鳴河崎町にて（〆）

へぇ、店長なんだ。若いのに凄いね
（明るい口調で感心したように言って）

……そっか。それが本題？　何が聞きたいの？
（明るい口調だったのがトーンダウンし観察するように相模を見て）

…俺にはあんたがそんなに悪い奴には見えない。
…だから、あんたさえ良ければ友達のままでいてくれ。無理ならいい。
(静かにそう呟くと視線を下に戻し、図案の模写に戻り)

お姉さんから事件のこと聞いたんでしょう？
僕は悪い人間だよ。少なくとも善良な人間じゃない
相模くんが友達でいてくれるのは嬉しいけど、考え直した方がいいんじゃないかな？
（相手の言葉に驚いたように目を丸くすると、悩むように頭を掻いて落ち着いた口調で忠告するように言って）

……俺は頑固なんだ。一回決めると撤回しない。
昔から姉さんにも岩みたいだって言われてる。
(摸写を続けている素っ気ない口調だが少し笑みを含んでいて)

そう、わかったよ。これからも友達としてよろしくね
（肩を竦めるとこれまでのように明るい口調で言って）

それにしても、昨日はびっくりしたよ。僕のこと知ってる人に会うなんて
（昨日の今日だから事件について聞かれると思っていたが、特に聞かれることもなく拍子抜けした様子で）

…姉さんはああ見えて、記憶力が良いんだ。
(姉の話をし出すと少し笑みが浮かび)

ほんとだね。一発でバレたよ。名前も事件も。まいっちゃうよねー
（軽い口調でやれやれと言いたそうに）

仕事っていつまでするの？　まだなら一緒に夕食取らない？　お姉さんと食べる予定があるとかなら構わないけど
（この関係は終わりになると思っていたが、そうならないなら最初の予定通り相手と仲良くしようと思って）

…今日の仕事はこれだけだし、別に良いけど。姉さんは勝手に食うだろうし。
(無愛想に終わりかけの図案の摸写を指差し)

この前見せてもらった時のもそうだけど、それも随分細かいよね。そう？　良いならいいけど。この前教えてもらったラーメン屋へ行こうと思ってるんだけどそれでいい？
（図案の模写を見ながら細かいよなぁと感想を漏らし）

…ん。
(あっという間に描き終えてしまうとカウンターから出て来て)

じゃあ行こうか。僕は車で来てるんだけど相模くんは？
（相模がカウンターから出て来ると店を出て）

……ここまでは家から近いし、歩き。
(同じように店を出て施錠し)

じゃあ車乗ってく？　帰りはちゃんとここまで送るから
（止めてある車に近づき）

…ん。
(こくりと頷いて同じように車に近寄り)

そのまま飲みに行くのも楽しそうだけど、昨日の今日で連れまわしたらお姉さんに怒られそうだからなぁ……
（車の鍵でドアを開けて運転席に乗り込み）

………別に…。
(無愛想に呟き、後部座席に乗り込み)

タトゥーって彫るのにどれくらい時間がかかるものなの？
（愛想ないなぁと思いながら車を運転し、話題を振ってみて）

…お客さんの希望してる図案の複雑さによるけど…
それに…そもそもアフターケアまで含めると一ヶ月くらいは余裕でかかる。
(ぼそぼそと呟くように答え)

一か月も。大変な作業なんだね。タトゥーアーティストになろうと思ったきっかけとかある？
（愛想がなくて恋愛事にも興味無さそうだからこそ、相手が恋愛対象に見せるような反応を見てみたいなと思いながら）

……元々細かい作業は好きだったし…。
(小声で呟きつつ答え)