夜が明けるその前に　（〆.）

(随分と心配させてしまっていたらしい。苦しいくらいに抱きしめられ少し痛かったが、それだけ相手が不安だったのだろうと考えると拒否することも無く受け止めて。僅かに震えている相手の背中に腕を回すとぽんぽん、と軽く撫でてから体温を分け与えるように抱きしめる。また、安心させるように相手の肩に自分の顔を寄せると心配させてしまったことへの謝罪と、助けてくれたことへの感謝を囁いて)

心配させてごめんな。それと、助けてくれてありがとう。クラウスが来てくれて嬉しかった。

テオが無事で、本当に良かった…

（相手の腕が背中に回され、温かな体温を感じてほっとする。耳元で聞こえた相手の言葉はどこまでも優しいもので、咄嗟に相手を助けた事はやはり間違っていなかったと思え少し心が軽くなるようで。自分にはない温もりに包まれ、ずっとこうして居たいとさえ思えたものの、やがて顔を上げると相手と視線を重ねて少し表情を和らげつつ、せっかく訪ねて来てくれたのに病み上がりの相手をこんな所に引き止めて申し訳無いと、相手の手を取り部屋へと促してはソファに座るように伝えて。）

──…ごめん、こんな所で…身体を冷やしたら良くないね。入って。来てくれて嬉しいよ、

いや、俺こそいきなり来て悪かったな。･･･クラウスが家にいてくれてよかった。

(自分の肩から顔を上げた相手がやっと固い表情を和らげてくれてほっとする。少しは不安を取り除けたことを嬉しく思い、家に来たのは間違いではなかったのだと考えて。手を引かれソファーに座ると自分こそ急な来訪を申し訳ないと謝罪しつつ、相手が在宅で嬉しいことを伝え。また、手に持ったままの荷物を相手に差し出し、改めて助けてくれたことへの感謝を告げて)

これ、お前のコートとお礼のワイン。･･･本当に助けてくれてありがとうな。

…ああ、コートはテオが持っていてくれたんだね。ワインもありがとう、…時間ある？せっかくだから開けようか。

（相手からコートとワインボトルの入った紙袋を受け取ると、コートを相手が持っていてくれた事にほっとして。コートを掛けたままその場を立ち去った事を不審に思われただろうか、拠点まで取りに行く事も出来なかったため相手が持ってきてくれた事で手元に戻ってきて安堵していた。破れていたり汚れていたりした箇所も綺麗に繕われているようで、それをハンガーにかけ直しつつ相手に時間があるか尋ねて。折角なら2人で飲むのも良いだろうと、グラスを用意しつつ、相変わらずつまみがないのだと思案して。）

テオ、食べたいものある？何か少し買ってくるよ、

今日の任務は終わってるからいくらでも時間はあるし、楽しみだ。

(暫くは簡単な討伐と近場のパトロールで勘を取り戻せと指令を受けていたため今夜の任務は終わらせていた。明日も特に予定はなく、いくらでも時間はあると伝え、相手と飲めることを楽しみであることも告げて。また、相手から食べ物のリクエストを聞かれれば前に来た時も食べ物が無いことを告げられたことを思い出し、ワインと共に食べるものを買ってくればよかったと失念したことを悔しく思う。しかもお礼で来たのに1人で買いに行かせるのは申し訳なく自分も付き添うと名乗りあげ)

なら俺も行く。助けて貰ったお礼に来たんだし･･･俺が奢るよ。

それなら良かった。嬉しいけど、無理しないで休んでいても構わないよ。かなり重い貧血だっただろうし…もう痛くない？

（予定が無いと答える相手に嬉しそうに頷くと、一緒に買い物に行くという相手に視線を向けて。一緒に出掛けられるのは嬉しい事だが相手は病み上がりでもあるため、自分が出掛けている間部屋で休んでいても良いと伝えて。あの日路地裏で見た彼の顔色と濃い血の香りを思えば、恐らくかなり輸血が必要な重篤な貧血だったはず。あまり動き回らせるのも良くない気がして、どうする？と首を傾げて。髪から僅かに覗く位置に空いた２つの小さな穴、彼の血を口にされた事に対して独占欲にも似た苛立ちが浮かぶがそれを表情に出すことはせずに、その痕を指先でそっと撫でて。）

あぁ、もう少しも痛くない。それに動かない時間が多かったから休んでたら勿体ない気がして･･･。

(首に残る吸血痕を優しく撫でられ僅かにゾワゾワとした擽ったい感覚が走る。ハンターが吸血された痕などある意味屈辱的だが、真剣な表情で見つめる相手を見上げ、心配していることを感じ取ると痛みはないことを頷きながら伝える。それに自分をまだ重傷者のように扱う相手に自分は元気であることを伝えるために、長めの入院生活でなまった体を動かしたい気持ちを告げて。また内心では相手と少しでも一緒にいたい気持ちを隠し持っていたため、出来れば共に買い物に行きたいと思っていて)

──分かった、それじゃあ一緒に行こうか。まだ夜は冷えるから、ちゃんと着込むんだよ、

（相手の言葉に頷くと、一緒に出かける事を了承して。それでも相手の身体が心配なのは変わらず、ついつい母親が子どもに対して言うようなお節介な小言を付け足してしまいながら相手が持って来てくれたばかりのコートに袖を通して。準備を終えると相手と共に部屋を出て鍵を閉めると、夜の街に足を伸ばす。初めはBarでのみの付き合いだったが、ここ最近は相手と共に帰ったり家に行き来したりということも増えていて、いつの間にか隣に相手がいる事が普通に感じるようになっていた。）

はは、大丈夫だ。ちゃんと防寒してる。

(自分は幼子で相手は母親か。ソファーから立ち上がり、相手の気遣いの言葉に笑いながらしっかりとコートの下には暖かい格好をしていることを告げると相手と共に家を出る。またこうして相手と隣立って歩ける幸福を味わいながら夜の街を歩いて何気ない時間を楽しんでいれば、出店の灯りが見えてきて肉を焼くいい匂いも漂ってきたので隣を歩く相手の横顔を見ながら自分の要望を伝えつつ何を買いたいものはあるかを問い掛けて)

いい匂いだな･･･クラウスは何か食べたいものはあるか？俺はパンと肉が食べたい。

良いね、それじゃあまずはバゲットを買おうか。

（ネオンの輝く通りに出ると人の賑わいも高まり、食事の香りも漂ってくる。食べたいものはあるかとの問い掛けには首を振り「僕はなんでも、」と答えつつ相手の希望に頷いて。肉を買うなら暖かい方が良いだろうと先にパンを買うべくパン屋に足を運ぶ。惣菜パンなども並んでいたが、ワインに合わせるならバゲットが良いだろうか、自分で買うことは滅多にないため相手の好きなものを選んで貰おうと相手を振り返り。）

テオの好きなのを選んで良いよ、

俺の好きなのか･･･どれにするかな･･･。

(好きなものを、と言われ店先に並ぶ様々なパンを見てどれを食べようか、と悩んでしまう。確かに相手の言う通りバケットにしようと思うが、バケットにも数種類あり、あんまり大きいものを買っても食べきれないだろう･･･と思いチーズ入りのバケットと普通のバケットの短めサイズのものを1つずつ店主に注文し会計を行って)

俺とお前で半分こ、でも良いよな？

もちろん、ありがとう。

（並んでいるパンを相手の隣で眺めながら、色々な商品があるのだと感心してしまう。相手の問い掛けには頷きつつ、会計を済ませてくれている事に礼を言って。相手を待つ間、店に並ぶパンを前にしてせめて自分も食事に味を感じる事が出来れば良いのに、と考えていたことに自分で驚いてしまう。相手と出会い一緒に過ごすうちに、随分と感性や心持ちが人間的になってしまっているのかもしれない。半ば呆れつつ先に店を出ていようと、店の外で相手が出てくるのを待っていて。）

終わったぞクラウス。しかも見てくれ、おまけをくれた。

(店内で会計をしていれば自分と相手がハンターということで、毎夜吸血鬼を討伐してくれることへの感謝を告げられた。普段触れることの無い心からの賞賛と激励に少し照れていればオマケだ、といってラスクをくれ、自分も感謝を告げるとまた来るよと言って店を出る。自分が自分のためにとも思って行っている行動で誰かが安心して夜を暮らせていることを改めて知り、胸の中が暖かくなった気がした。店の外で律儀に待っている相手に近寄ると会計が終わったこと、オマケをサービスしてくれたことを嬉しそうに話して)

終わったぞクラウス。しかも見てくれ、おまけをくれた。

(店内で会計をしていれば自分と相手がハンターということで、毎夜吸血鬼を討伐してくれることへの感謝を告げられた。普段触れることの無い心からの賞賛と激励に少し照れていればオマケだ、といってラスクをくれ、自分も感謝を告げるとまた来るよと言って店を出る。自分が自分のためにとも思って行っている行動で誰かが安心して夜を暮らせていることを改めて知り、胸の中が暖かくなった気がした。店の外で律儀に待っている相手に近寄ると会計が終わったこと、オマケをサービスしてくれたことを嬉しそうに話して)

(/すみません手違いで2回投稿してしまいましたー！片方は気にしないでください！！)

本当だ、良かったね。美味しそうだ。

（相手が店から出てくると会計を済ませてくれた事に礼を言いつつ、袋は自分が持とうと相手が手にしていた紙袋を受け取って。おまけをくれた、という言葉にその袋を覗き込めばざらめの付いたラスクも一緒に入っていて、喜んでいる相手に釣られて微笑みながらそう答えて。次は相手の食べたがっていた肉を買いに行こうと、歩き始めて。男2人で歩いているためか店に誘う女性からの声掛けを受け、それを断りながらも相手が隣に居なければ彼女も被害者になっていた筈だと考える。自分から声を掛けてくる女性が一番狙いやすいのだとぼんやり考えながら、今はその考えを振り払って。）


（了解です、お気になさらず！）

あぁ、食べるのが楽しみだな。

(さりげなく紙袋を貰われ、相手のスマートな行動に少し驚く。相手の好意を無下にはできずそのまま頼んで並んで歩いていけばゆらゆらと誘うように女性たちが誘ってきた。1番の目当ては自分の隣にいる相手だろうなと思いながら断って歩いていれば、相手はなにか考えているようで首を傾げる。こういう類の女性になにか思い入れが有るのだろうかと考えてはいるが、あまり踏み込むべきでは無いのだろうな、という考えもあり口を噤み。少し歩いていれば肉を焼いている店が見え、相手に少し待っていてくれ、と声をかけて相手から離れて)

肉屋があったから買ってくる。この辺で待っててくれ。

…ああ、ごめん、ありがとう。

（そんな事を考えていると不意に相手に声を掛けられ、目的地のすぐ近くまで来ていた事に気付く。買ってくる、と言って店に向かう相手の背中に慌てて返事を返しつつパンの入った袋を手に壁に背中を凭れさせると街を行き交う人の姿を眺めて。楽しそうに声を弾ませる若者たちや、寄り添いながら歩くカップル、自分が普段目にする恐怖に染まった表情を浮かべる人間は1人も居ない。同族同士は見分けがつくため、人に紛れて歩く吸血鬼も数人見かけた事から、今夜もまた今は幸せな時間を過ごしている誰かの命が奪われるのだろうと考えて。罪悪感など感じた事も無いのに、この所言い表し難い感情に襲われる事が時々ある。相手の側に居たいという想いは変わらないものの、自分はあまりに罪を背負い過ぎているとも思うようになっていた。あの一件からどうにも調子が戻らないと、小さく溜息を吐いて。）

(肉屋のメニューにはステーキの他にソーセージも有り、店主に少量のステーキ、ハーブ入りのものとスパイスの入ったものを数本見繕って貰うことにした。気前のいい声が店内に響いて食欲をそそる匂いや音が漂い、出来上がるのを待った。相手はさっきの女性たちを見て何を思ったのだろう。所詮、一夜の共にするならば･･･とでも考えていたのだろうか。相手は顔立ちが良いため女性達は放ってはおけまいだろうし、本気になれば女性だけでなく男だって･･･と思考がズレていってしまう。モヤモヤとした気持ちを抱えていれば注文したものが出来上がったと声をかけられ、お金を払い受け取る。出来たてで熱いくらいの肉を抱えて歩き、相手の所へ帰る途中には瓶詰めのピクルスを1つ買ってポケットへ入れて。姿が見える距離に来れば女性たちが相手を見て頬を染めコソコソと内緒話をしている姿が見られ、相手は自分の連れだと嫉妬心を隠しながらも見せつけるかのように名前を呼びながら近付いて)

クラウス、ただいま。

テオ、おかえり。良いの買えた？

（ぼんやりと考え事をしていたため近くにいた女性たちの存在には気付いておらず、自分を呼ぶ声に顔を上げると袋を抱えて此方に向かう相手の姿があり、表情を緩めて相手を迎えて。結局買い物は全て任せてしまったため、せめて荷物持ちをと肉の袋も受け取ろるべく手を差し出して。今は相手との時間を楽しもう、陰鬱な思考は不要だと考えながら他に買い忘れは無いかと相手に尋ねつつ再び歩き始めて。）

他に買うものは平気？