ヒーローと日本刀【非募集】

りょ、了解した！よしっ、まずはシャツだな…って、加州？
(相手の視線や態度に気圧されるように頷くと、己も真剣な様子でギュッと財布を握りしめ。店内を一通り見回しつつ目的の品であるシャツを探しながら相手が目の前にいる前提で話を進めようとしたが、ふと視線を相手に戻してみれば既にそこに相手の姿はなく。すぐに見つけたが、相手もウィンドウショッピングを楽しんているのであろう様子が見て取れると呼び戻す事はせず仕方ないというように笑い「シャツとジャージくらいならすぐ見つかるだろうし…呼び戻すのはそれからで良いか」と呟くと、シャツのある棚の方へ向かい)

─…か、可愛い…！あ、でも女物かぁ。
(久しぶりの来店ですっかり舞い上がってしまったのか、相手の気遣いをよそに気ままに品物を見ながら歩き回り、店内の一角に並べられた髪飾りの類の棚の前でようやく足を止めて。赤いとんぼ玉の付いた簪が目に留まり、手に取り目を輝かせて見つめては、一人で一喜一憂した後小さく息を吐いて「お店、いいよなぁ…」としみじみと零し。最後にもう一度だけ、とんぼ玉の部分を明かりに透かしてみてから元あった場所に戻し。)

シャツとジャージ…うむ、これでよし！すみませーん！
(やはりあまり時間はかからず、適当な物を探すことが出来れば会計を済ませようと店主であろう初老の男性のもとへ駆けて行き。持ち前の明るさが気に入られたのか店主との会話が弾み、オマケだと割引いてもらえたり風呂敷に包んでくれてりなど親切にしてもらい。それを持ち上機嫌で相手の元へ向かうと、ちょうど簪を戻す相手の姿があり。どうしたのだろうかと背後から「…何か気に入ったものがあったのか？」と声をかけ)

え、もう終わったの!?ごめん、俺自分のことばっかで…
(声をかけられればはっとしたように振り返り、風呂敷包みが目に入ると慌てふためき謝って。上機嫌なその様子から目当ての物が買えたのだろうと察し、それならばこれ以上この店にいる必要もないだろうと首を横に振って「見てただけ。荷物貸して、持ちたい」と風呂敷包みを指差し。本来の目的を忘れてしまっていた罪悪感というよりも、荷物持ちは近侍の特権だと捉えているためか期待に満ちた眼差しを向けて。)

良いのか？では…頼むとしよう！任せたぞ、加州。
(視線から相手の熱意が伝わってくれば、小さく笑みを浮かべ素直に荷物を預け。その時、バレないように相手の背後の棚へ一瞬だけ視線を向けると、そこに色とりどりの髪飾りが置いてあることを確認し。これを見ていたのかと心の中で頷いた後「さて、次へ行くか！…ありがとう、また来るぞ！」と店主に笑顔を向け、ヒラヒラと手を振りながら店外へ出て行こうとして)

はーい、じゃあね。
(受け取った荷物をしっかりと抱え、店主に小さく手を振り挨拶すると出口の方へ足を向け。その際に一瞬名残惜しそうに簪を一瞥するも、そのまますぐに相手の後を追い店を出て。次こそはきちんと役目を果たさなければと気を引き締め直すと「次はボール…だっけ？」と呟きそれらしき店がないか辺りをきょろきょろ見回して。)

うむ！しかし、どういう店に置いてあるのか…―おっ。
(お待ちかねのボール探しとなれば、喜びの隠しきれない表情で頷き。相手と同じように軽く辺りを見回すと、何を見つけたのか相手を置き去りにして近くの店へ駆けて行き。相手に背を向けると「加州っ、加州！面白いものがあるぞ？祭りでもないのに、こんな物も置いてあるのだな…ほら！」と何やらゴソゴソと準備をしパッと振り返ったかと思えば、その顔にはひょっとこのお面がつけられていて)

なーに？……ふふ、似合ってるじゃん。
(背を向ける相手に不思議そうに声をかけるも、振り返ったその顔を見れば思わず笑みをこぼして相槌を打ち。何気なくその店の店内を覗き込んでみると様々な遊び道具のような物が売られているのが見て取れ、再び相手に視線を戻すと笑いを堪えつつ手を伸ばしてお面を外し、店の中を指差しながら「ボール売ってるかもよ、ここ」と告げて。)

なにっ！？ふむ、確かにありそうな感じだな…
(相手の笑顔を見ることができれば自然と口角も上がり、面を取られた瞬間もヘラリと笑顔が覗いていて。次いで売っているかもしれないという言葉に反応すると、勢い良く店内に目を向けそわそわと落ち着きなく見渡し始め。しかし入口からでは限界があり店内に入らなければ探し出せないため、相手の空いている手をしっかり握ると「早速探すぞ！」と弾んだ声をかけつつ中へ進んで行き)

あるといいけど…。
(手を引かれるがままに店の奥の方へと進んでいき、話に聞いていたボールの特徴を思い出しつつ雑然と並べられた商品を眺め。遊び道具にはしゃぐような年ではなくとも物珍しさはあるのか、満更でもなさそうな様子でしばらく店内を満喫した後、大小様々なボールが置かれた棚が目に入ると相手の手を軽く引き「ねえ、この中にはない？」と首を傾げ。)

おぉっ、でかした加州！この中だと…おっ、見つけたぞ！！―よっ、
(自分はその棚をスルーしていたが、相手に促されるままにその棚へ顔を向けると嬉しげに声を上げ。離した手を相手の頭にやれば「流石だな！」なんて褒めつつポンポンと優しく撫で。棚の端から端まで順々に目でおっていくと少し上の棚に目的のボールが見え、そのまま軽くジャンプをしてボールを手に取ると「ゲット！…っと。よしよし、大きさも7号だな」と確かめるように、慣れた手つきで数回ドリブルをして)

まーね…って、
(誇らしげな様子で撫でられていたかと思えば、少し高いところに置かれたボールを軽々と取ってみせる相手にぽかんと口を開けて。今までそそっかしい姿ばかりを見てきたためこのような一面は思いもよらず、初めて見るドリブルに目を輝かせながら「主、運動できるんだ…」と小さく本音を零し。相手の手の中のボールをあらためて見つめると、そろりと手を出して触ってみてからその手を自らの鼻先に持っていき「…変なにおい」と眉を寄せて。)

はっはっは！アイドルは体力勝負だからな！これでも日々鍛えているのだ。
(呟きが聞こえると口角を上げ。片手でボールを持ち、空いたもう片方の手を腰に当てると得意気に胸を張り。相手がボールに興味を示している様子が恐る恐るといった感じなので、それが可愛らしく思えれば思わず小さく笑い。自分は慣れていて気が付かなかったが、臭いに顔を歪める様子を見れば相手の手にズイッと鼻を近づけ「…。あぁ！きっとゴムの臭いだろう。新品のボールなんかは特にキツく感じるかもな」と笑い混じりに述べつつ姿勢を戻し)

なんでもできるんだねー…惚れ直した。
(顔良し性格良しな上に運動までできるとくれば非の打ち所がなく、そんな相手のことを'自分にはもったいないのではないか'と思うと同時に誰かに自慢したくなるほどに誇らしくもあり。口元に微笑を浮かべて茶化すような口調で率直に褒めると、相手の説明に納得しつつもう一度ボールに触れ「あの人の時代にはこんなの無かったもんなぁ…」と懐かしむように独りごちて。)

あの、人…。あぁ、“沖田総司”だな！
(楽しげに笑っていたが、持ち主であった“あの人”と聞いた途端言葉が詰まったようなぎこちない話し方になり。相手は素直な気持ちで話しているだけだと頭では分かっているものの、相手を想いすぎる故に心にモヤが渦巻き。こんなにも些細な事で嫉妬してしまう自分が初めてで戸惑ってしまったのか、平常を装ったつもりでも不自然に言葉の間隔が空いてしまい「―か、会計を済ませてくる！」と告げた後後、どこか逃げるように会計へと向かい)

え……あ、了解。
(どちらかといえば敏い方である自分が相手の様子の変化に気づかないはずがなく、そそくさと会計をしに行ってしまった背中に戸惑いの言葉をかけ。今は主である相手との所謂'デート'中、昔の持ち主のことを話に出すのは失礼極まりないことだったと気づけば嫌な思いにさせたのではないかと不安になってきて。堪らなくなり「どうしよう」と呟くと落ち着かなげに緩く唇を噛みしめ。)

うーむ…。え？あぁ、すまんな！お金は…っと、
(店主にボールを持っていきながら先程の事を思い返しては、さすがに自分のあの態度は無いだろうと小さく唸り。お金を促される声に我に返り、慌てて支払おうとすれば『悩み事か？まけてやるから元気出しな』なんて同情されてしまい。苦笑を浮かべつつ支払いを済ませると、ボールを脇に抱え相手の元へ戻って行き「戻ったぞ！ふっふっふ、またオマケをしてもらってしまった」なんて、暗い雰囲気にさせないよう笑みを見せ)

…また？主ってば人がいいからさ、好かれやすいんだよねー。
(相手が会計を済ませ戻ってくると、真っ先に謝ろうと口を開いて。しかし予想と違って笑みを浮かべる相手の気遣いに気付き、すんでのところで謝罪の言葉を呑み込めば、同じように調子を合わせて微笑みながら返し。ボールを抱える相手の邪魔にならないよう袖をそっと掴むと、「ねぇ、俺がそういう意味で好きなのは千秋くんだけだよ」と控えめに念を押して。)

…っ！？―まったく、お前は良く気がつく奴だなぁ…優秀すぎるのも考えものだ。
(気づかれていないと思っていたため、不意打ちともいえる相手の言動に目を見開いては一気に頬を染め。そのまま力が抜けたようにヘラリと笑むが、相手に気を遣わせてしまったと思い困ったように眉を下げ。ふいに相手の首筋に頭を埋めると「頭では分かっているつもりだったのだが、どうもダメみたいだ。こんな嫉妬、まるでお前を信じていないと言っているようなものなのにな…自分が情けない」と軽く頭を押し付けながら小さくこぼし)

主けっこうわかりやすいから。
(否定をしないあたり、やはり気を悪くしたのだろうと思い込めば、申し訳なさに目を伏せて静かに答え。直後思いもよらぬ相手の行動に反射的に身を竦めるも、その言葉を聞いているうちにどうやら誤解していたようだと気付きじわじわと頬を染め、首筋に顔を埋める相手の髪を優しく撫でながら「主が嫉妬？……どうしよ、嬉しいかも」と返して。)