✿ 常世からの呼び声 (創作/指名制)

✿ 常世からの呼び声 (創作/指名制)

✿ 主  2018-11-05 05:29:18 
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随分と長い間、貴方は石階段を登ってきた。

その場所に見覚えはないだろう。
左右は鬱蒼と茂る木々に挟まれて、暮れなずむ陽は貴方を朱く照らし続けている。石階段の終わりには随分と古びた鳥居が一つ、その先が神社であると推測するのは難しくない。けれど貴方がそれを認識できるかは、別だ。

思考も感覚も朧げな貴方に分かるのは一つだけ。
呼ばれている。
呼ばれているから、石階段を登っているのだ。

一段、貴方は足を踏み出す。
一段、着実に一歩ずつ。
一段、足取りは不確かに。

そうして終わりが見えてきた。
後一歩、その石階段に足を載せれば鳥居の向こう側を見ることができる。鳥居の向こう側にいる、貴方を呼ぶ何者かがそこに居る。

一段、貴方は最期を迎える──筈だった。


>幸運にも誰かが貴方の手を掴む。そしてもう片方の手で、しぃ、と口元に人差し指を当て、貴方を石階段の下へと誘った。



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  • No.41 by 名無しさん  2018-11-12 21:18:57 



(/>40です。ちなみに好きな花は水仙です。では、よろしくお願いします。)

  • No.42 by 倉留 鮮  2018-11-12 23:18:47 



>36 銀弧

( 射抜かれた。深い、透明な青の瞳に。“困ったな”、なんて呟きに咄嗟に反応できなくて、されるがまま羽織まで掛けられぽかんと背中を見送った。……それにしてもこの男、大層人間が出来ている。勢いよく駆け出して行ったかと思えば、なんとその手に竹水筒を握って戻ってきたのだ。出会って数分と経たない人間に何がわかるのかと言われれば否定はできないが、ただ何となく軽薄そうな外見の印象とはイメージが違い、純粋な驚きから目を瞬かせてしまう。男が行って帰って来るまでの経過時間からその水筒をどうやって入手したのか見当をつけようとしてみたが、眼下の街並みにはあまりにも見覚えがなく、断念せざるを得なかった。「……悪いな」とりあえずは差し出されたそれを受け取って、素直に謝罪の言葉を述べる。頭の先まで海水に浸かったような意識の混濁は、今にして思えばきっとほんの一瞬だった。息が続かなくなる前に引き上げられたから、ページを前へ前へと繰るように思考を辿ってみると、当時の記憶も何となく蘇ってくる。──訳も分からずひたすらに、階段を上っているところまでは。
水筒に口を付けて、ゆっくりと傾ける。滑り落ちていく冷えた真水に喉が潤うと、十分落ち着いたと思っていたこれまでよりももっと冷静な思考と視界が拓けて途端に気まずさに襲われた。良く考えずともはなからおかしなこの状況が、最高潮の瞬間を過ぎてどしりと重くのしかかってくるような感覚だ。とにもかくにもこの男は、一体どうして俺の歩みを止めたのだろう。一番に考えられる可能性としては、あの鳥居の先に何かしらの不都合があるのではないかということ。と、そこまで考えてはっと気が付いたが、そんなことよりも自分が気にしなくはならないのは、ここがどこで彼が誰で……そして自分は誰なのか?という、あまりに初歩的なプロフィールの方だった。
どうも俺は自分がどこの誰であるかという知識が欠落していて、この身体が自分のものだという実感がさっぱりないのだ。思い出がないと言ってもいい。俗に言う“記憶喪失”と称される状態にあって、自分のことだけでなく、この場所も、目の前の男のこともわからないなんて有様なのである。どういった経緯でこの階段を上っていたのかすらまったく説明がつかないのだが、彼にありのままを伝えることは憚られた。そもそも、目の前の男の頭や腰から獣のそれが生えているように見えることこそが異常の証明、己の幻覚なのではという思考が脳裏をよぎる。こんなわけのわからないことを告げて、精神状態がおかしいと気味悪がられてもちっとも不思議ではない。第一上手く説明ができるとも思えなかったので、変に訝しがられておしまいだということは簡単に想像がつく。しかしそれにしたってとりあえず何か言わなくては、と必死に考えた結果──受け取った水筒の返却を示すように掲げて、まだ言っていなかった礼を述べることにした。 )
あ、ありがとう……?


(/参加許可ありがとうございます……!どうにかお付き合いいただければなんてとんでもない。似たような流れをなぞらないよう努力いたしますので、こちらこそどうかお付き合いいただければ幸いです。
承知いたしました。当方ムラレスの傾向があるのですが、時間を見つけてやりとりできたらと思っております。お話ししている最中気になる点等ございましたら何なりとご指摘くださいませ。これからよろしくお願いいたします!)


  • No.43 by 名無しさん  2018-11-13 00:31:53 

名前: 綾辻 和哉(あやつじ かずや)
性別: 男
年齢: 24
性格: クールで真面目/優しい/弱いところは滅多に見せない
容姿: 黒髪の短髪、茶色の瞳、程よく筋肉のついた細身の体つきで身長は173cm。ダークブラウンのコートを着ていて、下は白いトレーナーに黒いジーンズ、茶色の革靴。肩にショルダーバッグを下げており持ち物はその中に収納している。黒縁の眼鏡をかけている。
持ち物:教師の免許証と眼鏡ケース、携帯電話のみ。免許証には氏名と性別、年齢が記入されている。
備考:高校の教師。担当教科は数学で真面目に授業を教えていた。私生活では、アパートに一人暮らしで、そこそこの給料で生活していた。仕事に行く道の途中で見慣れない石階段を見つけ、何かに呼ばれるように常世に繋がる階段に足を掛けた。一人称は「僕」、二人称は「お前、君、呼び捨て」。
指名: そちらで相性を見て合いそうなC
ロルテ:(何が何だか分からないまま誰かに腕を引かれ石階段を下りていき、辺りが暗くなっていくのに加え目の前の明らかに人間ではないであろう素性を知らない相手に不安を感じつつも怪しまれると思い無言のまま相手についていくもこのまま帰れないのではないか、最悪誘拐されて監禁されてしまうのではないかなどと言う不安に耐えきれず、ついに沈黙を破るように「……僕を何処に連れていくんだ?……ここは何処だ?」と冷静をたもつも不安を隠せない声で相手に尋ね)

(/>41です。プロフィールが出来ましたので提出します。不備や相性が合わないなどありましたら声掛けしてください。ちなみに結末は(2)か(3)を希望します。では、確認、よろしくお願いします。)

  • No.44 by 名無しさん  2018-11-13 08:37:11 

名前: 綾辻 和哉(あやつじ かずや)
性別: 男
年齢: 24
性格: クールで真面目/優しい/弱いところは滅多に見せない
容姿: 黒髪の短髪、茶色の瞳、程よく筋肉のついた細身の体つきで身長は173cm。ダークブラウンのコートを着ていて、下は白いトレーナーに黒いジーンズ、茶色の革靴。肩にショルダーバッグを下げており持ち物はその中に収納している。黒縁の眼鏡をかけている。
持ち物:教師の免許証と眼鏡ケース、携帯電話のみ。免許証には氏名と性別、年齢が記入されている。
備考:高校の教師。担当教科は数学で真面目に授業を教えていた。私生活では、アパートに一人暮らしで、そこそこの給料で生活していた。幼少期に父を病気で亡くし、母を養うために学校で習った知識を生かし数学教師になった。仕事に行く道の途中で見慣れない石階段を見つけ、何かに呼ばれるように常世に繋がる階段に足を掛けた。一人称は「僕」、二人称は「お前、君、呼び捨て」。
指名: そちらで相性を見て合いそうなC
ロルテ:(体が勝手に動いている感覚ーー、自分は何処に向かっているのか分からないまま只ひたすら石階段を上っていくとふと突然誰かに腕を掴まれ、上っていた石階段を下りていき未だに腕を放さない目の前の明らかに人間ではないであろう素性を知らない相手に不安を感じつつも怪しまれると思い無言のまま相手についていくが何処へ連れていかれるのか、最悪誘拐されて監禁されてしまうのではないかなどと言う不安に耐えきれず、ついに沈黙を破るように「……僕を何処に連れていくんだ?……ここは何処だ?」と冷静をたもつも不安を隠せない声で相手に尋ね)

(/>43です。プロフィールに間違いがありましたので修正したものを再提出します。不備や相性が合わないなどありましたら声掛けしてください。では、改めて確認、お願いします。)

  • No.45 by 名無しさん  2018-11-13 12:21:32 

名前: 綾辻 和哉(あやつじ かずや)
性別: 男
年齢: 24
性格: クールで真面目/優しい/弱いところは滅多に見せない
容姿: 黒髪の短髪、茶色の瞳、程よく筋肉のついた細身の体つきで身長は173cm。ダークブラウンのコートを着ていて、下は白いトレーナーに黒いジーンズ、茶色の革靴。肩にショルダーバッグを下げており持ち物はその中に収納している。黒縁の眼鏡をかけている。
持ち物:教師の免許証と眼鏡ケース、携帯電話のみ。免許証には氏名と性別、年齢が記入されている。
備考:高校の教師。担当教科は数学で真面目に授業を教えていた。私生活では、アパートに一人暮らしで、そこそこの給料で生活していた。幼少期に父を病気で亡くし、母を養うために学校で習った知識を生かし数学教師になった。仕事に行く道の途中で見慣れない石階段を見つけ、何かに呼ばれるように常世に繋がる階段に足を掛けた。一人称は「僕」、二人称は「お前、君、呼び捨て」。好きな花は水仙。
指名: そちらで相性を見て合いそうなC
ロルテ: (体が勝手に動いている感覚ーー、自分は何処に向かっているのか分からないまま只ひたすら石階段を上っていくとふと突然誰かに腕を掴まれ、上っていた石階段を下りていきしばらく無言のまま相手についていくが何処に連れていかれるのか?なぜ、せっかく上った石階段を下りるのか疑問となぜか何も思い出せないことに対しての不安を感じて下につくと同時に何か話そうと口を開き「……僕を何処に連れていくんだ?」と冷静をたもちつつ相手に尋ね)

(/すみません、好きな花を忘れていましたので修正したものを再提出します。連投失礼しました。改めて、確認、お願いします。)

  • No.46 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-13 16:44:47 



黒縄 ▷ >38:繭

(見目よりも少し幼いように感じる貴方をどう扱っていいものか困っているらしい。危なっかしい貴方を放置して何処かへ行くなんて選択肢はこのお人好しの烏天狗の中には無いが、やや眉を寄せて貴方に体を揺さぶられている。安全な場所までは貴方に静かにしてもらいたい気持ちも有りながら、其処までは暫し歩くことになる。ずっと黙っておけと言っておくのは困難であるような気がして「……騒がないのであれば構わない。ただし、俺から離れるな。」と小さな声で許しと注意を一つずつ。袖を握っている貴方にたじろぎながらも拒絶こそせず、足取りは確りと入り組んだ路地へと。道中すれ違うのは幽霊に慣れ親しんだ貴方にも異質に映るであろう魑魅魍魎の類。其れ等はギラギラと貴方を見つめては、共に歩く烏天狗に気付くとふっと興味を失った様子をみせている。)

(/一度背後は引っ込みますが何かあればお気軽にお申し付け下さいませ……!)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

黒縄 ▷ >39:苑

(人間は脆くて壊れやすい、それが烏天狗の数少ない人間への認識であり貴方が不調を訴えない様子に顔には出さないものの安心を。「多少寝ずとも構わん、お前ほど脆くない。」要するに貴方が寝ていた間、己は寝ていないのだと告げてそれを貴方への返答とし。言葉の通り寝ておらずとも数日程度であれば活動が可能であり、貴方の見た限りこの烏天狗に不調であるような様子はない。この赤みを帯びた陽射しは常世に於いては慣れ親しんだものであるが貴方にとっては不思議に映るらしい、と貴方の口ぶりから察すると「気になるなら日除けが必要か。」と陽射しの入り込む明り障子を見やりぽつりと呟いて。掃除用具のことを言われれば「置いておく、気が向けばすると良い。」とやはり貴方に掃除を強要することはない。貴方が布団を畳み仕舞い終えるのを見届けると共に「お前に必要な物を買いに行く。」と告げ、貴方が此方へ来るのを待っているのかその場に止まったままで。)

(/確かに黒縄は結構な大男な上に無愛想ですから、私も改めて想像してみて少し笑ってしまいました。では一度背後は引っ込みますね、何かあればお呼びくださいませ!)


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銀弧 ▷ >42:鮮

(貴方が様々な葛藤を頭の中で巡らせていたとはつゆ知らず、貴方からの礼を聞き銀色の耳をぴくぴくと動かして上機嫌。軽く息が整った頃、にへらと締まりなく口を弧に描くと「どういたしまして。」と返答、貴方から軽くなった竹水筒を受け取り満足げで。ゆるりと左右に揺れる尻尾は落ち着きのなさを示しており、青色の瞳は細められ貴方をじぃっと見つめている。人間を初めてみた妖狐にとって貴方は興味を引く塊でしかなく、色々聞いてみたいし触ってみたい、食べてみたいなんて欲求もほんの少しだけ。でも食べてしまうのは勿体無いし、何より──妖狐は安寧とほんの少しの刺激と楽しみが欲しい。それを実現するためには貴方を食べてしまうよりも何処かに匿う方が良いような気がする。そうだ、そうしよう。なんて単純でありながら貴方には到底理解できないであろう思考回路で貴方の助けとなることに決めていた。ともなれば早速貴方を自分の寝座へと招待しなければ、少なくともこんな石階段の上で呆けている場合などではない。貴方の手を取ると「じゃ、そろそろ行こう。」と貴方の手を軽く引っ張って。)


(/早速今回、短めのお返事になってしまい申し訳無いです……!読むのは大好物なのですが、規約に記載した通り一〇〇〇字を超えると対応しきれなくなってしまうというのもひとつ、此方が複数の方々とやりとりしているということもあって、今後もやや短めのお返事が続くかもしれません……。此方はムラレス気にしませんので、ご自由に言葉を紡いでくださいね!
一度背後は引っ込みますが何かありましたら呼んでくださいませ!)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

▷ >45:和也背後様

(/参加希望並びにPFの提出有難うございました。不備は見当たらないのですが、個人的に相性の不安を感じておりまして……大変申し訳ありませんが今回はお断りをさせてください。興味を持っていただけて嬉しかったです。)


  • No.47 by 篁ふみ  2018-11-13 17:08:07 




>36 主様 / 銀弧さん


( 手を引かれるまま、網膜を刺激する、己とはまるで対照的な艶やかで、鮮やかな色彩を持つ見知らぬ人物の彼に胡乱な視線を送ると共に、それを下から上へとゆるりと移動させる。一つ、先刻までは気づかなかった或る物がはたと視界に入る。くるりと此方を振り返り鮮明に映った端正なかんばせには、妖しげな色を纏い──そして頭上には耳が二つと、臀部付近には大きく振り子さながらにゆるりと揺蕩う尾が一つ。人間と思しき姿をした人物に、俗に動物に見られる物体。本来ならば有り得ない奇妙な容貌に驚きを隠せず、黒曜をまあるく瞠目し彼の端的な自己紹介にさえ反応を返す事が出来ず。餌を待ち侘びる金魚の如く、はくはくと口を開閉する様は傍から見れば滑稽そのもの。されど、掴まれた腕から伝う柔らかな体温に得体の知れぬ温かい何かを感じ、抵抗するわけでもなく面映ゆそうに黙って追従し。ぱ、と突然手が離れれば玉響の沈黙が破れ、葉を目に捉えたのを最後に言われるがままきゅう、と目を瞑り、頭頂部に一瞬感じた葉の感触を皮切りに再び双眸を開く。彼の美しい青眼はどうやら己の頭と腰元を目視している様で、徐にそちらに手を伸ばすと、ふわり。細やかな感触に思い切り身体を後ろへ捻れば、そこに在る物は眼前の彼と同じ動物の尾。今度ばかりは双眸だけでなく口もぽかりと開け、狼狽のあまり「 え、な、なにしはったん?!けったいやわ… 」驚愕と唖然、呆然、ひどく取り乱し一段上へと登る。手元は依然として頭と腰元を行ったり来たりしながらも、視線は一点のみ、彼をじいと見詰め、そして不安の色を顕に眉根を仄かに顰め、念の為距離を取ろうと一段、また一段と石階段を登り。 )
貴方、もしかして───…妖怪?


( /PFの確認及び参加許可、誠に有難う御座います…!いえ、此方こそ素敵な物語を一緒に紡いでいけたらと思いますので、どうかお気になさらず…!拙い所もあるかとは思いますが、是非ともお付き合いして頂けたら幸いです。優しいお言葉有難う御座います、此方に何か問題点等出てきましたら遠慮なく言ってくださいませ。これから宜しくお願い致します! )



  • No.48 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-13 17:44:14 



▷ 和哉背後様

(/>46の宛先、急ぎ打った所為か名前を間違えてしまっており大変申し訳ありません……!訂正とお詫びを申し上げます。)


  • No.49 by 御子神 苑  2018-11-13 18:02:51 


>46黒縄

(脆いのは確実だ。心であれ身体であれ何処か一部でも均衡を崩せばそれは不調として認められるのだから。白皙では余計軟弱に見えても不自然ではあるまい「頼もしいのですね、人間は何かと怪我や病を患う機会が多いものですから自己管理は怠るなという戒めであるとも受け取りましょう」感心しているのはまごう事なき本心からによるもの、然し人間よりは丈夫であれど決して不調を起こさないとは断言していないのだから人間一人の為に無理をさせては申し訳が立たず膝に両手重ね。気遣いの言葉にはたと顔を上げ優しくかぶり振り、気遣い不要なただ思うが侭の独り言であるのを伝えておこう「僕の知る赤い光とは違って見えたのでつい言葉に出してしまいました、この光の訳を知りたいのです」掌で透かしてみても尚赤々とした色味は常世に住う者には日常的な光景なのだと把握。そうしている内にも刻一刻時は進むばかり、漸く僅かばかりの恩返しを手にした所で素晴らしい誘い文句に頬輝かせ「是非。そうですかこの世界でもお買い物はあるのですね」日用品から雑貨までそれらがどういった形状でどのような機能を持つのかが気になって仕方ない、とお楽しみの裏に問題を発見「ですが僕には金銭の持ち合わせが無いようで_」側へ向かい言い澱む表情は言い訳のいの字も出ておらず。)

  • No.50 by 倉留 鮮  2018-11-13 18:39:28 



>46 銀弧

( 水筒を受け取ると、男は素直に破顔してみせた。そんなに単純でいいのかってくらい無防備な笑みに、記憶のない“俺”は困惑する。彼と自分の関係性がまるで想像できなかった。随分フランクな態度だし、元々知り合いだったのだろうか?ならばよそよそしい態度を取ると不審がられるかも……なんて、言葉を紡ぐ余裕がないくらい必死に頭を働かせても、この階段を上っているより前の記憶は何一つ帰ってきてはくれなかった。不安に押し潰されるギリギリの精神状態で──この手の温もりが俺を慰める。皮膚に感じる優しい人肌を、突き放すことは出来なかった。……可笑しな幻覚のせいで、人かどうか怪しい姿はしているが。
じゃ、そろそろ行こう。そんな男の台詞に目を丸くする。自分は階段の上を目指していたはずなのに、元々二人で階段を下ってどこかを目指していたような口ぶりに混乱して、流されるまま首肯した。……いやいや、一体どこへ向かうというのだろう。動揺している間に、彼はご丁寧に手を引きながらずんずんと歩みを進めていく。どこに行くんだっけ?なんて冗談めかして尋ねるタイミングを逃したことは、火を見るよりも明らかだった。彼の歩みには少しの迷いもない。まあ、一本道なのだけれど。
改めて街並みを見下ろしてみる。見覚えなんてない上違和感付きだってのに、妙なノスタルジーを感じて首をひねった。視界はどんどん平行に近づいていく。高いところから見ている分にはどうとも思わなかったくせに、記憶のない状態で同じ地面の延長に見知らぬ人間がたくさんいることが何だか急に不安になった。緊張を示すように、繋がれた手に力が入って恥ずかしい。それに、二人して同じ場所へ向かうとばかり思い込んでいたが、目的地は別で『じゃ、ここで解散だね。バイバーイ』なんて放り出される可能性は十分にある。とにかく情報を集めなければいけない。自分について、この場所について、この男について。一段一段、終わりに近づくにつれ心臓が暴れる。自分とこの男が知り合いであることを前提とした、何かスマートな名前の尋ね方はないだろうか。……そんなことを必死に思案した末に、思いついた台詞を半ばやけくそで投げかけた。全力で自然を装って。 )
お前さ、名前──どんな漢字で書くっけ……?

(/いえ、申し訳ないだなんて……!こちらこそだらだらと長くなってしまい、頭の下がる思いです……。過度な長文を好んでいるというわけではなくて、簡潔に抑える力量を当方が持ち合わせていないだけですので、謝っていただくことなど何もございません。どうかご安心ください……!レスペースのみならず文字数にもムラがあるタイプなので、本当にお気になさらないでくださいませ。むしろ当方の長文が鬱陶しく感じた際はご遠慮なく仰ってくださいね。
細やかなお心遣いをありがとうございました。それでは当方も失礼いたします。何かございましたらお気軽にお声がけくださいませ。)


  • No.51 by 江國 繭  2018-11-13 19:20:55 




>46 黒縄

(すれ違う魑魅が向ける視線が身体に刺さるのが分かる。面に覆われた安心感の中、虹彩に馴染まない異形を眺めながら僅かな不快感に身を捩り、歩調を速めた。「ねえねえ、貴方は私の大事な人?」粟立つ心と背中を誤魔化すように狭い視界を目の前の彼に向ける。「あのね、なーんにも覚えてないの。だからね、鳥さんは初めて見たものを親だと思うんだよ。」言いつけの通りにぴったりと彼の側に寄ってから囁く。薄い唇は緩く弧を描き、黒の双眸を見詰める。譫言のようなその囁きには、やや遅れて気付き始めた事実への困惑が見え隠れした。昨日の晩御飯、ここまでの道程、自分の素性。全てが刳り抜かれたように、まるで最初からそこになかったのかと錯覚するほどに、何も覚えていない。絶えず自分に向けられる奇怪な視線の源を一瞥すると、顔を覆う面が解けないようきつく結び直す。今この世界で自分を知っているのは、自分を含めても彼しかいないんだと、そう思った。「ここ、どこなのかなあ。」先程の発言を馴染ませるように語尾を伸ばす。冗長に呟いた質問は、前者の質問が頭の片隅ではNOだと分かっているからなのだろうか。)


  • No.52 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-14 10:00:45 



銀弧 ▷ >47:ふみ

(一歩、二歩と貴方が後ずさり階段を登るのを暫し呆然と眺めていて。そんな風に怖がらせる気も驚かせる気もない純粋な善意からの行動が貴方を不安にさせてしまったのだと気付けば少し焦った様子で「待って、それ以上登らないで!」と声を荒げて貴方に制止を。貴方が己から距離を取っているのだということは理解しており、先程のように貴方の手を掴んで下へ連れて行くというのはどうにも悪手であるように思えて貴方への制止は言葉のみに留まった。狐耳はぺたんと伏せられて尻尾はしゅんと垂れ下がっているが、それは貴方を怖がらせたことへの反省のみならず、何かに怯えているような様相を含んでいる。具体的には貴方の背後、鳥居の向こう側──貴方を呼んだ者への怯え。視線は貴方を見ているようで見ておらず、貴方の向こう側に向けられている。「……そうだよ、僕は妖狐の銀弧。」それ以上、上へ行かれては敵わない。貴方を無駄に刺激してしまわないように、貴方に無理に近寄ることはないまま質問に大人しく答えて。)

(/一度背後は引っ込みますが何かあればお気軽にお申し付け下さいね……!)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

黒縄 ▷ >49:苑

(相変わらずの無愛想で「何か問題があればすぐに言え。」と一言、それは貴方に何か変化があってもそれに気付けるほど繊細ではないのだという心の現れであり、自分よりも遥かに弱そうな貴方への気遣いの現れでもある。この烏天狗の知る限り常世の光は変わらずに赤みを帯び、変化らしい変化といえば時折雲に隠れて陰るぐらい。余りに当たり前のことであったからどうしてそうなっているのか、光の訳を知りたいという貴方に適切な言葉を伝えられはせず口を噤んで。金銭のことを気にする貴方に嗚呼と思い出したように懐から小さな巾着を取り出して「持ち合わせはある、気にするな。」と、巾着の中にはずっしりと何かが硬貨のような物がずっしりと詰まっているのが見て取れる。貴方に見せた巾着を懐に再びしまうと「行くぞ。」と貴方に背を向けて早々に玄関の戸を開いて。)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

銀弧 ▷ >50:鮮

(石階段ももう数段で終わり、貴方にとっての未知の場所への入り口はあっさりと眼前に迫っている。考え込む貴方とは真逆に至って楽観的な様子で鼻歌交じりに進んでいたところを、貴方の言葉によって遮られて少々の困惑を示しながらも立ち止まり振り返り「えーと、銀色に弧を描く、で銀弧だよ。」貴方がどうしてそんなことを聞くのかわからないけれど、貴方の思惑通り妖狐は名前を名乗ることになった。一体どうしたのかと疑問を抱きよくよく貴方の様子を伺ってみれば、繋いだ手には随分と力が入っているし、何処と無く緊張や不安を感じているような気もする──最も、貴方が平静を装っているためにこの妖狐にはハッキリと確信にまで至らない。もう殆ど降りてきたとはいえ、此処は長話をするには向かない場所に違いなく早くこの場から離れたいという気持ちはある。しかしながら貴方の様子がどうにも気にかかって無理に貴方の手を引っ張ることはなく、首を傾げて「大丈夫?」と声を掛けて。)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

黒縄 ▷ >51:繭

(貴方の口振りから記憶を失っているということに気付くのは容易い。家族という存在にはとんと疎い烏天狗は貴方の持ち出した親という言葉に一瞬の動揺を見せ、此方を見つめる貴方を見返しながら紡ぐ言葉に困っているのか口を開いては閉じ、暫しの間をおいて「違う。俺はお前を保護しただけだ。」とただの事実を貴方に告げて。「此処は常世だ。お前は、現世から来た。」説明というには随分と簡潔なそれを貴方に伝えつつ入り組んだ道を暫く行けば、やがて辿り着いたのは一軒の平屋。其処は烏天狗が寝座としている場所。他の妖の出入りもあるが、道端ですれ違う貴方をギラギラと見つめる者たちとは違う、貴方を傷つけるような者は居ないからこそ此処へ連れてきた。玄関の引き戸を開けると中の様子は静かであり今は中に何も居ないらしい。丁度良いとばかりに貴方に中に入るように促しつつ自らもその中へ。幾つかの部屋が襖で仕切られている様子が伺える。そのうちの一つ、玄関からほど近い部屋の襖を開けると、其処は押入れがある他には何も無い四畳半の部屋で。)


  • No.53 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-14 10:28:30 



此処を覗いていただいたことに感謝を。
本日も常世にまつわる小噺をひとつ。

「妖の暮らし」について、です。

彼らの暮らしは人間を模した物。貴方が此処で暮らしていくのにも、誰かの手を借りることさえできればそう難しいことではありません。とはいっても、妖達の衣食住の食は抜け落ち気味ですからお気を付けて。因みに和風の街並みが並んでいますが、少し外れた所には洋館も建っております。其処の主人は人間食らいの大きな蜘蛛だとか、なんとか。
貨幣も流通しているようですが貴方が知っているものとは違うようです。狸の印が彫られた金銀銅の三種の硬貨ですが、その価値は店によって違う場合もあるようで……正しい価値は定まっておりません。

それでは今日はこの辺りで。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

前回までの小噺
>10】「逢魔が時」
>20】「季節」


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

>小噺を兼ねたお知らせです。

>複数人が同時にやりとりをしていることもあり、レスを流してしまうことを気にしてしまう方もいるのでは……と、参加者様が本編外のことを自由に綴っていただける場所をご用意しました。

✿ 常世雑記帳
http://saychat.jp/bbs/thread/639937/

>勿論雑記帳への書き込みを強制することはありませんので、今まで通り此方のトピでの質問や相談も可能です。レスを見失ってしまった、提供Cの好物が知りたい、等々些細なことでも構いませんので、何かあればお気軽にお書き込みくださいませ!


  • No.54 by 倉留 鮮  2018-11-14 14:44:14 



>52 銀弧

( 男が振り返った。その輪郭に、白い光が走っているように見える。後ろに夕陽を背負っているからだ。眩しくて目を細める。「銀弧」確かめるように呟くが、少しの聞き覚えもなくて戸惑った。心配そうに声を掛けられて、じわりと甘えが滲みだす。この男と自分が知り合いであるという確証が持てなくて──なんだかもう、疲れてしまった。「……心配?」何の考えもなしに、男の顔を見てそんな言葉が口を出る。酷く自意識過剰なことを言ってしまったことに、気が付かない程度にはキャパオーバーだった。俺が今から言うことは怒られても、あるいは呆れられても当然だし、その上で“行く宛てがない”なんて言ったら溜め息を吐かれること請け負いである。ただ、冗談だと思われるのが一番つらい。怒られても呆れられてもいいから、引き止めた責任をとってはくれないだろうか。勝手だって詰ってもいい。真実俺は十分に勝手な人間だ、嫌になるくらいには。崩れ落ちそうになる脚に力を入れて、口を開いた。声が震えぬように、盛大な勇気を込めて。 )
……悪い、試すようなこと言った。俺、何も“わからない”んだ。この場所も、お前のことも……自分のことも。お前の頭に狐かなんかの耳みたいのが生えて見えるし、ここが──異世界に来ちまったんじゃないかってくらい肌に馴染みもねぇんだ。嘘じゃない!……ここはどこで、お前は俺の何で、俺が何なのか……頼む。教えて、ほしい。


  • No.55 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-14 19:26:50 



銀弧 ▷ >54:鮮

(この妖狐は貴方が勇気を出して口にした言葉で漸く貴方の不安の正体を知る。常世に来る人間は記憶を失っていることが多いということを、珍しい物を拾ったからと浮かれて忘れてしまっていた。罰が悪そうに視線をやや右へ「んー」と少し唸り貴方へどう説明したものかと悩んでいて。どうやら貴方は自分の姿を幻覚か何かであると考えているようだし信じてもらえるかどうか。それにまず前提として妖狐の中の知識では常世と現世の違いなんて分かりっこなく、妖がいるか人間がいるか、それぐらいの大雑把な認識だけ。うんうんと唸るのを止めると、一先ず貴方が上げた疑問を一つずつ答えて行くことにして「まず此処は常世で、僕は此処に住んでる妖狐。この耳は偽物でもなんでもないんだけど……、触る?」自分の耳をぴこぴこと前後に動かしながら、見てわからないのであれば触れれば分かるだろうかと提案を。貴方より下の段にいるため、頭上の耳には問題なく触れることができるだろう。一番回答に困るのは貴方と自分の関係性と貴方の何者かということ。貴方とは知り合いではないし、貴方が何者なのかといった詳細は貴方の消えてしまった記憶の中にしかないのだ。再び「うーん」と頭を捻り、「ええっと、僕と君は知り合いでもなんでもなくて……君のことは知らない、ごめんね。何か持ってたりしない?ほら、名前を書いてある物とか、僕は自分の名前好きだし持ち物に書いたりするんだけど。」と貴方の姿を上から下まで眺めてみて、特に持ち物らしい持ち物はなさそうと思い至ると曖昧に苦笑を浮かべて。)


  • No.56 by 篁ふみ  2018-11-14 19:28:24 




>52 銀弧

( 鬱蒼とした木の葉を通り抜けて、柔らかな微風がひっそりと頬を撫ぜる。何処かも分からぬ古ぼけた神社を暮れ泥む夕焼けが辺り一帯を橙に染め上げる中、彼の青だけはその色には染まらず、やけに炯々と然し呆然とした感情を象っていた。此方とて奇怪な状況に当然順応出来ていない、寧ろ驚くべきは自身なのではないか──そして響く焦燥の声。従順に言う事を聞いたというよりは、身体がその悲痛な声音に勝手に反応したと云うべきか。また一段、と上がりかけていた脚を時が止まったようにぴたりと静止させる。何故登ってはいけないのか、何故焦っているのか、問うべき事は絶えず生まれ、胸中に巣食う不安と恐怖と助長させたものの、眼前に悄然と垂れた狐耳も尻尾を見遣ればどうにも抗議する気にはなれず。彼が赫々と聳える鳥居のそのまた向こう、魑魅魍魎と言われる類のものに怯えを抱いている事なぞ露知らず、単純に彼女は「 へえ、狐。銀弧って言うんだ…あないにけったいな事されはったら驚くやろ。 」呑気に軽くじとりと睨め付けるのみで済ませてしまったものの、妖怪と遭遇するなんて初めての経験であるゆえ緊張感は拭えず、何処かぎこちない足取りで一段一段下がってゆき彼の隣へ。彼の存在自体を認めたわけではないが、認めずしてこの状況を何と説明すれば良いのか。淡い橙を背に、無意識的に再び柔らかな温もりを求めたのか、彼の掌へ手を伸ばしかけたと同時に自身も名くらい明かそうかと口を開きかけ、そして。──幾ら記憶の欠片を寄せ集めても、己の名前が思い出せない。それ所か、自分という存在も、昔日の思い出も、送っていた筈の日常も、全てが切り取られたように伽藍堂である。それもそのはず、欠片を寄せ集める前に匣には元より既に何も入っていないのだから。両親と離れた迷子さながらに表情は頼りなく萎れ、ぴたりと空に留まった掌が、所在なさげに揺れては止まり、また微かに揺れた。 )
銀弧、うん、銀弧ね。私の名前は──…、…?何やったっけ、思い出せない。



  • No.57 by 御子神 苑  2018-11-14 21:18:53 


>52黒縄

ではお言葉に甘えます。ですが黒縄さんも何かあれば仰って下さいね。
(口数が少ないという点は兎も角としても、面倒見の良さと無自覚の親切心が高低差の緩やかな人間の心を優しく揺さぶり。くすり、と一度笑み溢れ余計な世話を付け足し人差し指を己の唇へあてがい。どうやら当たり前である事象に対する正解を求めているように伝わってしまったらしい、心情を察し「何故人の世の空が青いのか。実は科学というむつかしい技術では解明されているのです」だがこうも思う「僕は何もかもを解き明かすよりあれやこれや考えるのが好きですが」赤い光は襖をも染めて独特の色彩を生み、考えているらしき彼の横顔へ紅の影を落とすのもまた美しからずや。有り難いのと恐れ多いのとで折角の気遣いを潰してしまわぬよう顔には微笑浮かべ「用意周到でしたか、要らぬ心配をしてしまいましたね」狙ってそうしているのではなくとも今は甘えておくが正解と両手合わせ喜ばしさを表して。さて玄関から出てみても面妖な空気に満ちているのには変わりなし、それでも誰かと連れ立って歩く楽しさたるや今も尚心を弾ませ足取りも軽くなり。「失礼ですが黒縄さんは普段からお独りですか?」妖とは群れないのが当然、或いは彼が孤高を愛するのかのどちらかなのだろう。寂しさや執着といった観念を元より持ち合わせていないように見える端整な横顔を見上げ何気なく訊いてみて。)

  • No.58 by 倉留 鮮  2018-11-14 23:56:10 



>55 銀弧

( ここは常世で、自分は妖狐だと……男は言った。聞きなれない単語に頬がひきつる。だけど、そんな馬鹿なと笑い飛ばせる空気ではとてもなくて、狼狽えるように視線が揺れた。もう一度、彼の背後に広がる街並みを、人々を見渡してみる。──ああ、何だ。やっと解った。ここでは誰も“人間じゃない”。たった一人、俺だけを除いて。
記憶を失う前の自分は、望んでこの場所へやって来たのだろうか。思い出こそないが、“日本”という国で暮らすにあたっての一般常識が頭の中にあることから、元々この世界の住人だったとは考えづらいので、ここへ“やってきた”と想定してまず間違いないとは思うのだが。明確な意思をもってここへ訪れることこそが記憶を失う前の自分の望みだったとしたら、一刻も早くこの身体へ戻ってこいと、若干ふらつきながら空いた方の手で額を抑える。残念ながら、ぴょこぴょこ揺れる銀色の耳に触れる勇気はちょっとなかった。大体にして、元の世界で自分を取り巻いていた環境は一体どうなっているのだろう。どんな人間に囲まれていて、どんな風に日々を過ごしていたのか、ひとかけらだって思い出せはしなかったが、誰にも迷惑が掛かっていないなんてことはありえないよなあと、記憶のない自分にも想像はついた。ついたところで、真相は少しだってわからないのだけれど。
期待と反してこの男……妖狐を自称する彼と自分は何の知り合いでもないらしい。自身に関する情報が増えないことに絶望しかけて、その後に続く言葉にはっとした。繋がれた手を焦ったように離して、まずはジーンズの両ポケットに手を掛ける。……何もない。免許証でも何でも良い、何か身分のわかるものをと身体中に手を当てて──ワイシャツの胸ポケットに、何かが入っている感触があった。息を整えて、恐る恐る取り出してみる。それは手のひらサイズのカードで、一番上には“診察券”と大きな文字が躍っていた。その下に印刷されている病院名及び電話番号に覚えはなく、地名を特定するには至らない。震えた手で裏返すと──名前が、あった。「……アラタ」声に出して読んでみる。鮮やかと書いて、そう読むらしい。フリガナがなければきっとわからなかった。それくらい自身の名前にぴんとこなくて、情報が増えたはずなのにまた少し不安になる。年齢は三十らしい。生年月日の記載はないが、古いカードを身に着けているとも考えにくいので、今日が誕生日だったりしない限りは三十歳で間違いないのだろう。それから、性別。記憶はなくとも自分は男であるという認識が当たり前のようにあったので、男・女という項目の左側が丸で囲んであることに安堵した。このカードからわかる自身の情報はその三つだけ。たった三つだけれど、何もわからないのとではずっと心持ちが違った。大事そうに胸ポケットへしまって、銀弧と名乗った男の顔を見る。数秒黙ったまま考えて──困ったように口を開いた。 )
アラタって言うんだって、俺。……そうか、お前、知り合いじゃなかったのか。この世界のどこにも行く宛のない人間と、一体どこに向かおうとしてたんだよ。


  • No.59 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-15 16:24:23 



>今日、明日中のお返事が難しそうなのでお知らせに参りました。必ずお返事は致しますので少々お待ちくださいませ……!


  • No.60 by ✿ 主/【募集停止中】  2018-11-17 01:10:03 



銀弧 ▷ >56:ふみ

(貴方が此方へ戻ってくることにほっと胸を撫で下ろす。あのまま貴方が階段を登り続け、あまつさえ鳥居をくぐってしまうような事があれば、妖狐にはもうどうすることもできない。貴方を嫌っているわけではない──寧ろ好奇心から貴方に好意的な妖狐にとって、貴方を引き止めることに成功したのは喜ばしいことで。貴方の諌めるような言葉と視線にはびく、と一瞬体を固くするものの、先程までの焦った様子はもう見られない。「ごめん。君を誤魔化すにはそうした方がいいと思って……。」と謝罪を述べながら視線は石階段の下。橙に染まる古い街並みの中には貴方が人間であるということを知られては都合の悪い者がいるのだ、と言外に告げる。名前を呼ばれればふ、と視線を貴方の下へ。呼ばれた事が嬉しいのか耳はぴんと立ち、貴方の一言一句を逃さぬようにしているかのよう。しかしながら貴方の様子が少しおかしいらしいと気付けば、じぃっと貴方の煌めく黒曜石を覗き込んだ。風に吹かれれば貴方がこの場から消えてしまいそうな、そんな予感から思わず貴方の手を再び握って。「何か、持ってたりしない?」どうにも荷物を持っているようには見えないが、もしかしたら衣服の中に何か持っているかもしれない、その中に名前が書いてあったりしないだろうかと貴方に確認を促して。)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

黒縄 ▷ >57:苑

(貴方の厚意に「嗚呼。」と相変わらずの短い返事を。困る事があってもきっと貴方に言うことはないだろうが、貴方の思いを態々否定するのは非合理だと思ったらしい。戸を開いた外側も変わらぬ色の光で満たされているが、進んで行くうちにどうも昨夜貴方を平屋へ連れてくるまでとは様子が違うということが解るだろう。人影はすこし多いように感じられ、しかしながら貴方を見つめる視線はギラギラとした敵意はあまり見受けられず多少の困惑を示すのみ。貴方からの質問にどういう意図で問われたのかわからないといった風な沈黙の後「そうだが。」と返答を。最もこの烏天狗が特に他者との関わりを絶っているのみで、常世全ての妖がそうというわけではない。貴方と烏天狗のように共に連れ立って歩く妖達の姿も見つけることができるだろう。何故突然そんなことを、と気になるのか貴方の方をちらと見やり。)


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

銀弧 ▷ >58:鮮

(貴方の見つけたその何かを一緒に覗き込む。そこには妖狐にも問題なく読める文字で貴方の数少ない情報が記されている。名前、性別、年齢、……診察券というもののがどういったものなのか、それから並んでいる多数の番号の意味も妖狐には理解し難いものだったが、貴方の様子が随分と落ち着いた様に見えて安心して肩の力を抜き。「ふぅん……良い名前じゃん、鮮。」貴方の名前を口にしながらにっと口角を上げる。鮮やかと書く名前を持つ貴方ならば、この常世の中でもきっと埋もれてしまうことはない、そんな予感。「ん?」と首を傾げながら尻尾をゆらり「何処って、僕のお世話になってるとこ。其処なら人間が相手でも大丈夫だと思うんだよね。何処にも行く宛てないならおいでよ。」と至極当然であるかの様。はっと何か思いついた様な表情を浮かべると「もしかして、上に行きたかった?」と声を潜めて問いかけて。貴方はあの先に何がいるのかも知らない、もし上に行きたいというのなら、妖狐はそれを止める心算で緊張気味に貴方を見つめていて。)


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