清貧少女と成金坊っちゃん +~有紗と健二の恋噺~+

清貧少女と成金坊っちゃん +~有紗と健二の恋噺~+

健二  2017-09-28 22:32:08 ID:c196a580b
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二人で紡ぐ物語

のんびりゆるりと




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  • No.46 by 健二  2017-10-13 23:10:29 ID:c196a580b


(満足そうにお腹を擦りながら座椅子に凭れる有紗に)
そんなに食べて大丈夫?
身体重くてちゃんと演技できなくなっちゃうんじゃない?宙返りとか
(あはは、と笑い)

  • No.47 by 有紗  2017-10-14 23:11:08 ID:a7c673d00

もう、さっきは食べろ食べろって言ったのに(´;ω;`)ずるいよお。
できなかったらどうしようー笑
(でも満足そうにポンポンお腹さすって)本当に美味しかった。ご馳走さまでした。

  • No.48 by 健二  2017-10-15 23:34:56 ID:c196a580b


そこは自己責任で
(真顔)
いや、でも満足してもらって良かった♪
このあとキスするけど…
吐かないでね?
(意地悪そうにニヤリと笑み)

  • No.49 by 有紗  2017-10-16 21:29:10 ID:a7c673d00

(キスするって言われて真っ赤になって俯く)
そういうこと言うなんて意地悪……(じっとみて)
健二くんキス上手だから……。
照れちゃうよう

  • No.50 by 健二  2017-10-16 23:50:22 ID:c196a580b


(有紗が顔を赤くしたのを見て、なんだか急に寒くなったけど照れ臭くなり)
いや……
上手なんかじゃねえし…
(何気なく腕時計を見て)
そろそろ行こっか。
あんまり遅くなっちゃうとお母さん心配するでしょ?

  • No.51 by 有紗  2017-10-18 23:08:34 ID:a7c673d00

うん……行こっか
(出たら抱きしめられるって思ってるから緊張してる)
本当に美味しかったな……本当幸せすぎて今死んでもいいくらい

  • No.52 by 健二  2017-10-18 23:45:32 ID:c196a580b


なに言ってんの…
(笑いながら頭をわしゃわしゃと撫で、会計をカードで済ませて店を出る。街はすっかり夜の張が下りて、ネオンの灯りの下、人々が行き交う)
有紗んちって、ここから遠いの?
近くまで送るよ
(寄り添って歩きながら、触れた手をさりげなく握り…)


  • No.53 by 有紗  2017-10-19 22:31:27 ID:a7c673d00

えっとここから……日比谷線に乗って途中で千代田線にのりかえた北綾瀬ってところからバスで20分くらい(団地だからめちゃくちゃアクセス悪い。でも基本自家用車で移動してる健二にはピンとこない)
ありがとう……でも遠いしくらいから大丈夫だよ(キュって手を握って)

  • No.54 by 健二  2017-10-22 02:37:17 ID:c196a580b


きた、あやせ?
(聞いたことのない地名に)
それ東京?
(ずいぶん失礼な物言い)

本当なら車で送ってあげたいけど…
実は、車、売っちゃったんだ
(ちょっと寂しげだが、その目は遠くを見ているような眼差しで)
だから今日、歩いてきた

  • No.55 by 有紗  2017-10-22 03:02:09 ID:a7c673d00

えっと……足立区の……(そりゃあこんなにお金持ちだったら場所知らないだろうなと思って、手帳についてる路線図を指差して)ここのあたりに住んでるんだよ。

あ、大丈夫ですちゃんと1人で帰れますっ

  • No.56 by 健二  2017-10-22 03:27:58 ID:c196a580b


いや、ちゃんと送るよ
大丈夫
(片側三車線の大きな幹線道路、麻布通りに出ると、通りに向かって手を上げて)
タクシーだけどね
(ちょっと苦笑いし)

  • No.57 by 有紗  2017-10-22 03:32:45 ID:a7c673d00

そ、そんなここから乗ったらすごく高くなっちゃうよ……(でもタクシーは目の前に止まってしまう……)

あ、よろしくお願いします。(ちゃんと挨拶して)
東京都足立区……〇〇団地までお願いします。

タクシー運転手「〇〇団地!?かなり遠いけど大丈夫?」

  • No.58 by 健二  2017-10-22 03:46:01 ID:c196a580b


(止まったタクシーに乗り込み、有紗と運転手のやり取りを聞いて)
高くったって、5万も6万もするわけじゃないでしょ?
(「そりゃ、まあ…」と頭を掻く運転手に)
じゃあ、行って。
その、なんちゃら団地ってとこ
(ニッコリ笑って有紗を見て)
車のほうが楽でしょ?
まあ、今日くらいはいいじゃん?
(まるで子供のような屈託のない笑顔)

  • No.59 by 有紗  2017-10-24 00:35:20 ID:a7c673d00

あ、ありがとう(でも有紗には一抹の不安があった。きっと健二は知らないレベルに荒廃したその団地を見て、検事が驚いたり自分のことを嫌いになるんじゃないかと思っている)
でも本当に健二くんが知ってるような世界じゃないから……連れてくのちょっと怖いかも
(下町を過ぎていってだんだん郊外な感じが出てくる)
あ……(ちょっと微妙な顔して健二を見る。車窓を見て彼は何を感じているんだろう)

  • No.60 by 健二  2017-10-24 23:25:27 ID:c196a580b


(タクシーは快調に夜の街を滑るように走ってゆく。
道路はいくらか混んでいるものの、後部座席に座る仲睦まじげな若いカップルに、どこか猜疑心を抱く初老の運転手は、いくらかアクセルを強めに踏んで、強引ともいえる割り込みや追い越しを繰り返してひたすら目的地へと急ぐ。

麻布通りから飯倉片町を右折して外苑東通りに入ると、目の前にライトアップされた東京タワーが、蝋燭の炎のような暖かみのあるオレンジ色に映えてそびえ立つ。
健二は有紗の手を握ったまま、その綺羅びやかな光をぼんやりと見つめ「有紗は東京タワーみたいなひとだ」なんて、ちょっと気障ったらしく呟いてみる。きっと彼なりの最大の褒め言葉なんだろうが、有紗にはその意味がまるで伝わらなかったようだ。

ロシア大使館を過ぎて坂を下り、車はブレーキを鳴らしながら左に曲がる。
虎ノ門ヒルズのアンダーパスをくぐると、人通りの多い新橋駅の繁華街へと車が入ってゆく)

本当はもっと有紗とドライブしたかったけど…それもしばらくはお預けだな…。

(さっきの焼肉店で、健二は「車を売った」ことを有紗に伝えた。だが、その理由はまだ彼女に話せないでいる。それを話したら…彼女はどんな顔をするだろう。もしかしたら、愛想を尽かせてしまうかもしれない。
でも、ちゃんと話さなきゃならない。
本当の自分を見てもらうために。
そして、その本当の自分を、好きになってもらうために…)

(新橋駅の高架をくぐり、汐留の交差点を左折して昭和通りへ。銀座界隈から北上して郊外を目指す車は通りを埋め尽くしていて、然しものタクシー運転手もこの状況に抗うことはできず、テールランプの海の中にゆっくりと車両を沈み込ませるしかなかった)

どうした?

(ゆっくり進み始めた車内で、大人しくシートに身を置いて黙りこくる有紗の表情に、ほんの少しの不安の色を見つけて健二は声をかけた)

気分、悪いの?

  • No.61 by 有紗  2017-10-24 23:42:11 ID:a7c673d00

ううん(ちょっと考えてから首を横に振る)
(でもその目はなんでもなくないこと、そして自分がそれをどう伝えたらいいのかわからないことをこれでもかというほど物語っている。しばらくして重い口を開く)
……健二くんは、私がどれだけ貧乏でも、私のこと好きでいてくれるかな……(小さく呟きながらぎゅっと手を握る。学校でも肩身がちょっと狭い(とはいえどもお嬢様学校ゆえにそんな心のみみっちいやつはそんないないし優しいけど)思いはしてきたが、自分の出自をここまで不安に思ったことはなかった)

  • No.62 by 健二  2017-10-25 00:13:55 ID:c196a580b


貧乏?
有紗が?
(貧乏、と言われても、どの状態が貧乏なのか、健二にはピンとこない。生まれてこのかた、所謂「貧乏人」とは交流したことすらなかったからだ。それも、彼の父親が彼に強いてきた生活のひとつでもあった)
有紗がどんな貧乏でも、俺の気持ちは変わらないよ。有紗とずっといたい…。
(そっと肩を抱き寄せる。彼にとっては「そんな小さなこと…」と思えるくらいでしかなかった)
それに…
俺ももうすぐ貧乏になるかもだから…
(俯いて呟く。それこそが彼のこれからの不安で…)

  • No.63 by 有紗  2017-10-25 00:23:16 ID:a7c673d00

普通に過ごしてたら学費が払えなくて学校行けないし
大学だって私立で全額免除の特待生か、国立に入って毎日夜はバイトしてそれでやっとかってところだし……。

(どんな貧乏でも構わない、という彼の言葉は信じているし、彼の気持ちに偽りはないだろうなとはわかる。
でも、言葉の節々から“そもそもこの人は貧乏ってなんじゃらほい”レベルに貧乏とは無縁だったのがわかるから、引かれるんじゃないかと心配を深める)

貧乏になる……ってどうして?

  • No.64 by 健二  2017-10-25 01:08:42 ID:c196a580b


だから…たった7000円のお金であんなこと…
(思い返せば腑に落ちる。最初に会ったときに理由は聞いたが、いまこのときになって、彼女の沈んだ表情がそれを切に物語っていることを理解して)
お金持ちに、憧れる?
(有紗が自分に近づいたのも、もしかしたらお金の匂いがちらついたからかもしれない…。そんなことをどこかで蟠りとして感じて)

  • No.65 by 有紗  2017-10-25 01:39:02 ID:a7c673d00

(こくんと頷く。多分この人には永久に7000円で援交する人の気持ちなんてわからないだろうと思いながら)

うん、お金持ちっていいなとは思うよ。
(あえて自分の気持ちを素直にいう)
貧乏だからお金って大切だなあっていつも思ってるし……

今回もすごく美味しい焼肉食べれたし、あんな美味しいものをお母さんに毎日……は無理にしても月に一回でも食べさせてあげられたら幸せだなあって……思ってるよ

でも、だからって言って人のお金に頼るようなことはできるだけしたくないな。できるだけ……(自分はしちゃったから大手を振ってこんなこと言えないなと声が小さくなる)

だって人のお金で裕福になったって、それは自分の力じゃないから宝くじみたいにすぐなくなっちゃうって思うもん。

  • No.66 by 健二  2017-10-25 02:16:53 ID:c196a580b


うん、そうなんだよな…
人のお金……

(左手に東京駅を過ぎたところで、タクシーがまた加速を始める。渋滞がいくらか緩和されて、岩本町を過ぎ間もなく秋葉原に差し掛かるころ)
そういう意味では俺はお金持ちなんかじゃない。
全部人の、親のお金だもの…。
俺はただそれに頼ってきた。衣食住すべて…。

(速度を上げた車は、首都高上野線の下をひた走る。四輪の音と震動が二人が伝わり、それに任せて健二は少し力強く言った)
だから捨てることにしたんだ。
そういうしがらみ一切を。
家を出るよ。

  • No.67 by 有紗  2017-10-25 22:28:14 ID:a7c673d00

えっ……待って?
(自分のお金持ちへの憧れは全く関係なく、単純にこの人が心配になる。)
貧乏ってどういうことか分かってる?

…………(じっと健二を見て絶対分かってないって確信する)
えっと、私の母は、毎月パートを2つ掛け持ちして、休みほぼなしでもやっと20万円くらい稼げるくらいなの。

20万円のなかで
家賃も払って、私も食べさせて、定期代も出して……って過ごさなきゃいけないの。

……今の環境を捨ててどうやって生きてくの?

  • No.68 by 健二  2017-10-25 22:48:51 ID:c196a580b


20万円?
(目を丸くして有紗を見て)
休みなしでほぼ一日働いて、それで月に20万円?
(冗談でしょ?とでも言いたそうな顔。笑ってはいないが、その表情はまるで狐に摘ままれたかのような面持ちで)
ってか、20万円で生活できるの?人間って。
(健二に悪意はない。その表情と口振りがそれを物語っている。本当に知らないのだ。貧困というものを)

  • No.69 by 有紗  2017-10-26 00:11:31 ID:a7c673d00

(スマホから家計簿アプリを見せて)
これをうちでは母と共有してて……
(見せている機種も結構古いし、しかも格安SIM)
家賃がこれ
食費がこれ(メニューとかも毎日記録してあるがかなり質素な食事)

……って私は毎月生活してきたの。
……お父さんが女の人と駆け落ちしちゃうまでは
月それでも45万円くらいだったらしいんだけど……
(45万でも健二は暮らせない自信がある)

  • No.70 by 健二  2017-10-26 01:31:19 ID:c196a580b


へえ…
(有紗の差し出すスマホの画面を見て、まるで実感の湧かない返事をし)
こんなに細かく買ったものとか毎日の食事の献立まで書いてるんだね!すごい
(むしろそっちに興味が引かれたようで)
なんか楽しそうじゃん。俺もやってみよう。
(面白いゲームを教えてもらったかのような反応)

(タクシーが左手に見える上野駅を横切る。ここは初めて有紗に会った場所。そしてこの道も、有紗を乗せて走った場所)

俺さ、有紗と会って気づいたんだ。
このままじゃいけない。このままじゃ腐っちまう…って。
親父には散々「働け!」「就職しろ!」って言われたけれど、それの意味が解らなかった。なにも労働しなくとも、俺の生活はそれなりに充実してたし、欲しいものなんて特になかったから。
有紗と会って、初めて「どうしてだろう」って考えたんだ。
そして気づいたよ。
俺は親父のスネをかじっていただけなんだな…って。

(明治通りと交差する大関横丁の信号を越えて、ここから道路は昭和通りから日光街道に名前を変える。先程からルームミラーでチラチラ後部座席の様子を窺うタクシーの運転手は、さらに速度を上げてひたすら北へアクセルを踏み込む)

親父の告発で先輩が逮捕されて、よくよく考えた。いましかない…って。
だから家を出ることを決めた。
自分で働いて、それで得た金で自立して生きる。
車も売ったし、これからはカードでなんでも買えることはなくなったけど、それでも試したいんだ。
自分がどこまでやれるかを…。

  • No.71 by 有紗  2017-10-26 23:25:51 ID:a7c673d00

えっ、お仕事はどうするの?
……って質問はおかしいなあ……うーん
ゆめとか目標とかあるのかなって思って。

……私は今はないんだけど、そういうの見つけられないと仕事ってすっごいつまらないかなっていうのは思って勉強してるの。

お母さんは「とにかく有紗のご飯や教材は買ってあげたい」ってそれを目標にしちゃってるけど

(ちょっと申し訳なさそうに車窓を見る)

  • No.72 by 健二  2017-10-27 00:21:40 ID:c196a580b


ん…、夢かぁ…
(健二もぼんやりと車窓を眺め)
まだ、自分が何になりないのか、自分でもわからない…。
でも、仕事は自分で見つけるつもり。
出版業界なんか面白そうだなって思ってる。
(随分とアバウトな仕事選び。バイトの経験すらない健二は、働いて給金を得るなんて、単なる暇潰しくらいにしか思ってなくて)

まずは部屋を探さないとなー。
車を売ったお金がいくらかあるから、それで一人暮らしのマンションを借りるつもり。
そしたら、遊びに来てよ。
(屈託のない笑顔を有紗に向ける。自分の部屋に有紗を呼べることが嬉しくて、むしろ不安なんて忘れてしまっているかのようで)

  • No.73 by 有紗  2017-10-27 00:38:22 ID:a7c673d00

あっ。家賃なるべく安くしないとダメだよ
わかんないけどそんないっぱいお金貰えないんだから……
(自分も働いたことないからわからないけど絶対この人身の丈に合ってないもの借りちゃいそうって思ったから釘刺しておく)

  • No.74 by 健二  2017-10-27 00:52:09 ID:c196a580b


家賃ってどのくらいがいいんだろ…
(うーん、と唸ってから)
南青山にオシャレなデザイナーズマンション見つけたんだ!
ちょっと狭いけど、一人暮らしならまあこんなもんかなぁ…って。
(有紗の「家賃は?」の質問に)
18万。
どお?手頃じゃない?

  • No.75 by 有紗  2017-10-27 01:25:08 ID:a7c673d00

何言ってるの……わからないけど、
家賃はお給料の1/3くらいにしなきゃって母は言ってるよ……うーん
出版のお仕事のお給料がわからないけど……
(ちゃかちゃかスマホで調べて)

未経験25万……
だから6万円から8万円くらいじゃないかなあ……

  • No.76 by 健二  2017-10-28 23:46:28 ID:c196a580b


え、25万円?
ひと月働いてそんだけ?
(一体いくら貰えると思っていたのか、ひどく落胆して)
大学のときの知り合いがさ、紹介してやるからやらないかって誘ってくれたんだけど…。
そんなに給料安いんなら、やめとこっかな…。
(まったく自分の立場を解っていない)

(二人を乗せたタクシーは千住新橋を越えて足立区に入る。ここまで来ると車窓からの風景もがらりと変わって)
6万円から8万円って…、そんな家賃のとこってどんな部屋なんだろ…。

  • No.77 by 有紗  2017-10-29 01:39:06 ID:a7c673d00

うーん……そんなに安いって思うならやめた方がいいかも……
(別に悪い意味ではなくて、納得しないときっとこの人続かないだろうなあって思ったから)
ちなみにうちの家賃は5万円だけど……見てみる?(でも声はちょっと震えてる)

  • No.78 by 健二  2017-10-29 02:13:55 ID:c196a580b


えっ、ご、5万!?
(真顔でキョトン)
それって…どんな部屋なの?
(タクシーが環七通りを右折して首都高三郷線の加平に近づく。運転手が後部座席に座る二人の会話を遮るように「◯◯団地でいいんですよね?警察署を右で」と話しかけ)

  • No.79 by 有紗  2017-10-29 02:27:04 ID:a7c673d00

多分さっき見せてくれたお部屋よりずっと劣悪なはず。
(と運転手の声にはい、と答えると健二が見たことないレベルの貧民街へ)

  • No.80 by 健二  2017-10-29 02:52:00 ID:c196a580b


劣悪……?
(沈みがちに呟く有紗の声を聞いて視線を車窓へと移す。
タクシーは大きな通りから、車通りの少ない細い路地へと入って行く。まだ時間は7時を少し過ぎただけなのに、商店という商店はシャッターが閉まっていて、歩いている人もやけに少ない。
コンビニの前に蹲み込んでたむろする中学生たち。細い路地の真ん中をフラフラと自転車を漕ぐ老人。タクシーがクラクションを鳴らすとその人は振り返り「なんだ?バカヤロー」と悪態をついて睨みを利かせる)
なんなの?ここ…
(およそ健二の住む世界とは違う場所。まるで外国にでも来たかのような風景。しかもここはダウンタウンなのだ)
建物が…低い…

  • No.81 by 有紗  2017-10-29 03:02:02 ID:a7c673d00

あ、ごめんね。
私の家の周りちょっと治安が悪くって………
(コンビニでたむろしてタバコ吸ってる高校生とか健二見たことないだろうなあと思いながら)
……あ、ここで大丈夫です

(ついた団地は築40年くらい。高いのにエレベーターがなくて)
……ここなんだよねうち……。

  • No.82 by 健二  2017-10-30 23:36:03 ID:c196a580b


(タクシーは入り組んだ住宅街に入って行く。住宅街とはいっても健二の住んでいる地域とは似ても似つかぬ景観。道は狭く舗装も雑で、時折窪みにタイヤが弾む。立ち並ぶ家々はどれも築年数が古そうで、本当に人が住んでいるのかさえ訝しい。街頭も少なく、こんなところを一人歩きするのはとても恐ろしく感じられる。
誰もいない暗い公園を過ぎると、四角い箱のような建物が幾つか並んでいるのが目に入る。建物の壁は風雨に晒されて黒ずみ、蔦が這って所々コケのようなカビのような、青々とした染みがこびりついている。
有紗の「ここで…」の声を聞いて、ようやくタクシーはハザードランプを灯して停車した)

え、ここ?

(料金は9千円と少し。あの夜、有紗が喉から手が出るほど欲しかった金額よりも高いお金を運転手に渡して、二人はタクシーを降りた。
薄暗い街頭を挟んで並ぶ無機質な四角い建物のひとつ。窓から幾つか明かりが灯っているのが見えるが、本当にここで人が暮らしているんだろうか…。
どこからか小さな子供の泣き声らしきものが聞こえる。また別な方向から喧嘩をしているような罵声が耳に入ってくる)

団地…ってこんな感じなんだ…

(呆然として建物を見上げる健二を置いて有紗が歩き出す。幾つか並んでいるぼんやりと灯る電灯を潜るように入り口に入り階段を登ってゆく)

あ、待って…

(有紗の後について入り口に入る。雑に並ばれた自転車が狭い階段の登り口をさらに狭めて、歩きづらいことこの上ない。塗装の剥げた壁は所々むき出しになったコンクリートにカビのような染みを作る。なんの匂いだろう。どこからか漂ってくる生活臭が鼻につく。黙って階段を上がってゆく有紗にかける言葉が見つからない…)

  • No.83 by 有紗  2017-10-30 23:52:51 ID:a7c673d00

あっ……
(自分は慣れてるけど後ろを振り向いて……ちょっと泣きそうな声で)

その……
(振り向いたまま何も話せなくて俯いちゃう)
私こんなところに住んでて……
いつもここから学校に通ってて
(有紗が着ている制服があまりにもこことは不釣合いで浮いている)
……部活が終わったら普段は家に帰って家事やって勉強して……って生活ばっかりだから……

(作り笑いして)
今日みたいに美味しいお肉食べられて嬉しかったなあ……
ありがとう……
(きっと……嫌われちゃったよなあ……住む世界違うし、引かれちゃったよなあって)

  • No.84 by 健二  2017-10-31 00:14:02 ID:c196a580b


(電灯の薄明かりに照らされた有紗の切なげな作り笑い。でもその奥に悲しげな心情を健二は垣間見る。震える声で「ありがとう」と告げる彼女を、健二は思わず抱きしめていた)

大丈夫。
また食べに行こう。絶対…。

(自分の胸に有紗の頭を埋めさせて、そっと優しく撫でてやる。安心させたい…彼女を…)

  • No.85 by 有紗  2017-10-31 00:21:49 ID:a7c673d00

(抱きしめられたとき自分では一瞬何が起こってるかわからなくなって……あれ、私今……嫌われて……ない?)

本当?
また今度会ってくれる?
全然会う時間も作れないかもしれないけど
(母親が夜勤かつ自分の部活が早くて課題が少ないときくらいしか会えない。それかテスト明け。)
また……私に会ってくれますか?

(回答を聞くのが怖くてちょっと震えてる)

  • No.86 by 健二  2017-10-31 00:50:54 ID:c196a580b


(控えめな彼女の声を聞いて、抱きしめた腕を解いて見つめる)

もちろんだよ。
有紗…俺にはお前が必要なんだ…

(心なしか彼女の瞳が潤んでいるように見える。こんな子を、どうして嫌いになんかなれようか。それどころか、自分の置かれた境遇を包み隠さず明かしてくれた彼女がとても愛しく思えて)

俺の気持ちは変わらない。
ずっと…そばに居てくれ…。

  • No.87 by 有紗  2017-11-01 01:13:24 ID:a7c673d00

(ニコッと笑って頷く)

はい、お願い……します。

えっと……あ、送ってくれてありがとう……
(しかしタクシーはもう行ってしまってるし、タクシー捕まる大通りまでは治安の悪いところ歩かなきゃいけないしなのでちょっと心配になる……)
えっと……健二くん帰り大丈夫?
このあたり夜治安悪くって……

(と言ってる先から路上で浮浪者が喧嘩始める)

……狭いけどちょっとうちに来る?

  • No.88 by 健二  2017-11-01 01:52:55 ID:c196a580b


(いじらしく「お願いします」と言って頬を赤らめる有紗がすごく可愛らしく見える。その嬉しそうな表情をいつまでも見ていたい…。
そんなふうに思っていた矢先、彼女が健二の腕から離れて階段の踊り場から下を見下ろす。さっき乗ってきたタクシーを探している様子で)

少し、歩くよ。
治安悪いったって、一応男だしさ、俺…

(その声を掻き消すように公園のほうから怒声が響く。喧嘩だろうか、ビール瓶が破裂するような音に混じって「殺すぞコラァ!」の声も)

え、なに!?
喧嘩?

(健二も踊り場から身を乗り出す。数人の黒い影が揉み合う様子が見てとれる。止めに入る者、乱闘に加わる者、大声で威嚇する声が飛び交い、それを聞きつけたどこかの飼い犬がワンワンと吠える)

うわ……
マジか……

(健二が想像するよりずっと、この地域は荒んでいるようだ。いまあの公園には近付きたくない…)

えっ?

(顔をしかめて取っ組み合いの様子を眺める健二に「うちに来る?」との有紗の言葉。思わぬ僥幸に胸が高鳴る)

い、いいの?
お母さんは?

  • No.89 by 有紗  2017-11-01 23:41:07 ID:a7c673d00

それに健二くん……すごくいいもの持ってるでしょ?
(さすがにお嬢様学校にいるだけあって周りの子が持っているから目は肥えている。健二が持っている財布もバッグも時計も、学校では見たことあるブランドもので……)

そういうの持ってると、ああいう人たち、奪いたくて絡んで来るみたいなの。
(喧嘩だと思っていた怒号をよく聴いていると
「よこせ!」
「やめてください」
みたいな感じで……)
だから健二くんみたいな格好だと危ないよ。

お母さんはきっといるけど……きっと健二くんの格好を見たらすぐに家にいなよって言ってくれると思うよ。

(階段で6階まで上がった古びた一室。)
ただいま、お母さん。
遅くなってごめんなさい。
ちょっと紹介したい人がいるの。

  • No.90 by 健二  2017-11-02 00:07:22 ID:c196a580b


マジっすか…
(さすがの健二も少し肩を竦めて)
じ、じゃあ少しだけ、お邪魔していい?

(エレベーターの付いていない狭い階段を上がって一番上の階、向かい合わせに二つの部屋がある。どちらも味気ない金属製の灰色のドア。有紗が奥のほうの扉のドアノブを回して開ける。
狭い玄関は、正直健二のいま住んでいる邸宅の勝手口よりずっと窮屈そうで)

お邪魔します…

  • No.91 by 有紗  2017-11-03 23:13:26 ID:a7c673d00

「あ、有紗、おかえりなさい」
(着ているものからしてすごくシンプル(イメージとしてはユニクロみたいな)で、お金がないのはすごくわかるけど、姿勢も良くて有紗にやっぱり似ている感じに小綺麗にした女性が出てくる。その女性は健二の格好を見るなり)
「その格好じゃあ、夜は危ないから……申し訳ないくらい狭いけれどうちに今日はいらっしゃい」

(玄関はワンルームマンションレベル。小さなキッチンダイニングとリビング、そして奥側に寝室。この1ldkで2人で暮らしている。
参考書や本、仕事用具などはあるけど2人で住んでるからすごい小綺麗にしているけどやっぱり古さは目立つ)

あ、健二くん……うーん、こたつに座ってて、あ、お母さんもお茶入れるから待ってて
「有紗のお友達でしょう。私は大丈夫だから座ってなさい」

  • No.92 by 健二  2017-11-05 01:22:26 ID:c196a580b


え、あ、すみません

(玄関…というより、入ってすぐに小さな食卓がある。狭いスペースに台所があって食器棚や冷蔵庫が置かれていて、まさかここで食事をしているのか?と、健二は目を丸くしてその窮屈そうなリビングを見る。
奥から出てきたのは、無地のシンプルなロングワンピースを纏い、髪を後ろに結ったスラリとした女性。有紗のお母さんだ)

あ、初めまして。
あの…、有紗さんの友達の、須賀健二と申します。

(初めての対面に、どぎまぎしながら軽く会釈をする。どう自己紹介していいのか、とりあえず「友達」という言葉を選んでしまった。
お母さんは、突然の来客にほんの少し面食らったように健二を見たが、少しも慌てる様子はなく「あらあら」と、むしろ歓迎するかのように、自分の娘よりもいくらか年上の青年を部屋に迎い入れてくれた。
部屋に通されたとはいっても、靴を脱いだ玄関から数歩のところにこたつが設えてあって、周りを囲むように本棚やタンス、小さめのテレビと小物入れなどがある。部屋の大きさは6畳間くらいだろうか。…俺の部屋の半分もない…)

あ、外の騒ぎが収まったらすぐに帰るので、どうぞお構い無く…

  • No.93 by 有紗  2017-11-09 00:25:09 ID:a7c673d00

「あらあら……(でも健二の身につけているものを見てこの部屋じゃ引くかなと不安そうな顔をする。座布団を持ってきて)大したおもてなしができなくて申し訳ないですがどうぞお座りください。お茶くらいならお出しできますので……(というと急須でお茶を入れて健二とありさの分持ってくる)」

ありがとう……お母さんも無理しないで座って?
(お母さん座らせて)
えっと……私とお付き合いしてる健二くんっていって……
……(ちょっと考える)

「……(じっと健二の顔見て)芸能界の方?」

  • No.94 by 健二  2017-11-09 00:51:36 ID:c196a580b


(「芸能界の方?」と言って有紗に目を向けるお母さんに)

いやいやいや、そんなんじゃないですよ

(笑いながら)

あの、有紗さんと、お付き合いさせていただいてます。
僕も成人として、ちゃんとお母さんにご挨拶しておくべきだと思い…今日はお邪魔しました。

(アドリブとはいえ大した返事だ。
まさかの突然の「おうち訪問」。しかしながら健二はしっかり自分の置かれた立場と有紗との関係を説明できている。
もともと頭の回転は悪い方ではないのだ)

どっ、どうぞ、よろしく、お願い致します。

(そう言って頭を下げる。こたつの下は正座だ。
正座などもう何年もしていないので、早くも足が痺れてきている。
台所からは、シチューだろうか。芳しい香りが鼻に入ってくる)

  • No.95 by 有紗  2017-11-09 01:03:18 ID:a7c673d00

「顔が整ってるっていうのもそうだし……とてもスタイルが良いので芸能界の方かと思いました。
不束者でみすぼらしい娘ですがどうぞよろしくお願いします。(嫌な顔せず穏やかに答えてる)」

ええと……あ、お母さんご飯温めてたでしょ。
私構わないから食べなよ(よそって持ってく)

「あらあら…あとででいいのに」

……(というと健二が少し不思議そうな顔をしていたので、軽くここでの生活を話す
・有紗が小学校高学年の頃までは普通の家だったが父親が愛人と家を出てしまい、養育費を払うと約束していたが止まってしまったのが貧乏の始まりだということ
・自分の親は遠方にいて裕福ではないので両親の援助も頼れないこと
・自分がパートで働くとギリギリ生活保護も受けられないくらいの稼ぎになってしまっていること
・でもこれだけ貧乏でも、貧乏なのはすごく不便んだと思うけど、家庭的には幸せだと思うこと
・この周りは夜の治安が本当に良くないので、よじぇればとまっていけばということ
を伝える)

  • No.96 by 健二  2017-11-13 23:40:56 ID:c196a580b


(お茶を入れたカップを炬燵の上に二つ置いて、「いま夕ごはんの支度するからね」そう言ってキッチンへ戻る。「あ、健二くんも食べてらっしゃいな」キッチンから声が響く)

あ、いや、俺は…その、食べてきちゃったので…

(そう言って有紗と目を合わせる。焼き肉食べてきた…なんて、とても言えそうな雰囲気ではない。
しかし有紗は炬燵から離れるとさらっと言ってのけた。
「健二くんの奢りでご飯食べてきちゃったから。夕ごはん大丈夫」
それを聞いた健二は戸惑いながら有紗を見ると、彼女はカバンを持って奥の部屋へ
「着替えてくるね」
そう言って襖を閉めた。
「あらー、なに食べてきたのー?」
お母さんがキッチンから顔を出す。そして行儀よく座る健二を見ると
「健二くん、ごめんなさいね。あの子食欲は旺盛で…」
バツが悪そうに苦笑いし、健二の向かいに座って「あんな子だけど、どうぞよろしくね」と、頭を下げた。
そして、母一人娘一人のこの家庭の事情を訥々と、些かきまりが悪そうに健二に話して聞かせてくれた。

たとえ貧しくとも、それを包み隠そうともせず、しっかり手を取り合い前を向いて生きてきた。そしてそれはこれからも…。
決して暗くならずに、むしろ貧しささえ糧にして、支え合って暮らすこの母娘に、健二はこれまで感じたこともない感銘を受けて、足の痺れも忘れてお母さんの語りに聞き入っていた)


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