ヒーローと日本刀【非募集】

(寝ている間の相手の温もりが心地よく、普段の掛け布団を蹴退けたり服が捲れていたりという酷い寝相になることはなく。しかし、その心地よさに縋ろうとしているのか相手を横から包み込むように抱きしめ。己の鎖骨あたりにある相手の頭を手でしっかりと抱き、さらには片足も相手の足に絡ませるという相手にとっては身動きが取りづらいであろうこの体勢のまま、安らかな寝息をたて。そのまま朝がくれば微かに入ってくる光の筋に「むっ…」と小さく唸るも、自ら起きることもなく離すこともなく再び眠り続け)

──…んん…、
(早朝、なにやら寝苦しく眉を寄せて小さく声を洩らすと、ゆっくり瞼を開けて欠伸を零し。徐々に覚醒していく意識の中相手の匂いと温もりに包まれていることに気付き、少し遅れて今置かれている状況を理解すれば、恥ずかしさを誤魔化すように「……確かに潰してはいないけどさー」と呟きつつ、そっと相手の腕や足を解いて寝床から抜け出し。起こすべきか否か迷いつつも穏やかな寝顔を見ているともう少しだけ寝させてあげたいという気持ちが先行し、寝間着の着物を脱いで着慣れた洋装へと着替えて。ベストまで着替え終わると布団の傍らに膝をつき、手をついて相手の寝顔を覗き込みながら「あるじー、まだ起きないの？」と声をかけ。)

んﾞ、あぁ…。今起きる…
(相手の声にピクリと反応しては、目は開けず普段からは想像出来ないような弱々しく掠れた声を出し。返事をしながら薄らと目を開けると相手の顔が視界に入ったため、手を伸ばすとポンポンと相手の頭を撫で。それからゆっくりと上半身を起こすが、どうも朝には弱いらしく意識が定かではないのか寝ぼけ眼でしばらく掛け布団を見つめ。次に相手へ視線を移すと、やはり数秒ぼんやりと見つめては「おはよう…加州」と気力のない声で述べ)

おはよー。……隙あり！
(元気な姿ばかり見慣れていたためか、ぼんやりとしている寝起きの相手は隙だらけでなんだか可愛らしく。ちょっとした悪戯心が芽生えて掛け声と共に腕を伸ばし抱き着けば、少し寝癖がついているその髪を片手で整えてやり、まだ眠たげな目元に軽く口付けを落とすと「ね、目覚めた？まだ？」と楽しそうに問いかけて。早朝ならば主導権はこちらのものだと言いたげに口角を上げると、相手の顔を覗き込んで反応をうかがい。)

お…っと、
(驚きで声を上げては反動で軽く後ろへよろけ、それでも手櫛の感覚などが気持ちよいのか再び眠気に誘われされるがままに大人しくしており。油断しきっていたその時、目元に柔らかな感触を覚え。それが夢ではなく現実の感触だと段々引き戻されるように意識もハッキリしてくると共に、じわじわと頬も熱くなっていき。嬉しいやら恥ずかしいやらで緩む口元を片手で覆い隠すと「さ、覚め…た」と返し。相当効いたのか、覗き込んでくる相手の顔から思わず視線をそらし)

……これは楽しいかも。
(ここまではっきりと動揺している姿は見たことがなく、初めての反応に目を瞬かせるとぽつりと本音を零して。返答に満足したものの味をしめたようで、からかうように赤く染まった頬をつつくとそれからもう一度だけぎゅっと抱きしめて。新しい一日を相手と共に迎えられることが嬉しくて仕方がなく、少しばかり弾んだ声で「今日もよろしくね、主」と言い添えるとようやく相手を放して口元に笑みを浮かべ。)

…。あぁ、こちらこそ…だな！
(そらした視線を戻すと、そこには笑みを浮かべる相手。釣られて笑みをこぼしては、朝から愛しい者の笑顔を見れるという幸福感に包まれ。先程までの動きとは違い、スッと一気に立ち上がりストレッチをするように両腕を上へ伸ばすと「さて！二度寝をしてしまう前に顔でも洗ってくるかっ…。せっかくお前のおかげで、バッチリ目が覚めたわけだしな？」と早くもケロッとした様子で笑いながら述べ)

そうしよっか。
(頷きつつ箪笥から2枚のタオルを取り出せば片方を相手に渡し、鏡台に置きっぱなしにしていた耳飾りを手早く着けると髪結い紐とタオル片手に立ち上がり戸を引いて。廊下に出ようとした瞬間、相手の着替えについて全く考えていなかったことを思い出し、困ったような表情で「主の昨日の服、あの1着だけだよね？今日は和服でもいい…？」と尋ね。洋服のほうが着慣れているであろう相手に和装を強いるのは少し申し訳なく、早いうちに買い出しに行かなければと今後の予定を立てて。)

もちろんだ！…というか、むしろ着てみたい！
(確かにブレザーとスラックスは洗わなくても良いがワイシャツはあの一着しかないと考えては、話の途中でコクリと頷き。その代わりに、あまり着る機会のない和服が着れるのだと分かれば途端に目を輝かせタオルを持つ手に力が入り。相手の背後に立ち両肩に手を置くと、そのままクルッと廊下の方へ方向を変えさせ「よしっ、では顔を洗いに行くぞ！」と促すように軽く押しつつ)

わかったからそんなに急かさないでよー。
(予想に反して意欲的な答えが返ってくると安心したような笑みを浮かべて。風呂場や洗面所のある離れに向かおうとしたところで急かすように軽く肩を押されれば、笑い混じりに文句を言いつつ、それでも悪い気はしないのかされるがままに廊下を進んでいき。洗面所に着くと隅に寄り、鏡を見ながら慣れた手つきで髪を結って。)

なぁ、加州。お前は確か、趣味は店を見に行くこと…と言っていたな？
(相手に続き横へ並べば、持っていたタオルを首にかけ早速顔を洗い始め。ふと前に言われたことを思い出したのか、手を止め顔を上げると鏡越しに相手を見つめ。ここ本丸へも突然目の前に飛ばされたものだから、その周りのことなど一切知らず「周りには買い物ができるような場所があるのか？」と言葉を続けては、タオルで顔を拭いつつ緩く首を傾げ)

万屋が集まってる通りがあるから、そこで大抵の物は揃うと思うよ。鍛刀に必要な物から日用品や雑貨でしょ、お団子みたいなちょっとした茶菓子も売ってるし。
(これから何かと買わなければならない物が出てくるはず、相手自身にとっても知っていて損はないため、問いかけに大きく頷くと本丸から少し離れた場所にあるいくつかの店について説明して。そうこうしているうちに髪を結い終えれば袖口を折って顔を洗い、それから蛇口を捻って水を止めタオルで顔を拭きつつ「主のシャツも買えるしね」と付け足し。本丸での扱いが悪化する前はよく買い物に行ったものだと、どこか懐かしむような面持ちで少し目を伏せて。)

あぁ、それも買わなければいけないな！あとは、ジャージなんかも置いてあれば良いのだが…
(説明を興味深そうに頷きながら聞き。動きやすいようにそんな物も売っていないか、あわよくばバスケットボールなどもあれば、なんて考え込むように呟き。鏡越しではなく、ふと横目で相手の表情を見れば「買わなければいけない物、それに色々見てみたい物もある…―というわけで、今日は2人で買い物に行くぞ！」と独り言のように述べ、最後に宣言のように言い切れば笑みを向け)

ジャージなら、刀でも着るやつがいるくらいだし売ってるんじゃない？
(一部の刀剣男士たちが内番の際好んで着ていたのを思い出せば、店に置いてある可能性も高いだろうと頷いて答え。相手の着替えの他に何か足りていない物はなかっただろうかと思い返していたため、突然外出の提案をされれば思わずまじまじと相手を見つめ。すぐにぱっと表情を明るくさせると、「ほんとに？主とお店行くの？」と何度も確認して。)

はっはっは！ほんとのほんとだ！
(途端に明るくなる相手の顔を見れば、こちらも自然と嬉しくなりいつもの元気な笑い声を上げ。何度も確かめたりと落ち着かない様子の相手に未だ小さな笑いをこぼしては、なだめるように優しく頭を撫でつつふわりと目を細め。そのまま軽く撫で続けていたかと思えば「沢山見て回ろうな！…案内は頼んだぞ、加州」と付け加え最後にポンッと一撫でし、本人もやはり楽しみなのか無意識に声が弾み)

まっかせといてー、いいお店紹介してあげるから。
(使い走りをするのだとばかり思っていたため一緒に買い物に行けるのが隠しきれないほどに嬉しく、頭を撫でられている間も終始頬を緩ませっぱなしで。笑顔で自信ありげに答えたあと、自室の方へと戻りつつ「洗濯したり布団干したりしなきゃだし…、午後からでいい？」と頭の中でスケジュールを組んで確認して。大きな楽しみができたことで俄然やる気も出てきて、普段は面倒くさがってあまりやりたがらない雑用も今ならば頑張れる心地がし。)

あぁ、もちろん良いぞ！これだけ天気が良いと、干す時は気持ちが良さそうだな
(隣を歩きながら予想以上の反応に満足げに頷くと、外の方へ視線を移し。空気は少し冷たいものの、スッキリと晴れ渡っている空を見れば心を弾ませ。相手にやる事があるのは良いが まだ来たばかりの自分は特にやる事が見つけられず、どうせなら相手の傍にいれるようにと「そうだ…俺も洗濯やらを手伝っても良いだろうか？」と到着した部屋へ入れば、窺うように相手の方へ顔を向け)

…ありがと、お願いするね。
(相手につられて庭を眺めては、久しぶりの晴天に眩しそうに目を細め。次いで部屋に入るも主に手伝わせるという感覚が未だに慣れないのか、本当に頼んでも良いのだろうかと不安げに見つめ返したあと、その表情に安心したように口元を綻ばせて返答し。襟巻を巻くと箪笥を開け、自分の物よりも少し大きい着物と袴を取り出して相手に差し出し「着方わかる？」と尋ねて。)

ふむ…。わからん！
(着替えを出してくれている相手の背中を眺めながら、手伝いが出来ることを嬉しく思い頬を緩ませ。その後、差し出された物を受け取ればとりあえず袴を広げてみて。数秒それをジッと見ていたが、諦めたのか相手の方へ顔を上げると1つ頷き。何故か潔い程に堂々とした様子で一言告げれば「すまないが、教えてくれると助かる」と続け苦笑を浮かべては肩をすくめ、着物や袴をひらつかせ)

肌襦袢、長襦袢の順に先に着ちゃって、それからその着物、最後に袴ね。着物からは俺が着付けてあげる。
(相手の答えは予想の範囲内で、別段驚いた風もなく説明しながら再び箪笥を漁ると肌襦袢や長襦袢を取り出して。相手がひらつかせている着物と袴を一旦預かると、代わりにそれらを押し付けつつ「これが肌襦袢と長襦袢。着物着る時の下着だから、服脱いで着て」と詳しく説明し。さすがに着替える姿をこのまま見ているのは気が引けて、敷きっぱなしだった布団を畳んで。)