鞍馬之神の嫁(〆)

鞍馬之神の嫁(〆)

鞍馬  2022-06-19 21:20:34 
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…嫁、を。待って、いる。

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  • No.21 by 陣  2022-06-21 22:34:07 

っ――…はい。先ほど貴方様は、人は食わないとおっしゃいました。それは…本当なのですか。
(ぽつりぽつりと自らの名を呟くその姿に不思議と心がざわつき、思わず目が離せなくなる。優しく伸ばされた腕に一瞬体を強張らせたものの、柔らかく頬をなぞる掌の感触に、張り詰めていた緊張の糸が切れたように今まで固く握りしめていた拳を解くと思わず小さく息を漏らす。身の内から感じる、恐怖とはまた違う不可解な鼓動の高鳴りを無理やり押し留めながら、神に向かい静かに問いを投げかける)

  • No.22 by 鞍馬  2022-06-22 07:23:11 

…ほんとう、だ。…今、までの、嫁、は…私、の姿を見て…自決、してしまった、だけ…だ。…お、前は…私、を、恐れない、のだな。
(ぼそり、穏やかな小声で呟くように答え、無数の腕と足を優しく撫でながら悲しげに微笑む。今までの嫁のものと思われる女物の白装束や角隠しを側の桐箪笥から取り出し、薄布に沁み込むような大粒の涙を流した後亦、新たな嫁の方に顔を向き直らせて首を傾げ)

  • No.23 by 陣  2022-06-22 10:10:55 

そん、な……。あ…自分、は――御前で、嘘は…つけません。初めて貴方様を目にした時…恐れは、確かに在りました。これから、食われるのだという恐怖が。けれど…貴方様は――
(紡がれた真実に言葉を失い、頭を抱える。今まで信じていたものが総て誤りだったと知り暫し呆然としていたが、贄のものであった装束を抱え涙を流す神が瞳に映ると胸が締め付けられるように苦しみだす。初めて対峙した瞬間を思い返しならがも立ち上がり、ゆっくりと神の前に歩みを進めると言葉を切り、薄布で隠された相貌をどこか悲痛を帯びた表情でひたと見つめ)
…御身に触れても、構いませんか。

  • No.24 by 鞍馬  2022-06-22 14:56:05 

……あ、あ。構わ、ない。…これ、は…私の、本当、の…腕、だ。
(一時だけ面食らったように声が上擦るものの、身を捩って近づいた後に無数の腕の内からひとつ、年の頃はまだ若く、青年のような―だが、肉付きも骨も年の割には随分と華奢、日に焼けた色もない腕が恐る恐ると云った様子で嫁の方に差し出される。薄布越し故鞍馬自身の表情は伺えないが、腕の皮膚はほんのりと薄紅色に染まっており)

  • No.25 by 陣  2022-06-22 18:57:48 

…貴方様の腕で、先刻…私に触れてくださいましたね。――…もう随分と久方ぶりだったんです。あんな風に優しく、誰かに触れられたのは。だから……その。嬉し…かったんです。
(差し出された腕に視線を落とす。先ほどのものとは異なるどこか色を持ったその腕にそっと触れると、筋に沿ってゆっくりと擦る。次いで自らを落ち着けるように小さく息をつくと、再び神をまっすぐに見据えぽつりぽつりと語りかけ始めた。触れられた頬に先程の掌の感触が蘇り、どこか恥じらうように視線を逸らすも、再びしっかりと神を見据えるとおもむろに自らの腕を伸ばし、先程の涙の跡を拭うように、薄布の隙間に手を差し入れるとするりと指の腹で頬をなぞる)
鞍馬之神様――私はもう、貴方様に恐れなど…感じてはおりません。

  • No.26 by 鞍馬  2022-06-22 19:28:43 

…そう、か。なら、ば…陣。私の、ことは、鞍馬、と。呼んでは、くれないか?
(その言葉にゆっくりと、何度も安堵したように頷くと顔を覆う薄布を静かに下ろし、腕を引き込めて薄く微笑んだ。再び腕を嫁の頬に伸ばし、慈しむ様に、愛し気に何度も触れてはその後瞳を伏せ、これまで以上にたどたどしい言葉で、嫁の名を呼ぶと薄布越しでも判る程顔を赤く染めながら照れ臭そうに続け、嫁を見つめて)

  • No.27 by 陣  2022-06-22 21:27:59 

い、いえ、しかし…。…では…鞍馬様、と――………ふ。
(無自覚の儘に思わず相手の貌に触れていたことに気づくと慌てて腕を引き戻す。再び自身に伸ばされた腕に今度は面映ゆく感じながらも、頬を撫でられる掌の心地よさに目を細め身を委ねる。ふと名を呼ばれ、次いで出た願いに無礼になりはしないかと狼狽えてはいたものの、視線を感じ瞳を合わせると、布越しに微かではあったものの神の赤らんだような相貌に気づき、思わず微かに微笑みを浮かべ)

  • No.28 by 鞍馬  2022-06-22 23:27:23 

……何、が…可笑しい。……そ、うだ…陣、腹、は…減らない、か。何か、用意…し、よう。
(顔の赤らみに己でも気付いたらしく、薄布で覆われた顔を更に腕で覆い隠しつつ、紅葉のように赤い顔を背けては精一杯、虚勢を張るように低い声で問い掛ける。が、其れも束の間、腕をゆっくりと下ろすと逃げるように座椅子を立ち上がり、ぺたりぺたりと心做しか早い足音を鳴らして台所の方へと歩き去ってゆく)

  • No.29 by 陣  2022-06-23 08:22:51 

…はは、本当に…聞いていた話とは全く違う…。なんて優しい――……、っ!
(慌てたように歩き去ってゆく神を目で追いながらも、胸の内から湧き上がる暖かな感情にフと表情を緩める。歩き回る訳にもゆかず座して待とうと踵を返した刹那、足がもつれがくりと膝からくずおれるとその場にへたり込む。張り詰めていた糸が切れたためか、昨日から水以外何も口にしていないためか、いくつかの原因が脳裏をよぎるも、力の入りきらない腕で何とか上体を起こしずるずると下肢を引きずりながらも自身に与えられた座椅子に向かい何とか腰を落ち着けようとする)

  • No.30 by 鞍馬  2022-06-23 10:51:12 

…握り飯、と…漬物、で、いい、か…?…たん、と…食え。
(無数の腕で飯を握り、桶に詰めて台所から戻ってくると再び座椅子に腰を下ろし、嫁の座る座椅子の前の卓袱台に置くと亦立ち上がって台所に戻り、今度は小皿に盛られた茄子の浅漬けを二つ掌に載せ、其れを再び卓袱台の上に置く。それから座椅子に腰を下ろし、柔らかく微笑んで嫁を愛おし気に見つめて)

  • No.31 by 陣  2022-06-23 11:16:40 

…ありがとうございます。――…。おいしい…。
(なんとか座椅子に腰を下ろし息を整えていると、目の前に食事が並べられていく。醜態が神の目に触れなかったことにほっと胸をなでおろしながらも今しがた握られたであろう握り飯と目の前の神を交互に見、本当に食してよいものかと少々躊躇ったものの、空腹には叶わずその中の一つを手に取ると「いただきます」と小さく呟き一口頬張る。久方ぶりの飯の味に思わず顔を綻ばせ感嘆の声を漏らしながら一口一口噛みしめる)

  • No.32 by 鞍馬  2022-06-23 11:55:27 

…そう、か。まだ、ある、からな。
(握り飯を頬張る嫁の姿を心底愛おし気に見つめると頬杖をつき、穏やかな声で言葉を続けてはまだ大量に残っている桶の中の握り飯を卓袱台の上に置いていく。嫁を見ながらも自身で薄布を捲っては握り飯を口に放り込み、漬物を食べて何度か頷き)

  • No.33 by 鞍馬  2022-06-23 11:55:57 

(下げ忘れ申し訳ございません。)

  • No.34 by 陣  2022-06-23 13:58:12 

はい。ありがとうございます。……俺、誰かと、こんなにうまい飯を食べたのは…久しぶりです
(飯に夢中になっていたことに気づきはっとして、ばつが悪そうに漬物を齧るとちらりと神に視線を向ける。同じように握り飯を口に運んでいる姿を見て薄っすらと微笑むと、ふと村でのことを思い返しぽつりと呟き)

(/ 了解いたしました。まったく問題ございませんのでお気になさらず…自分の方も恐らくいつかは忘れる事があるかと思いますので、ご了承いただければと思います。ついでになのですが、今後何か起こしてみたい事象等ありましたらいつでもお声がけくださいませ。)

  • No.35 by 鞍馬  2022-06-23 18:17:46 

(了解致しました。)

……お前、は…独り身、なの…か?………昔、の…私の、ことを。語っても…よい、だろうか。
(己の分らしい握り飯と漬物を平らげ、鞍馬は薄布をゆったりと戻しつつ嫁に問う。暫くした後ぼそり、呟くように零すと許可を求めるように首を傾げ、嫁をじっと見つめた)

  • No.36 by 陣  2022-06-23 19:39:38 

……はい。私は…厄介ものでしたので――…。鞍馬様の話ですか?…是非。お聞かせください。
(神の問いに言葉を濁すようにそう答えると、口に含んだ最後の一口を飲み込み「ご馳走様でした」と呟く。次いで発せられた言葉にはっとして顔をあげるとこちらを伺う視線と重なり、小さく頷くとぴしりと姿勢を正し)

  • No.37 by 鞍馬  2022-06-23 20:01:32 

…私、は…な。昔、から…この姿、だった、のだ。
(鞍馬は許可に一度だけ頷き、ぽつりぽつりと話を始める。かつては奇形の人の子として生まれたこと、多腕多足の姿を見た村の人間には化け物だ、忌み子だと蔑まれたこと、祟り神の贄として捧げられ、人の道を外れた神に成す術もなく食われてしまったこと、そうして次に目が覚めた時にはこの社にたった独りで暮らしていたこと。一通り語り終えると静かに目を伏せ、自虐の色が見える微笑みを口許に浮かべる)

  • No.38 by 陣  2022-06-23 22:55:14 

……っ、そう…だったのですか…。鞍馬様ご自身も…贄、だったのですね
(言葉の一つ一つを静かに聞いていたものの、その生の有り様に目を見開き絶句する。自身が先刻抱いていた恐怖とは比べ物にならない、寧ろそれ以上のものをその身に感じていたのだと思うと胸が詰まる思いがし、苦悶の表情を浮かべながらもどうにか言葉を絞り出す)

  • No.39 by 鞍馬  2022-06-24 07:33:24 

…もう、昔、の…こと、だ。………皿を、片付ける。
………世話役の娘、だ。服、や…飯、は…此奴に。
(気に病むな、と云うように御簾の隙間から外を眺め、暫くそうした後嫁の方に目線を戻すと柔らかな微笑みを湛え、座椅子を立ち上がって桶と皿を手に持ち、台所の方へと戻っていく。鞍馬が台所に消えて直ぐ、廊下の奥から黒髪に狐の面を被った小柄な童女が顔を覗かせるなり、嫁の方へと素早く走り寄ってきては舌っ足らずな幼い声で三つ指をつき、深々と頭を下げる。戻ってきた鞍馬は童女の頭を優しく撫で)
「陣様、おはつにおめにかかります。わたくしはくらま様からあなたさまのおせわを申しつけられました、もみじ、ともうします。」

  • No.40 by 陣  2022-06-24 10:16:07 

――ですが…。 !あ、は、はい…。どうぞ、よろしくお願いいたします…
(気に病むなとの声に開きかけた口を閉じ項垂れ、片付けられて行く膳をぼんやりと眺めていたものの、目の前に現れた童女に驚き目を丸くする。どこか愛くるしいその言葉遣いにふと表情を和らげるも、未だ賓客の様に扱われている事に慣れぬ様子のまま世話役の娘に丁寧に頭を下げる)

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