黒い礁湖/nl

まあまぁ…、そう言うなって…（この男が言うからには冗談に聞こえない、本当に腹が減っているんだろうなと苦く笑いながら答えれば、部屋から出て行かずこちらに背中を向けてきた相手の行動が少し予想外だったらしく、いや出て行かないのかよ…と心の中でツッコミを入れながらも、相手と少しでも長く居れる事に対して少しばかり喜んでいたり。着替えを終えて相手の背中に視線を向ければ何か苛立っている様子が伺えて恐らくは吸いたいのだろうと「ほらよ。」と自分は吸わないが非常用に持っていたジッポーライターを片付いていなく色々な物が散乱した机から探し出して相手に向かって投げ、「んめぇ飯作るから。…何が食いたい？」と昼飯の献立を相談しようと思って

…悪い…(ぽつりと呟いてライターを受け取ると空腹で萎え切った面持ちのまま先端に火を着けて、お前も吸えと言うように煙草の箱をもう一度膝で叩いて一本を出張らせてライターを親指で抑えたまま、相手を見ない様に振り返らない体制のまま、腕だけを背後に伸ばして相手に差し出してみて、空腹感からか「…食えるならなんでもいい…」と憤慨を顕にしたまま、殆どが吸殻で埋まって完全に置き場のなくなっている灰皿に無理矢理煙草の上に灰を乗せて、背後に立っている相手はまだ着替え終わらないのかと煙草を負荷して待つが、やはり背後に立たれ続けるのは誰に対しても慣れないようで

…アタシにも吸えって？（こちらに煙草を差し出してくる相手の行動の意味が良くわからず当てずっぽうで根拠のない推測をし、どうやら否定しない様子な相手の近くまで歩み寄って煙草を受け取り、次いで相手の前まで来れば前屈みになって煙草をくわえ火をつけてもらい、ゆっくりと吸い込んでいけばすぐさま「苦ぇっ… よくこんなの吸えるな…」と顔を歪めて即座に口から離し、消したらいいのかと一瞬灰皿に視線をやるが、どうやら既に吸殻が溜まっている様子。どうしたらいいのかわからず途方に暮れた末に相手に強引に渡し、「んじゃあ適当に作って来る…」と逃げるように自分の部屋を後にして台所へ向かい、二人分の食事を用意し始め

…はぁ…煙草もタダじゃない…(相手が嫌々ながらも煙草を受け取ったので納得したのも束の間、即座に口から離して自分に押し付け返してきたので、流石にその儘捨てるのは勿体無いと思ったのか、鈍感にも相手の気も全く知らぬまま相手の煙草を2本目として咥え直し、相手がキッチンに向かったのを確認して、部屋の主がいないのに自分がその部屋にいるのは可笑しいと思ったのか、相手の背後について行ってキッチンから繋がっていて見渡せる決して広くはない事務所内の居間のソファーに、相変わらず空腹で萎え切った表情のまま猫背で2本の煙草を咥えたまま吹かし

待たせたな、昼飯を持ってき…（料理している間後ろから何やら物音が聞こえ、恐らく相手は自分の部屋から出てきて今居間にいるんだろう、と二人分の昼飯を用意し終えれば食事をトレーに乗せて持って行き、ソファーの前においてあるテーブルの上にトレーを乗せて相手に視線を向ければ相手は煙草を二本もくわえているではないか。一本は恐らくさっき吸っていたやつ、となるともう一本は…と考えを巡らして答えを見出し、コレは噂？の間接チューではないか、とどこから仕入れたのかもわからない情報を脳内から引きずり出せば顔を少し赤くさせて「な、ななな、そ、それ、あ、アタシの…っ…？」と相手のくわえている煙草を指差しながら動揺のあまり口篭ってしまい

やっとか…(空腹のあまり叫ぶことはなかったがいつもの小さな声のまま感嘆を漏らすと、相手が行き成り目を丸くして極端に口篭って動揺したのでどうしたのかと思いながらも、「…あぁ…勿体ないからな…」と特に異性的な感情は持たないまま持ち手まで灰が近付くと、やはり先程とは全く変わらない見た目の吸殻で完璧に埋まっている灰皿の上の煙草に無理矢理擦りつけて消し、冷静であってもやはり空腹には勝てないのか隠すことなく早急に食べ始めるが当人もとても大食らいと言える様な人ではなく、寧ろ若干少食よりなのか既存よりも少し速いペースで食べ進め

ま、まぁ、そうだよな…（相手には自分に対してそういった感情は持っていないというのは重々承知している。相手の口からある程度は予測できた返事を聞いてほっと安心したような、まるで異性として意識されてないという意味でやはり少し悲しいような、少し複雑な気持ちになってしまい、少し残念そうなか細い声で答えれば、今相手の顔を見たらどんな表情をしていいかわからない為、相手の顔が見えないように又自分の表情が見られないように相手の隣に腰を下ろし、「いただきます」と食事の挨拶をして、箸と食器を持てば自分も急いで食べてしまおうとガツガツといつもより速く食べ

何だ??…吸いたかったのか??…(相手が残念そうな声で言って隣に腰掛けて急速に荒々しく食べ始めたので、雑なのはいつものことだが今日は何か極端に違う様子が見られ、イライラしているのかと思いながら実はさっきの煙草を吸いたかったのではと勝手に推測して、未だにこのご時世になっても箸は苦手なのか妙に歪な持ち方のまま、しかし、少食が故に何の不自由もなく隣の極端に速く食べ進めていく人物と対照にして比べると明らかに遅いと思われるスピードで、恐らく当人的には速いと思っている速度で食べ進めつつ、壁に掛けられた時計とその下に掛けられたカレンダーを無意識に見詰め

はっ？…ちげぇよ。（急に的外れな事を言われ、一瞬キョトンと目を丸くし、すぐさま相手の言葉の意味を理解すれば首を振って否定し、更に食事を進める。途中で口元に米粒がついた気もするが後で食器を片付けてその後顔を洗う時ついでに取ればいいかと気にしないことにして、相手の箸の持ち方が少しおかしく相手にバレないようにこっそり笑みを浮かべながら、何故自分が煙草を吸いたかったと思ったんだろうこの男は、と食べ終えて暇になった両手を組んでしばし考える。そういえばさっきの自分の態度は何か苛立っているようにも見えたかもしれないと少しばかり反省し、自分の気持ちに対する相手の鈍感さに呆れたつつ「…なんでもねぇから。」と一応心配させないつもりで

…そうか…(いつものとても女性とは思えない返事が返ってきた為、何故かはよく解らないが安心すると相手が隠れながら微笑んでいることを感覚的に察知し「…チョップスティックスは苦手だ…」と言い訳とは解っているものの、幼少期からナイフとフォーク、よく言ってもスプーンを使って食事をしてきた己にとっては、やはり使いにくいものは使いにくく変なプライド持った自分を無視して食べていると、早々に相手が食べ終わって腕組をして考え始めたので少しペースを早めて食べ進め、唐突に呆れた表情でなんでもないと言われてこれは絶対に何かあると思ったものの、ここから首を突っ込むのも面倒なので頭の片隅に置きながら迷惑にならない様同じペースで食べ進めて完食し

いい加減慣れろよ…（言い訳臭い相手の発言を聞いて不覚にもこの無表情無口男を可愛いと思ってしまった。実は相手は箸が苦手というのを知っていて慣れさせるためとかわざと箸を渡しているのは内緒である。今度は柄にもなく相手を可愛いと思ってしまった自分に呆れ、相手に対するこの感情のせいで自分は少し頭がおかしくなってしまったのかもしれないと思いながら、相手に悟られる心配は恐らく皆無に等しいが誤魔化すように、ふう…と小さく溜息を吐いて、相手も同じく完食すれば食器をトレーに乗せて流しまで持って行き、せせっと食器を洗いながら「今日は予定は？」と相手のスケジュールを確認するように問いかけて

…無理だ…(相手に対して言い訳をしてしまったという事は解っているし、完全に悟られてしまったというのも解りきっているが、やはり、変に辱しめを受けさせられたような気分になり、余計なことを考えてるんじゃないだろうな??と言うように溜め息を付いて食器類を片し始めた相手をジト目で見据え、最近の食事はやけに箸が多くて食事が困難であり、自らは東洋や中東に渡った事はない為か箸なんてものは彼女に出会うまで全く使ったことがなかったので、心の奥底の片隅でナイフは生まれてこの方20年以上は使っているが箸なんてものはまだ知ってから数年しか経ってないのだ、仕方ないだろうと己の中で勝手な自己解釈を進め、また胸ポケットから目立つパッケージの煙草の箱を出して、膝で叩いて出張らせて箱から直接咥えると、今度は自分のいつも使っているジッポーで火を点け、スーツの内ポケットから予定を記録している手帳を取り出して予定を確認するが、仕事の予定欄は完璧に空欄であり定期的でない休日であったので「…買い出し…」と普段は依頼で忙しい為か中々市場や街にも買い出しに行けない為、予定はしていなかったが暫し手帳を見て考え込むと静かな声で煙草の煙を吐き出しながらそう答え

…だろうな。（相手と出会ってもうかなり長い時間が経っていて、相手に箸を使うようにすすめてからそう短くは無い時が過ぎている。それにも関わらず、相手は未だ箸を上手く使うことができない、恐らく相手はこれからも精進する事はないし、する気もないんだろうと短く返事して相手に背中を向けているのをいい事に小さく笑いながら洗い終えた食器を綺麗に拭き、食器棚に。片づけを終えて相手の予定を聞こうと隣まで歩み寄り、また再び煙草を取り出した相手を見ればまた吸うのか…と心の中で述べつつ、ハッと思い出したように灰皿に溜まりに溜まってしまった吸殻を片付け、相手の目の前のテーブルに置く。「依頼はねぇのか。珍しいな…」と普段から忙しくしている相手にしては珍しいなと少し意外そうに述べ、買うものを確認するため再びキッチンへ戻り、冷蔵庫の開けて中身を確認して

…もう何もないはずだ…(特に最近は依頼の契約を結ぶ頻度が近年に比べて著しく激しくなっており、後ほんの数日で食料はからになってしまうのではないかと勝手な推測を立て、片付けてもらったことに関しては大きな反応もせずに白昼の厳しい日差しが照りつけ、窓から入ってきた日光を反射した灰皿を眺めて目を細め、何故態々使いにくい物を使ってまで食事をしなければならないのかなどと頭の片隅で未だひっそりと考えつつ、先程綺麗になったばかりの灰皿に5分も経たない内に新たな灰が捨てられ、振り返って熱された先端から立ち上る煙越しに恐らく空であろうと推測した冷蔵庫を開けて中身を確認している相手を見て、決して良いとは言えない治安の為か開けた窓から銃撃戦の銃声と叫び声、それにサイレンと怒鳴り散らす声が遠目にぼんやりと耳に入ってきて薄めていた目を閉じ

まぁ…、空に近いな…（冷蔵庫を開ければあるものないものを確認して、メモ用紙に必要なものをスラスラっと書いて買い物リストを作れば意外と買うものが多いことに漸く気付いた。「食い物以外に買う物はないか？」とどうせなら煙草やらライターやらの相手の買い物もついでにリストに纏めておこうと思いついたのかそう問いかけ、その瞬間、銃声や叫び声などが大きく響き、治安が良くない為よくある事とはいえあまりにも突然なことで肩がビクりと跳ね上がり、気にしていなさそうな様子をしている相手に「今回は割と近くないか…？」と念のため警戒心を上げていつでも抜けるように腰に隠してあるナイフに手を当てて

そうだな…俺は…(煙越しに買う物をリストに纏めている相手を眺めていると、自分の背後の窓の下の方の路地近辺での揉め事であろう銃声と保安部隊のサイレン、それに叫び声と怒鳴り散らす声が混ざり合った雑音のような音に相手が肩を跳ね上げたので、「…対して近くない…それに万が一にもお前がいる…何も問題はない…」と特に大きな何かの感情は持たず、敢えて相手の名前は出さずに代名詞で近接戦では自分よりも頼れる相手を完全に信頼していて背後の雑音に関しては何の反応をするでもなく、まだ捨てて貰ったばかりの灰皿に再び煙草を当てて灰を落とすと「…ラッキーストライク(幸運の一撃)の銘柄のシガー(煙草)が20ダースと…高純度ナフサ(ライターオイル)が箱で3ダースだ…」とその他の銃機器については武器商から直接輸入する為に、自らの生命線ではなかろうかという程普段から頻繁に吸っているのだが、銘柄には職業上運次第の駆け引きの状況も頻繁にあるようで普通の兵士やマフィア等は戦線に立つ際に運を当てにするのは嫌うものだが、それも兼ねた上で生き残ってきた己としては非常に縁起のいい銘柄の煙草と昔からのお気に入りの古いジッポー社製のオイルライターの詰替用の油をリストに加えるように言い

そうか…？（特に何の反応も示さず大して近くないと言われ、相変わらず外から響いてくる騒音は自分にとってやはりかなり近くで起こっているように聞こえるが、相手がそう言うからには大丈夫なんだろうと思いながらも一応警戒態勢を解くことなくいつでもナイフを抜けるようにしておいて、ってアタシかよ…と心の中でツッコミ入れつつコレも相手から信頼されているという事だろうと思えば妙に心が暖かくなり、溢れる喜びが押し隠す事ができなくついついニヤけてしまう。「らき……あ、ああ。まぁ、書いたぜ…」煙草に詳しく無い自分にサラッと銘柄を告げられては一瞬戸惑ってしまったが、それっぽいのを書いとけば分かるだろ、と買い物リストにラキなんとかのシガーを20ダース、ナフサ箱3ダースと適当に書き「んで、そろそろ行くか？…こりゃぁ、裏から出たほうがいいか？」と未だ収まらない銃声や怒声等の騒音を聞きながら表から出るのは危ないかもしれないと判断し、相手にそう問いかければゴソゴソと隠してある裏口の鍵を探し始め

…正面からの方が近い…(相手の裏口からの案を切り捨てると裏口から出て遠回りに安全な道を行くよりも、正面の危険で近い道の方が好ましいと勝手に判断し万一もありえないとは思っているが、念の為に常用の自分の二丁の拳銃と相手に持たせると危険な故、いつもは自分の手元に置いて己の管理下で保管している目立つ拳銃を背面のホルスターにしまい込み、居間の中心のテーブルに置いてあるまだ灰しか捨てられていない灰皿に一本目の吸殻を捨てると個人的な意思ではあるが過去の経歴上でエレベーターというものは信用していないが為に、正面に通じる階段を敢えて使って下に降りていこうと、裏口の鍵を探している相手を横切って流石に中央アメリカなのかアメリカンスタイルの為に革靴の鈍い音を鳴らして細やかな装飾で飾られた妙に重い扉を開けて暗い廊下を歩いて行き

そりゃそうだけど…危ねぇだろ…（余計な事や遠回りとか嫌いそうな相手ならそう言うだろうなぁとある程度は予測済みだったが、いくら正面のほうが近いとはいえわざわざ自分から危険な場所へ突っ込む必要も無いだろうと思い、やはり遠回りでも安全な道行こうぜと反論しようと鍵を取り出すが、相手は自分を横切って正面に通じる階段へ向かおうとしているのがわかり、正気かよ…と慌てて鍵を元の場所へ戻し、「おい、待てよっ！」と早足で相手の背中を追いかけながら短パンのポケットから綺麗に折り畳んであった赤いバンダナを取り出してせせっと髪の毛を纏めるように頭に巻いて

（すみません、中央アメリカ設定なんですか？）

…その為のジルだ…(やはり相手を信用した上で戦況に置いては完全に頼りとしてしまっているのか、ぽつりと背後の相手に聞こえる程度の大きさの声で言うと、相手の前以外で飲酒喫煙等凡ゆる余興を避けたいためか、先程つけたばかりの煙草を勿体無い等と思いながらもやはり気になったのか一気に煙を口に含んで、灰が手元に来たことを確認すると大量の煙を一息で吐き出して、早足で追いかけてくる相手の足音を聞き流しながら暗い廊下に煙草を捨てて革製の靴の足音を止めてグリッと捻るように足を回転させて煙草の先端から立ち上る煙の元の部分を踏みつけて消し、部屋とは一転して無機質な表情になると相手も急いでいて入口も騒がしいことから少し歩く早さを緩めて落ち着いた足取りでやはり代わり映えのしない革靴の鈍い音を響かせて一段ずつ階段を順に降りていき

(申し訳ありません!!原版の設定が頭に残っていて…/
地理ネタはジルの本体様にも面倒をお掛けしますし、ここではなしでいく予定ですので、
仮に少し地名が出てきたとしても無視して頂ければ幸いです。
それとこちらからも、失礼ながら一つ質問させていただきたいのですが…/)