( fairy tale )〆 

 ( fairy tale )〆 

匿名さん  2022-08-21 15:03:38 
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 お相手様決定済み。

 

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  • No.121 by リヴィオ  2023-09-18 13:45:15 




……本当に、どこも不調はないな? にしても、これは……あ゛ーーッ!?
(常であれば即座に返る筈の反応はなく、定まらない焦点と鈍い反応に鼓動が益々嫌な音を立て始めるも、緩やかに重なる視線と微かな肯定の音はそれらを一斉に安堵へと転位させるに十分で。意識が明瞭であるのであれば一先ず心配はないだろうと再度の確認のみを落としては少年の上から退くと、ようやく周囲を未だに当惑の色濃い眼差しで見遣り――その金の瞳へ、無残にも地へ散乱する希少な蒐集品の数々と、盛大に形状の損なわれたフラスコを映すや否や思わず喉から悲痛の絶叫が迸り。わなわなと肩を震わせ、堪らず氷結した机上に構うこと無く半ば身を乗り出すように手を付くと同時、性急な所作で解析用の魔法陣を複数展開して。「クソッ! 時間操作、は手間も時間もかかり過ぎる……! 原子レベルで再構築する方がまだ……しかしここまでの古代遺物となると……」思索を深めるに応じてキュルキュルと回転速度を上げていく円形の陣を一心に見詰め、無意識に口許からぶつぶつと思考を垂れ流す様はもはや背中から鬼気を放つ勢いだろうか。やがて呪術の詠唱のようなそれが唐突にピタリと止まり、先の原因究明の為に大人気なくも隣の彼へ多分の八つ当たりを含意し口を開こうかと言った所で。今にもその宝玉のような瞳に薄い涙の膜を張り、次々と熱い雫が頬を伝い落ちてしまいそうな、これまでに見た事もない程に幼げな彼の面貌を受けて息を詰め、喉から発されようとした言葉など音を成す前に脳からも綺麗に抹消されて閉口し。彼の落ち度というよりは自身の想定不足を起因とする事故なのだから、いつものように無機質な陶器人形さながらのかんばせをして佇んでいればいいものを。ここまでの反則手を打たれたとなれば瞬間沸騰した怒気など深々とした溜め息と共に自戒として飲み込む他なく、明らかな強がりを述べつつ諦念の滲む両肩を下げ、何気ない調子で傍らの愛杖を床へ付いて。その瞬間、音もなく一斉に室内中の氷が砕け、パラパラと細かな白銀の欠片が光の反射により有色に煌めきながら幾重にも落下する。それは未だ傷一つ負わず素知らぬ顔を決め込む先の水晶玉による作用ではなく、単に自身が先だって発動したそれらの術理を把握し精密に反転させたに過ぎない。けれど、地へ落ちるまでにその細氷のような欠片達が水滴一つ残すことなく、あたかも一種の夢幻のように築かれた氷の世界ごと完全に失する幻想的な光景を背後に、体ごと相手へ向かい会った己の面差しには怒気よりも強い困惑が宿っていて。とはいえ、脳内にある膨大な魔術知識を紐解けば、暴発を引き起こした要因に全くの心当たりがないでもなく――)
はあ……おい、その情けない顔を引っ込めろ。この程度、俺の手にかかれば修復自体はそう難しくもない。それよりも――……お前、何者だ? その魔力……軽く古龍程度はあるぞ。



(/蹴り可とのお気遣いいただいて恐縮ですが、ちょっと一点ご相談したい事柄が出来ましたので続けて失礼いたします!結構な量の魔力を持つ人間となると、必然的に希少でしょうし、何かしらそういった存在の名称等の設定を付与するべきか?とものすごく今更ながら思いまして……。当方にお任せいただいた場合は「緑系の瞳を持つ人間が先天的に多量の魔力をごく稀に有する事があり、地方によっては神の御落胤や寵愛者、精霊の愛し仔などと呼ばれている」となりますが、如何せん何処かで見たようなネーミングやらやたら仰々しくしがちやらで、もし希少性の程度や通称等についてご要望がございましたらお伺い出来れば幸いです。
また、光栄なお言葉の数々をありがとうございました!ミシェル様の高貴なお名前を正式にお呼びしたくてしたくて半年ほど血涙を流していた甲斐があったようで良かったです……!当方もミシェル様の泣きそうなお顔には新たな扉を盛大に開きかけ、床にもんどり打って倒れそうになっておりましたので、お揃いですね……(?)※後半部分はお蹴りいただいて大丈夫です!)


 

  • No.122 by ミシェル  2023-09-24 15:18:03 




……火竜の餌……。
(厚く張った氷を砕かんとする勢いで実験台に手を突き、途切れることなく何事か呟きながら天板を発光させる主人を、立つに立ち上がれず床にへたり込んだまま視野に収める。口唇から無防備に漏れ出る思考も、平常時であればすぐに察しの付く魔法陣を展開しているのだろうという気付きも、そのどちらも得ることなくただ愕然と目を見開いてそこに居るのは己が現実を拒絶するせいか。喉奥に何か支えたような呼吸のしづらさを覚えて薄く口を開けると、上下する胸元に合わせて瞳を覆う水面が揺れ、あっという間に世界の輪郭が暈けてしまう。そこへ涙の向こうで相手が此方を振り返る気配がしたかと思えば、ややあって寂寞とした白銀の地下室に重たい溜め息が落とされて。いよいよ終焉かと覚悟する矢先、続く声音はしかし烈火の如き激情も氷点下の冷酷さも孕んでおらず、そればかりか咎める素振りすら見せることは無く。彼の両掌で行われたそれより余程軽い杖の一突きで謎の魔術を打ち砕いた影を暫し仰ぎ見たなら、下睫毛の先から滑り落ちる冷えた雫と共に零れたのは折に触れて耳にした常套語。憤怒の具合を尋ねるには些か以上に物騒な言葉選びであるとはいえ罰を下さないのかと自ら伺いを立てる様はごく一般的な少年らしくも、その声は他に気掛かりのある様子の主人に届かずとも無理からぬ程の呟きで。反対に此方を窺うような眼差しには緩徐に首を振れば、自身についての無知と先刻の危難についての潔白を訴えるように再度の告白を)
僕、魔法は使ったことが……ありません。一度も。



(/主様にご相談いただいて初めて此方もその事に心付きました、確かに……。
まず通称についてですが、提示してくださったどれも特別感があって寧ろそんな存在にしていただいて良いのですか……?と恐縮する程です。ここからは完全に私の趣味なのでイメージとそぐわないようであればご遠慮なく蹴っていただけると有り難いのですが、読みとしてそれっぽいルビが振ってあると高揚する性質でして……。一例として〈神の寵愛者:セオフィロス〉〈神の御落胤:ナタナエル〉、緑系の瞳の設定を生かすならば当て字ですが〈緑貴石:エメラルド〉等、精霊の愛し仔については今一つしっくり来るものを見付けられず例を挙げられませんが、宜しければご一考ください。
希少性の程度につきましてもご提示いただいた通りで異存ありません。実は、ミシェルが魔術を扱えるようになってからなので大分先の話にはなるのですが、リヴィオ様に引き取られなかったif世界線の自分を見るという意味で、街で暴れる同程度の魔力を持つ少年/少女を無力化するイベントをいつかご提案できればと思っておりました。そしてその件により魔力量のことを聞き及んだ孤児院の寮母達がミシェルの報復を恐れて次々辞職し孤児院は解体、もしくはご機嫌伺いの接触を図るという流れを夢想しておりました故、浸透具合としては〝一般に広くは知られていない〟と設定していただけますと幸いです。また、初回ロルからオークショニアは断片的ながら知識があったと見受けられますので、〝元は一部流派の魔術師や一部地方で測定器による測定が不可能な魔力量保有者のことを指していたが、それを小耳に挟んだ闇商人達が付加価値のために瞳が緑系統色でそれなりの魔力量があれば軽々にそう呼んでしまったため、本来の意味でそう呼ばれていた者達の正確な人数は把握できなくなっている。それにより正しい知識を持つ者の間では本物、偽物の概念が生まれている〟というのは如何でしょうか……?)



  • No.123 by リヴィオ  2023-09-25 22:24:15 




――バッ……あ、あれは……~ッ本気な訳ないだろうが! 俺がお前を害するような事……っ、……それで、お前はいつまでそこへ無様にへたり込んでいるつもりなんだ。さっさと立て。
(遂にはらりと白肌を滑る雫は思っていた以上に自身の心を揺るがし、否が応にも傾注する意識は小さな呟きのようなそれを確りと鼓膜に捉えて。これまでの悪癖や偽悪的な振る舞いが大挙して押し寄せる中、常であれば迂遠な言葉にささやかな毒の一つでも塗布する所を、盛大な狼狽を顕に剥き身の心中をそのままに曝け出してしまい。高度な魔術でも用いなければ取り消せまい失言の数々に気まずい視線を横へ逃がすと、惑乱する胸中の波紋に区切りを打つように小さく舌を打ち。そのまま不遜な眼差しで尻を地に付けたままの相手を見下ろしては、不器用ながらも僅かに腰を落とし、空の方の手を差し出してみようとするだろうか。「……ふん。まぁ、半魔や魔族の擬態でも、何らかの呪術を施された訳でもないのなら……〝本物〟か」やがて相手が己の手に応じたにせよ拒んだにせよ、一つ吐息した後にゆるりとその特徴的な瞳へ視線を改めて定め直せば、些か強引ながら主題への話題転換を試みて。極めて稀な事例であるが故に市井における知名度は相当に低く、一部の闇市場や顧客の間においても誤情報の流布や偽物が絶えないそれに関する概略を努めて淡々と並べ立てていき。当人の身に覚えもなく、また以前の己の診察を問題なく潜り抜けたとあれば違いなく真正だろう。しかしながらそうなると、魔力の目覚めすら迎えていない彼は比喩でなく現物の爆弾に他ならず、ただ魔力タンクとして使い捨てるだけであるならばともかく到底素人の手に負えるものではない――表面上はつつがなく淀みのない説明を続ける最中、脳内で今後への思索を進めていく毎に眉間の皺は徐々に険しさを増していき)
一部では寵愛者だの精霊の愛し仔だのと大層な名で呼ばれてはいるが、学術的には緑貴石《エメラルド》。緑色系統の瞳を有する者へ突然変異として極めて稀に現れる、規格外の魔力持ちの事だ。……俺の見立てでは、間違いなくお前がそれだろうな。


(/パシャ…(無言でミシェル様の泣き顔をスクショする音)
な、なんという当方の厨二心を最高にくすぐるご提案を……!とても素敵なワードセンスに迷いました末に、正式な専門用語としては大仰な物は選ばれにくいやも、という独断と偏見で緑貴石とさせていただいておりますが、情報屋や闇市などではセオフィロスなども俗称として是非是非使わせてください!その他の設定についても承知致しました、特に深い考えのない初回ロルまで汲んでいただき頭が上がりません……それではそのように本編を進めさせていただきますね。
また、素晴らしい展開案までありがとうございます!他者を通じてif世界線を見るというのも非常~に滾りますし、ミシェル様の孤児院には何かしらの苦渋を舐めさせたいとぼんやり思っていた所でしたので、最高の形にしていただいて助かります。是非ともまた頃合いを見て詳しいイベントの相談をさせてくださいませ!
本編に関しましては、この後同居延長の申し出と、ついでに魔力の開花をお手伝いさせていただいたり、軽く魔術に関する手解きをする流れになるかなと思っておりますが、何かご要望等はございますでしょうか?特に何もないようでしたらこちらはお蹴りいただいて大丈夫ですし、何でしたら突然のぶっ込み展開も大歓迎ですので、引き続きよろしくお願い致します!また、今回は時間と余裕がありましたので早めに返信の方を投下させていただいておりますが、ご返信につきましてはお気遣いなく、これまで通りご都合の良い時に頂戴いただければ幸いです。※蹴り可)




  • No.124 by ミシェル  2023-10-02 04:14:55 




(水晶玉の魔術により絶体絶命となったあの時、果たして自身は彼に守られたのだろうか? あまりの衝撃と失態ばかりに気を取られ、そのことに思い及んだのは主人が彼らしくもない動揺を露わにした後で。同時に吐露された言を信じるなら何故事ある毎にそのような虚言を弄したのかという新たな疑問が浮上するものの、忌々しげに舌を打ち手を差し伸べる面差しに一心に名を呼ぶ姿が重なれば、手を取る理由はそれだけで十分に思われ。肌の表面を伝い落ちる涙もそのままに目線を合わせては、室内を丸ごと冷凍保存するかのような氷が砕けてから未だそう経たぬせいか、少しひんやりとする指先を恐る恐ると重ねる。引き上げるように立たされた後も何気なしにその面貌に視線を留めていれば、不意に金眼が此方に向けられて微かに目を見開き。それから語られた数々は身に覚えが無いどころか聞き覚えすら無く、自身に関する重大な用件でありながら相も変わらず他人事のようにきょとんとして。というのも魔術から縁遠い身にはそれが喜ぶべきことなのか嘆くべきことなのか判然とせず、また純粋な知識以上の意味を持たなかったからで。何せ孤児院で共に育った子供達は皆奴隷となったはずで、全ては後の祭りなのだ。しかしいやに悟った瞳を測定器に翳した右手へと落とし、そしてまた上げた先の指針とも呼べる顔ばせに渋面が作られるのを見咎めては、寸刻前に惨劇を引き起こした手前矢も盾も堪らずに尋ね)
……何か問題が?


(/ピッ…(徐にリヴィオ様のデレを録音する音)
厨二心を全開にし過ぎたかと怯えながらご提案させていただいたため、ご採用とお褒めの言葉を賜りまして安堵と共に幸甚です……!それにしてもリヴィオ様が口にされると不思議と格式高く聞こえますね……、拙い説明を汲み取って落とし込んでくださりありがとうございます。展開案につきましてもまた機を見てご相談させてください!
直近の流れも把握いたしました。要望等も現時点では特にありませんが、何か唐突に閃くことがあれば主様の胸を借りることがあるやもしれません。あまりに返しづらい場合は手加減なくご指摘くだされば幸いです……!展開やら返信ペースやら、毎度あらゆるお心遣いをいただき痛み入ります……。またリヴィオ様のみならず主様にもミシェルを大変可愛がっていただきまして、そちらもまた密かな楽しみの一つとなっております。お礼のみお伝えしたく、手短にですがお返事を失礼いたしました。引き続きよろしくお願い致します!※蹴り推奨)



  • No.125 by リヴィオ  2023-10-07 20:42:40 




……問題しかないくらいだ、クソ……ッ。
(滲み出る心中の苦悩を認め、説明の合間に発された疑問符に思わず露骨な悪態が口から零れる。そうしている間も懸命に脳の回転速度を上げ打開策を探るも、導き出されるのは気位の高い自身にとって到底耐え難い他者の助力を得て一方的に弱味を晒すような案ばかり。しかし、それでも自身の研究を最優先とするのであれば多少の代償を払うべきという合理的な思考は、頭痛を堪えるように額へ添えた手と再度吐き出された深々とした溜息により打ち止めにされて。……否、どれ程思案した所で結局、彼の窮地の間際、咄嗟に禁句としていた名を呼んでしまった時点で何もかもがとっくに手遅れなのだ。それ程危険な状態にある相手を導く手段が自身にあるというのに、とても他者の元へ無責任に放り出す事など到底出来る筈もないという傾けた情の程度を歴然とした事実として認めては、やがて緩りと顔を上げ視線を交わす相貌には一種の諦念と、幾許かの憑き物が落ちたかのような自嘲混じりの微笑が口元へ刻まれていて。相手との繋がりを好意で彩る事を少しだけ自身に許し、以降の身の処遇をつらつらと愛想なく並べ立てた後、今度は真正面から皮肉げな響きを伴いながらも確りとその名を呼ぶだろうか)
……お前のその馬鹿みたいな魔力量は、到底その辺の凡夫程度に扱い切れる代物じゃない。さりとて、教会や他の魔術師共に借りを作るのは御免だ。――よって、引き取り手の件は白紙とする。暴発の恐れがある以上、満足にその魔力を扱えるようになるまで少なくとも数年は此処で暮らせ。……は、折角好条件の引き取り先のもと真に自由になれるとでも思っていたかは知らないが……お前も大概呪われているな、ミシェル?


 

  • No.126 by ミシェル  2023-10-11 17:47:43 




(実情がどうであれ、オークションで落札された時分から一貫して自身の知る彼はあらゆる知識を具え果断に富む人だった。その主人をこうも悩ませ、苦々しげな文句を吐き出させるのだから、己の生まれついた性質というのは相当に厄介なものなのだろう。浮かぶ面様に更なる問いを重ねる余地もなく閉口しては、肝心の問題が暗然としているために、未知の闇に包まれた獰悪な怪物の姿を幾多も思い描きながら結論を待つ。凶星の下に生まれたせいで両親にも捨てられたのだろうか、彼からも手に負えずに今度こそ放り出されるのだろうか――と、鉄仮面のまま物心のつく以前にまで遡及して悲観する最中、重苦しい嘆息が落とされれば無意識のうちに背筋が伸び。しかし次に此方を向いた表情は平生の厳顔を忘れていやに静穏で、その心中を推し量れずにいる間に告げられた命も自身の予想を裏切る正反対のもので。胸の内に稲妻のような何かが一瞬光って、学術名《エメラルド》の由来たる青緑色の瞳をさやかに煌めかせる。正体を見定める暇もなくまた影を潜めてしまったそれを追うことなく、目線は真正面へと向けたまま魔除けの指輪を通した左手で鳩尾辺りの衣服を弱く握れば、動作自体は微かながらも皮肉げな言にはっきりとかぶりを振って)
……いえ。呪いなんて……、……呪いなんて、どこにも。



  • No.127 by リヴィオ  2023-10-15 21:44:50 




……阿呆、こんな山奥の生活を気に入ってどうする。
(唇の片端を僅かに持ち上げ、皮肉めいた響きで相手の鼓膜を揺らした筈が、動作こそ最低限ながら確たる芯を内に宿すような明々の否定に瞠目し。何事か言いたげな口唇を一度だけ無為に開閉させた後、やがて種々の想念が胸中を巡った帰結として呆れを孕む金眼をじとりと対面へ差し向ければ、徐に歩み寄った際のすれ違い様に伸ばした手の平でぺちんと相手の額を軽くはたいて。さした膂力も籠っておらず僅かな衝撃だけを齎しただろうそれは、これまで忌避していた気安い戯れに他ならず、相手からの好感を察して無性に沸き上がった耐え難い照れ臭さからの裏返った愛情表現ではあるが、仏頂面で為されたそれが相手へ正確に伝達されるかは甚だ怪しい所で。そのまま歩を進めた先は他の部屋へと続く扉の前であり、一度振り返り端的な説明を放れば相手へ追随を促して。一旦修繕は後回しにする他ない床を転がる蒐集品達へ若干物悲しげな視線を残しつつも、相手と共に扉を潜ったのであれば、地上以上に部屋間の接続を完全に分断した構造である為に特段先の暴発による影響は見受けられない整然とした書庫が姿を現す筈で。そう巨大な空間でも無いが、一定間隔で並ぶ書棚にみっちりと敷き詰められた蔵書数は優に百を超えており、言語や様式、時代を問わず蒐集され壁面までをも埋め尽くすそれらは独特な威圧感を放ちつつ、主人に相似した仏頂顔で来訪者を出迎えるだろう)
兎にも角にも、まずはお前の魔力開花からだ。その魔力量で自然な目覚めに任せると、どんな規模の暴発を起こすか分かった物じゃないからな。……此処では集中も何もないだろ、書庫にでも移るぞ。


 

  • No.128 by ミシェル  2023-10-19 19:47:54 




(彼の動き出すに伴ってローブが翻れば、不意に眼前へと手のひらが現れて咄嗟に目を瞑る。ところが額にぶつけられたそれは小気味の良い音を立てるばかりでさしたる衝撃も創傷も与えることなく、傍に起こった微風は速度を緩めず一直線に通り過ぎて行って。進路にあったので触れてみた、といった風情の行為は呆れ返って力を込め損ねたのかもしれないし、時折思い出したように此方へ向けられる脅かしの延長なのかもしれないが、手加減して叩くそれに胸の内を擽られるような心地がしてはそうと瞼を開いて首を回らし。しかしほぼ同時に振り返った面差しには幻視した親愛の情は窺えず、普段通り真一文字に結ばれた口唇から最前の惨事を想起させる語が零されたなら浮ついた気分も仄かな緊張に塗り替えられて。憂いを帯びた眼差しの落ちた品々を記憶に留め置くように数秒ずつ注視し、一通り目を向けた後に主人の踵を踏んで扉を潜る。足を踏み入れた瞬間に感じる微かな空気の変化はきっと空間的隔絶のためだけではないだろう。生活感の排された書庫は実験室とはまた別種の異質さを呈し、入室者に自ずと足音を忍ばせる静かな迫力がある。まるで本に聞き耳でも立てられているかのように周囲に目を配りつつ声を潜めては、またしても未知なる部屋の出現にこれから数年暮らすなら多少の詮索は許されるだろうと率直な疑問を漏らして)
……ここにはいくつ部屋があるのですか?



  • No.129 by リヴィオ  2023-10-22 21:49:07 




そう多くはない、後は調合室と魔道具等の保管庫位だ。……ただ、偶に波長が噛み合うと別空間に繋がる事はあるが。封鎖と防衛術式は効いているから、その場合はすぐに背後の扉へ戻れば支障はない。
(本という物は良い。一部例外はあるものの、常に黙して余計な贅言を吐かず、開けば数多の知識と先人の遍く叡智が詰まる。集中出来る場所へ、と提示して単純に自身が最も心安らぐ部屋に導く辺り対人能力の乏しさが現れていると言うべきか、天井まで届く程の物言わぬ大量の書籍に少々落ち着かない素振りを見せる相手へ失策を薄らと悟りつつ、奥へと向かう道すがらに平板な声で問いに答え。地下室への保管物は希少性や価値自体が高いか、あるいは扱いに注意を要する物に限られる。地上の住処とは異なり完全に空間自体を遮断している分、閉鎖性と防犯性に優れる一方どうしても若干不安定となる接続の隙間に偶然別の異空間と稀に重なる事があり。それに加えて、高度かつ執拗な隠匿工作を施しているにも関わらず己の地下空間を感知し、なおかつ恣意的な干渉を試みる迄に強大な力を有する理外の存在もあって「……繋がった先が茶会の場合は多少厄介だが」と自身が過去に遭遇した事例と同様の事態が彼の身にも降り掛かる、そんなごく僅かな可能性を苦々しく付言して。口にするだけで不快感の湧き上がる記憶にこれ以上の言葉を費やす気はないといった素振りで、奥懐にある上等な意匠の黒布が掛けられた読書用の机と柔らかな同色の布が張られた一人掛けの椅子を相手へ示してみせ)
……そこへ座れ。別にそう難しい事はない、魔術学校でもやっているような普遍的な手法を取るだけだ。まずは意識的に呼吸を深く、徐々に肩の力を抜いて、最後に瞼を下ろす。…後はこっちで誘導してやる。


 

  • No.130 by ミシェル  2023-10-27 05:59:07 




(孤児院への寄贈本で読み書きの基礎を習得した己にとって本は全く親しみのない物ではないが、読書それ自体を目的として設けられた空間に入るのは生まれて初めてのことで。さすがに見知った書影は一つも無いものの、まさかこんな山奥の地下に虚仮威しの為に置いているわけでもあるまいし、此処の一切合切が彼の血肉になっているのだと思えば興味を惹かれて背表紙の題を数冊浚う。多様な言語が並ぶ内から可読のものを選り出したはずが、魔術関連の専門用語なのか馴染みのない単語の数々に内容の推察を諦めては、知識や教養を身に付けるにもその為の知識や教養が必要なのだと学びを得て。自身が主人の内面の観察に失敗する傍ら、彼の方も何やら来し方の苦い経験を思い起こしているようで、訓蒙を惜しまないその口が重く閉ざされている様子からも相当な憂き目に遭ったと見える。茶会など子供だけの飯事でしか経験のない己にとっては楽しげな印象しか無く、苦難とはまるで結び付かないものの、まだ見ぬ部屋の存在と共に忠告と対策も確かに記憶し。書庫を進んだ先で本題である魔力開花の為の指示があれば常の如く「はい」と従順な返事の後、姿勢良く背を伸ばして一人椅子へと腰掛ける。最早奴隷精神には収まらぬ信頼から、より多くの空気を取り込むように大らかに呼吸し、つい握り締めていた手を解き、難なく緊張状態を脱しては最後にそっと両眼に蓋をして)



  • No.131 by リヴィオ  2023-10-29 21:04:54 




……魔力とは、血液のように常に体内を循環する脈動だ。今から手の甲を流れる俺の魔力を標として、その不可視の循環を、心の臓に重なる不可触の内蔵を知覚しろ。
(身体と精神、その双方の弛緩が難しいようであれば何かしらの対処をとも思案していたが、思いの外すんなりと着座し瞑目する相手からは緊張の糸が既に解かれているのを感じ取り。その薄暗い経歴からは些か不自然と評せるだろう警戒心の低さに自然と裏にある信頼をも悟れば一抹のむず痒さを胸中に抱えつつ、静寂を崩さぬままその場へ膝を折って。トン、トン、と下ろした杖で地を打つ事によりメトロノームのような硬質の導入音を作りながら、「触れるぞ」という短な声掛けの後にもう一方の隻手を相手の手の甲へ軽く重ね、それを起点に僅かながらも瞭然たる熱を孕む己が魔力を少量流し込み。平素よりも幾許か低くゆったりとした声音には一種の催眠効果を伴わせており、緩やかにその意識を半醒半睡の状態へ導く事でより彼自身の内部へと意識を没入させようと。その深層部に潜む物は常人とは比べ物にもならなければ当人にとっても正に得体の知れぬ命脈の源泉、それを初見で飼い慣らすなど至難の業であるだけでなく、他種族よりも魔力量の乏しい傾向にある人間種においては稀有な事例といえど、逆に取り込まれて帰還を果たせず一時的に発狂する者もいる程。しかしながら、よもや自身が傍らで導いておいてそうも粗末な遺漏など有り得る筈もなく。相手が順当にその青緑の眼を開いたなら、その視界にまず収まるのは少々複雑げに口辺を緩め形式としての言祝ぎを紡ぐ己の姿と、開花前の彼では知覚すら叶わぬ程に儚く極小な微精霊達による溢れんばかりの歓待を示す数多の彩り。そして本棚へ無言で納まる書物の一冊一冊毎に宿る濃密な、あるいは悍ましき魔力の満ちる気配にこの書物庫の異質さが改めて知れるだろうか)
それに、今は無理に触れなくていい。遠目にでも自身に流れるもう一つの血脈を、異端の臓腑の在処を得たなら……さあ、此方へ帰ってこい。――ようこそ、魔術の世界へ。


 

  • No.132 by ミシェル  2023-11-01 15:59:12 




(視界が閉じ、鋭敏になった聴覚が拾うのは杖が床面に下ろされる音。それが合図のように二回ほど鳴る間に瞼の先で何が起こっていたのかは知る由も無いけれど、此方の精神を波立たせぬ為か外部刺激の予告があれば、ごく浅く顎を沈めて恐らくは特に求められていない肯定の意を示し。他者の体温が手の甲に触れ、それとは別口の熱が末端から徐々に上ってくるのを無抵抗に受け容れながら、これもまた脳を侵すような声音に夢裡の心地で意識を委ねる。自己を顧みる行為は依然として不得手であれど、感情の面ではなく身体的な感覚の面であったお陰か抱いた憂心よりはすんなりと魔力の循環を、ひいてはそれを司る概念的な器官を認知でき。人為的な魔力の開花であるからには無理矢理に力を引き出すような苦痛を伴う手順があるのかと思いきや、瞑想に近いそれだけで終了の指示が下ると、僅かに生じた疑念に反してひときわ凪いだ双眸を目覚めの如くぼんやりと開く。――途端、まさに目から鱗が落ちたと言うべきか、はたまた第三の眼を獲得したと言うべきか。見知った景色の見知らぬ姿がそこに映し出されては、秘密めいた神秘を見つめる瞳はゆっくりと瞠若し、唇から幾つか音を零したきり絶句してしまって。どのくらいそうしていただろうか、漸くの瞬きで忘我の境地から脱すると、自らの目にしたものを説明もせぬまま金眼の奥を覗くように見据え)
――こ、れは……。……同じものが、リヴィオ様にも見えているのですか?



  • No.133 by リヴィオ  2023-11-05 19:40:22 




ふん、……蔵書に込められた魔力や思念類はともかく、地下にはより厳重な封鎖を施しているから、何時もはこうも騒々しくはないんだが。先の暴発で空間に僅かな亀裂が入ったのを奇貨として、お前の魔力に惹かれた小物が雪崩のように……。
(初めて垣間見た魔術の世界の入口に、少年の特異な瞳が衝撃を宿して暫しの沈黙が落ちる。自身も覚えのある幼少時代のそれを自ずと想起しては静の空間を壊さぬまま折っていた膝を伸ばして立ち上がり、余りにも盛大な歓待振りへ金の瞳を滑らせて。無論、殆ど自由意思のない彼らが少年の身に起こった事象を感知したという訳では無く、ようやっと控えめな口唇から発された問い掛けへ当然と言うように吐息すると、先の強大な魔力の暴発により引き寄せられたに過ぎない旨を説明し。しかしながら、並べた言の葉とは裏腹にそこに何らかの意図や導きのようなものを見出してしまいたくなるのは相対した瞳の俗称に依拠するものとしても、この新たに門扉を開いたばかりの世界が相手を手放しで歓迎するだろう事は紛れもない事実ではあり。――良くも悪くも、清濁問わず。徐に顔の向きを対面へと戻し、視線を交錯させると以降到来するだろう現実を映すような厳粛な面差しで忠言を連ねていく。己の傍らに身を置く以上遍く危険を排除してやる事自体は可能だが、かような無菌室へ閉じていては如何な赤子とて何時までも自立し得まい。自身以上の苦難の待つ相手へ敢えて直截的な物言いで事実を突き付けていれば、丁度精霊の光に紛れ接近を試みたと見える黒曜の小さな歪みを不意に杖で叩き落とし、種族名すらまともに冠せられていない、幽冥の境を漂うような詰まらない悪意や思念の残留が打撃により外形を崩されジュクジュクと地へ跡形もなく醜く崩れる様を一瞥して捨てて。致命的な物からは自身が盾になるとしても、奇しくもこれから相手が遭遇するだろう辛苦の先鋒となったそれを端緒とし、眉間に皺を刻みつつ腕を組んで目前の瞳を改めて見遣り)
だが、此方が視えるという事は、向こうからも此方が捉えられるという事だ。特に、お前のように碌な自衛手段のない魔力持ちなんて格好の餌だからな。……――対処する術は教えてやる。が、お前を死ぬまで囲ってやるつもりはない以上、ある程度の〝実践〟は覚悟することだ。……これから苦労するぞ。


 

  • No.134 by ミシェル  2023-11-11 20:37:15 




(足音を立てる事さえ躊躇われた静謐な書庫は、声こそ聞こえてこないものの瞬く光に彩られて随分と賑やかに姿を変えて。絵本の中にしか見た事のない幻想的な情景に目を奪われる己とは対照的に、歯牙にも掛けぬ様子の主人がつまらなそうに鼻を鳴らすと、言外に問いへの答を得てつい綻びそうになる面貌を自制するように唇の両端をきゅっと固くし。その僅かな変化が平常より一層の高低差の生じた相手に見咎められた訳でもあるまいが、先の祝福の一言と厚遇を受けているかに思わせる精霊達の浮遊によって好意的な側面しか見えていない新顔へと先達の警告が与えられれば、しきりに周囲を見渡していた両眼も摯実な顔付きを伴ってそちらを向き。同じものが視認出来るようになったと言えど、それはただ像を結ぶだけの事。依然その怜悧な瞳が見通す未来も見てきた過去も真に窺い知る事は叶わなければ、話の内容を理解しているともしていないともつかぬ曖昧な面様を湛え。主人の予見する受難――それは、孤児院を抜け出して赴いた夜市で、里親に引き取られたはずの兄弟が鎖に繋がれているのを目にした時よりグロテスクな光景だろうか。それは、所々に傷の目立つ彼の助けを求める眼差しに凍り付く事しかできなかった咎以上に心を失わせるものだろうか。慟哭し、恐怖し、やがて諦念を積み上げた人格形成の根幹を成す記憶が頭を過ると、地に張り付いて泡ぶくのように消えて行く澱みへと視線を動かし。そこから目を上げると共に椅子から立ち上がって発した従服は、あの日以来戻らない全うな自己愛のためでなく、主人の手を煩わせないという初めに言い付けられた命を遵守するためのもので)
……はい。ご指示の通りに。



  • No.135 by リヴィオ  2023-11-16 08:17:13 




……お前のその詰まらない顔も見飽きたな。ただ怯懦に打ち震えるよりマシとはいえ……まぁ力を得れば多少は変わるか。……――で、適性は氷だったな。極めて汎用性に富む、使い勝手の良い魔術だ。武器にもなれば防具にもなり、投擲や捕縛の他、日常生活においても応用が効きやすい。耐性に難はあるが、修練を積めば炎熱にも溶けず何物をも貫く硬度すら持ち得る。
(手中に抱く未知の果実とその毒蜜に踊る事も無く、ただ機械的に主人の命に忠実であろうとする従順な犬の顔が妙に気に食わず、起立した相手の頬を徐に伸ばした指先でむに、と軽く摘んでみせ。出会った当初よりも幾分かふっくらと肉を備え健康的に色付くそれを、気難しげな顔付きのまま硬化した表情筋にマッサージでも施すかのように数度捏ね回し、手前勝手な独り言の末さした脈絡もなく解放を。甚だ大人気のないやり口にて鬱憤を晴らした後、先の夥しい氷の惨状を思い返しつつ自身の前方へ手の平を上向きに差し出すと、パキパキと周囲の温度を数度下げながら虚空に表出したものは小振りな剣、盾、投擲武器、円形の檻、精巧な薔薇の花と次々にその形を自在に変容させる実用性を兼ねた氷彫刻で。最後に一層の冷気を取り込み極限まで密度を高めた極小の氷石を編み出し、懐から取り出した鈍い灰黒色の魔石を無造作に宙へと放って「……氷の適性が低い俺であっても、極めれば高硬度の魔石程度は容易だ」不意に空間ごと割くような一陣の光が視認よりも速く矢のように飛べば、先の暗色の中央を氷石の形状に貫く所までを眉一つ動かすこと無く示したまでは言いものの、次第に熱を増す講釈は案の定横道へと逸れ始め。しかしながらそれは自身の魔術に対する並々ならぬ熱量から来る平生の悪癖ではなく、鉄の足枷を失っても尚未だ何も持たぬ奴隷に心身を留める相手へ、最低限のレベルといえど魔術を扱う術者となる意義を僅かなり示そうと)
理論的にはそれこそ時間等の概念的な物質を始め、形而上下を問わず真正の万物を氷結させる境地にすら至るとも言う。魔術とは、物理法則に干渉し意のままに事象を操る力だが……たかだか少し火や水を操る程度の、型に嵌り切った一般魔術なんざ末端も末端。――真の魔術とは、この世の何よりも自由で、何をも成し得る万能の力なんだ。……ミシェル。これからお前に、その力の一端を触れさせてやる。


 

  • No.136 by ミシェル  2023-11-20 18:41:05 




(直立の姿勢になってすぐ、身構えもしていない無防備な頬をつい先刻に覚えのある隻手が捉えては、目を見開くと共に指先をピンと伸ばしたまま体を硬直させ。幾度か瞬きをするだけでさしたる抵抗も示さずに柔いそこを捏ねられていると、魔術で詰まらない顔を珍妙な造形に作り変えられている気さえしてくるものの、無論そんなはずもなく主人はくすりともしないまま腕を戻し。額をはたかれた際と同様、改めて見上げた先に今し方の気色は尾を引かず、此方が数秒前の出来事に囚われる間に話柄が次へと移れば、この件に深い考察は不要なのだと直感的に心得て。しかしそう意識するまでもなく熱を帯びつつも冷静に授けられた学識と目前で為された実演は他の思考を排する程に驚駭の連続で、宙に出現した氷像が変貌を遂げ、それでも低適性の範疇だと知らされ、魔術の真髄を語り聞かされる度に少しずつ未知の世界に惹かれてゆく感覚を覚える。にも関わらず、相手の口にした奇跡のような力が切望や野心と結び付かないのは胸中の霧がそれを覆い隠すせいか、己が中空の人形であるせいか。神妙な頷きで彼の呼び掛けに応えたなら、落ち着かなげに瞼を伏せて青緑の両眼を左右に泳がせ。学校に通う事はおろか誰かから指導を受ける事すら経験が無く、瞳の奥に不安定な光を揺らめかせると、自身が最も欲し最も恐れた〝自由〟という禁断の果実へ、恐々とながらも手を伸ばす意思を覗かせて)
……此処に来てから、初めての事ばかりです。――よろしく、お願いします。



  • No.137 by リヴィオ  2023-11-24 22:07:39 




……とはいえ、最初は基礎訓練が主だが。そうだな、どの道ある程度の調合は任せようと思っていた所だ。まずは薬に含ませる魔力量を調節する事で基礎的な出力コントロールを……。
(今ではとうに見慣れたように思う一方、当初はさして気にも留めずにいたエメラルドの色合いに、何処か人を惹き付ける引力めいた物を孕むように感じるのは希少な双眸に付帯する大仰な俗称故か、はたまた相手へ傾げた情の無意識下における現われか。いよいよ迷い子のように内心の惑いを露わにして覚束無く宙を漂う双眸を急き立てる事はせず、口を真横に結んだまま腕を組んでは静かに相手の応答を待ち。こと魔術関連となると極端に視野が狭く饒舌になりがちであるのは己の悪癖ではあるが、相当に恬淡な気質にある相手の琴線へ触れ得たかは定かではないにしろ、差し当たり魔術という新たな見識を深める気概程度はあるらしい口振りに一つ首肯して。ゼロから魔術の基礎を構築するとなれば座学は勿論の事として、よく用いられるのは特殊な魔力糸による操作術の向上、瞑想による想像力の鍛錬と諸々の案が浮かぶ中、一先ずは元々この地下空間へ足を踏み入れた当初の目的と合致する物を選び取り、次なる工程を示しつつ率先して調合室へ続く扉を開けるだろうか)


------------------------------------------


(静閑な森奥の奇特な住処の一室に、ただ木材を刃物で擦る音のみが響く。元は武骨な木の棒が丹念にヤスリで身を削られ、徐々に指揮棒程度の小振りな杖の様相を呈し始めて暫く、先端へ細やかな意匠と共に拵えた白雪のような銀の土台に真円を象る蒼の魔石を嵌め込めば手製の魔術杖の完成。生憎と透徹した蒼の内に映るのは寝起き故に未だ髪すら結ばれていない少々粗末な身なりの己ではあれど、薄ぼんやりと霞む思考ながら最終の検品を行う目尻は鋭く、矯めつ眇めつと幾度も出来栄えを改めて。あれから、一歩外へ踏み出せばやれ低級魔族に絡まれただの妖精共の姦しい話の輪に誘われただの、街ならばともかく元来人よりもそうでない者の方が多く息衝く地であれば想像に違わぬ引く手数多振りであったようで。一方、教養から掛け離れた経歴に反し頭の巡りや飲み込みは決して悪くなく、加えて緑貴石などという天賦の才をも授かる相手であれば基礎的な魔力の扱いや知識程度順当に物にしているように伺え。となれば次なるステップへ移るべく、精霊による伝令に連れられて相手が扉の外へ佇む気配を察知したのなら「――入れ」と依然として視線を杖から外す事無く、寝台に腰を掛けたままの位置にて端的に入室を促すだろう)


(/長丁場になりましたが、この度は魔力開花イベントの完遂ありがとうございました……!依然のんびりとした歩みでありながらようやっっっとミシェル様のお名前を呼び気軽に触れられるまでに関係性を変じる事が叶い、密かに背後はほくほくしております。当初のお互いのディスコミュニケーション振りやらすれ違い様やらを思い返すと何とも感無量です……笑。
さて、頃合いかと思い時間経過と場面転換を図らせて頂きましたが、以降はそのまま当初の予定通りに>34(3)街散策の方へ移らせていただきましょうか?あるいは、先に杖を用いて実際の魔術を扱う話や、はたまた魔術の基礎力を身に付ける上で一部躓いてしまいそうな箇所があるようであれば、今回のロル内にある『順当に魔力の扱いを身に付け云々』は一旦無かった事にして、それを乗り越える話を差し込むのも面白いやも、と今頃になってぼんやり考えております。こちら以外に差し込みたい話がありましたらそちらでも、予定通り(3)のイベント遂行の方がご都合がよろしければ別段魔術習得の関連は前後しても全く構いませんので、ご希望をお聞かせいただければ幸いです!)


 

  • No.138 by ミシェル  2023-11-30 19:29:24 




(全貌を現した陽の光が瞼を暖め、一時的な自室として与えられた客間の椅子でこっくりこっくりと船を漕ぐ。魔術の世界と邂逅を果たしてからもう数週は経っただろうか。慣れない訓練は想像以上に体力も精神も消耗させ、何より正邪問わず方々から日毎干渉を受ける事から、地下室で薬の調合を終えた後にはこうして微睡む事も珍しくなくなっていて。しかしいつかのように途切れ無く気を張って突然倒れるような事態に陥らないのは、この居所が少なくとも須臾の休息を委ねられる程には安らぐ場所になった為か。修練と砂時計の代わりを兼ねて成形した歪な薔薇の氷像が皿の中で表面を濡らし始めているのを薄く開いた瞳で確認しては、朝食までの時間を計算しながら重力に従うように再び視界を閉ざす。感覚としては束の間、されど実際には花弁が一回りずつ小さくなるだけの間の後、意識の浮上と共に目を開くと、今や数多の息差しの散在する森の中で唯一以前から存在を認知していた水精霊が宙に静止していて。放縦な浮遊が常の彼ららしからぬ様に、すぐさま何者かの意思を察知しては立ち上がって蒼い仄明かりの案内に続く。未だ魔力の気配を隠秘する術を習得出来ぬせいか、導かれた主人の自室の前で教わった入室の作法を振り返り、いよいよノックをしようかという折に扉の奥から痺れを切らしたような許可が下れば、促されるままに押し開いてそこへ足を踏み入れ。待ち構えるでもなく何やら手元に集中する姿を前に杖は手製だったのかと意外さを覚えるものの、あれ程見事にフレンチトーストを完成させた彼のこと、目を丸くする程の事でもない。魔力の漏れ出し具合とは対照的に歩調は静かに傍へと寄れば、分かり切った問いを会話する目的で投げ掛けて)
失礼します。……何か御用ですか?


(/遂にミシェルも魔術の世界へと踏み出し、弟子入りに一歩近付いたかと此方もほくほくしております……!そして本イベントを経てリヴィオ様のご厚意を邪推することなく受け取れるようになり、本当にようやっとという感覚ですが、互いに親愛の情を募らせる関係へと達することが叶って非常に感慨深いです……。今回もまたありがとうございました!
次の展開につきまして、魔術の基礎の基礎から手解きしていただくのもとても魅力的ではあるのですが、ミシェルはこれまで手が掛からない子供であることをアイデンティティにしてきた節があるのではないかと感じておりまして……。初歩から躓くとなると本気の落ち込みを披露しかねないので、流石にそこまでリヴィオ様に面倒を見ていただくのは忍びなく、予定通りに街散策、もしくは杖を用いた魔術実践でお願いしてもよろしいでしょうか? もし前者であれば、魔鏡の持ち主に(本物か偽物か一目では分からないため鎌掛け程度に)ミシェルと魔鏡との交換を持ち掛けられ、ミシェル自身が辞退するかリヴィオ様から棄却していただくかのどちらかの場面があると親密イベント感が増して私得ですということと、それにより相手の機嫌を損ねて要求金額を吊り上げられたり攻略ダンジョンの難易度が上がったりしても面白いやも、というご提案のみお伝えさせてください。展開の都合やその場の空気感もあるかと思いますので、一案としてお心に留めていただけますと幸いです……!魔術の習得に関しては認識合わせのため先に描写するでも、その魔術が活きる場面で適宜訓練中の軽い回想をアドリブ的に挟んで行くでも喜んでお返事させていただきますので、主様のご随意になさってくださいませ。最後に、ロル中にある薔薇の氷像云々ですが、技術的にまだそこまで到達し得ない想定でしたら無視していただいて構いませんので……!長文、乱文失礼いたしました。引き続きよろしくお願いいたします!※蹴り可)




  • No.139 by リヴィオ  2023-12-03 21:44:53 




――ん、受け取れ。そろそろ杖程度は持って良い時期だろう。
(如何に寝起きの鈍重な思考とはいえ、まるで蛇口でも捻ったかのようなだだ漏れの魔力程度は扉越しでも用意に知れて。平素よりも幾らか傾斜の緩んだ眼で入室した相手の姿を捉え、そのまま無防備に此方への接近を言葉無く受容した後。もし目の前の薄い胸板へ緩慢に押し付けた小振りな杖を相手が形だけでも受け取ったのなら、少し掠れた声音で遅れて仔細を述べ始めるだろうか。熟練者であれば素手での魔術行使も可能ではあるが、これまで通り基礎訓練の範疇に留まるならともかく、本格的な魔術式の発動となれば精密な座標や出力の調整の補助としての役割を担う杖の使用は一般的な魔術師にとって必須であり、それも相手程の魔力量ともなれば素手での魔術行使などとうっかり自身の腕ごと氷付かせかねない程の危険性を孕むもので……といった長舌は常よりも動きの鈍い身には少々億劫に感じ、差し当たり翌日に回すとして。代わりに今後のスケジュールを告げると共にいよいよ本格化する魔術指導への心の準備を促すも、杖の製作へ費やした数日分の疲労と相当に気を許した事の証左たる小さな欠伸を緩く被せた手の内で漏らし、あまり長く威厳は保たれずに)
見習い程度なら、暫く密接して暮らしたこの大木を元にする手製品の方がお前の魔力に馴染むだろうからな。今日はこれから出掛けるが、明日からはより本格的な段階へ移行する。心しておくように……ふぁ、……。


(/承知いたしました、またいつか機会がありましたらミシェル様の本気の消沈ぶりを是非とも拝見させていただきたく……!(REC●)なるほど……回想として訓練描写を適宜差し込んでいく方式という発想はございませんでした。そちらの方がテンポが良さそうですし、ではこの場は街散策を優先し、その後回想などで適宜魔術訓練の描写をさらっとさせていただければ!そうなりますと、魔鏡の対価はダンジョンにて戦闘や索敵が入った方が描写の挿入が容易そうですね。
魔鏡とミシェル様の交換については当方も是非差し込ませていただきたいと以前より密かに思っておりまして……! 可能であればぜひ提供にビシッと棄却させてやってくださいませ。またそれによって相手方の機嫌を損ねてしまい、要求が跳ね上がるのも大変熱いですね……その後一体どういう会話になるのか……今から胸を躍らせております、魅力的なご提案の数々をありがとうございます!
ではでは、ご好意に甘え本編は街散策の方へ進ませていただきますが、以下に冗長ながら詳細な案出しをさせていただいておりますので、気になる箇所があれば続けてお伝えいただくか、後で本編にて特に相談なく差し込みをしていただいても大丈夫です。また氷の薔薇に関しましても本っ当にふわふわ構想なのでどうかご安心くださいませ、むしろ魔術を取り入れた巧みな時間経過の描写に背後は唸らされておりました……。逆にこれまで当方は相当好き勝手に魔術やら世界観やらについての描写をしてしまっておりますが、この辺りの設定はこうして欲しいなどというご要望がありましたら、変更でも何でもお応えしたく思いますので、もし何かありましたらお教えいただけますと幸いです。よろしくお願いいたします! ※こちら適宜お蹴り下さい。


- 来訪場所(案) -

◇服屋
・ミシェル様のお召し物の購入。
・ミシェル様の乏しそうな嗜好に関する深堀など……が提供に上手く出来るのかはさておき……。
・美少年の来店に沸き立つ女性店員達によるミニファッションショーが開幕する可能性。

◇家具屋
・ミシェル様のベッドや机などの購入。
・森奥の住処へ配送出来る気がしないので、魔術か魔道具を使うのではないでしょうか(ふわふわ)。
・ここは行った事にして描写は省略してもいいやも。何なら長期滞在が決定した翌日には提供が適当に購入して与えているような気も……。

◇情報屋
・今の所は人か魔物かすら定かではない怪しげな男性の予定(変更可能です)。
・詳しい魔鏡の持ち主に関する情報を仕入れた後、そのまま持ち主の所へ。
・懇意という訳ではないものの提供とは旧知の間柄である為、ミシェル様を伴っていると色々ツッコまれるかと。

◇魔鏡の持ち主
・今の所はこの街の男性領主予定(変更可)。
・ミシェル様と魔鏡交換のくだり。
・最終的に要求される対価はダンジョン攻略。満月の夜にしか開かない等の時間経過が必要なダンジョン(古い遺跡に魔物が住み着いており特殊なギミックが……など)のため、その間にミシェル様の本格的な魔術訓練とか……奥には奪われた領主の家宝があるとか、あるいは秘宝があるとか……(ふわ…ふわ…)。

※仮の順序は服屋→家具屋→情報屋(昼辺りにアポを取っている設定)→魔鏡の持ち主


◆ミシェル様から希望があった、あるいは幾許かの興味を引いたように提供が捉えた場合に寄る可能性のある候補:露店、小劇場、魔道具屋、占い屋、雑貨屋(画材購入)など。

◆もし機会があれば、墓地などに潜む魔物や霊体に幻惑され、迷い子に……というトラウマ抉りイベント。自ら外してさえいなければオニキスの指輪の効能(魔除や邪気祓い、精神防御の効能ですが、現状は忌避剤としての効果よりも莫大な魔力量による誘引が上回っている、致命的な精神汚染や洗脳を防ぎ、平静を多少保ちやすくする程度の認識です。ピンチの際にはもう少し何か働きをしても良いかもしれません)や提供の助けが入るかと。主軸から逸れ過ぎるかな?とも思うので此方はまた別の機会などで良いような気も。)


 

  • No.140 by ミシェル  2023-12-06 22:36:13 




――あ、……ありがとうございます。
(胸元へ歩みを押し戻すような力が伝われば両手を受け皿にして言われるがままに細身の杖を乗せ、次ぐ一言でそれが一時的に持たされたのではなく贈られたのだと分かれば気後れしつつも小さく礼を紡ぎ。仕舞う場所も見当たらないため一先ずは下賜の際の姿勢を保ったまま委曲に耳を傾けては、改めて手中の木杖に目を落とし、そうと包むように指を閉じる。魔力に馴染む馴染まざるの如何は初学者には測りかねるものの、材質自体は肌に馴染むようで、丹念に磨かれた表面を親指の腹で軽く撫でると森奥の住居を空けるとの旨に顔を前方へと戻し。これまでも物資の調達や個人的な用事の為に主人が外出の素振りを見せたり連絡を受けたりすることは時折あり、く、と伝染したかの如く漏れかけた欠伸を噛み殺せば、一拍置いた後に戻りの時間を尋ねて。先例に倣い今回も当然に留守番するつもりで居ながら、しかしもしかすると、報せに対して肯定以外の音を返すのはこれが初めてのことだっただろうか)
……はい。お帰りはいつ頃ですか。


(/大変ご面倒をお掛けする未来が目に浮かぶようですが、主様がそう仰るのなら喜んで……!またイベントの進め方についても畏まりました。引っ掛かりがあればお伝えするなり此方のロル内で修正を図るなりさせていただく心算ですので、回想中のミシェルはどうぞお好きなように動かしてくださいませ!
なんと……、ご賛同いただけるどころか一致とは……!是非是非リヴィオ様に交渉を撥ねつけていただきたいです。そのせいで難易度の上がったダンジョンとなればミシェルも何とかお役に立とうと奮闘することでしょうし、訓練の成果も幾らかお見せ出来ればと思っております。そして、此方こそいつもスムーズな進行や舌を巻く展開の数々をありがとうございます……!拙い思い付きばかりではありますが、物語を動かす一助になれば幸いです。
ご提示いただいた来訪場所の案も楽しく拝見しました。期待の高まるミニファッションショーの他、杖のホルダーや高い服を汚さない外套的な衣類の方を欲しがりそうだとか……所詮子供のお絵描きだから画材は譲り受けた物で満足しているけれど、リヴィオ様のそれとない勧めがあれば興味を示しそうだとか……実演販売の形式で売られている変な調理器具に見入ってしまいそうだとか……色々と妄想を膨らませております。家具屋に関しては三つ目の箇条に納得しましたので、店の前を通った際に同じ意匠のベッドや机を見掛ける程度の描写でも良いのかなと。情報屋と魔鏡の持ち主はイメージにしっかりと合致しておりまして、変更無しでお願いいたします……!
迷い子イベント発生の有無は機を見つつになるかと思いますので主様に委ねさせていただきたく存じますが、幻惑というと全くの別空間(周りに全く人が居ない等)を彷徨う異変と、見覚えのある道なのに何故か宿(?)に辿り着けない異変、どちらが想定に近いでしょうか……?※蹴り、割愛可)



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