innocent〆

…ん？
( 頬を擦り寄せたり、肌に口付けたり甘える様子の相手にはくすぐったそうに身を捩り。名前を呼ばれれば、顔を上げ相手を見つめる。頬の熱はまだひかず、きっと耳まで赤くなっているであろう顔を相手に見せるのは恥ずかしいが、そんなに優しく名前を呼ばれれば仕方なく。 )

…俺の知らねーところで他の奴の世話焼いたりしてない？
（　相手に対する好きの気持ちが募る一方、相手の性格が世話焼きなだけで自分が特別世話を焼かれているというわけではないのでは、という不安も募り。相手の目に映るのは自分だけであってほしいという独占欲から漏らした言葉には嫉妬ともとれる怒気すら感じとれ、赤く色付いた耳に唇を落とすふりをして耳朶をがぶりと一噛みし。　）

…は？他のやつなんて…
…っい…！

( 相手から質問にはいつもの軽い雰囲気ではなく少し怒りがこもっている事に気付けば、びくっと肩を揺らし。相手以外に特別仲のいい相手もいないし、何よりこれ程までに世話を焼く相手は彼を除いて他にはいないというのに。耳元に息を感じたと思えば、次の瞬間鈍い痛みが耳朶に走り声を漏らし。)

じゃあこれからも俺だけに世話焼く？ずっと？
（　言葉を最後まで聞き終えられず、痛みを与えてしまったことを少し後悔し。薄く歯型がついてしまった箇所を慰めるように舌先で舐めると今度は痛がらない程度の力で耳殻を甘噛みしながら不安で空いた心の穴を埋めるために質問を重ねて相手を追い詰め。　）

っ…颯しかいないって。
こんな世話焼かされる相手。
( 耳朶の痛みに眉間に皺を寄せていれば、何度も追ってその箇所を慰める行為にぴくっと身体を震わせながら、質問には何度も頷き相手だけだと主張する。言葉を返して、自分以外にもこのようなことをする相手がいるのではないかと少し疑うような目で見れば。)

逆に、こんなこと他のやつにしてたら怒るぞ…っ。

あー…翔って俺に怒れンの？
（　相手の口から直接自身が特別であることを聞かされ満足気に耳から唇を離したが、そのあとにかけられた疑いには毎晩夜遊びにふける自分には当然のようにいくつか心当たりがあり、眉をぴくりと動かし。それでも相手のいう「こんなこと」の範囲が明確でないからと自分自身に言い訳をして、そんな人いないと言わんばかりに首を捻り。　）

…怒れるし。

( 相手からの質問には、思わず｢うっ｣っと声を漏らし図星の様子で、小さい声でそうつぶやくように言い。そうはいっても夜遊びをたくさんしている相手への疑いをぬぐい去ることはできず、少し拗ねた声色で。)

俺が遊んでばっかだから不安？
（　自分が相手の立場だったら、遊びに呆ける想い人に愛想を尽かしてしまいそうなところで、相手も相応の不安や不満を持っているに違いないと考えると片手で相手の頬へ触れ、柔らかいそこを指で摘んで軽く引っ張って遊び。　）

嫌だよ。
…つーか、ずっと嫌だった。
( 相手の問いかけには、素直にそう答え。今までもずっと我慢してきたという気持ちが溢れてしまい。頬に触れて遊ぶその行為にすらどきどきし、軽く｢やめろよ｣と呟くも嫌な様子ではなく。改めて相手なら結構何でも許してしまっていることに気付き溜息をつく。)

じゃあこれから飲みあるときは、翔が可愛く行かないでって言ってくれたら行くのやめよっかな。
（　制止の声をかけつつ手を無理に振り払わないところが相手らしくて、おもわず意地悪に口角を上げ。これまで夜遊びに出かけるたびに相手は複雑な心境だったのだろうかと今更ながら少し申し訳なく思い、飲み会や合コンの回数を少しずつ減らそうと心の中で決意しながら口先は生意気に上記を述べ。　）

…絶対、それ言っても行くだろ。
( 自分が｢行かないで｣など言ったところで、相手は行くのを辞めるのだろうか。言って欲しくない気持ちは本当なのだが、そこまでして相手の行動を制限するのはどうなのだろうかと考えてしまう。友達付き合いは大事だと思うし。そこを壊してしまうのは本望ではないと、堂々巡りな思考に溜息を一つ付き。)

行かねーもん、ほんと。信じて？
（　気分次第で行動する自身を理解しているからこそその時になってみないと絶対に行かないとは言い切れず、相手の言葉にはぎくりと気まずそうに一度目を逸らし。しかし自分に甘い幼馴染ならこの状況を押し切れば信用してくれるはずだ、と堪能した頬を掌で撫でながらあざとく甘えた声を出し、首を小さく傾けて。　）

…わかったよ。

( 相手が一瞬目を逸らしたことも逃さず見ていたが、どうにも彼には勝てない。負けを認め頷き。この幼馴染には永遠に勝てない気がする。そんなことを思いながら頬に触れる掌に自分の手を重ねるとそのまま相手の手の温もりに心地良さを感じ。ふと、机に置いてある時計が目に入れば、結構いい時間になっていて、言われてみれば少し眠い気もすると、相手に問いかけ。)

颯、そろそろ寝る？

んー寝る、翔と寝る。
（　視線の動きにつられて時計へ目を移し時間を確認しすれば自身が想定していたよりも夜が更けていて、相手の言葉に頷くと欠伸をひとつ。重なっている手を軽く握ると枕元に顔を埋める形でベッドヘ横になり、相手も同様に横になるよう一方的に繋いだ手を緩くくいっと引っ張ってこちらに誘導し。　）　　

…せまくないか？
( 横になった相手につられて横になれば、シングルベッドなため男二人並んで寝ると狭くは無いだろうかと聞きながら、布団をそっと相手と自分へかけて。眠そうな相手とは正反対にこの状況に自分は中々寝られそうにないと思いながらも、相手には｢おやすみ｣と一言伝え。)

…ん、おやすみ。
（　シングルベッドの面積に関しては小さく頷いて問題ないと返事をしたものの少し身動ぎするとギシッとスプリング音が響いてしまうのは重量的に少し心配かつ相手を意識してしまいそうで気まずく。しかしそれは敢えて口に出さずに自分を納得させるよう就寝前の挨拶を呟いてから布団の中に潜り込んで、隣に相手の存在を感じつつ重い瞼を閉じて。　）

( すんなり横で寝始めた相手には、やれやれといった様子で、しばらく寝顔を観察しているうちに自分も眠くなったのか眠りにつき。

朝、遅くに寝た割にはそれなりに早く起きてしまい。横に寝る相手の姿を寝起きに捉えた時には心臓に悪いなと思いつつ、寝ている相手の頭をそっと撫で微睡み。)

ン……おはよ…。翔あったけー、カイロじゃん…。
（　しばらく気持ちよさそうにすやすや寝息を立てていたが相手が起床してから間もなくして小さく身じろぎながらゆっくり瞼を上げ。ぼやけた視界にうつる姿を見て昨日の出来事をなんとなく思い出しながら体を丸めて相手の胸へ擦り寄り、そのまま瞼を下ろして二度寝しようと試み。　）

颯の身体もあったかい。
( まだ眠そうに身動ぎする相手を胸の中に感じれば、寝起きのお互いの体温が合わさり気持ちが良く。こちらもなんだか微睡みの中で、昨日あったことを鮮明に思い出し、夢じゃなく現実であったことなのだろうかと冴えない頭で考える。)

なあ、俺のこと好き？
（　頭の中がふわふわして眠りに落ちているのかいないのかその狭間でまだ好意を直接的な言葉にしていなかったな、なんて考えていて。遠回しに「好き」の言葉を引き出そうかと思考を巡らせていたのだがうまく機能しない脳ではうまい言い回しなんて考えつかず、結局顔を胸に埋めて表情を隠したまま疑問を直球に伝え。　）