吸血鬼 2021-03-16 10:45:12 |
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…ああ、ごめん、ありがとう。
(そんな事を考えていると不意に相手に声を掛けられ、目的地のすぐ近くまで来ていた事に気付く。買ってくる、と言って店に向かう相手の背中に慌てて返事を返しつつパンの入った袋を手に壁に背中を凭れさせると街を行き交う人の姿を眺めて。楽しそうに声を弾ませる若者たちや、寄り添いながら歩くカップル、自分が普段目にする恐怖に染まった表情を浮かべる人間は1人も居ない。同族同士は見分けがつくため、人に紛れて歩く吸血鬼も数人見かけた事から、今夜もまた今は幸せな時間を過ごしている誰かの命が奪われるのだろうと考えて。罪悪感など感じた事も無いのに、この所言い表し難い感情に襲われる事が時々ある。相手の側に居たいという想いは変わらないものの、自分はあまりに罪を背負い過ぎているとも思うようになっていた。あの一件からどうにも調子が戻らないと、小さく溜息を吐いて。)
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