2人掛けの玉座 【〆】

隙を見せたお前が悪い！、っ……
(狙い通り枕を直接押し付ける作戦は上手くいった。してやったり顔で笑みを浮かべるも、残念ながらその顔は相手に見えやしないだろう。腕の怪我の責任を取ると宣言したにも関わらず、今は枕投げに夢中になっていて2人足場の悪いベッドの上で戯れて、冷静な判断力は失われていた。だからこそ片腕の相手が頭を押されて上手くバランスを取れない、という当然のことまで気が回らず、体が倒れだしたのを見てようやく事を理解する。怪我が悪化しないようにとこの部屋に残ったのに、なんて醜態だと自分に悪態つきつつ、素早く相手の体を支えるように右腕を後頭部回し、もう片方の手は衝撃を吸収するように支えるようにして右腕に添えた。だが相手が倒れるのを止めるほどの時間はなくて、一緒に倒れ込んでしまう。結果、右腕を衝撃から守ることはできたが、目を開けると前よりも近い至近距離で相手と寝転がる体勢になってしまい)

…っ、……ゲイ、ツ？
（押された事でバランスが崩れたのが分かれば咄嗟に目を閉じて倒れる衝撃に備える。だがそれより前に後頭部と右腕に腕が添えられて、思ったよりも弱い衝撃でベッドに沈んだ。恐る恐る瞼を開ければ鼻先が触れてしまいそうなほど至近距離に相手の顔があって驚きに目が見開かれると共に忘れていた熱が上がる。昨夜も似た様な事故はあったがその時よりも距離が近く、身を庇う為とは言え抱きしめられているような体勢で密着している。困惑する思考の中でそんな事ばかり意識してしまえばもう駄目だった。心臓の鼓動は相手に聞こえてしまうと思うほど五月蝿くて、顔も風邪を引いた時みたいに熱い。庇った時にはあんなに直ぐ動けたはずなのに今は目の前の相手に釘付けでただ見つめる事しか出来ない。だがこの距離感が嫌という想いは1つも浮かんできていない自分もいて。パニック状態の頭の中で何とか相手の名前だけ紡いで）

……、……＿＿＿これじゃあ昨日と逆だな。
(なんとか衝撃から相手を守り、目を開けて見えた先の光景に言葉を失う。密着する体、触れ合いそうな顔、相手が自分の名前を呼ぶ声の吐息さえかかる距離だ。視界は相手だけで埋め尽くされて息が詰まる、またも体が強ばりそうになるが、その前に早鐘の音が胸に伝わってきた。倒れ込んで重なった胸板同士、そこから相手の心音が伝わり聞こえてくる。自分の心音は嫌という程自覚していたが、同じようにこいつも胸が高鳴っているのだ。それを認識して、そして今回は自分が上のせいもあってか、心音が高鳴りながらも幾らか冷静にいることができる。とはいえ今自分を支えるのは片腕だけ、このままでは体勢を崩してしまう。相手は自分の腕の中で動けない、そして今は吐息さえ触れ合う距離にいる。このまま重力に負けた振りをして唇を重ねたら、こいつはどんな顔をするんだろう。そうすれば、こいつは俺のものになるのだろうか……心音が重なり合うせいか、妙な独占欲とも言える感情が湧き上がる。このまま俺のものだと印を付けてしまってもいい……惹かれるように相手の方に顔を近づけたが、既のところで顔を僅かに反らして相手の首元に顔を埋めて、支えきれなくなった体重を預ける。大きく、荒く、息を吐いてからあくまで平静を装おうと冷静な言葉を口にして)

…、うん。 …こんなに近いと、俺がドキドキしてんのもバレちゃうね。
（色んなとこが触れ合っていれば相手の体温なのか自分の熱なのかも分からなくなってくる。どくどくと心臓が五月蝿くて落ち着かないのも手を繋いでゲーセンから帰った時から相手に触れる度にずっとだ。そして腕の中に閉じ込められて彼を見上げるこの状況も悪くない寧ろ良い物だと思ってしまっている。ここまで来れば幾ら鈍いと言われる自分でもその感情の名前の検討くらいはついていた。だが、それを確信にする為にはもっと情報が欲しい。首元に顔を埋められると擽ったい様な恥ずかしいような妙な気分になる。だけど昨日みたいに直ぐに退くつもりは無いみたいで密かに安堵した。相手の言葉に軽く相槌を打って、触れ合った胸板から相手の鼓動を感じる。こちらも平然を装うように一つ一つ言葉を選ぶように語りかけながらも手持ち無沙汰な左手を恐る恐る相手の背中に回しては寝巻きの生地を控えめに握って）

っ、……当たり前だろ、……抱いているんだから。……お前、暖かいな。
(相手の心音が互いの体に沿って伝わってくる。その音が心地よくて気を緩めれば微睡んでしまいそうだ。距離が近すぎて緊張で固まっていた先刻とは雲泥の差だ、これもきっと相手の心音とそしてめ線をあわせていないおかげもあるのだろう。まだこいつとは出会ったばかりだ。出会ったばかりで、本当は殺さなければいけない存在。しかし、この短い間でこいつに想定以上に驚かされて、そして心惹かれていた。誰かに奪われたくないと思うほどに、自分のものにしてしまいたいと願うほどには、こいつを欲している。腕の中に閉じ込め抱き締めるような形になって戸惑うか最悪嫌悪感を示すか、そんな予想も出来たが、相手が背中に手を回した感触がするとこの行為を受け入れてくれた気がしてピクと体が嬉しさで反応してしまった。その嬉しさを示すように、無意識にスリと相手の首元に頬を擦り寄せる。できるだけこのままの体勢でいたい。じわじわと伝わる相手の体温を感じながらまだ体を動かそうという気はなくて)

…そうだね。ゲイツも、ドキドキしてる。…ん、抱き枕にピッタリでしょ。
（きっかけは事故だったとしてもこの体勢のままでいるのは相手の意思で、こうやって触れ合っていたいと思ってくれてるのが凄く嬉しい。鼓動も熱も一向に治まる気配はないが、最初よりも自然と落ち着いていて軽口を飛ばせる余裕くらいは出てきた。身を委ねるように目を閉じれば肌から触れる体温や聞こえる声と心音で意識が一杯になる。それが酷く心地好い。首元に擦り寄られると擽ったさに小さく声上げるも彼なりの甘え方の様に感じて背中に置いていた手を相手の後頭部に移動させればポンポンと甘やかす様に撫で。このまま寝てしまえれば幸せなのにと願望混じりに口にして）

……そうだな、何故だか知らんが……あぁ、今日はこのまま…寝る。
(未だに鼓動の高鳴りは止まず恐らく耳の端も赤い。しかしそれ以上にこいつを抱いている心地良さの方が勝っていて、オムライスや一緒に寝ようと誘われた時ほど取り乱すことはない。朝食を一緒に公園で食べた始まりから今日1日様々な事があった。流石に体も疲れていたのか、互いの心音と熱っぽくなった体とで眠りに誘われていき意識がぼんやりと霞んでいく。初めての時はあんなにもドギマギして心も落ち着かなかったのに今は安らぎさえ覚える。優しく後頭部を撫でられるとその心地良さにため息が漏れた。このまま意識を手放しそうになってしまったが、流石に相手の上に乗ったまま寝てしまうのはまずいだろう。体をずらし横に寝転がる体勢になる、腕は相手の後頭部のしたのままで、所謂腕枕の状態になった。心地よい体温を求めて、腕枕をしていない手持ち無沙汰になっている手を腰へと回して互いの体が離れないようにする。このままこいつを手離したくないとさえ思う。自分の指名や責務を吹き飛ばしてずっとこのままでいたい。そう願いながら隣に寝転がり相手の顔を見つめる目はうつらうつらと細くなっていき)

…ん、一緒に寝よっか。 …おやすみ、ゲイツ。
（人とここまで近くにいた機会はあまりなくて、布団を被ってないのにポカポカする温もりが酷く心地好い。相手の眠気が移ったのか緊張が解けたのか今まで感じてなかった疲れと睡魔が襲ってきて、囁くような声で寝る事に同意示し。向かい合うような形で更に腰に手が回りガッツリと固定されてしまえば更に距離が近くなって一瞬鼓動が跳ねるも更に彼を感じられて自分からも擦り寄って密着し。既に目の前の相手は眠りに落ちそうで、まだ話したい気持ちやこのままでいたい気持ちもあるがまた明日も一緒に居られるのだ。それにもう少しだけ起きていれば念願だった寝顔が見る事が出来そうで、殆ど意地で意識保ちながら相手の存在確かめる様に後頭部撫で、おやすみの挨拶を口にして。）

（／こちらの不手際でお二人にご迷惑をおかけしてしまい、本当に申し訳ございません。きちんとお返事させていただきました。
マジェスティ様にそう言って貰えて本当に感謝しかありません。こちらこそどうぞ御相手の程宜しくお願いします。これからの展開の御相談とか無ければこちら返信不要です）

あぁ……おやすみ、……____
(ほぼ無意識のまま相手を抱き寄せ、その体温を堪能する。小さく囁くような声も耳触りが良い。こんなにも安心できる場所は初めてかもしれない。先刻までの胸が高鳴る出来事も悪くなかったが、こうやって互いの体温を静かに通わせ合うのもまた悪くない。後頭部を撫でる手すら暖かくて、ずっとこうして欲しいとさえ願っていた。かつて殺そうと奮起していた相手の隣がこんなに居心地いいものだなんで想像だにしない。そして今や、こいつがあの魔王になるだなんて想像もできなかった。おやすみと声を掛けられ返事をする。その後の言葉に迷って言葉を切る。このまま相手の本当の名前を、ソウゴという名前を呼んでしまいたい。だが自分にその資格があるのだろうか、まだ友達だ、とさえ口にしていないのに。だが今更ジオウと呼ぶのも壁を作るようで心がそれを拒否している。どう相手を呼ぶべきか迷っているうちに撫でられる心地良さに負けて目を閉じる。そして眠りに落ちると規則的な寝息を立て始めて)

っ……、また明日ね。
（他人の体温がここまで温かいとは知らなかった。こんな物を知ってしまったら1人で寝るのが寂しくなってしまいそうだ。でも今はただ素直にこの幸せに浸って置こうと大人しく腕の中に収まっていて。軽く促すまま相手が目を閉じて眠りに入ったことを確認すれば改めて寝顔を観察する。眉が寄せられたり睨み付けてこない無防備な顔は年相応かそれよりも少し幼いくらいに見える。こんな歳の青年ですら戦わなければならない程未来は荒れすさんで居るのだろうか。ゲイツには何気ない日常を楽しむくらい幸せになって欲しい。そしてその隣に自分が居れたらいいのに、と素直に感じていて。後頭部を撫でていた手を恐る恐る離してそっと起こさない様に彼の顔の輪郭を指でなぞる。もっとゲイツが知りたい。自分が王になる日まで、そしてなった後も傍にいて欲しい。いよいよ此方も睡魔が限界で薄れていく視界の中、なぞった顎に一瞬触れるだけのキスを落とし、目を通して眠りについて）

……ん、…………っ！
(眠りに沈んだ体では昨夜触れるだけの口付けをされたことは気づかなかったが、どんな状況下でも自身の体内時計は狂わないもので、いつもの起床時間にゆっくりと目を開ける。窓から朝日はさしているだろうが、今日はいつもより暖かい心地だと寝起きの頭で考え瞼をゆっくり開けると目の前にはまだ夢の中にいる相手の顔があった。一瞬状況が分からず体を動かそうとしてしまうが、昨夜の出来事をようやく思い出してなんとか声を挙げずにとどまった。起き抜けで不意打ちの存在にまだ胸はドクドクと強く鼓動しているが、幸いなことにまだ相手は起きていない。相変わらず無防備な顔だ、寝ている時の方が呑気さはさらに増す気がする。そしてそれが今自分の腕の中に収まっているのがたまらなく嬉しい。こいつの寝顔は今自分だけのものなのだ。腰に回していた手を移動させ、頬の辺りに持ってくる。いつもならば突っついてやるそこを人差し指の背で優しく撫でてやると、愛おしさが胸に溢れて自然と笑みを零し)

………んん、…おはよ、う？
（疲れと包まれていた温かさに深い眠りに落ちていて無防備な寝顔を晒し。ふと何かが触れる気配がして小さく声を上げながらゆっくりと瞼を開け。すると直ぐ目の前に相手の顔があって、寝惚けて居るのかと数度瞬き繰り返し。眠たげな思考の中、昨夜一緒に寝たことを思い出すも今も至近距離であるには変わらずにまたドキドキと鼓動早くなり。だが、こうやって一緒に一夜過ごせたのは何だか嬉しい気がする。大人しく頬撫でられつつも相手が素直な笑みを見せるのは珍しく、みてはいけないものを見てしまった様な気まずさ覚えつつも今更寝たフリも出来ずに声掛けてみて。）

っ！！___何時まで寝てる、もう朝だぞ。
(微かに触れただけのつもりだったがどうやら目を覚ましてしまったらしい。声を掛けられると目を見開く。普段散々顔が緩いだの呑気だの言っているのに恐らく今自分が浮かべていた顔はまさにその類のもの。見せてはいけない緩みきった顔を見られたことが恥ずかしくて上体を起こしながら腕枕していた腕を引き抜くと、直ぐにいつもの仏頂面を作った。秘匿すべき顔を見られ胸は早鐘を打っているが体が離れた今ならもうバレはしないだろう。腕を組み、まだ寝ぼけ眼の顔を厳しい目で見下ろしつつ相手が起き出すのを待っていて)

…、えー、まだ朝早いじゃん…。 もうちょっとだけゴロゴロしようよ。
（声を掛けた途端ビックリしたように目見開いたと思えば離れていってしまった。 失った体温の落差は思ったより大きくて少し寂しく感じる。見上げた相手の顔は既にいつもの仏教面に戻っていてもっと相手の緩い表情をこっそり観察しとけば良かったと後悔しても遅かった。相手の起床時間はいつもの自分よりも随分と早くまだ眠たい。それに離れてしまった体温が惜しく思えれば相手の代わりに毛布に包まり熱を取ろうとすればまだ起きる気は無いとアピールして）

お前の赤点回避の為に勉強会をやると言っただろっ！初めからそれでどうする！
(胸が高なったかと思えば直ぐにこれだ、子供のようにぐずって布団に丸まってしまった相手にピシと青筋を立てる。こいつの寝顔は確かにいつもの緩い雰囲気よりもさらに緩まっていてもっと見ていたいのは確かだがそれよりも重要なことが迫っている。毛布にまるまる姿をみれば甘やかしてしまってもいいんではないかと多少は思うがここで自分が折れては意味が無い。心を鬼にして相手の体にまとわりついた毛布を剥がそうとし。そして同時にこうやってじゃれて、少々こいつに悪戯を仕掛けるのもやはり好きだと思う自分がいて)

そうだけど……寒っ！ ゲイツが朝強すぎなんだよ…。…ふふ、
（勉強を教えて貰う立場ではあるがもうちょっとだけゴロゴロしていたい。ごねるように抵抗するも布団ごと引き剥がされてしまうと外気の寒さに声をあげて。そこで漸く目が覚めてくればゆっくりとした動作で上体を起こして小さく欠伸しつつ呟き零し。朝は苦手で正直まだ寝ていたい気持ちもあるが、こうやって起こされるのも悪くない気がする。のんびりとした空気の中、相手の顔を見れば昨夜の事と先程の緩んだ笑み思い出して思わず口元から笑み零れて）

お前の生活が怠惰すぎるだけだ。ぐ、っ……何笑ってる！早く着替えて用意しろ、勉強するぞ。
(布団をひっぺがしてやればもう相手を守るものはない。寒さで縮こまる姿に早く起きろと圧をかけるよう見下ろす。なんせこの勉強の結果次第で特別な遠出をするか否かが決まるのだ。こちらが急かすのもどこ吹く風でマイペースに起き上がって緩い笑みを浮かべる姿にまた胸が強く鼓動する。今のは間違いなく一緒に寝て、一緒に起きなければ見れなかった姿だ。無防備で、幸せな雰囲気、それが実は自分の緩んだ顔を思ってとは露知らず、思わず顔を反らしてしまった。あの笑みは反則だ、全てを受けいられるようでいて、全てを奪われるような気さえする笑み。まだまだ寝ぼけた相手の意識を起こすが如く、両頬を両手のひらで潰すと真正面から相手の顔を睨み)

んー、秘密。 はーい、直ぐに準備するね。
（自然に漏れた笑みの理由問われると素直に答えてもいいが、今後変に警戒されると見れなくなっちゃう気がして少し悩んでから軽い笑みと共に答えを濁す。彼の緩んだ表情は自分だけが知っていればいいのにさえと思ってしまう。両頬を手で潰され睨まれる視線も相手の事を理解していればさほど怖くなく、真っ直ぐと見つめ返し。今日はこれから勉強会でずっと一緒に居られるのだ。それにテストでいい点を取れば2人で決めたご褒美が受けられる。そう思うと苦手な勉学も少しやる気が出て来て、前向きな返事をして）

おい、秘密ってなんだっ……はぁ…俺は自分の部屋で着替えてくる。お前も用意しておけ。
(変な間をおいてはぐらかされるとその真意を知りたくなるもの。さらに追求しようとするが、睨んでいるこちらに対して変わらぬ顔でこちらを見返してくる姿に余裕さえ感じて、最後にはため息をついて顔を反らしてしまう。こういう度胸の座っているところは実に魔王らしい、結局は相手の意のまま翻弄されたが今やそれも不快なものではない。手の中に閉じ込めた顔はどうやらやる気が小さくも湧き上がったようだ、このまま事を始めてしまうのが良いだろう。両手を離してベッドから降りるとそのままもう一度寝るなよと忠告するよう睨みをきかせ一旦部屋を出て。間借りしている自室へ戻ると髪をセットしいつもの未来服を着込んで廊下へと出て)

もー、分かってるよ。 …よし、頑張るぞ。
（からかったり、からかわれたり。そんなやり取りが面白くて何気ない事でも相手に伝えたくなる。相手もそれを嫌だとは口に出さない辺り案外気に入ってくれてるのかもと密かに思っていて。心配されるように忠告受けると言葉返しながらも相手見送り。ドアが閉まれば言われた通りに着替えて参考書や筆記用具、問題集を机の上に出して準備して。成績が悪いということは既にバレているがあまり情けない姿を見せたくないという気持ちもある。机に相手の分と自分の2つの椅子を並べながらも自分に言い聞かせるように気合い入れれば再び彼が訪れるの待って）