健二 2017-09-28 22:32:08 ID:c196a580b |
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(お茶を入れたカップを炬燵の上に二つ置いて、「いま夕ごはんの支度するからね」そう言ってキッチンへ戻る。「あ、健二くんも食べてらっしゃいな」キッチンから声が響く)
あ、いや、俺は…その、食べてきちゃったので…
(そう言って有紗と目を合わせる。焼き肉食べてきた…なんて、とても言えそうな雰囲気ではない。
しかし有紗は炬燵から離れるとさらっと言ってのけた。
「健二くんの奢りでご飯食べてきちゃったから。夕ごはん大丈夫」
それを聞いた健二は戸惑いながら有紗を見ると、彼女はカバンを持って奥の部屋へ
「着替えてくるね」
そう言って襖を閉めた。
「あらー、なに食べてきたのー?」
お母さんがキッチンから顔を出す。そして行儀よく座る健二を見ると
「健二くん、ごめんなさいね。あの子食欲は旺盛で…」
バツが悪そうに苦笑いし、健二の向かいに座って「あんな子だけど、どうぞよろしくね」と、頭を下げた。
そして、母一人娘一人のこの家庭の事情を訥々と、些かきまりが悪そうに健二に話して聞かせてくれた。
たとえ貧しくとも、それを包み隠そうともせず、しっかり手を取り合い前を向いて生きてきた。そしてそれはこれからも…。
決して暗くならずに、むしろ貧しささえ糧にして、支え合って暮らすこの母娘に、健二はこれまで感じたこともない感銘を受けて、足の痺れも忘れてお母さんの語りに聞き入っていた)
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