夕樹 美月 2016-07-23 13:13:25 |
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( そのまま歩いて向かおうかと思っていた所、送ってくれるという彼。このまま甘えてしまって良いのだろうか、ふと悩むも「 じゃあ、お願いします。」と遠慮がちに頭を下げて。そして彼の後ろを付いて行くとそこには如何にも一般人の車では無い車が停まっており。それに目をぱちくりするも、中から出て来た明らかに強面のその人にちょっとだけ吃驚してしまい。)
…店まで頼む。
(組員が出てきて、後部座席のドアを開ければ、その側に寄り、美月の方を顎で指して上記を。それから美月の方へ向き直ると、「夜、店に寄るわ。」と告げ、荷物は組員に手渡し、片手を軽く上げてから、己は車に乗らず、街中の方へ歩を進めていき。)
( 中に乗ると彼はどうやら乗らない様で。そして今夜店に来るという台詞を最後に行ってしまい、ぷっくりと頬を膨らませると「 .. ずるい。」と何に対しての狡さは分からないがぽつりと呟いて。そして運転手の人にお願いします、と向き直ると車は発進して。距離もそんなに長くなかったからか直ぐに着いてしまい「 ありがとうございました。」とお礼を伝えると車は立ち去り、一人店の前で溜息を溢すと中に入って行き。)
(美月と別れ、街を歩きつつ両側に並んでいる様々な店に目を移し。高級ブランド店の一つが目に留まり、その中へ。一度として違えたことのないような爽やかな笑顔の店員に出迎えられ。一通り店内を歩いて見て回り、アクセサリーのショーケースの前で止まると、その中を見ながら吟味し始め。)
( 歩を進め、謂わば嬢達の待合室兼化粧室に着くと扉を開けて「 おはようございます、」とか細い声で述べ。中には同期とも言える”あの”瑠奈さんやその仲間達が此方を見てはにやにやと笑みを浮かべていて、自分がした挨拶には返答せずに直ぐ何処かへ行ってしまい中は誰も居なくなり、思わず安堵の息を漏らし。そして今日のイベントの為に奮発した黒色の煌びやかなドレスを取ろうとロッカーに向かい開けると、そこには鋏か何かで引き裂かれた無残なドレスがあり。またかと息を漏らし、怒りよりもどうしようと言う思考が頭を巡ってしまい。)
(アクセサリーを購入し、店を出ようとすると、ショーウィンドウに飾られた一着のドレスが目に入り。深いワインレッドでデザインも女優がレッドカーペットで着るような上品さがある。店員もそれを気に入っている己に気付いたようで声を掛けてきて。購入したい旨を伝えると、サイズを聞かれるが、女の服など全く分からず。その女の店員が美月の背格好と似ていた為、片手で軽く抱き寄せて。すぐに離すと、「ウエストと肩周りはお前と同じくらいで、胸はもうちょっとある。」と、失礼千万を。店員はそそくさとそのサイズのドレスを用意しに行き、己は支払いを待っていて。店員が戻ってくれば支払いを済ませ、店を出てタクシーを拾い、葵の店へ向かい。)
( 取り敢えず店に置いてあるドレスを着ようとするもそれらはきっと用意周到な瑠奈さんが何処かへ隠したらしく、空っぽで。ドレスとお揃いで買った靴だけは無事だったのが不幸中の幸いだと思うも、奮発して買った物をこんなに無様にされてその悔しさから涙が溢れてしまい。罰金は発生するものの今日は欠勤するしかないか、と思いロッカーからそのドレスを取り出し涙を拭いながら歩を進めていると店内の方から何やら興奮している甲高い声が聞こえて来て。有名人でも来たのだろうか、でもお店はまだ開店してないしな、と他人事の様に思いながらも隅っこの方をちまちま歩き。)
(店の前でタクシーを降り、店内へ。事前に連絡は入れていなかった為、従業員は少し慌てた様に己を出迎えて。夜に来ようと思っていたが、かなり早めに来てしまった為、もしかしたら美月は居ないかもしれないと思いつつ歩を進め。それにしても騒々しい。そんな中、端の方を歩く美月を視界に捉え。少し離れていたので、「おい、待て。」と声を掛け。)
( ドレスをこんな目に遭わせた犯人の瑠奈さんは何やら甲高い狂声をあげていて、それに一言文句を言ってやろうとか思うもやはり実行する勇気何て無くて。そんな自分にも苛々が募り涙で霞んだ視界で必死に前を歩いているとどこからか聞き慣れた声が聞こえて。それに目を向けると周りの人間よりか随分背の高く見つけ易い彼が此方を見ており、「 .. は、え、蓮さ、ん .. 、」と状況が掴めずに思いっきり動揺した声をあげるとこんな自分を見られたく無くて彼に背を向けドレスを胸に抱き締め。)
……どうした。
(此方を向いた相手は直ぐに背を向けてしまうが、一瞬見えたその瞳には涙が。騒々しい奴等を退けて美月の方へ寄り、背を向ける相手の肩を片手で軽く掴んで、無理矢理ではないが此方へと向かせるように引き、上記を低い声で。)
.. どうも、してない。( 此方に来てくれた彼に事情を聞かれるも、彼の背中越しに見える瑠奈さん達の睨み方が半端無くて元々こんな醜態の事情を言うつもりは無かったがもっと言いたく無くなって。上記をぽつりと述べて顔を俯かせ唇を噛み締めると咄嗟に背後に隠したドレスを両手で握り締め。)
……俺に隠し事か。
(深く溜め息を付くと、後ろに何か隠していることに気付き。見せろと言っても、きっと見せないだろう。スッと片手を伸ばし、隠しているものを取り上げ。広げてみれば、無惨に切られたドレスで。みるみる顔は険しくなり、先程まであった人だかりの方へ向き直り。「…やった奴。出て来い。」と、ドスの効いた声を響かせ。)
.. っあ! ( 彼の言葉に目線を逸らしこの場を切り抜ける言い訳を考えている内にあっという間にドレスを取られてしまい。思わず声を出し取り返す様に手を上げるもそれは高く上げられており取れずに。彼は聞いているだけで身の毛が震える声を出し女の子達や従業員を見ていて。「 .. だ、大丈夫だから! 取り敢えず、こっち来てっ、」と慌てて彼の手を引くと先程まで居た化粧室に無理矢理連れて来て。)
………、何が大丈夫なんだ?
(無理矢理別の部屋へ連れてこられ、怒りは収まっておらず、眉間に皺を寄せた険しい表情はそのままに、相手に尋ね。こんなことを、大丈夫、で済ませようとしている相手にも腹が立っており。)
.. こんな幼稚な事する人に、本気で怒ったって伝わらないよ。( 化粧室に着くと何故か自分が怒られている様で身体を縮こませては小さい声で反論して。「 .. でもこのドレス、着るの楽しみだったのッ、」とまだ彼の方手にあるドレスを見れば張り詰めていた糸が切れる様にぽろぽろ大粒の涙を落として上記を嗚咽越しに述べ。)
……これを着ろ。
(ずっと片手に提げていた紙袋を相手に手渡し。それは先程購入したドレスが入っており。それから、先の連中の反応を頭の中で思い起こし、美月のドレスを裂いた犯人を探し当てようと。脳内を廻る様々な顔から、目星を付け、「…あの女か。」と分かれば化粧室を出ていき。)
.. へ、( 嗚咽が止まらなくて必死に引っ込めようとすればする程涙は溢れて来てしまい。そして彼は自分に大きな紙袋を手渡し、何かを考える様子の後にそのまま何処かへ行き。何だろう、と中を覗くとそこには自分が買った物よりも遥かに上品で煌びやかで素敵なドレスが入っていて、思わず素っ頓狂な声を出すとそのまま固まってしまい。ここまでしてくれる彼にいつまでも泣いて弱いままじゃ駄目だ、と強引に目を擦り試着室の様な所に入り着ている洋服を脱いで彼がくれたドレスに着替えて行き。)
……お前だな。
(フロアへ戻れば、開店前ということもあり、女たちは談笑していて。そちらへと歩み寄り、見覚えのある女の目の前に立ち上記を。声色は低いものだったが、表情は険しさを消し、冷酷になっていて。女も初めは笑顔だったが、視線が合えば怯えた顔に。女の細い首を利き手で掴むと、絞めながら徐々に持ち上げるようにしていき。)
( 着てみたドレスは何故かピッタリで不思議に思い。鏡に映った自分はたった一着のドレスだけで随分大人になった気がして。それに無事だったヒールを履き髪の毛は片側に流すだけで余計な細工はせずに、朝にしたナチュラルな化粧でも全然劣らずにいられそうで。ただドレスに見合った真っ赤な口紅を薄く付ければものの数分の癖に先程とは随分違うキャバ嬢の”葉月”が居て。ヒールの音を高鳴らせながらそのままフロアに行くとそこには瑠奈さんを締め上げている彼の姿が。「 .. っわ、蓮さんッ! 」と慌てて駆け寄り名前を呼ぶと彼の腕に手を添えて。)
あ? ………、似合ってる。
(苦し気に顔を紅潮させ、もがく女に視線を向けていたが、美月に触れられると振り返り。絞め上げることは止めるも、掴んだ手は離さずにいて。己の選んだドレスに身を包んだ美月は、先程とはまた違う魅力があり、その感想を伝え。「…こいつだろ?」と、まだ離さずにいる女を視線で指して。)
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