‥ お薬一錠　( 〆 )

＿＿何よ。オネェは珍しいって？(　ハハッ　)…素直なのは悪い事じゃあねェけど、医者の言う言葉じゃないわね。(　肩竦めつつ溜息をつき　)にしても薬ばっかり随分と処方されてンのねぇ。薬だかご飯だかわからねェ量。(　紙に書かれた薬の欄に目を通し　)

少なくともオレは今まで遭遇したことはねぇっての、( 目逸らし/きっぱり )─…まぁ別にアンタら医者に過度な期待はしてねぇし落胆もしてねぇよ( 体制を崩したまま淡々と言葉を発して )
薬付けにして大人しくなるって思ってるならテメーら医者は名ばかりって奴だな( 飄々と悪態をつき相手の顔を睨みつけ )

新しい発見が出来て良かったじゃない。(　適当　)それが一番ね。神様じゃねェんだ、何もかも綺麗真っ白に治るなんて有り得ねェのよ。(　カウンセラーらしからぬ発言を落とし　)アンタ、これだけ飲まされても大人しくなってないものね。＿＿取り敢えず今日からお助け程度の睡眠薬だけでいいわ。後は全部ボツ。(　紙から相手へ一度視線向け、"何か聞きたい事ある？"と問い掛けて　)

此処で"新しい"事なんて久しぶりで笑えるんだけど( 嬉しいのか自分でもよく分からない感情に少し声が上澄り )
────アンタ、変わってるって言われるだろ？いやそんな可愛いもんじゃねぇ。奇人？、変人…？そう言う類の奴。今日実際会ってみて噂が本当だったって確信した( 投げかけられた質問を遮るように喰いつくと瞳孔が開いた目で相手を凝視して )

その辺にゴロゴロしてるわよ。よーく目を凝らして探してみる事ね。(　 片手ひらり　 )皆少なからず変わってンのよ。アタシも＿＿アンタもね。それが表に出るか出ないかの違い。で、質問はあるの？無いの？無いなら今日の"オハナシ"は終わりよ。喉乾いてンだからさっさとして頂戴。(　 紙を机の上に置きこれまたカウンセラーとは思えぬ発言で先を促して　 )

うるせぇ、年長面すんな ( 一瞥して唸り )
──…知った様な口聞くんじゃねぇ。アンタと一緒にすんな、オレはおかしくなんてない ( 自分に言い聞かせる様に唱えては目を閉じ )まっ別に質問なんてねぇけど、ちゃんとお医者様として仕事した方がいいんじゃねぇの？そんな勤務態度じゃ上司とヤらに怒られんじゃん？( いきなり目をパチッと開けると口角をあげる嫌味な嗤い方で誘ってみせて )

認めちまった方が楽になれるわよ。(　 にぃ　 )生憎アタシは上司の専属じゃねェの。飲み物一つでウダウダ言うンなら患者にまともな薬一つでも出せって事よ。(　 吐き捨てるようにそう言えば静かに立ち上がり　 )挑発出来るだけの気があンなら今は問題ねェわ。アンタも何か飲みてェんなら奢ってやるよ。(　 ドアまで歩み進め開ければ取り敢えず出るように促して　 )

認めた先に楽が待ってる──あ？そんな保証なんてどこにもないだろ( ぼそぼそ )
ホント此処にはぶっ飛んでる奴しかいねーと思ってたが、まさか医者サイドにも居たとは驚きだ( 返答を聞きつつにやりと口元を歪ませて )ん、アンタが今からオレの専任なんだろ？じゃあ"お医者様"の言うことは聞いとかねぇとな( 今にも倒れそうな椅子からサッと身を起こすと相手には目もくれずに部屋から出て )オレは珈琲で ( へらっ )

ハハッ、確かに無いわねぇ。(　 相変わらず適当　 )前任の医者だって相当だったわよ。アンタは気付かなかったかもしれねェけどね。(　 そのまま廊下を進み自販機の前で立ち止まれば二つ買える分のお金を入れ　 )＿＿紅茶と、ほら、好きなの押しな。(　 少し体をずらして　 )

──ッ、医者なんかとまともに話したこともねぇのに分かるかっての ( 少し不貞腐れたように口を結んで )まぁいいや、珈琲飲めただけでも今日個室(へや)から出た甲斐があったな。( なんの躊躇もなく"アイスコーヒー"のボタンを押すと傍らにあった椅子に腰掛けて )

ま、それは互いにでしょうね。アンタもそうかもしれねェけど、前任の医者もアンタとまともに話そうとしなかった。でしょ？(　 落ちてきた紅茶を片手に隣に腰掛け　 )毎回毎回出てくる度に奢らねェわよ。今日はアタシが喉乾いてたから。(　 キャップを開け中身を飲み ／ 時折通り過ぎる患者から送られる"ずるーい"との文句を軽く流して　 )

むやみに触ると噛み付く奴には近づかない方が懸命──って上の判断じゃねぇの。その判断オレは正しいと思うけど( 横目で隣に座った相手を確認すると少し距離を開けて座り直し )
あっそ、じゃあ毎回喉乾いてろ。俺個人では自販機含め"買う行為"を禁止されてんだよ、これも久しぶりの珈琲だし( 体制は変わらないまま顔だけ相手に向けて、周りから起こる声に反応すると眉間に皺を寄せ威嚇し )

ハッ、まるで狂犬ね。アンタそんな見境無いの？(　 楽しげに口角持ち上げ　 )じゃあその禁止令解いてやるわよ。今日から好きに飲み食いしたらいいわ。(　 勝手に決め　 )＿＿誰それ構わず喧嘩売ってんじゃねェわよ。(　 やれやれ　 )

オレだって人は選ぶ。──ただ、オレを担当する医者ってのはどいつもこいつもつまんねぇ男しか居なかったってハナシ( 珈琲を一口飲み目を伏せて )
──…は、？アンタそれマジで言ってんのか( 勢い良く相手の方に振り返り怪訝そうな顔で視線を放って )るせーよ。この顔は元からなんだよ ( 舌打ち打ち )

じゃあアンタの言う"つまらなくない男"ってのはどんな奴な訳？(　 小さな興味で問い掛け　 )嘘は言わねェわよ。珈琲だろうが何だろうが好きに飲んだらいいわ。＿あ、でもお酒は駄目よ。(　 ある程度飲んだらペットボトルの蓋をしめ　 )はいはい。(　 適当に流し　 )

簡単だ。オレを見る目付きで分かる ( 少し悲しげな感情を言葉に溶かして珈琲を飲み終えると )
まぁいいや、拘束されずに動ける内に貯め込むしな。──次合う時はアンタはオレの担当じゃねぇかもだし、よ？ ( 片手に珈琲の缶を持ったまま徐ろに立ち上がると態とらしく明るめの口調で話してみせて )

＿＿変に敏感な子って生きにくいのよねぇ。(　 小さな溜息をつき　 )部屋にクーラーボックスでも置いておくのね。見つからねェ所によ。(　 クツクツと喉の奥で笑い　 )冗談。アンタが此処を出て行く時まで担当に決まってンでしょ。今回担当が変わったのは稀なのよ。(　 肩竦め　 )それとね、アタシがアンタの担当になったからにはその気持ちと違う表情を見せるのはやめて頂戴。察してほしいはお断りよ。(　 ズバズバとはにもの着せぬ物言いで締め括り　 )

生きにくい世の中過ぎだろ、オレはずっとここの方が合ってる気ぃするわ( つられて溜息零し )
ずっとアンタが担当…？まぁ、飲み物奢ってくれる医者なら他より少しはマシか( 怪訝そうな表情を浮かべながら奥歯を噛むもケロッと冗談交じり言葉吐いて )

は？──…るせぇ、うるせぇうるせぇんだよお前…！黙れ、近づくな( 所謂"症状が発症"したかの様にやめろと何回も喚き散らし/図星を付かれた相手に激昴してるのか、言葉端に滲み出ていた自分の弱さを悔いているのか分からないまま拒絶を始め )

珍しいわね。大抵の奴らは早く此処から出たがるわよ。(　 物珍しそうに　 )言ったでしょ、次からは奢らねェわよ。自分で買えるんだからそうしな。(　 あっさり　 )＿＿そっちの方がまだマシね。…あぁ、大丈夫よ。問題ねェから部屋戻ってな。(　 その叫びに廊下を通っていた患者の数人が驚いたように立ち尽くすのを片手でシッシと追い払い　 )そんなに近くないでしょ。全く。落ち着きな。(　 徐に伸ばした片手で隣にある頭を鷲掴みにしようとして　 )

──…ハァ、は、ッ( 尋常じゃない汗が頬をつたい始め目の前がチカチカとフラッシュして/視野が狭くなっているのか伸ばされた手を払い除ける動作が遅れしまい )るせ、ぇんだよ。オレの中に入ってくんな ( 息切しつつも肩で呼吸し )
だから個室(へや)に拘束されてた方が良かったんだ、…見るな、オレを見るな ( 顔を隠す様に手を覆いかぶせると唸るような声を出して周りを威嚇し )