌悪感を示していたけれど、この狸様の事かしら──なんて考える。
何はともあれ、彼は狸の事を毛嫌っているような口ぶりをするけれど、きっと喧嘩するほどなんとやら、なのだろうかとも思う。実際口にすると確実に否定されるので言わないが。)




(/遅くなりました;)

  • No.177 by イナリ  2024-05-08 19:24:21 

何?! …ケホッケホッ……お主、行ったのか。彼奴の社に。なにか変なことは起こらんかったか。人ならざる者に話し掛けられんかったか。

(彼女から狸のことを聞くと驚きのあまり、飲んでいた味噌汁が気管に入り噎せる。噎せが治まると不機嫌そうに問い掛ける。不機嫌な理由は二つあった。彼女の手料理を堪能している時に悪友の話題が出たこと。もう一つは彼女が自分の社より先に悪友の社を訪ねていたこと。身体が酷く緊張する。あの妖とイナリで馬が合わない絶対的な理由があった。それは人間に対する扱いの差であった。イナリは人間を弱者としながらも、その存在に興味があり共存指向だ。対して悪友は人間を弱者として見下し、徹底的な上下関係を敷きたがる支配指向なのだ。どちらが優れているということは無い。妖の中にも様々な価値観が存在するため、イナリはそれを大した問題だと考えていなかった。しかし悪友は支配指向を持つ中で些か暴力的なところがあった。子狸時代に体得したばかりの変化術を用いて、釜に変化して道行く人々を驚かせて遊んでいたことがあった。そんな折、本物の釜と勘違いした人間に対する拾われ、火に掛けられたり、床に落とされたり散々な目に遭ったのだ。以来、悪友は人間を嫌うようになったのだが、幼少の頃の恨みか、人間に対して暴力的になることがあった。彼女が何かされなかったか、不安が胸中に広がる。彼女の回答を待っている間、不安と緊張を湛えた鋭い目はじっと彼女を捉えたままだった)

(/大丈夫です!)

  • No.178 by 日向 静蘭  2024-05-09 19:29:09 


…別に、何も無かったわ。妖と話したのも貴方が始めてだし…。それに、散歩がてらに少し寄って気分転換していただけだもの。

( 突然噎せ返る相手に此方も驚き、慌てて「大丈夫?」と顔を覗き込む。そして、不機嫌そうに質問をされると、少しばかり首を捻って記憶を辿るが、西の社で誰かに話しかけられたり不思議な体験をした事は無かったように思う。大体仕事終わりにふらりと立ち寄って直ぐに帰路についていたし、こんな人間の事なんて、万が一狸様が見ていたとしても気に留めはしないだろう。
彼が何故、切迫したように質問してきたのかその理由は分からないが、とにかく、心配されるような事は無かったともう一度首を横に振り、残り僅かな白米を口に運んで咀嚼する。)

そもそも、本当にその社かどうか分からないわよ。私の見当違いかもしれないし…。

(だから、大丈夫よ。と鋭く視線を送る相手に言葉をかけると、空になった食器を前に手を合わせ、箸を置く。
相手の様子から察するに、あまり狸の話題を出さない方が良いかもしれないなぁなんて考える。事を知らない自分としては少しばかり会ってみたい気持ちがあるのだが、それも断じて言うまいと胸の中に仕舞っておいて。)

  • No.179 by イナリ  2024-05-11 17:01:46 

…この辺りに狸の紋様が彫られた社なぞ、彼奴しか考えられぬ。
…じゃが何も無いのであれば良い

(何も無いと彼女から告げられるとまずは深く息を吐き、身体の緊張を解く。鋭かった目付きも普段通りになり、安心感からか少しだけ表情が緩む。たまたま眠っていて彼女の存在に気が付かなかったのだろうか。それとも彼女に構う気分でもなくて無視していたのか。いずれにしても悪友の暇潰しのための餌食になっていなければ理由なんてどうでも良い。緊張していたのはほんの数分だけだった筈だが、その間全く微動だにしなかったので身体を動かしたくてたまらなくなる。「我が片付ける」と言って立ち上がると双方の空の食器を下げ、水場で洗い始める。普段ならば妖術で汚れを取ってしまうのだが、今はただとにかく身体を動かしたかった。それに作業に没頭すれば余計なことを考えずに済む。が、食器洗いなど数分もすれば完了してしまい、まだ悪友のことを考えてしまう。
俄に棚から二人分の盃を取り出すと"付いて参れ"とでも言うかのように彼女を一瞥したあと本殿へと向かう。木箱の中から瓢箪を取り出す)

彼奴のことは、これで忘れる。
…お主もどうじゃ。

  • No.180 by 日向 静蘭  2024-05-12 22:02:34 


( 少しばかり表情が解れた相手を見て安堵すると、食器を片付けようと片膝をつき立ち上がろうとする。しかし、それよりも前に食器を下げられると「ありがとう」と呆気に取られながらも礼を述べる。大人しく食器洗いを任せると、布巾で台拭きを済ませて調味料など後片付けをする為に洗い場にいる彼と並んで手を動かした。てっきり妖術で済ませてしまうのかと思った故に、手作業で洗い物をしている姿がなんだか物珍しくてちらりと様子を伺ってしまう。暫くして洗い物を終えた彼は未だ考え事をしているようで、不味い話題を振ってしまったなと尚も反省しつつ、どうしたものかと人知れず首を傾げた。
丁度此方も後片付けが終わった頃、盃を手にした彼と目が合うと、それに含まれた意図を察してか黙って後ろをついて行く。本殿に着くや否や取り出された瓢箪を見ると、盃との組み合わせにこれまた察して。)

…あら、いいの?なんだか申し訳ないけれど
……まぁ、折角だし頂こうかしら。

(晩酌などをする趣味は無く、飲み歩いたりすることもほとんど無かったため飲酒をするのは久しぶりだ。おまけに彼が木箱に入れて大切に保管していた酒を貰うのは些か気が引けたが、折角の誘いを断るのも違う気がして、結局は頷いて盃を1つ受け取った。)

  • No.181 by イナリ  2024-05-13 17:52:09 

質は良いが、さして高級な酒でもない。もう一本ある故、遠慮せずに飲むが良い。

(何だか遠慮がちに見えたので一言言っておく。以前見た本に無理やり飲酒を勧めるのは「あるこーるはらすめんと」になるらしい。いまいち意味は分からなかったが、何やら物騒な響きなので、きっと酷いことなのだろうか。繧繝縁に座り、瓢箪の蓋を開けると自分と相手の盃に酒を並々注ぐ。そしてそれを一気に呷る。そしてまた盃に酒を並々注ぐ。イナリは酒が好きで古今東西の地酒を飲んできたが、今飲んでいるもののように質の良い酒でも機嫌次第で悪酔いしてしまうことがあった。特に今日のように不機嫌で飲み始めた酒は必ず悪酔いする。だが今目の前には彼女がいる。何とか理性を保たなくてはならない。暫くは特に話すことも無く酒を呷っていたが、ふと彼女の経歴について疑問が浮かび口にする。口にして良いものか否か迷うことは一切なかった。とにかく彼女のことが知りたかった)

…そういえばお主は教師をしていたな。何を教えておった?

  • No.182 by 日向 静蘭  2024-05-13 18:53:03 


(相手からの言葉には“それならば”というように肩を竦め、相手と向き合うように腰を下ろせば、並々注がれる酒を眺め、彼が呷るのを見届けて此方も一口酒を含んだ。久しぶりのアルコールに喉が熱くなるのを感じるが、良質なだけあってとても美味しかった。決して酒に強いわけでは無い為、飲む量には気を付けようと思いつつも、その飲みやすさについつい盃を傾けてしまう。
ほんのりと頬が赤くなってきた頃、彼から投げ掛けられた質問に、あぁ、と小さく声を漏らした。)

…そういえば、言ってなかったかしら。
私は、国語の教師だったから国語を教えていたわ。
古典が好きで、神社とか趣のある物が好きになったの。
それに言葉って、深くて難しくて、美しいから好き。…まぁ、私自身、あまり良い言葉をかけられた事はないし、良いことを言えるタイプでもないけれど。

( 上記を告げると盃に残った酒を飲み干して、小さく笑いながら視線を伏せた。文面や言葉から相手の心理を探り知るのは、難しいが面白さもある。昔と今とでは言葉の使い方も言葉自体も変わっているが、その違いを知るのもまた面白かった。しかし、皮肉なもので、現実ではそう簡単に相手の心理は分からない。言葉に騙され、言葉に翻弄されてばかりだ。だけれど、教科書に綴られた様々な物語に触れてその情景に耽っていると、少なくとも自分の乏しい人生からは目を背けられた。
少しばかり酔いが回ってきているからか、普段よりもさらに舌が回るようでそのまま言葉を続ける。)

生徒たちには“言葉は大事”って教えるのに、私は思ったことをそのまま口に出して反感を買うばかり…おまけに肝心な事はなかなか言えないの。

  • No.183 by イナリ  2024-05-14 17:30:23 

ふん…。言葉上手でなければ教育者になれんわけでもなし。
それに、思ったことを口に出して何が悪いのじゃ?

(国語教師で古典に関心があるならば、なるほど彼女が社務所の史料に興味が惹かれた理由も分かる。もっと早く聞いていれば、それなりに吟味して選んだというのに。
空になった彼女の杯に酒を注ぎながら、上記を鼻で笑いながら述べる。心と思考が一致しないのは人間ばかりでなくイナリたち妖も同じだった。特にイナリは妖の中でも口下手な方だった。だから彼女の言っていることは理解できる。自分も思ったことを口にして怒られたことが幾度となくあるからだ。しかしそれを欠点だと思ったことは無い。むしろ思っていることを口にしたことで腹を割って話せたこともある。
過去と現在では言葉も人間の在り方も規範も変わるのかもしれないが、現代人にとって思ったことを言うことは悪しきことなのだろうか。そう考えると無性に腹が立ってきた。彼女の言葉を聞き入れず、彼女が誠を尽くしても揶揄いの対象とした教え子達に。)

  • No.184 by 日向 静蘭  2024-05-14 18:41:25 


…そうね、決して悪いことではないけれど。
使い方によって言葉は凶器に成りうるでしょう?でも、言葉を選ぶのは簡単じゃないわ…面倒くさいなら黙っていた方が楽なのも事実だし。

(注がれた酒の揺らめく水面に視線を落としながら、相手の言葉に返すように上記を述べる。“言葉は刃”という比喩があるように、自分が発した言葉で他人が傷つくこともよくある。思ったことを口に出すことで良い結果が生まれることも勿論多い。だが、自分自身、言葉に傷付けられた経験が多い為、同じように人を傷付けるのは怖かった。
盃を見つめていた視線を外し、またも1口酒を飲むとため息混じりに言葉を続けた。)

……私は、私のせいで誰かを困らせたくないの。
…例えば、私に「好き」だと言われて、喜ぶ人なんていないわよね、とか。そんな消極的なことばかり考えて、言えないの。だって、「嫌い」だと返されたら、きっと立ち直れないわ。

(まるで誰かを想っているかのようにぽつりぽつりと零すように言葉を吐き出すと、もう一口盃に口を付ける。目の前にいる彼へちらりと視線を向けると一間じっと見つめた挙句に「…私は意気地無しなのよ」なんて告げて肩を竦めた。)

  • No.185 by イナリ  2024-05-14 20:08:56 

……言葉は凶器。その通りじゃ。しかしそれが高じるあまり、言いたいことも言うべきことも言えぬは不健全。
それにお主を好いてくれる者も必ずおる。…お主の着物姿、美しい故な…。

(きっとこの女子は傷ついてばかり来たのだろう。言葉で癒される経験をあまりしてこなかったのだろう。時折こうして彼女の口から勝たられる過去に思いを馳せると、胸が痛くなってくる。何故かは分からない。自分にも思い当たることはあるからだろうか。否、彼女と比較して寿命が圧倒的に長いイナリにはまだ救いがある。人の何倍も生きているので、言葉で癒される経験も多くしてきた。だが人間は寿命があまりに短い。その一生では傷付く機会の方が多いのだろう。特に荒んだ今の世では。
盃の酒をまた一気に飲み干すと、また並々酒を注ぐ。その間、彼女の言葉を耳で聞いていたが、視線は酒に向けられていた。だから彼女に向けられた視線に気付くことは無かった。酒を一口飲むと再び口を開く。酔いが回ってきたのか、先程の教え子に対する不機嫌もあって、やや語気が強くなる。しかし彼女の容姿に言及した時だけは、言いにくそうに、それでも弱々しく言う。はっきり言うべきことは言えと講釈をした後に、これでは説得力も何も無いが、そんなことを考える余裕を酒が奪っていく)

  • No.186 by 日向 静蘭  2024-05-14 20:46:15 


……確かに、本当に不憫な世の中よね。

(彼の言う通り、自分こそまさに不憫な世の中に縛られて、言いたいことも言うべきことも避けてきていたのかもしれない。変わりたいとは思っていてもそう簡単に変わらないのが人間の性であるが、それでも、変われたらいいな と思えるようになってきただけ此方としては大きな進歩だ。この社に来て、少しだけ自分の事に対して客観的に、そして余裕を持って考えることが出来ているように思う。それはきっと、彼がこうして話し相手をしてくれて、弱々しくも自分のことを褒めてくれるから。
励ましとお褒めの言葉を受け取ると、数回瞬きを繰り返した後、ふふ、と楽しげに「ありがとう」と言った。普段は見せないあどけた表情を見せたのは、おそらくいつの間にか空になっていた盃の所為。酒に酔っても気持ち悪さはなく、ふわふわと夢見心地で、だんだんと襲ってくる睡魔に抗いながらも欠伸を1つ。
そして、目を細めて相手のほうへ片腕を伸ばすと、ぽんぽんとその頭に手を乗せてぼんやりとした思考の中でボソリと呟いた。)

…イナリ様が、私を好きになってくれたらいいのに 。

  • No.187 by イナリ  2024-05-15 20:24:13 

(盃の酒が空となり、もう一杯と手を伸ばした時だった。彼女の手が頭に乗せられた。ギョッとして彼女に目を遣ると、その顔は夢でも見ているかのように心地良さそうな顔。先程注いだばかりの盃が自分と同じく空になっているのを見れば、意外と酒のスピードが速い彼女に驚く。いつものように"気安く触るとは不敬だ"と言い放とうとした時、彼女の一言で一気に酔いが覚めた)

な、な、な…お主……。

(とても冗談のようには聞こえない言葉に思わず持っていた盃を落としてしまう。酒に酔った勢いで言っているだけで単なる戯言なのか、それとも本音が酒のせいで表出したのか。この女子の真意が分からず、ひたすらに困惑する。もしも、これが本音ならば。自分はなんと返事すれば良いのか。決まっている。彼女の言葉を諾えば良いだけだ。ずっと気付かないフリをしてきたが、イナリは彼女が好きだ。初めてここに訪れた時こそ不信を抱いたが、今では彼女のことばかり考えている。それは初めての経験だった。妻でさえ好意なく迎えたイナリが、初めて自らの意思で人間を好いている。いっその事、本心を伝えてしまおうか──一瞬だけそんなことを考えた。ダメだ。自分は彼女に自己を肯定できるまで、ここに置くという建前で彼女を受け入れている。それを反故にしてしまっては自分の立つ瀬がない)

…なんだ。何か言うたか。
……全く我に触れるとは不敬じゃ。

(言いたいことを言えと彼女に言っておきながら、自分は彼女の言葉を聞こえないフリをした。今日ほど自分の臆病さが憎かったことは無い。情けなくて、申し訳なくて、憎くて。様々な感情入り交じった震え声で頭の上に乗せられた彼女の手を、ぐっと掴む)

  • No.188 by 日向 静蘭  2024-05-15 21:20:31 


………、いいえ。何でもないわ。ちょっとした願い事よ。

( ゆっくりと首を振って、何ともないように小さく笑いながら上記を返す。しかし、その顔は少し寂しそうにも見えて、また1つ何かを諦めたような顔にも見えた。というのも、確かに酔いが回って睡魔に襲われてはいるが、自分が何を言っているのかぐらいはちゃんと分かっている。いつもよりも随分早いペースで飲んだものだからまだ酔いが回り切っていないのか、どちらにせよ未だに理性は働いているらしく、ぐいと掴まれた手に視線を移しながら続けて「ごめんなさい、つい」と毎回の如く肩を竦めて謝罪した。
彼の声が少しばかり震えていたのは何故だろう。盃を零してしまったのは何故だろう。彼は、本当に聞こえなかったのだろうか──と、ぼんやりとした頭の中で考えるが、あれこれ憶測するだけ不安になるし悲しくなる。だから、彼が盃を零したのもきっと不意に頭を撫でた所為だし、声が震えていたのもきっと気の所為、酒の力を借りて口に出た願いもきっと、気の所為。そう思うことにして、ゆっくりゆっくりと立ち上がり、掴まれた手を解放しようとする。)

…ごめんなさい。久しぶりに飲みすぎたみたい…、酔いが回り切る前に少し夜風に当たって来ても良いかしら…?

  • No.189 by イナリ  2024-05-16 17:55:16 

あ、ああ。行ってくるが良い。
…いや、我も行こう。些か暑くなった。

(彼女の反応を受けて再び後悔する。酒の勢いで言っている訳ではなかった。まだ彼女には理性がある。そんな理性の隙間から出た偽らざる本音。それを自分は聞こえないフリをしてしまった。彼女が自分の愚行に気づいているのだろうか。彼女のことだから気の所為とかで済ませてしまうのだろう。いっその事、イナリの愚行を見抜いて、その上で罵倒してくれた方が救いがある。
彼女が夜風に当たると言い出すと一度は掴んでいた手を離す。しかし慣れない酒を飲んだ彼女に何かあっては困ると思い立ち、同行を言い出す。何かあっては困る。実際のところはそんなものは言い訳だった。実際は少しでも罪悪感から逃れたかったから。どこまでも手前勝手な理由付けに我ながら呆れてしまい、僅かに口角が上がる。一度離した手を再び掴むと、彼女を支えながら本殿から外へと出る。イナリは彼女以上に飲んでいて、しかも酒に強い訳では無い。にも関わらず普段と違わず乱れることなく歩けるのは、先程の彼女の"独り言"を聞いてしまったからだろう。外へと出て適度に吹く風に当たっていると、心が晴れそうな気がする)

…今宵は何故か飲んでも酔えん。

  • No.190 by イナリ  2024-05-18 18:30:27 

(/上げです)

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