人もをし、人もうらめし。(〆)

人もをし、人もうらめし。(〆)

匿名さん  2024-01-05 19:35:07 
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御相手様決定済み

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  • No.182 by 日向 静蘭  2024-05-13 18:53:03 


(相手からの言葉には“それならば”というように肩を竦め、相手と向き合うように腰を下ろせば、並々注がれる酒を眺め、彼が呷るのを見届けて此方も一口酒を含んだ。久しぶりのアルコールに喉が熱くなるのを感じるが、良質なだけあってとても美味しかった。決して酒に強いわけでは無い為、飲む量には気を付けようと思いつつも、その飲みやすさについつい盃を傾けてしまう。
ほんのりと頬が赤くなってきた頃、彼から投げ掛けられた質問に、あぁ、と小さく声を漏らした。)

…そういえば、言ってなかったかしら。
私は、国語の教師だったから国語を教えていたわ。
古典が好きで、神社とか趣のある物が好きになったの。
それに言葉って、深くて難しくて、美しいから好き。…まぁ、私自身、あまり良い言葉をかけられた事はないし、良いことを言えるタイプでもないけれど。

( 上記を告げると盃に残った酒を飲み干して、小さく笑いながら視線を伏せた。文面や言葉から相手の心理を探り知るのは、難しいが面白さもある。昔と今とでは言葉の使い方も言葉自体も変わっているが、その違いを知るのもまた面白かった。しかし、皮肉なもので、現実ではそう簡単に相手の心理は分からない。言葉に騙され、言葉に翻弄されてばかりだ。だけれど、教科書に綴られた様々な物語に触れてその情景に耽っていると、少なくとも自分の乏しい人生からは目を背けられた。
少しばかり酔いが回ってきているからか、普段よりもさらに舌が回るようでそのまま言葉を続ける。)

生徒たちには“言葉は大事”って教えるのに、私は思ったことをそのまま口に出して反感を買うばかり…おまけに肝心な事はなかなか言えないの。

  • No.183 by イナリ  2024-05-14 17:30:23 

ふん…。言葉上手でなければ教育者になれんわけでもなし。
それに、思ったことを口に出して何が悪いのじゃ?

(国語教師で古典に関心があるならば、なるほど彼女が社務所の史料に興味が惹かれた理由も分かる。もっと早く聞いていれば、それなりに吟味して選んだというのに。
空になった彼女の杯に酒を注ぎながら、上記を鼻で笑いながら述べる。心と思考が一致しないのは人間ばかりでなくイナリたち妖も同じだった。特にイナリは妖の中でも口下手な方だった。だから彼女の言っていることは理解できる。自分も思ったことを口にして怒られたことが幾度となくあるからだ。しかしそれを欠点だと思ったことは無い。むしろ思っていることを口にしたことで腹を割って話せたこともある。
過去と現在では言葉も人間の在り方も規範も変わるのかもしれないが、現代人にとって思ったことを言うことは悪しきことなのだろうか。そう考えると無性に腹が立ってきた。彼女の言葉を聞き入れず、彼女が誠を尽くしても揶揄いの対象とした教え子達に。)

  • No.184 by 日向 静蘭  2024-05-14 18:41:25 


…そうね、決して悪いことではないけれど。
使い方によって言葉は凶器に成りうるでしょう?でも、言葉を選ぶのは簡単じゃないわ…面倒くさいなら黙っていた方が楽なのも事実だし。

(注がれた酒の揺らめく水面に視線を落としながら、相手の言葉に返すように上記を述べる。“言葉は刃”という比喩があるように、自分が発した言葉で他人が傷つくこともよくある。思ったことを口に出すことで良い結果が生まれることも勿論多い。だが、自分自身、言葉に傷付けられた経験が多い為、同じように人を傷付けるのは怖かった。
盃を見つめていた視線を外し、またも1口酒を飲むとため息混じりに言葉を続けた。)

……私は、私のせいで誰かを困らせたくないの。
…例えば、私に「好き」だと言われて、喜ぶ人なんていないわよね、とか。そんな消極的なことばかり考えて、言えないの。だって、「嫌い」だと返されたら、きっと立ち直れないわ。

(まるで誰かを想っているかのようにぽつりぽつりと零すように言葉を吐き出すと、もう一口盃に口を付ける。目の前にいる彼へちらりと視線を向けると一間じっと見つめた挙句に「…私は意気地無しなのよ」なんて告げて肩を竦めた。)

  • No.185 by イナリ  2024-05-14 20:08:56 

……言葉は凶器。その通りじゃ。しかしそれが高じるあまり、言いたいことも言うべきことも言えぬは不健全。
それにお主を好いてくれる者も必ずおる。…お主の着物姿、美しい故な…。

(きっとこの女子は傷ついてばかり来たのだろう。言葉で癒される経験をあまりしてこなかったのだろう。時折こうして彼女の口から勝たられる過去に思いを馳せると、胸が痛くなってくる。何故かは分からない。自分にも思い当たることはあるからだろうか。否、彼女と比較して寿命が圧倒的に長いイナリにはまだ救いがある。人の何倍も生きているので、言葉で癒される経験も多くしてきた。だが人間は寿命があまりに短い。その一生では傷付く機会の方が多いのだろう。特に荒んだ今の世では。
盃の酒をまた一気に飲み干すと、また並々酒を注ぐ。その間、彼女の言葉を耳で聞いていたが、視線は酒に向けられていた。だから彼女に向けられた視線に気付くことは無かった。酒を一口飲むと再び口を開く。酔いが回ってきたのか、先程の教え子に対する不機嫌もあって、やや語気が強くなる。しかし彼女の容姿に言及した時だけは、言いにくそうに、それでも弱々しく言う。はっきり言うべきことは言えと講釈をした後に、これでは説得力も何も無いが、そんなことを考える余裕を酒が奪っていく)

  • No.186 by 日向 静蘭  2024-05-14 20:46:15 


……確かに、本当に不憫な世の中よね。

(彼の言う通り、自分こそまさに不憫な世の中に縛られて、言いたいことも言うべきことも避けてきていたのかもしれない。変わりたいとは思っていてもそう簡単に変わらないのが人間の性であるが、それでも、変われたらいいな と思えるようになってきただけ此方としては大きな進歩だ。この社に来て、少しだけ自分の事に対して客観的に、そして余裕を持って考えることが出来ているように思う。それはきっと、彼がこうして話し相手をしてくれて、弱々しくも自分のことを褒めてくれるから。
励ましとお褒めの言葉を受け取ると、数回瞬きを繰り返した後、ふふ、と楽しげに「ありがとう」と言った。普段は見せないあどけた表情を見せたのは、おそらくいつの間にか空になっていた盃の所為。酒に酔っても気持ち悪さはなく、ふわふわと夢見心地で、だんだんと襲ってくる睡魔に抗いながらも欠伸を1つ。
そして、目を細めて相手のほうへ片腕を伸ばすと、ぽんぽんとその頭に手を乗せてぼんやりとした思考の中でボソリと呟いた。)

…イナリ様が、私を好きになってくれたらいいのに 。

  • No.187 by イナリ  2024-05-15 20:24:13 

(盃の酒が空となり、もう一杯と手を伸ばした時だった。彼女の手が頭に乗せられた。ギョッとして彼女に目を遣ると、その顔は夢でも見ているかのように心地良さそうな顔。先程注いだばかりの盃が自分と同じく空になっているのを見れば、意外と酒のスピードが速い彼女に驚く。いつものように"気安く触るとは不敬だ"と言い放とうとした時、彼女の一言で一気に酔いが覚めた)

な、な、な…お主……。

(とても冗談のようには聞こえない言葉に思わず持っていた盃を落としてしまう。酒に酔った勢いで言っているだけで単なる戯言なのか、それとも本音が酒のせいで表出したのか。この女子の真意が分からず、ひたすらに困惑する。もしも、これが本音ならば。自分はなんと返事すれば良いのか。決まっている。彼女の言葉を諾えば良いだけだ。ずっと気付かないフリをしてきたが、イナリは彼女が好きだ。初めてここに訪れた時こそ不信を抱いたが、今では彼女のことばかり考えている。それは初めての経験だった。妻でさえ好意なく迎えたイナリが、初めて自らの意思で人間を好いている。いっその事、本心を伝えてしまおうか──一瞬だけそんなことを考えた。ダメだ。自分は彼女に自己を肯定できるまで、ここに置くという建前で彼女を受け入れている。それを反故にしてしまっては自分の立つ瀬がない)

…なんだ。何か言うたか。
……全く我に触れるとは不敬じゃ。

(言いたいことを言えと彼女に言っておきながら、自分は彼女の言葉を聞こえないフリをした。今日ほど自分の臆病さが憎かったことは無い。情けなくて、申し訳なくて、憎くて。様々な感情入り交じった震え声で頭の上に乗せられた彼女の手を、ぐっと掴む)

  • No.188 by 日向 静蘭  2024-05-15 21:20:31 


………、いいえ。何でもないわ。ちょっとした願い事よ。

( ゆっくりと首を振って、何ともないように小さく笑いながら上記を返す。しかし、その顔は少し寂しそうにも見えて、また1つ何かを諦めたような顔にも見えた。というのも、確かに酔いが回って睡魔に襲われてはいるが、自分が何を言っているのかぐらいはちゃんと分かっている。いつもよりも随分早いペースで飲んだものだからまだ酔いが回り切っていないのか、どちらにせよ未だに理性は働いているらしく、ぐいと掴まれた手に視線を移しながら続けて「ごめんなさい、つい」と毎回の如く肩を竦めて謝罪した。
彼の声が少しばかり震えていたのは何故だろう。盃を零してしまったのは何故だろう。彼は、本当に聞こえなかったのだろうか──と、ぼんやりとした頭の中で考えるが、あれこれ憶測するだけ不安になるし悲しくなる。だから、彼が盃を零したのもきっと不意に頭を撫でた所為だし、声が震えていたのもきっと気の所為、酒の力を借りて口に出た願いもきっと、気の所為。そう思うことにして、ゆっくりゆっくりと立ち上がり、掴まれた手を解放しようとする。)

…ごめんなさい。久しぶりに飲みすぎたみたい…、酔いが回り切る前に少し夜風に当たって来ても良いかしら…?

  • No.189 by イナリ  2024-05-16 17:55:16 

あ、ああ。行ってくるが良い。
…いや、我も行こう。些か暑くなった。

(彼女の反応を受けて再び後悔する。酒の勢いで言っている訳ではなかった。まだ彼女には理性がある。そんな理性の隙間から出た偽らざる本音。それを自分は聞こえないフリをしてしまった。彼女が自分の愚行に気づいているのだろうか。彼女のことだから気の所為とかで済ませてしまうのだろう。いっその事、イナリの愚行を見抜いて、その上で罵倒してくれた方が救いがある。
彼女が夜風に当たると言い出すと一度は掴んでいた手を離す。しかし慣れない酒を飲んだ彼女に何かあっては困ると思い立ち、同行を言い出す。何かあっては困る。実際のところはそんなものは言い訳だった。実際は少しでも罪悪感から逃れたかったから。どこまでも手前勝手な理由付けに我ながら呆れてしまい、僅かに口角が上がる。一度離した手を再び掴むと、彼女を支えながら本殿から外へと出る。イナリは彼女以上に飲んでいて、しかも酒に強い訳では無い。にも関わらず普段と違わず乱れることなく歩けるのは、先程の彼女の"独り言"を聞いてしまったからだろう。外へと出て適度に吹く風に当たっていると、心が晴れそうな気がする)

…今宵は何故か飲んでも酔えん。

  • No.190 by イナリ  2024-05-18 18:30:27 

(/上げです)

  • No.191 by 日向 静蘭  2024-05-22 22:02:50 


……あら、そうなの?何故かしらね。

( 再度腕を掴まれると、そのまま身体を支えられながら共に外へ出た。ひんやりとした夜風に触れるとお酒の所為でかかっていた靄が晴れたように少しずつ睡魔が引いていくのが分かる。隣でぽつりと彼が零した言葉にはまるで何も知らないように肩を竦めながら上記を返す。此方を掴まえているその手に此方からも触れられるならどんなに幸せなことか…しかし、そうはせず、代わりに彼への負担を軽減しようと脚にぐっと力を入れ、頭上に広がる星空を見上げていた。)

…私ね、イナリ様のおかげで思ったよりも早く自分のことを愛せそうだわ。

(夜空を見上げたまま再度口を開き、言い終わると隣へ視線を移して小さく笑ってみせた。尊大な言い方もすれど、自分のことを褒めてくれる時はいつだって正直だった彼は、本当に優しいのだと思う。きっと、今まで長い年月を経て色々な人間を見てきたのだろう。先程の願いも、彼と出会った頃に言ったあの願いも、叶うことは無いかもしれないけれど、彼の優しさを裏切らないために、少しづつでいいから自分のことを認めてあげたいなと思う。──それに、長居すれば長居するだけきっと彼に惹かれてしまうから、これ以上縋って迷惑はかけたくないとも思う。)

  • No.192 by イナリ  2024-05-24 17:49:14 

なに…?
…………それは真か。我の手を煩わせたくない故、欺瞞を言っているのではあるまいな。

(思ったよりも早く自分を愛せそう──それはつまり、彼女が自分の元から離れることを意味している。思わず、彼女の顔を見つめる。自然と眉間に皺が寄る。そして彼女の発言を疑ってしまう。やめろ──理性がそう警告するが、イナリ自身がそれに応えようとしない。最低だ。再び自己嫌悪する。恩着せがましく彼女の自己肯定感を上げると宣言しておいて、いざその時が差し迫ったら、彼女のことを想い始めて手離したくないとごねる。まるで寓話のような滑稽さだ。想いとはこんなにも重く、苦しいものなのか。これまで生きてきた中で初めての経験に、酷く戸惑う。あの妻もこういう気持ちだったのだろうか。彼女が自分のことが好きになる度に、イナリは自分が嫌いになっていく。特に理性が警告しても閉じることの無い口が。)

  • No.193 by 日向 静蘭  2024-05-24 21:00:22 


……本当よ。でも、貴方が言ってることも半分正解。

( ちらりと視線を向けた先には眉間に皺を寄せた彼の姿があり、図星をつかれたことにより思わず目を逸らしてしまう。
彼のおかげで少しは自分に自信がついたし、この先は今までより自分のことを大切にできると思った。…しかし、性格や思念がすぐさま変わるわけでも無いし、すぐに自分のことを真っ直ぐに愛せるかと言われれば正直難しいところも多いだろう。ましてや彼の言う通り、迷惑をかけたくないからという理由も大きかった。
ただ、言葉上は誤魔化してしまえばいいものの、特に取り繕うこともせずに相手の発言も正解だと馬鹿正直に付け足してしまうと、気まずそうに咳払いを1つ。)

でも、別にいいじゃない。
他の理由がどうあれ、私が自分のことを愛して認められたらそれでいいんでしょう。

( 思わず、突き放したような言い方をしてしまう。そんなつもりはないのに、彼に深入りしないようにと無意識に焦ってしまっているようだった。)

  • No.194 by 日向 静蘭  2024-05-26 15:24:51 


(/上げです)

  • No.195 by イナリ  2024-05-26 15:49:00 

(どうやら自分の言葉は意外にも彼女の図星を突いたようで、一瞬だけ喜の感情が浮かぶ。だが彼女の突き放したような言い方で胸が苦しくなる。彼女はイナリに迷惑を掛けたくないから、そういう言い方をしている。大体の検討は付くものの、やはり"イナリを必要としていないのではないか"と思ってしまう。他の人間から必要とされないのは納得できる。だが彼女からそんな風に思われていると考えただけで、耐え難い程の虚無感に襲われそうだった。そんな意図を含んでいる訳では無いとわかっているのに。)

…今のままではダメだ。お主が許しても、我が許さぬ!
こういうことは、ゆっくりと時間を掛ければ良いでないか! 焦ることは無い。今戻っても、お主は失敗する。何故それが分からぬ!

(一度思い込むと不安が徐々に広がって理性を奪っていく。まるで疫病のように。段々と苛立ったような口調になり、とうとういつもよりも大きな声を出してしまう。その瞬間、ふっと我に返る。何の罪もない彼女に苛立ちをぶつけてしまった。我を通そうとしたばかりに、その事実だけが残った。何か途轍もない程のことをしでかしたというように、二、三歩後退りをすると、彼女から視線を逸らし、消え入りそうな声で謝罪する)

………これではお主を傷付けた者どもと同じだな。すまぬ…。

  • No.196 by 日向 静蘭  2024-05-26 16:37:07 

( 相手の言葉にぎゅっと小袖の裾を握った。大きな声を出されるのは好きじゃない。思わず眉間に皺を寄せ、視線を逸らす。自分の為を想っての発言も感じ取れるが、失敗するだなんて断言されたら再び自己を否定されているようで辛くなる。そんなこと分からないじゃない、と思わず反発しそうになる。
しかし、彼はそのまま声を荒らげることは無く、すぐさま我に返ったのか数歩後ずさると小さな声で謝罪を口にした。それを聞いて、こちらも幾つか緊張が解けたのか握った手の力を緩めていく。)

…『好きならば口に出せば良い』って、貴方が前に言ってくれたのよ。最初は、そんなこと言えるわけないって思ってたし、胸に秘めるだけで十分だと思ってたの。
…でも、少しだけ我儘を言うのも悪くないのかなって思えた。

(貴方のおかげよ、と小さく呟くが、それでも視界に彼の姿は映さない。もう一度輝く夜空を見上げると、すっかり酔いも覚めしまい冷たい夜風に小さく身震いした。
このまま知らないふりをして、彼の言葉に今まで通り「その通りよね」って受け入れてしまうことも出来たのに、今それをしてしまうと彼の本心がずっと見えないままになるのではないかと思った。
夜空を見上げていた視線をゆっくりと彼へ向けると、静かな声色で訊ねた。彼の発言に生じた小さな違和感、それが一体何故なのか直接聞いてみたかった。こんな問い詰めるような言い方をして、嫌われるだろうか、それとも悲しませてしまうだろうか。)

──イナリ様、最初から私を“ここ”に置くつもりは無かったでしょう。それなのに、どうして留まらせようとするの?
遅かれ早かれ、私が自信を取り戻すのは良いことだと思ってたのに。
…私の料理が美味しいから?やっぱり1人が寂しいから?

  • No.197 by イナリ  2024-05-26 19:13:41 

……自分で申したこと位、覚えてなくてはならんな。

(貴方のおかげだ。改めてそんなことを言われると、ああ、そんなことを言ったなと今更ながらに思い出す。何気なく言った言葉であったはずだが、彼女はそれを明確に覚えていて、きちんと守ってくれていたのだ。そんな彼女と裏腹に自分で言ったことすら覚えていない不誠実な自分を自嘲気味に鼻で笑う。同時に彼女からの問い掛けに、小さく息を吐くとこれ以上隠し果すことは出来ないと観念する。あの静かな声色で真剣に問いかけられては、逃げることは出来ない。イナリは初めて人間に胸中を打ち明けることを決意した)

…最初はお主の言うように、ここに留めておくつもりなど毛頭なかった。お主を神隠ししたのも我の気まぐれよ。飽きたら何ぞ理由を付けて放り出せば良い。そう思っておった。
…じゃが段々とお主に違和感を覚えた。お主と居ると、今まで感じたことの無い感情や、見て見ぬふりをしてきた思いを具に感じさせられた。料理が美味い。一緒に居ると退屈せん。孤独が紛れる。そうやってお主のことを知れば知るほどな。
…今宵まで分からんかった。否、分からぬふりをしてきたが、先の聞こえぬふりをしたお主の言葉で、ようやっと覚悟した。
…日向静蘭。我はお主に懸想している。

  • No.198 by 日向 静蘭  2024-05-26 19:46:58 


……え?

(てっきり、なんとなく放っておけないとか、それらしい言葉でまた誤魔化されるのかと思っていたのに。真剣に返してくれる彼の事を見つめながら、最後にはどんな言葉を突きつけられるのだろうかと覚悟していたのに。
聞こえてきたのは意外すぎる言葉で、頭の中にある辞書を必死に開いて《懸想》の意味を調べてみる。──異性に思いをかけること、又、恋い慕うこと。──国語の教師だったことにこれほど良かったと思ったことはないが、それと同時に全身が熱くなるのを感じ、目頭にもじわりと熱が伝わり瞳を濡らす。
襲い来る幸福感と羞恥心に思わず力が抜け、両手で顔を覆ったまましゃがみ込む。
彼に想われていたなんて予想外すぎるが故に、未だ理解が追いついていないが、1箇所ひっかかるところがあり、しゃがみ込んだ膝に顔を埋めながら、いじけたように小さく文句を垂れた。)

………なによ、やっぱり聞こえていたんじゃない。酷いわ。嘘つき狐だわ。

  • No.199 by イナリ  2024-05-26 22:00:16 

す、すまぬ…。お主が突然申した故、酔い故の戯言だと思ってしまったのだ。
いや…戯言だと信じたかったのやもしれぬ。

(瞳を濡らした彼女の苦言に眉を下げながら謝罪する。しゃがみ込んでしまうと、一瞬彼女を抱擁しようかと思ったが、すぐに思い直してやめる。今の自分に彼女に触れる権利はないように思った。自分は彼女欲しさに彼女の自律的な成長を妨害しようとしたのだ。自分は最低な妖だ。彼女の言うように嘘吐きだ。いつの日か、かつての妻に言われた「お前に人間の気持ちは分からない」という言葉の意味をようやく解せたように思う。確かに自分には彼女の気持ちを見抜く力がなかった。自分の胸中を打ち明けたというのに、どうしても無い程の自己嫌悪が襲う。今のイナリには、片膝をつきながら彼女の背中を撫でることが精一杯だった)

…我は最低じゃな。お主欲しさに束縛しようとした。お主の成長を妨げようとした。
この上は如何なる罰を与えられても致し方ないのう。…お主にはすまぬことをした。

  • No.200 by 日向 静蘭  2024-05-28 18:57:16 


…まぁ、仕方ないわ。私もお酒の勢いで言ってしまったところがあるもの。ごめんなさい。

(瞼の縁に溜まった水滴を流れる前に拭い取れば、優しく背中を摩ってくれる相手へちらりと視線を向けて上記を返す。苦言は申したが、なにも彼だけが悪い訳では無く、突然あんなことを言ってしまった自分にも非があるのは分かっているようで。実際酒に酔っていたとは言え、彼を困らせてしまった事実は変わらないし、此方も小さく謝罪を付け足した。
そして、尚も申し訳なさそうに片膝をついたまま話す様子を見つめていれば、彼が言い終わると静かに立ち上がり、背中を撫で続けてくれていた相手の手を取って共に立ち上がらせる。)

……貴方も私も生きているんだもの。感情がある以上、色んな想いが生まれるのは自然なことよ。
…私も自分の想いに素直になるのは苦手だけれど、素直なままで良いと思わせてくれたのは貴方よ?
…でも、そうね、正直…失礼な事ばかり言ってしまっていたし、懸想されているだなんて驚いたけれど。

( その手を両手で包み込んだまま、相手の言葉に首を横に振りながら小さく微笑みを向ける。
昔から、自分の中にある複雑な感情は苦手だった、変なところで馬鹿正直に言葉が出るくせに、他人に弱さを見せたり傷ついているところを見せるのは嫌だった。愛や恋など自分には必要ないとどこか強がって何食わぬ顔で生きてきた。“愛が欲しい”という願望は自分にそぐわない哀れな願望だと思っていたけれど、きっと、抱擁してくれたあの時から、少しずつそんな考えを彼に拭われていたんだと思う。)

  • No.201 by イナリ  2024-05-29 20:23:52 

……白状するとだな。お主の言動なぞ、かつてここらに集落を築いていた民ほど不敬でもない。彼奴らの馴れ馴れしさに比べればお主は可愛いものよ。寧ろ…我の方が不届きなことをしていたやもしれぬな

(彼女の私物を見たことや、着替えを覗いてしまったことなどを思い出しながら言いづらそうに、への字口になる。いずれもわざとでは無いとはいえ──前者は多分にイナリの意思が介在していたようにも思えるが──不適切な行為だったと人並みには自省する。ただ今はあまり追求されたくないので、具体的なことは言わないでおく。だが彼女の"不敬"な行為を心底不敬とは思っていなかったのは偽らざる本音だった。むしろ心地よくあったのかもしれない。自分の戯言を宥め、時には子供のように扱われた故に、そこに一種の"愛情"を見出していたのかもしれない。愛が欲しいと願った彼女の前で、イナリは分からないと答えた。その答えを持っていたのが彼女だったというのは、なんとも寓話のようだった)

…我自身もお主を想っていると自覚した時、驚いた。そしてお主が放った一言…それを聞いた時、嬉しくもあった。…じゃが同時に我は恐怖してしまったのだ。
……のう、静蘭。我はこの先もずっと生き続ける。今世紀も来世紀も。じゃが…我は生き続けるのに、お主はおらぬ。この社も、いくら朽ち果てようと我と共にあるのじゃろうが、お主だけがおらぬ。それを思うと……恐ろしいのよ。まこと、人の命は儚きものだと。

(微笑みかける彼女とは対照的に、唇を噛み締めながら心底悔しそうにする。幼少の頃より知っている男、イナリの信者だった武士、そして男勝りな妻。今まで近しい人間を失い続けたが故の恐怖だった。在りし日の思い出と共に彼らの死に様が鮮明に思い出される。そして今度は彼女が。彼女の温もりを感じる度に、いつか訪れる"その日"を想像せざるを得ない)

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