201号室（ 〆 ）

当然でしょ、あんたがくれたのだから…まァ此方のとは違う意味合いだろうけど。……、お返し所か断りを入れた筈だよ、僕は（　携帯片手に呟く相手に不適な面構変えず言ってのけ、だが其の顔が笑みシーツ叩き誘われては声失くし。表情も徐々に不服気に歪み、佇んだ儘注がれる視線も加わり掻き乱れる心情の現れの様に雑に拭き終えた髪を手櫛で直し、タオルも手に持った所で低く零すと傍に行くのを渋り　)

シャツの下にそんなん隠してバリバリ遣り手やってんのって唆るよな、って意味合いならおんなじよ。で、その断り"は"ちゃんと飲みました──…春彦さんより大事な訳、その来れない理由って奴は。（ 不敵な表情が崩れるのに乗じて下世話な言い分と屁理屈を並べ。昨夜と似た様子の相手を暫し見つめるも動く様子が無いと分かり、歩み寄るか逡巡した後にゆっくりとベッドへ倒れ込み。白々しく寂しげな声を上げつつ両腕は尚も誘うように緩く広げ、問いと視線だけ相手に投げかけ ）

まァ確かに。僕自身だから思わないだけで春彦さんだったら思うか。察してとも言った…＿＿心配せずともあんた絡みの訳だよ。大体其方が仕事熟したらくれるって約束し出したんだろ…？だから大人しくしてるんだ、此れ貰った時ですらね（　相手の並べた言葉にも表情其の儘に微かに拗ねた様に短く返し、ややしてから緩慢とベッドへ倒れる姿認めて。耳を離れぬ寂し気な声音と、両手拡げてベッド寝転ぶ姿から昨夜同様の情動が腹の底を渦巻き、視線外す為床に座り壁に背を預けると片足だけ抱えて低く訥々と零し。するり体の痣を手で撫で滑らせ最後一瞬の間開け「因みに理由は…疲れてる程ムラムラすんの、僕は」と着飾らぬ言葉を以てして締め括って　）

……有休取ってくんない？一生のお願い。いや嘘だけど。俺だってどんだけ──…、（ 小さく座り込む気配と相まっていじけて聞こえる返答へ耳傾け、最後の一言に虚を衝かれると反射的に上体を持ち上げて。見開いた目で相手を見つめ、驚きを塗り潰す強烈な劣情に表情歪めては一呼吸置いて心音宥め、途方に暮れた声で呟きベッドから離れ。見下ろした相手をそのまま抱き締めれば堪らず溜め息零しながらも肝心な言葉は飲み。暫く抱き留めた後に荒んだ顔伏せつつ身を引くと髪へのキスだけ残し、相手をベッドまで連れて行き一足早く背を向け毛布被り ）…まあ、約束は守るからさあ、そこんとこは楽しみにしといて。ただ今日はムラムラ通り越してギラギラしてきたんでソーシャルディスタンス強化で頼むわ、散々イキっといてこのザマよ──春彦さんがやらかす前に寝ちゃおうぜ、芳樹くん。返事は要らねえからちゃんと腹片しておやすみ。

ッ…今そう言うのは控えるべきでしょ、何が俺だってだ。惚けてんの、色気で… (　言いたくなかった事を言った後の如く、得も言われぬ気まずさを逸した視線で紛らせてはスプリングの軋む音が響き。茫然な呟きでさえ高揚する胸奥を視界端に捉えた相手の表情が拍車掛け、皺深まる眉間にて言葉吐くが抱擁されれば皮肉りも勢い無く収まり。片腕で抱き返す物の、相手が髪に擽ったいキス残し背を向けて寝入るまで何をするでも無く只横目で見、規則正しい寝息が聞こえて漸く立ち上がって服を着ると其の髪を優しく一撫でてから潜り込んで　) 守って貰わないと困るよ…此処までのが徒労に終わるとか堪った物じゃないから。楽しみにしてる分、ね＿＿…あぁそう、あんたが調子乗りやすいのも、其れが崩れやすいのも今に始まった事じゃないでしょ。精々御得意の惰眠でも貪って気を保ってな…お休み春彦さん。今日もこんな時間まで有難う。

(　短時残業故の早帰となり、徒歩で家路を歩いていれば見慣れた建物から漏れる明かりが目に入り。少し逡巡の後、緩慢と歩み寄って1度入口近くの壁に凭れると取出したスマホを片手で操作し『お疲れ様。ちょっと向こうに顔出して来るから、都合が良くなったら連絡して欲しい。但し疲れてるとかなら別に連絡入れなくて良いし、寝てて構わないよ』簡潔なメールを送り懐に戻しつつ扉を開き、喫煙所の中へと入って行って　)

おかえり遊佐くん──もとい芳樹くん。あっちでだいぶ頭使ったろうし、時間も時間なんでこのまんま寝ちゃっても良いからねってだけ取り急ぎ伝えとくよ。無論、もうちょいイケるんならおやすみまで喜んでお供するけどそこらへんは任せとく。まあ、くれぐれも無理は禁物って事で。

…。 (　喫煙所の扉を開け、外へ繰り出すと掠めた涼やかな夜風に乗せる様ふっと紫煙共々息を吐き出して。煙草は携帯灰皿に押し付けて処理し、直ぐ現れるであろう相手の反応を拝む為扉の方顔向け　)

御免、時間も時間だし短く回させて貰うよ…眠かったりするなら場面飛ばすなりして構わないから。じゃあ此方は蹴って

ただいま、春彦さん。態々有難う……上の通りまだ平気だから僕の事は御心配無く、あんたこそ無理しない範囲で付き合ってくれると嬉しい。此れも蹴っちゃって平気。

──はいよ、お返し。いやー、わざわざ此処までストーカーして来た甲斐があったわ。こっちなら健全に触れ合えるっつー俺の読みが見事に当たったね…（ 扉を出てすぐ視線が合えば戯けたテンションのままぽんと頭に手を乗せて。満足行くまで語って撫でると腕下ろし、一瞬間を置いて軽く指先絡めて ）


オッケー、悪い癖で伸びてきたら台詞もロルもガンガン削ってやってちょうだいよ。それじゃあもうちょいお付き合いよろしく、こっちもスルーで大丈夫。

…ふ、何だ。其れじゃあライター探して迷い込んだ訳では無いのか……＿＿ねぇ、 (　戯ける調子で頭撫でられ、見詰める目許柔げつつ語る声へ緩い笑み含ませ返し。一瞬の間に横目で伺うが結局無言の儘絡む指を握り、自宅へと歩き出しては不意に呼び掛け　)

ライター無えのは本当よ、メール見て即飛んでったモンだから……ん？（ 拒まれる事なく繋いだ手を揺らし、軽く笑い飛ばしながら短く答え。明け方故に控えめな笑声もすぐ消せば掌の温度を感じながら歩みを進め、足は止めずに呼び掛けへ横目で応じ ）

其の儘煙草も同じ要領で忘れて来てくれたら、良かったのにね…あんた、今日…何時に帰って来れたりするの。先ず家から出るのかも知らないけど（　軽やかに笑い答える相手に呆れた様に少し肩竦め。握り締めた事で普段より温もり感じつつ目線は確りとマンションの方角を見据え、ぎこちない程抑えた単調な声で尋ね　）

…今日…今日ねえ。ちょっと野暮用済ませてくるけどまあ、日が暮れる頃にゃいつも通りゴロゴロ居候してんじゃない？どうしたの、急に。（ 何処か不自然な声音に首ごと相手へ向けるも、見え始めたマンションから動かない視線に問いは諦め指折り用事数えて。無意識に逸る歩調とは裏腹に呑気に疑問符添え、期待を隠し伺うように緩く首傾げ ）

…そう…分かった。別に何も無いけど、ただまァそう言う事なら成るべく早く仕事片付けるよ（　隣から聞こえる回答に淡々と返事し、以前前を向いた状態だが相手から尋ね返されては伏し目がちに微笑んで。気持ち早い歩の進む儘マンションへと入り、自宅に帰ると其処で漸く振り向き瞳を合せて「疲れただろうし、今日はもう寝ようか」手を緩く寝室の方に引き　）　

了解、三つ指ついて待ってるわ。まあ無理しないレベルで期待しとくからさ、芳樹くんも期待しといて──はいおかえり。（ 微笑み一つに胸が締め付けられるまま指先へ力込め、素知らぬ声音で了承しては僅かに口角上げて含み持たせ。部屋に着くとやっと交わる視線へ満足げに挨拶零し、キスの代わりに再びくしゃりと髪を撫でてから誘いに頷き寝室向かい。着替えを済ませると今度は深く指を絡めてベッドへ潜り込み、繋いだ手にのみ軽く口付けて瞼下ろし ）…浅木くん達と顔合わせたからかなあ。手ならギリギリセーフだわ、今日は…口寂しいっちゃ寂しいけど、そっちは明日のお楽しみって事で君もゆっくり休んでよ。おやすみ芳樹くん、お疲れの所朝っぱらまでありがとね。

そうしといて、期待云々は分かったから。…ん、ただいま。春彦さんもお帰り＿＿…全く何方なんだか。まァ昨日みたいに距離設けなくて良いから有難いけどね。此方こそ朝方迄どうも、お休み。 (　含み持たせた何気無い了承に瞼上げ、力籠る指感じ得ると同時に飽くまで受流す様に返すも撫でる掌へは頬緩ませ。先に着替え、指を固く絡ませ床入った相手からキス受ければ綻ぶ唇を甲へ寄せた後微睡み。朝を迎えて尚繋ぐ手に胸が暖かくも締め付けられ、心を擽る様な熱情を秘めた儘出社しては普段以上に気を張って業務熟し、其れでも暮夜たる時刻に些か眉曇らしつつ『今週もお疲れ様、後長くて1時間程で帰れるから待てるなら待っててよ』簡潔な文を打ち、送信終えると呟きを最後に携帯手放し作業に戻って　) …早帰、って言うには遅いか…。

（ 帰宅早々シャワーを借り、髪を乾かしてからリビングへ向かうと相手からのメールを確認し『そっちも最後の最後までみっちりお疲れ様。昨日も言ったけど無理ないレベルで早帰チャレンジ頑張ってよ、春彦さんは逃げないから』受信時刻に同情の苦笑浮かべつつ返事送り、ソファへ置きっぱなしのジャケットと紙袋を手に取ってはその場で逡巡し『マジで一時間以内にチャレンジ成功したらイイコトあるかも』ともう一通メールを付け足して。荷物を片すとソファに腰掛け、煙草に伸ばしかけた手を缶珈琲にずらして一口煽り ）

(　無事に業務終え、フロントで先刻振動したスマホを手に持てば相手宛の受信に眦細め。直ぐに2通とも開いて読み"良い事"と言う単語に怪訝そうに目瞬かせるも指動かし『有難う、善処はする。確かに色々言ってたけど詰る所急いで欲しいんだろう？』等と簡潔ながら洞観紛いの文を返信してから車で直接自宅へ帰り、雨天特有の蒸暑に張り付く服扇ぎつつ解錠した扉開けると静に呼び掛ける傍ら携帯で時刻見て　) …ただいま。1時間は＿＿…残念、過ぎてるね。

──おかえり芳樹くん、残念ながらチャレンジ報酬獲得ならず。でも正解した分おまけしちゃう。っつー事でお疲れ会しようぜ、お疲れ会。（ 心中見透かすメールにくつりと喉奥鳴らし、花丸の絵文字のみ返せば降り出した雨音に耳を傾けつつ帰宅を待って。待ち侘びた扉の音にリビングから顔覗かせてはメール画面のままの携帯揺らし、務めて普段通りの軽い愛想で手招いて ）