君ある所、我あり。 / 〆

(自分の背に腕が回され一瞬驚くも、ぎゅっと抱きしめられたと分かれば一層愛おしさが湧き、自然と笑みがこぼれていて。「ああ、勿論だ。…ありがとう」一生懸命気持ちを伝えてくれたことと自分の気持ちを受け止めてくれたことに対して、精一杯の感謝を伝えようと言葉を紡ごうとするが、ただ『ありがとう』の一言しか出て来なくて。めいっぱいの感謝の思いをその一言に注ぎ込み、呟くように口にすれば、そっと優しく頬を撫でて。相手の瞳から涙が落ちる様子を目にすれば自分も涙が込み上げて来ていることに気付き「…泣くな。こっちまで泣いてしまうだろう。」と少し声を震わせ優しく声をかけながら、頬を包んでいた手の甲で伝う涙を拭い。)

嗚呼、ごめん、嬉しくて仕方なくて。…同じ想いだったなんて、都合が良すぎて未だに信じられないくらいなんだ。
(拭って貰ってもぽろぽろと溢れる涙を止める事が出来ずにいれば、相手の涙声に気付き、「三郎も、嬉しい時の涙くらい我慢しないで。それで、これからはもっと支えるから、悲しくて辛い時の涙も我慢しないでくれよ。」そう言って背に回した片方の腕を戻しては、片手を相手の目元に持っていき、指先で優しく撫でて。「それと、こちらこそ想いを受け止めてくれてありがとう、三郎。」先程ありがとうと言った相手に、親友である事を裏切ってしまった自分を受け入れてくれた事への感謝言いたくて、こくりと頷いてから表情を綻ばせては感謝を伝えて。)

(そっと目元を撫でられると心に安心感がどっと広がるような感覚がし、いつの間にか涙が溢れ出していて。目の前に居るのが雷蔵じゃなかったら、きっと意地張って泣けないだろうな、と心に思えば涙を拭った手を目元の傍にある相手の手に重ね合わせて。「ああ、お前の言う通りにするよ。…雷蔵も、何かあったら言えよな？ 我慢なんてしなくて良いし、お前が大変な目に合っていたら私がすぐに駆けつけてやるから。」と相手の誠実な思いに答えるため、誠意を示すように言い終わると同時に相手の手をしっかりと握って。「…あと、お前のことだから自分の思いを伝えたせいで、私の思いを裏切ったとか思ってそうだが…全然そんなこと無いからな？ 私は、お前とどんな関係でも、お前の傍に居られるだけで嬉しいんだから。だって…」と伝えると、微笑みを浮かべていたさっきまでの表情からガラリと変わり、ニヒヒッと少し悪戯っぽく明るい笑顔を向けると「『不破雷蔵あるところ、鉢屋三郎あり！ 』そうだろ？ 」と相手を安心させるかのように表情を緩ませながらそう明るく告げて。)

(人に弱みを見せない強さを持つ相手が、嬉しさから涙を流しているのを見て、自分への気持ちの大きさや信頼を感じ、暖かい気持ちでいっぱいになって。こくりと頷き同意を示しては「へへ、でもそれだと、三郎だけが一緒に居たいって思ってるみたいだなあ…。あ！『鉢屋三郎あるところ、不破雷蔵あり！』なーんて…。」相手からの言葉は全て優しさや頼もしさが滲み出ており、つられるように表情綻ばせ。その後、少し真似た台詞を、相手同様に悪戯っぽい笑みを浮かべながら。少し恥ずかしかったのか、直ぐに照れ臭そうに表情崩せば「僕だって三郎と居たいからね。…それにしても三郎には敵わないなあ…僕の思ってること何でも分かっちゃうんだから。そうやっていつも僕の不安を無くしてくれる、感謝してもしきれない。」そう言っては、本で西洋では感謝や愛を気持ちを伝える時に口付けをするという事を思い出し。己の手を握る相手の手を取れば、自分の頬に持っていき。その暖かさに心地良さそうに目を閉じては、その手に感謝を伝える様に、指先や手の甲に自然と唇を寄せて。)

(自分の決まり言葉を真似した相手の言葉と悪戯っぽい笑顔を可愛いと思い、思わずニヤニヤと口元を緩ませてしまいそうになるが、なんとかこらえて。また後で言ってもらおう、と可愛いと思う感情を心の中にしまって。感謝の言葉を受け、こっちだってお前には感謝しても足りないぐらいお前の存在が有り難いと思っている、と返そうと口を開きかけた時、手を取られ相手の頬に自身の手が当てられて。相手の頬の温かさを感じると共に、目を閉じ気持ち良さそうに己の手の温度を感じている雷蔵の表情から、慈愛に満ち溢れているのを感じ美しいと思って。いつの間にか言おうとしていた言葉が見つからなくなって、知らず識らずの内にぼーっと見惚れてしまっていて。自分の手に雷蔵の唇が近付く様子を見ると、ハッと目が醒めるような感覚を覚え。「待っ、待て、雷蔵。それはっ…」きっと相手は手に口付けしようとしているのだろう、と勘付くと手が赤みを帯びて行き、動揺が言葉に表れてしまって。恥ずかしさからつい手を引いてしまおうとするが、思いを無視するのは悪いと思って引こうにも引けず。手に落とされる柔らかい感触の一つ一つにドギマギし、動揺を隠し切れず赤くなった手の指先がふるふると震えてしまっていて。)

(綺麗だな、なんて思いながら夢中で相手の手の甲、指先、関節、掌と順々に唇触れさせて行けば、微かな手の震えにやっと気が付き。「あっ、ごめん三郎！綺麗でつい…！」ハッと息を呑めば、いきなりこんなことしてしまって気持ち悪いと思われたと焦せる気持ちが湧き上がるも、真っ赤な顔とその表情にそれは否であるとわかると、可愛いらしいと思いながら安心した様に息を吐き、表情が緩んで。「ふふ、もうちょっと貸してね。本の受け売りなんだけど、西洋の夫婦同士は左手の薬指に指輪をするらしいんだ。」そう言って、相手の左の薬指に唇寄せれば小さく吸い、微かな赤い痕を付けて。「指輪はまだ広まってないし、僕ら子どもには値も高いから、今はこれで…なんて…。」手を解放してやれば、やっと今自分はかなり恥ずかしい事をやったのでは、と気が付き。顔の熱さを感じながら前記述べるも、言葉の語尾が恥ずかしさで声が小さくなっていって。)

(謝られ此方から大丈夫だと返そうとするが、きっと無意識に相手は言ったのであろう『綺麗』という言葉に心を揺さぶられ、さらに混乱してしまい言葉が出なくなってしまって。相手の言葉を受け今から雷蔵は夫婦同士でやる行為を私にするのか、と心の中に思えば嬉しくなり一層顔が熱くなって。薬指に相手の唇が近寄って来ると、てっきり指輪みたいな物でも贈られるのかと思っていたせいで、驚きと緊張からか自分でも感じ取れるぐらい強く心臓の鼓動が波打ち始めて。薬指に口で吸われる感触を憶えて、吸われた場所にぽっと染められた赤い痕を見ると、理性なんて飛んでしまいそうで。落ち着きを取り戻そうとしている内に、離れて行く手を無意識の内にぐいっと掴んでしまい。「…じゃあ、私が、お前に見合う上質で美しい指輪を渡してやる。プロ忍になったらどんどん成果上げて、お金稼いで、高級で誰を持ってなさそうな指輪を贈ってやる。だからそれまでに…婿になんか行くんじゃないぞ？ 」と雷蔵の手を強く握りながら、顔を俯かせたまま口にして行くが、最後の一言を言うと共に顔を上げ相手の目をじっと見据えて。言い終わると急に恥ずかしさが襲いかかり我に返って、ぱっと手を離し「す、すまない。段階を飛ばしすぎたな…」と目線を逸らし慌てふためいて。これじゃあまるで求婚を申し込んでいるみたいじゃないか、と自責するように恥じ入り。)

(今さっき想いが通じたばかりだと言うのに、夫婦まがいな事をして引かれてしまっただろうか、そんな不安を感じていれば、自身へと引っ込めようとしていた手がぐいっと引き止められ、目を大きくして。相手の言葉を受けると、照れ臭さと、卒業後の事も想う程強い気持ちを抱いていたのは自分だけではない、と嬉しくて仕方なくて。「勿論お前残して行かないよ。というか、この先、僕が三郎以外の隣にいるのが想像つかないんだ。」離れていく手を今度は此方からぎゅっと握っては、心底嬉しいのが滲み出た優しい表情と声色でそう言って。握った相手の手の薬指には、先程自分が付けた痕があり、それを指先で優しく撫でては今度はその箇所に唇を触れさせて。「僕もお前に相応しい上質で綺麗な指輪を贈りたい。明日には消えちゃう指輪じゃなくてきちんとしたのを。…だから、お前も僕を残して婿に行かないでくれよ？」顔を上げ、相手の目を見て言葉を紡げば、照れ臭そうにへらりと表情崩して。)

（さすがに今のは不快だっただろう、相手にどんな反応をされるのだろうか、と恐々としてしまい相手の顔が見れなくてなってしまって。下げて行く手を今度は自分の方が握られると目を見張り、反応を確かめるかのように恐る恐る顔を上げて行って。すると優しさに包まれた声色と嬉しくて幸せそうな表情が相手から感じられて、返される言葉一つ一つが偽りでないことが分かり、さっきまで心に抱いていた恐怖はどこかに行ってしまって。自分以外の隣にいるのが想像つかない、と断言されると、嬉しくて嬉しくて、胸が締め付けられるような感覚がし、また指に唇が触れられると、恥ずかしいのを我慢するかのように唇を噛んで。「…行くわけないだろ。」と呟くように返せば、此方からも力強く握り返して。相手になんて返そうか迷い、考えていると「…と言うか、私たち…恋人になってからのデートがまだじゃないか！ 」と突然甘味屋に行く途中だったことを思い出し、声を上げて。「私達、甘味屋に行く途中じゃなかったか？ だったら、早く行こう。閉まってしまう。」と慌てて相手の背を囲んでいた腕を戻させ少しずつ距離を取って行くが、無意識の内に、握っていた雷蔵の手に自身の指を絡ませて行き、離れないようぎゅっと手を握って。)

(/すみません、一つ相談したいことがあるので言わせて頂きます。これは提案として聞いて頂きたいのですが、今のまま続けて行くのも可能でしょうか？ 今までの流れを受け継いだまま、このまま六年生になって卒業しプロ忍になり転生しても良いし、ずっと五年生のままで二人で過ごしてても良いなと思ってしまいまして… すみません、 区切りを付けて様々なシチュでなりきりしたいと申し上げた分際ですのに、自分勝手で本当に申し訳御座いません。勿論、きりの良い所で区切りを付けて、シチュを変えてまた始めても構いません。両片想いのシチュで始めて二人が付き合うことになったので、どうするべきかと思い相談させて頂きました。此方はなりきりして話すだけでも、とても楽しくて満足してますので、主様がお好きなように決めてくださると幸いです。御意見お聞かせくださると嬉しいです。)

(小さく呟かれた返事に、穏やかにこくりと頷き。照れ臭い時やきまりが悪い時に唇を噛む、という小相手の小さな可愛らしい癖を見つけると、言ったら相手は照れ臭さ故に怒るだろうか、しかし相手の唇が傷付くのは、と気付かず内に自分の悩み癖も発揮していて。「わあっ！吃驚した…あ、そうだった！」考え事の中で突然聞こえる相手の声にびくりと肩を跳ねさせては、相手の言葉に自分もハッとして。離れていく腕に少し寂しい気持ちを抱くも、自然と繋がれた手と、その手の繋がれ方に心臓が煩くなり。自分からも恐る恐る指を絡められた手を握ると、熱くなった顔で相手の眼をじっと見据え「街に出るまで繋いでいいかい？」そう問い掛け。)

(/此方としても、今のこの状態が楽しいと思っていて、区切りを付けられるのかと悩んでいた所でして…！背後様の御意見を聞くことが出来てとても良かったです。ですので、取り敢えず今はこのまま続行ということにしようかと思います。本当に自分勝手とかそんな事は全く御座いませんのでお気になさらず…！いつも誤字脱字ばっかりで、文章もぐだぐだな私とお相手してくださってるというだけで感謝の気持ちでいっぱいですので…！脱線してしまってすみません。設定の件は、気持ちが変わったらその時に考えれば良いですし、また遠慮なくお声かけ下さい！)

えっ？
(相手から問いかけられると、何のことか分からず呆けた返事をしてしまい。何か暖かさを感じる己の片手の方へ目をやると、半ば当然のように相手の手を握ってしまっていることに気付き目を大きくさせ、恥らいから顔が赤く染められて行って。手の平や指から伝って来る雷蔵の手の暖かさがどこか心地よくて、相手からも握られていると感じ嫌がってないと分かると、その温かさを求めるかのように少し強く握り。相手の目の方へ視線を戻すと「ああ。それまでこのままで居させてくれ。」と優しく話して。「さあ、早く行こう。」と口にすると、手を引っ張り雷蔵を導いて。)

(/此方も主様の御意見が聞けて嬉しいです。ありがとう御座います！ 了解致しました。そう言ってくださりありがとう御座います。 いえいえ、此方こそ文章がおかしかったり、いつも返信が遅くなってしまう私とお相手してくださりありがとう御座います。同じ様な言葉になってしまいますが、お優しい主様とお会いすることが出来て此方も本当に感謝の気持ちでいっぱいです。了解致しました。お気遣いありがとう御座います。主様も何かありましたら遠慮無く言ってください！ それともう一つ連絡なのですが、当方学生で来週末辺りまでテスト週間のため、暫くの間返信が遅れると思います。忙しくなり、なるべく早く返信しようと思っていたのですが忙しさに着いて行けず、結果的に一日以上経ってから返信することが多くなってしまいました。これからなるべく早く連絡するように努めます。3〜5日以内には返信出来るようにしますので、よろしくお願い致します。長文失礼致しました。)

(なかなかに照れ臭いお願いをしてしまったと気恥ずかしく思いながら相手の反応を伺っていると、相手の驚いた顔が段々と赤くなっていくのがわかって。無意識に繋いだ事が分かり、照れる相手が可愛らしく思う気持ちと、離れる所だった手を、指を絡めるという恋人同士での繋ぎ方で、それも無意識に繋ぎ留めてくれた事が嬉しくて仕方ない気持ちでいっぱいで。「うん！ありがとう！」満面の笑みでそう返事をすれば、離れぬ様にぎゅっと手を握り直して、小走りで相手について行き。そのまま足を進め、街が近くなり遠くに人の影が見える所まで着けば、寂しそうな表情で少しずつ絡めた手を解いていき。最後に小指だけ絡めた状態にすれば、空いた手と一緒に唇を相手の耳元に持っていき「…帰り道でも繋いでくれる？」とひそりと小さな声で問うて。)

(/うわわわ、恐縮です…！これからも末永く宜しくお願い致します！はい、了解致しました。テスト大変ですよね…！そして此方も学生でして、学祭が近く、準備やらで忙しくて返事が一日経ってからになってしまいました。早く御返事頂けるのはとても嬉しいですが、秋から冬の変わり目の時期でどんどん寒くなっているのでお身体にはお気を付けて、無理はしないでくださいね。こちらこそ長文失礼致しました。蹴り可です！)

(隣に居る相手とは昨日まで手を繋ぐことも無かったのに、ずっと恋い慕っていた人とこうして手を繋ぎながら歩いていると言う現実が未だに信じ切れなくて、幸せでしょうがなく、思わず口元が緩んでしまっていて。いざ手を繋いでみると緊張してしまう物かと思っていたが、そうはならず、長年ずっと一緒に居る相手だからかどこか安心感を感じていて。その事実が嬉しくて、歩いている内にずっとこうしながら雷蔵と過ごしていたい、なんて考えてしまっていて。手が離されていくのに気付くと、もうそんなに時間が経ってしまったのか、と寂しく思い眉を下げ。耳に問われる声が入ると、「ああ」と此方も小声で、柔らかい笑みを向けながら返し。最後に、絡ませた小指を、約束だ、と言うように相手の小指を握るように折り曲げて。そうすると、ゆっくりと離して行って。甘味屋に着き中に入って、席に座ると「雷蔵は何にするんだ？ 」と品書を開き、読みながら質問して。)

(/はい、此方こそ末長くよろしくお願い致します！！ お気遣いありがとう御座います。そうだったんですね。いえいえ、無理せず好きなタイミングで返信してください。学祭の準備、大変だとお見受け致します。自分とは無縁のことですが、学祭の準備、陰ながら応援しております。そして主様も、体調の方にはお気を付けて無理しないでくださると嬉しいです。蹴り可です。)

(相手と手を離さなければならないのが寂しくて仕方無かったが、自分の願いを承諾してくれる彼の優しい声と笑顔に、そんな寂しさはいつの間にか無くなって居り。そして目的地の甘味屋に着けば、相手の正面に腰を掛けて。「うーん…しんべえがお団子が美味しいって教えてくれたからそれがいいかなって思ったんだけど、寒いからお汁粉とかもいいなあって。皆美味しそうだから迷っちゃうよね…。三郎はどうする？」何にするかと問われると、安定の迷い癖を発揮し、困った様にへらりと笑いながら頬を掻き。相手はもう決まったのだろうかと気になれば、今度は此方から同様の質問をして。)

（かけられる言葉を聞くと同時に、いつもの迷い癖を出す相手の姿が微笑ましく思えて、思わずふふっと笑みを零して。品書きから視点を上げ、相手の方を見遣ると「私はお団子にするよ。それで、雷蔵はお汁粉を頼めば良い。そしたら、両方とも食べられるだろ? 」とニコニコと頬を緩ませながらそう話して。本当は別の物を注文したい所だったが、自分の食べたい物を食べるより、好きな人が喜んで笑う姿を見る方がきっと心の中が幸福で満ち溢れるだろうと考え。何と返してくるだろうか、と相手の反応を伺い。）

本当！？…あ、でも…。
(自分の問い掛けへの返事に、ぱあっという擬音が聞こえてきそうな明るく幸せそうな表情を浮かべるも、相手はいつも自分に甘く優しいので、本当は食べたいものがあるのに無理をしているのではないか、そういった心配がよぎって。「三郎は他に食べたいもの無い？お前は優しいから僕に合わせてくれそうで申し訳なくて…。」心配そうな表情を浮かべては、首を少し傾げてそう問い掛けて。「だから三郎も好きな物選んでくれ。改めて三郎の好きな甘味も知りたいしね。」いつも甘えてばかりでは駄目だと不安そうな表情から一転し、柔らかいいつもの笑みを浮かべれば、こくりと頷いて。)

(喜色満面な笑みを向けられると此方も嬉しさでいっぱいになり、更に笑みを深め。しかし、相手が何かを心配している様子に気付くと口角を下げて行って、不思議に思い始め。話された言葉に対して、そんなこと思わなくて大丈夫だと返そうとするが、後に続いた言葉を聞くと目を大きくさせした伝えようとした口が止まって。今までとは違う返され方に戸惑うと一緒に、好きな物を知りたいとはっきりと言われて却って照れ臭くなってしまって。相手の穏やかな笑みを見ていると、意志に反対することも出来ずここは素直に答えようと決めて。少し視線を下げ、頬を搔きながら「そうだな、私は…饅頭が食べたい。それと…羊羹も。」と相手とは食べたい物が全く違うことを後ろめたく覚えつつ、答えて行って。)

！ふふ、三郎も二つ食べたいものがあったんだね。
(自分を優先し、合わせてくれるのもとても嬉しいが、自分の意見を言ってくれるのも同じくらい嬉しくて。以前から相手の事を強く想っていたが、恋仲になれることが出来た今、相手に尽くしたいという気持ちが更に強まり。「じゃあその二つを頼もっか。もしそれで三郎に罪悪感が残るのなら、お互い好きなのを一つずつ選んで、また次の日以降に今日選ばなかった方を頼む、とか。…次の約束があるって分かってると、今日のデートが終わるのが寂しくないしね。」その嬉しさが表情に滲み出て、先程よりも緩んだ表情浮かべながら提案すれば、言葉の後半を言う前に唇と片手を相手の耳許に持っていき、小さな声でひそりと。そう言って元の体制に戻れば、少し照れ臭そうに笑み浮かべ、どうするかと問う声の代わりに小さく首を傾げて。)

(相手の言葉を聞く内に、結んでいた口元はいつの間にか緩んでいて。今までとは違い、自分の要望をわざわざ聞いてくれたことがすごく嬉しくて。それと共に、前みたいに雷蔵を甘やかしてやることは減ってしまうのだろうか、なんて寂しくも思ってしまい。そんなことを思い巡らせていると相手の返答から暫く時間が経って、「…じゃあ、また後日に来よう。約束だぞ？」と顔を上げ柔らかな微笑みを浮かべながら左記を発し。それと同時に、同意を求めるかのように目配せして。恋人ではないフリをしているからか、次のデートの約束をするだけでもドキドキしてしまって。再び品書の方へ視線を落とすと「私は羊羹にする。雷蔵は？ 」 と先程とは違って自分の食べたい物を告げれば、此方から聞き返し。)

(相手が自分を優先し、甘やかしてくれるのを嬉しく思っていた反面、迷惑だったりしないかと心配していたが、今相手と同じ事をし、少し甘やかしてくれる時の相手の気持ちが解った気がして。「ふふ、もちろん。それじゃあ僕はお汁粉にしようかな。」そう微笑んでは、近くに居た店員に声を掛け、饅頭と汁粉を注文して。どうしたら相手は喜んでくれるだろうか、そして相手が気を遣わない様に出来るか、それを考えるのも楽しく、そしてそれが叶えば更に楽しく幸せな気持ちになる事を知った自分は、これから三郎に甘くしてしまう事が増えるだろうなあなんて。今までに甘やかしてくれた分を返せるだろうかと、品を待つ間、無意識に優しい表情で相手を見詰めながら頬杖を付き、今後の事を思い巡らせて。)