( fairy tale )〆 

 ( fairy tale )〆 

匿名さん  2022-08-21 15:03:38 
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 お相手様決定済み。

 

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  • No.41 by ミシェル  2022-11-08 19:20:53 




はい。……それなりには。
(声に先導されるように呟きの落とされた先へ目を落とし、向かいの席が引かれる音を聞いた後に自身も着席する。仄かに湯気を立てる朝食は何度見ても火加減を誤ってしまっているものの、主人の口にするものであればいざ知らず、自身の食すものであればそう神経質になる程の事でもない。しかしやはり見目が良くないせいだろうか、食欲が湧かずなかなか手を付ける気になれずにいれば前方から飛んできた問いに視線を上げ。この住居での生活について指示を受けてから何度夜と朝を跨いだのか、正確な日数など気に掛けたこともないが、少なくとも出会ったばかりと表現できる時期は過ぎ去っているはずで。相変わらず自分の中に感情や考えを求める行為は雲を掴むようで危うく思考の迷宮に足を踏み入れそうになるも、普段以上にふわふわと纏まらない脳内に見切りをつければ肯定の音に合わせて静かに首を縦に振る。その際視界の端を掠めた失敗作に再度注意が向くと、連鎖的に早朝の失態が頭を過り、目を伏せては歯切れ悪く保身の言葉を付け足して。そろりと視線を戻せば不機嫌そうに眉根を寄せた主人がそこに居るものの、彼が別段機嫌を損ねているわけではないということは同じ住居で暮らすうち薄らと理解し始めた事柄。否定するという選択肢をあってないものと捉えているせいか深く考えることなく殆ど癖のように頷いたが、返答に偽りはないように思え、遅れて実感を伴えば小さな発見をした時のように暫し瞬きを忘れて)



  • No.42 by リヴィオ  2022-11-10 22:53:31 




そうか、……ふぅん。ただ、まぁ……慣れたならそろそろ手隙の時間も多くなってきたんじゃないか。
(単に話の枕として放ったそれに返るものはあくまでも想定の範囲内。ただでさえ自身とは別の方向で本心の伺えぬ言行を易々と判別出来る訳もないが、それでも彼の最近の様子を見ていれば多少なりとも真実の一端が含まれているようにも思えて。失敗作を気に留めてか、一瞬皿上に結ばれる瞳の焦点と濁された語尾の人間味も含め少しの安堵を感じつつ、そんな柔い内心を隠すように腕を組み相手を高圧的に見据えては、本題に至るまで中々に遠大な道程を歩み始め。その一方で、能面のような無表情に色落ちこそないものの、依然手を付けられる気配のない食事と瞬きすら乏しくなった面貌にはさすが少々首を傾げ。「……どうした、俺の事は気にせず食えばいい」と己の話へ迅速に応答しようという心算かと彼の身に染み付く奴隷根性を勘繰り、ひらりと軽く手を払うように振る事で淡白に食事を勧め。初対面時において弱音の一切も吐く事なく突然の空中浮遊に追随した彼のこと、よもや多少の焦げ付きに過敏になるほど柔な神経でもなかろうにと募る疑念を感じつつも、それ以上の思慮を深めるまでは至らず。とんとんと我ながらまだろっこしい話ぶりに腕を組んだ指先で肘を叩いては、苦慮するように眉間の皺を深めつつ改めて話を戻す事にして)
そう、何か……趣味はないのか? 此処に来るまでは何をしてたんだ。


 

  • No.43 by ミシェル  2022-11-11 23:33:02 




(食事を前に一向に伸びない手を見咎められると、放任主義に見える主人の注意がそのような些事にまで及んでいることへの微かな驚きを滲ませつつ、「はい」と簡素な従服の返事をして机上のナイフとフォークを拾い上げる。できるだけ音を立てぬようパンの端を切り離すと、一口大のそれを機械的に口に運び、やさしい甘味に混じってじわりと広がる苦味に顔を顰めることもなく黙々と咀嚼して。一切れ目を飲み下すと、自動人形の如く滑らかな動作で次の一口の為に欠けた四角形にナイフを突き立てる。その間にも意識を向けていた主人の話はどうやら自身の予測とは異なる方向に転がり出したようで、新たな仕事の指示を待ち構えていたところに意外な話題が持ち上がれば「……趣味」とまるで今初めて聞いた言葉であるかのように顔を上げて反復し。当然思い浮かぶものなど一つも無く、まして今でも件の魔鏡の行方を探り続けるほど魔術に情熱を傾ける相手に曖昧な答を返すわけにもいかない。「奴隷商に売られるまでは孤児院にいました。……そこで、」と一先ずは答えられる問いにだけ答えて言葉を切ると、無為に時間を浪費していたためか想起するにもあやふやな記憶をたどる。初めは何をしているともつかない場面ばかり脳裏に浮かんでくるものの、じきに淡雪が解けるように忘れていた記憶が蘇ると、もはや遠い過去のように思える昔日の情景を見つめながらぽつりぽつりと語り出して)
……遊びに誘われたら一緒に遊んで……たまに本を読んで、それから……絵を、描いていました。



  • No.44 by リヴィオ  2022-11-14 21:41:08 




……本と、絵か。丁度良い、廃棄に難儀していた所だ。部屋にでも運んでおけ。
(見目は多少悪けれど、己の固形食料よりは遥かに食事としての体裁を保つそれを、まるで無味無臭の粘土でも口で捏ねるかのような光景に今以上の節介な文言を連ねるのをぐっと堪え。加えて、己の問いの根本的な概念にすら理解に乏しい反応を受けては、いよいよ吊り上がった眼差しに複雑な苛立ちを募らせる。苦悩の末ようやく微かな糸口まで漕ぎ着けたと言うに、こうなれば数日間徹底的に町を引き摺り回した上この世のあらゆる娯楽に肩まで浸らせてやろうか……などと半ば自棄の如き短慮が浮かぶも、幸いながら短い堪忍袋の緒が切れるよりも相手の回答の方が一手早く。父母の喪失を発端に悪徳孤児院を経て坂道を転がるように奴隷に堕ちる、有り触れてはいないものの全く聞かぬでもない悲劇的な顛末。とはいえ、元よりこの有様ではそう穏当な過去などあるまいと密かに偲んでいた一方、少しは子供らしい健全な思い出の持ち合わせもあったらしい。無意識に固く組んでいた腕を解くと、僅かながら険の薄れた表情で傍らに立て掛けていた愛用の杖を手に取り。頂上に据えられた魔石が宙に紅の軌跡を描けば、忽ち虚空からどさどさと机上に出現したものは紐で纏められた手広な羊皮紙の束が幾らかと、廃棄物にしては真新しい何種類かの筆記用具に魔法陣用の色鮮やかな塗料の数々。流石キャンバスなど本格的な描画の品や子供向けの書籍等はないが、適当な口実を付帯させての仕入れを考慮に入れつつ、自分用の固形食料を幾らか口へ放り席を立とうと。その際、ふと相手に任せていた筈の早朝の仕事を思い出し、廊下へ向けかけた視線を緩く戻しては何の気なしに進捗を問うて)
……あぁ、そういえば朝の採集はもう終わったか?


 

  • No.45 by ミシェル  2022-11-18 19:14:26 




…………え。
(何かが乱雑に落下する音で、さして遠くもない過去から現在へと意識が引き戻される。見れば机の上には退屈凌ぎの描画に使用するには上等な羊皮紙と、一目見た限りでは何処にも欠損のない筆記用具、そして多分に中身の残った塗料が十数種類広げられており。気軽な所作で放たれる魔術にも気紛れな施しにもそれなりに慣れたつもりで居たが、降って湧いた到底廃棄予定とは思えぬ状態の良い品々には素直に目を丸くし、浅い吐息のような声を漏らす。ノブレス・オブリージュの精神か、はたまた以前聞かされた彼の信念のためか。身の丈に合わない待遇に対し、黙って主人の意向に従うべきと無分別に受容する頭とは裏腹に然るべき理由を求めて芽吹きかける疑心の萌芽を、胸元に突き立てられた三箇条を唱えながら丁寧に摘み取ってゆく。奴隷の身分を忘れろという言い付けを奴隷精神に基づいて遵守すれば、机上の一式は有り難く受け取ることに決め、感触を、というより存在を確かめるように手近な塗料を一つ手に取る。何の気なしに数度裏返しながらその色に見入れば、鮮やかな青にウンディーネを連想してふらふらと宙に視線を彷徨わせるも、神出鬼没な水精霊は何処かに姿を隠してしまっているらしく淡い光源は見つけられず。塗料を羊皮紙の傍に戻し、再び食事を再開しようかとナイフとフォークを握った折、ほんの数秒間の食事を終えた主人の口から成果を気に掛けるような問いが発せられれば、喉奥がきゅっと絞られると同時に短く息を詰まらせ。握ったばかりのカトラリーから手を離し、両膝の上に拳の形で揃え置くと、元より覇気の無い顔をもう一回り消沈させて自身の失態を正直に告白して)
……はい。……ただ、朝露の量が、足りていないかもしれません。



  • No.46 by リヴィオ  2022-11-20 20:36:11 




……、何だ、今日は随分と……。森の羽虫共に妙な呪いでも受けたか?
(矯めつ眇めつと与えた品を手にしていたかと思えば、薄ぼんやりと虚空を彷徨い始める気ままな視線から内心は今一つ読み取れないが、一先ずは遠慮や疑義の声が上がらぬ事でその場は良しとして。しかし、最近の苦悩が幾許か晴れた事に気を良くし、何気なく放ったそれへの回答は鈍く歯切れの悪いもの。失態を報告する相手の様はまるで雨天に打ち捨てられた仔犬をも連想させ、思わず少々垂れたようにすら伺える頭部へ僅かに伸びかけた手をはっと引き返し。自身と彼の関係性はそうではないだろうと、瞳に過ぎった柔い憂慮の色は一度の瞬きの後に訝しげなそれへと強引に塗り替えて、廊下へ向かいかけた足先を相手へと向け直し。さして難度の高い内容ではないとはいえ、さも機械仕掛けの自動人形が如く着実な成果を淡々と献上してきた彼の朝から続く不調の数々を初めて明確な異常事態と捉えては、距離を詰める間に真っ先に浮かぶ懸念は森の小さな厄介者。青味も濃いとはいえ元より緑眼の子供など奴ら――悪辣な妖精共の好む所ではある。数ヶ月前に度重なる悪戯に激昴し羽の片隅を焦がしてやって以来、近辺では姿を見せぬ為そう心配していなかったが、魔避けとして鉄片の一つでも与えておくべきだったかもしれない。兎にも角にも机上へ杖ごとに手を付き身を屈ませると、微量の魔力を帯びるもう一方の手の平をその額へ伸ばして)
まぁ気が付かない内に、という事もある。……少しじっとしていろ、診てやるから。


 

  • No.47 by ミシェル  2022-11-21 14:37:00 




……ごめんなさい。
(俯き加減な頭部へと手が伸びる気配に、姿勢は変えぬまま咄嗟に身を固くする。しかし待てど如何なる衝撃も与えられることはなく、不審に思って顔を上げれば軽侮とも失望ともつかぬ難しい顔をした主人がそこに居り。その表情の意味するところなど察せるわけもないが、その時自分でも驚くほど自然に口を衝いて出たのは、失態を犯した奴隷の謝罪ではなく叱責を待つ少年の反省の言葉で。朝露の採集量を確かめに行くのかと足を踏み出した主人の動線を目で追えば、その目的地が自分の座る位置であるらしいことを瞬時に悟り、体を九十度回転させては膝を向かい合わせた形で座り直す。魔術の知識に乏しいために呪いを受けたか否かすら定かではないが、これまで屋内屋外にかかわらずウンディーネ以外の姿らしい姿を持つ超自然的存在との接触は無く、訝しげな問いには少し迷った後にゆるりとかぶりを振って。とはいえ額へ伸べられる自己判断より遥かに信憑性の高い手を払い退ける理由もまた無く、一切の抵抗なく受け入れれば、輪郭が不明瞭になってやがて二重に見えだす主人の顔をぼんやりと眺めて)



  • No.48 by リヴィオ  2022-11-24 22:32:08 




熱ッ……! ――お前っ、いつから……!
(いつもの慇懃な振る舞いとは僅かに、けれど明確に一線を画する萎れたような幼い謝罪が薄茶けた床へ静かに落ちる。一瞬、偽装した感情に波紋が生じるも、やはりどうしても柔らかな応対に変じる為の納得のいく理屈が己の内で構築出来ぬまま。愛想なく余分な謝辞など不要とのみ告げるか、あるいは黙殺か。極端に少ない手札から惑いつつ後者を選んでは、眉の立つ鋭い面持ちで相手の額に手を触れ――弾かれるような驚愕を得て身を引いたのは、想定以上の呪い等を感じた訳ではなく、瞬時に手の平へ伝播した熱の高さからだ。刹那の接触といえども、それが他者の害意による物ではなく、一般的な病魔や肉体的疲労に起因する物である事程度は即座に感じ取れ。明確な狼狽を顕にのぞき込んだ先の双眸と自身の視線が確り絡む事はなく、ふらふらと焦点すらも失い明らかに尋常ではない様子で。どの程度深刻な物であるかは流石にもう少し調べない事には不明瞭ではあるが、憂慮や焦りを取り繕う余裕など一瞬で消え失せれば躊躇い無く再び身を屈ませて。もし相手が抵抗を示さないのであれば、背と膝裏に腕を通し小柄な体躯を持ち上げるや否や、懸命な面差しで急ぎ己の自室へと向かうだろうか)
……歩けるか? いや、連れて行った方が早いか……動くなよ。


 

  • No.49 by ミシェル  2022-11-26 22:14:38 




(手のひらが額に触れた瞬間、鋭く上がった声が示すのは呪いの感知か。緩慢に眉と瞼を持ち上げ、驚愕の表情を浮かべる主人を見遣る。真似るように自分の手のひらを額にあてがってみるけれど、温感が伝わるのみで平常時との数度の差異を感じ取れるほど繊細な感覚は働かず。熱があると言われればあるような気もするし、ないと言われればないような気もする。しかし主人が言うのなら普段より幾分か多くの熱を体に蓄えているのだろう、とまるで当事者意識のない結論に達したところで、再度近づく金眼の存在に気が付き。まさかこの程度のことで〝主人の手を煩わせる〟わけにもいかず、普段通りの無駄のない動きですくっと椅子から立ち上がる。冷静さを保っているというより表情の管理にまで気を配る余裕がないと説明する方が適切なポーカーフェイスで、いつかと同様に淡々と注意書きを読み上げるも、精神力で補えるのはそこが限界。くらりと眩暈がしたかと思えば一瞬の暗転があり、次に視界が回復した時にはその場に頽れていて。咄嗟に椅子の座面に掛けた右手と床に突いた左手のおかげで外傷は無いに等しいものの、今起こったことがとても信じられないような、倒れた自身が一番驚いた顔で薄茶けた床に暫し視線を落として)
多少の熱程度なら問題ありません。動けま――……っ!



  • No.50 by リヴィオ  2022-11-29 22:09:50 




! 馬鹿、だから動くなって……! 
(寝室へ運ぶ素振りを見せた途端、何かのスイッチでも入ったかのように目前の矮躯は平生と寸分違わぬ挙動で起立してみせて。どうやら当人に不調の自覚は甚だ薄いと見えるも、先程触れた熱の残滓が未だ手の内に残る身としてはおよそ気が気ではなく、再び口を開こうとした矢先。まるで人形の糸が切れるが如くがくりと倒れ込む様に息を飲み、急ぎ肩や腕を掴んで助け起こすや否や率直極まる罵倒を放って。しかしその声音は悪感情よりも圧倒的に憂慮の色が濃いもので、苦々しく皺を刻んだ眉間の下にある真摯な光が常の鋭さを忘れ辛そうに歪む。彼がその奴隷精神に基づき自らを異常なまでに省みない事など、それこそ初日から十二分に分かっていた筈。――俺がもっと気を配るべきだったのに。心痛を堪えるように瞳を伏せ静かに嘆息を吐くと、此方へ仰向かせた相手へと徐に長杖の影を落とし。恐ろしい程に精巧な真円を象る頭頂部の魔石がみるみる内に妖しい赤光を帯びて、ただでさえ病に侵された凡庸な少年の意識など容易く摘み取ることだろう)
……どの道、綿密に調べるなら意識のない方がやり易い。大人しく眠ってろ。


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(結論として、幸いながら大きな病でも秘された持病などでもなく、単なる精神的、あるいは肉体的疲労に起因するごく一般的な風邪であろうという判断を下した。最悪の場合は原子レベルでの再構成や時間操作まで頭の隅に置いていただけに幾分か肩透かしではあるが、まぁ大事ではないに越したことはなく。未だこの家の唯一の寝台である己のベッドへ眠る相手の寝姿を横目に、自らは脇の木椅子へと腰を下ろして。彼が倒れてから数時間を経て、そろそろ魔法の効果も切れる頃合か。もしも相手に起床の気配が少しでも伺えたのなら、小一時間前より開いたはいいものの隣のささやかな寝息や挙動が気に掛かる余り結局微々として判読の進むことのなかった古文書を音を立てて閉じ、就寝中の懸命な診察や介抱などおくびにも出さない少々皮肉気な声と態度で応じることだろう)
……よぉ。どうだ、本日二度目の起床のご気分は?


 

  • No.51 by ミシェル  2022-12-02 13:04:57 




(元来寝起きは良い方だが、その目覚めは何者かの意思によって事前に定められていたかのようにスムーズだった。等速で瞼を開くと、見慣れない視界と部屋を満たす陽射しの明るさに違和感を覚える。状況把握に努めるべく身を横たえたまま軽く頭の向きを変え、同時に頭の下に柔らかい何かが存在していることに気が付いた刹那、耳に飛び込んできたのは本のようなものが閉じる音とこの数週間で聞き馴染んだやや低い声。意識を失う直前の記憶、此処が主人の部屋であり自身が彼の寝台の上に居ること、朝食後から日が高く昇る時刻まで眠りこけていたこと。皮肉げに発せられたそれにより急速に記憶の想起と状況の理解が進めば、雪崩れ込む処理能力以上の情報に二秒間ほど茫然自失となった後に慌てて身を起こし。こめかみの辺りで疼く鈍い痛みすら失念する程に狼狽しつつ、最早何から謝罪するべきかも分からぬままもごもごと謝罪を口にしてはベッドから抜け出ようと掛け布団に手を掛けて)
──……も、申し訳ございません……っ。



  • No.52 by リヴィオ  2022-12-04 20:44:48 




阿呆か、病人は寝てろ。また昏倒させられたいのか? ……お前の不調の要因だが、端的に言って単なる風邪と疲労だ。その程度の病状なら治癒魔法やら何やらと趣向を凝らすよりも、大人しく薬草でも飲んで寝ているのが肉体的な負荷においても最適だろう。まぁ、その自己管理のなってなさについては今後対策を打つとして……――本題だ。
(やがて、瞼に覆われていた透き通るような青緑の眸がゆるりと顕になる。夢現と現実の境を彷徨っていたそれが己の言葉の後に確り焦点を結び、勢い付いて起き上がる様にやれやれと此方も椅子から腰を上げて。案の定そのまま掛布団に触れる手を鋭い声音で制止すると、肩を片手で押すことで強制的に彼を寝台へと再び横たえさせ。矢を射るように放った脅し文句が単なる見せ掛けではない事など、先の経験と立ち上がり際に手に取り未だ離されていない長杖からも明白だろう。そのまま寝台への見えぬ拘束に成功したのであれば、ふん、と尊大に鼻を鳴らしてから、つらつらと病状の説明、更に今後の予定について事務的に連ねたところで、唐突にひたりと剣呑な視線を相手に定め。自身が言葉を止めれば忽ちシンと静まり返る室内は、ともすれば一層息苦しい圧と肌がヒリつくような緊迫感を相手へともたらすだろうか。まるで事前の注意事項を侵した不届き者の処罰を今にも告げんとするような厳粛さを纏い、腕を組むと少し逡巡するような間の後に有無を言わさぬ口調で発された物は、しかし何て事のない一つの単純な問い掛けで。流石に熱があれば冷却、空腹ならば消化の良い食べ物を、といった最低限の知識や道理は解するものの、詳しい要領等が分からない以上はいっそ当人へ直接問いただしてしまえという乱暴な論法を敢行せんと)
……何をして欲しい。言っておくが、俺に他人を看病した経験なんてないからな。何をすれば良いのか、お前の要求を即時詳らかに開示しろ。


 

  • No.53 by ミシェル  2022-12-06 12:53:19 




(掛布団を捲らんとする動作を声音のみで制され、手を止めた次には未だ自身の体温の残る寝台へと体を押し戻される。後頭部を枕へと沈めながら往生際悪く口を開きかけるも、間髪入れず放たれた警告に如何なる音も発することなく両唇を閉じ合わせ。やがて物音の立たなくなった部屋の空白を埋めるように学者調の語り口で病状の説明が始まれば、軽い症状に胸を撫で下ろすどころか胃に重たいものを感じて表情までも翳り。最中何度も〝もう平気だ〟と跳ね起きたい衝動に駆られながら、しかし既の所で押し留めて聞き終えた後の沈黙は、彼と自身の間に流れる常のそれよりやや重苦しいか。ひっそりと息を詰めてその沈黙の中に身を置いていれば、続けて紡がれる本題に僅かに呆気に取られ、不調も相俟って回転の鈍い頭を再稼働させるまで瞬き二往復分程の時間を要し。漸く投げ掛けられた問いの意味するところを理解すれば真上に見える天井へと視線を上げ、自身の感覚に意識を集中させる。不思議なもので、先程まで一切の異変を感じさせなかった全身が、何通りかの道筋を辿って大人しく休息を取るべきとの結論に帰した途端に各所で警鐘を鳴らし始めているらしい。その蝶の羽ばたき程の微音の訴えに耳を澄ますように長い長い沈黙を貫けば、徐に口を開き、遠慮がちながら高熱と喉の渇きを訴えて)
何か冷たいものと……水を、いただけますか。



  • No.54 by リヴィオ  2022-12-09 23:49:00 




……分かった。すぐ持ってきてやるから、くれぐれもそこを動くなよ。
(此方の問い掛けに対し、無音ながら呆けたような反応らしきものを微かに示した相手が天井へと視線をやってから、再び長い沈黙が場に落ちて。よもやこの期に及び無欲でも貫くつもりかと例の如く痺れを切らしかけた所で、ぽつぽつと長考の末の声音が室内の静の空気を恐る恐る震わせ。返答の遅さに文句を垂れんとする自身の短気よりも病人に対する理性が辛うじて勝っては、やや性急な仕草で退室の直前にぴし、と長い人差し指の先を相手に向けてから廊下へ姿を消し。それから十を数える間すらなく再度扉が勢い良く開き、舞い戻った己の手には冷水で満ちたコップと氷嚢代わりの蒼白い魔石にタオルを積載した木製のトレーが握られていて。流石あまりに確たる証拠こそ相手に握らせないものの、魔法の使用を加味しても相当に準備を急いだらしき気配は、僅かに上下する肩や少々荒い呼吸音から多少なり漏れ出してしまっているだろうか。そのままつかつかとベッドの脇へと足を運ぶと、如何にも不慣れな所作で介抱に惑いつつも一度トレーを机上へ乗せてから、水晶のように澄んだ水を湛えるコップと小さな薄布に包まれた濃い緑色の粉末を差し出して。もしも相手が少しでも辛そうな素振りを見せるのであれば、愛想のないひねた言葉とは裏腹に躊躇い無く床に片膝を付き、目前の小柄な背へもう一方の腕を添えることで起き上がりを助けようと試みるだろう)
……まずはタオル、でなくて水か……? ――……ほら、ご所望の品だ。とっとと飲め。……あぁ、それから、これもついでに飲んでおけ。滋養強壮に効く薬草を粉にしたものだ。


 

  • No.55 by ミシェル  2022-12-12 23:32:37 




(自身をその場に仮止めするような指先が向けられ、ややぎこちない頷きを返す間に主人の後ろ姿は廊下へと消える。そのまま何を考えるでもなく閉じられた扉に視線を留めていると、呆けていたことを差し引いても一分と経たずに再び扉が開かれ。厳粛な顔つきこそ変わらないものの、浅く早い息遣いから感じ取れる気の急いた様子に、驚くより先に触発されては直ぐに身を起こし掛かり。しかしそれは意に反してのろのろと鈍重な動作で、主人に助け起こされながら漸く上体を直立させる有様。たったそれだけの行動の完了に額に微かな汗を滲ませ、か細いながらも一仕事を終えたかのような息を吐く。差し出された水の入ったコップと濃緑の粉薬を両手に受け取り、一度水だけを口に含んで喉を潤してから、粉薬を覆う薄布を開いて口元まで運び。もしかしたら薬草独特の香りや苦味があったのかも知れないが、それを嗅覚や味覚で知覚してしまわないうちに一気に水で流し込めば、最後にコップに残った四分の一程も全て飲み干して。礼を述べつつ空になったコップと包みを傍へ置き、もぞもぞとベッドの中へ潜り込むと、そこでふと妙な既視感を覚える。それが魔術によって強制的に意識を奪われる直前の情景であると察するのに時間という時間は要せず、朧げな記憶の中の苦虫を噛み潰したような顔の主人を思えば、分かることが一つ。――自分が病床に臥していると、あるいは自分が使い物にならなくなると、主人にとって何か重大な不都合があるらしい。それが具体的に何であるかというのは、自身に推し量れるはずもなければ肝要でもない事柄。謝罪が今更何の役にも立たないことは明白であるため、偏に忠誠心とも服従心ともつかぬ心意気で、多少なりとも主人の心労を減らそうと僅かばかり症状を軽微に見積もって伝え)
――あの……リヴィオ様。仰る通りただの一過性の熱病なので、しばらく眠れば平気です。……すぐ、治します。



  • No.56 by リヴィオ  2022-12-15 23:15:47 




当たり前だ。……と言いたい所だが、少なくとも数日程度はここで静かに寝ているんだな。またぶり返して倒れられても堪らない。
(息をするにも少々辛そうな呼吸音に、布団から覗く頬は熟れた赤い果実のように色付き、その額には薄らと脂汗が浮かぶ。本来なら己の世話になるなど許さないだろう相手が、こうして大人しく介抱されている事のみを取り上げても病態の悪さは推して知るべしだろう。決して言葉にはしない自責の念に唇を引き結び、無言で腰を上げて空のコップを机の上へ片付けようとした折。背後にある布団の中からそっと掛けられた言葉は、弱々しくもこんな時にまで気遣わしげなもので。それは相手の想いとは裏腹に自身の胸を突き、質の悪い病毒のように深く心を苛む。……病身の子供が大人に気を遣うような現状など、やはり早々にどうにかしてやらねばなるまい。未だ引き取り手を見付けられぬまま今日を迎えてしまった苛立ちを諸共に返答として吐き捨てると、軽く寝台に手を付いては純粋な憂色を幾重にも覆ったへそ曲がりの付言を面と紡ぎ。そのままもう一方の手に取ったタオルで相手の額に浮かぶ汗を所作だけは丁寧に拭ってから、枕元へと持参した魔石を設置して。正確には魔氷石という、幾つもの細長い六角柱の水晶が根本で結び付いた独等な形状の小石へ手をかざせば、薄く青みがかった内部へ水が流れ込むように鮮やかな群青が渦巻き、淡く淡く柔らかな光が灯る。それは相手の頭部周りにある空間の気温を限定的に下げる効果をもたらし、熱病の自覚症状を多少なり和らげてくれる筈で。その冷感の加減を寝台に手を付いたまま少し身を乗り出して微調整しつつ、丁度真下の位置にある相手へ不意の問い掛けと視線を落とし。はたして魔石が発する仄かな光の加減か、普段は猛禽類を想起させる鋭い双眸が、病床に伏した相手を見下ろす今だけは少しだけ暖かく、蜂蜜のようにこっくりと溶けるようで)
――ん、……温度は丁度いいか?


 

  • No.57 by ミシェル  2022-12-17 22:41:18 




そういうわけには――、
(本来なら奴隷が主人に意見するなどあってはならないこと。しかし、気が咎めるあまり殆ど反射的に口に出した抗議は、沈痛な面持ちを目にすれば以降続けられることはなく。数瞬遅れて無用な憂慮で主人の気分を害してしまった可能性に思い至るも、直情的な彼にそれを示唆するような振る舞いは見当たらず。苛立った様子こそあれ、それは単に慣れない看病に苦戦しているだけのように見受けられる。慣れないが故の危ぶみなのか、壊れ物を扱うかのように繊細に周到に額に滲んだ汗が拭き取られ、その間に邪魔にならないようにと瞼を閉じながら考えたのは今日の彼の寝床のこと。自分が寝台を独占していては身を休める場所に不自由するのではないかという憂惧が、発散されずに籠った熱と共に頭の中を満たし。そこへ突如ひやりとした空気が頬に触れると、薄らと目を開く。最初に視界に映ったものが主人の長い指先であったため、そこから直接冷気が発せられているものと誤認するも、よく見れば枕元に置かれた物体が周囲の温度を奪っているらしい。腫れたような感覚のあった頬から熱が引いて行き、身体の辛さが和らいで、気の抜けた息を小さく吐く。同時にこれまで目の当たりにした奇跡のような主人の魔術を思えば、彼に不可能な事など存在しないように思え。たとえそれが無知が故の妄信であったとしても、今一時の心配の種を取り除くには充分に過ぎ。寝床程度の問題はどうとでもなるだろうと無責任に自己完結してしまえば、自身の顔に影を落としている眼前の顔を見遣る。いつになく近い距離から見上げたそれは普段より表情がよく窺えるようで、吊り上がった瞳の中には知らない色が見て取れる。知らない筈のそれに再度の既視感を覚えたことに人知れず惑いつつ、問い掛けに対しては検証するだけの間を置いてから正直に答え)
……はい。丁度いい……です。



  • No.58 by リヴィオ  2022-12-20 23:14:08 




……そうか、良かっ――じゃない。……ふん、まぁ今は精々、凡愚如きには分不相応な待遇を甘受していればいいさ。
(何やら先刻から物言いたげに、上げかけた抗議も中途で閉ざしたままの唇よりかは幾許か雄弁に語る瞳を無言の圧のみで黙殺する。一応は主たる自身の部屋や寝床を占拠する事に気後れを感じている事自体は察しがつくも、それこそ病身の子供が態々気にする程の大事ではなく。ほとほと歳にそぐわぬ気を回す少年だと内心嘆息しつつ、魔氷石を調整しながらふと視線を落とした間に生じたものは致命的な隙で。さして難しい扱いでもないにも関わらず、相手の不調を気に留める余りつい過剰な集中を魔石へと一心に注ぎ、自責混じりの焦燥と憂慮から来る懸命さが仇となって。警戒なく唇を動かした問いに常の険を乗せるのを失念したばかりか、室温の変化に伴い見るからに辛そうな表情が和らぐ兆しと共に確かな肯定が返れば、思わず安堵から口許を緩め、知らず知らず強ばっていた肩の緊張が抜け落ちて。そのまま内に暖かな埋み火を抱くような眼差しで素直な心中を吐露しかけた所で、はっと我に返り凄まじい勢いで頭上から身を退き。己の仕出かしに少々しどろもどろとなりつつも、ポーズだけは居丈高に腕を組み適当な嫌味と共に視線を逸らす事で再度態度を取り繕う。しかしながら仮にも同じ空間に、それも病を患う者を前にいつまでもそうしている訳にもいかず、早々に痺れを切らしては剣呑な眼差しで寝台ごと視線で貫くと、やたらつっけんどんに睡眠の如何を問うて。先程の失態を引きずり何処と無く調子を崩したまま、あれやこれやと口調に過度な棘を纏う割には露骨な奉仕精神を次々と矢のように相手へ放ち)
……眠れるか。あるいは、他に欲しい物やして欲しい事とか……あぁ、腹は? 朝食もそう食べていなかっただろ。――無意味な遠慮なんてしようものならこの場で灰にするぞ。


 

  • No.59 by ミシェル  2022-12-24 14:50:19 




(魔石より放たれる淡い光を受け静穏を湛える瞳は、厚くなった瞼を瞬かせる間に一層その色合いを強めたようだった。表情全体を覆っていた他者を圧倒する威圧的なまでの迫力は鳴りを潜め、口許には微笑すら浮かんでいる。しかし、珍しい気象現象でも眺めるような心持ちで上向きの口端に目を奪われていると、それはもう一つ瞬いた途端にふっと消え去り。字義通り瞬く間の出来事に発熱故の幻覚を疑うも、力任せに引き剥がされるかのような速度で遠のいてゆく頭部を見送ればどうやらそうではないらしいと分かる。尊大に腕を組んだ主人は彼の中に描いた自画像に基づいて振る舞うことで一連の言動を帳消しにする算段と見え、垣間見えた表情よりも魔術以外に主人の心を揺り動かす事柄が存在したことに小さく驚きつつ、ここは何も言わない方が上策かと黙したままで。それは単に口に出すべき言葉が見つからなかっただけでもあったのだが、選択は結果的に功を奏したらしい。長く膠着状態が続くことはなく、鋭い視線が突き刺されては矢継ぎ早に繰り出されるのは紛うことなき〝凡愚如きには分不相応な待遇〟。自らが口に出したそれを体現するかのようにあれこれと気を配る彼にどう返答するべきかと思案するも、自身の不調が主人にとっての不都合であることが殆ど確定事項となった今、回復を図ることが自身にとっても最優先事項であり。しかし困ったことに要求を十二分に叶えられ、心地良い温度に保たれた部屋の中で特にこれといって欲するものが思い付かずにいれば、代わりに口にしたのは〝今のところは特に〟〝食事は眠った後に摂ります〟〝そういえば〟といった段階的な接続文を全てすっ飛ばしてしまったためにまるで脈絡のなくなった質問。当然のように食卓机に置かれていて尋ねる機会を逃し続けたそれについての疑問を、一応は朝の食卓の風景から連想して声に出すと、宙に浮いているようなふわふわとした声色と時折落ちかける瞼によって睡眠の如何についても言外に滲ませて)
……リヴィオ様がいつも食べているあれは、何ですか?



  • No.60 by ミシェル  2022-12-25 01:22:45 




(/背後より失礼いたします……!先のお返事につきまして、病気の時にだけリヴィオ様の栄養食が貰えたりしたら可愛いかな……という安易な思いつきのもと、深く考えることなく投稿してしまったのですが、読み返せば読み返すほど暴走してしまった感が否めず、筆を取らせていただいた次第です。お返事がしづらい、展開的にあまり望ましくない、冗長になりすぎる等ございましたら、書き直して大人しく寝かしつけますのでご遠慮なく仰ってください。もし特に問題ないようでしたら、こちらへはご返信いただかなくて結構です。スペース消費失礼いたしました……!)



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