車掌 2020-02-25 21:27:29 |
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>パルカ
(彼のしゅんとした顔は苦手だ。甘えられるとついつい甘やかしたくなるし、悲しまれると何でも許しそうになってしまうのだ。「大丈夫、気にしないで」キャスケット帽の上からぽんと頭を撫で、微笑む。彼は聡い、だから嘘はつけないのだろうとわかっている。「そっか、色々あるんだね。あはは、じゃあ後で皆見て回ろうよ」悔しそうにする彼を見て微笑ましく思うとうんうんと頷きながら手を繋いであげよう。「天才って。僕がそうしたいって思っただけだよ、パルカ」一言一言に反応し褒めてくれる彼が可愛く思えて、少しだけ恥ずかしい。こんなに称賛されることは今までなかったのではないだろうか。「虹色なのに不味いだなんて、夢がないなあ」きらきらしたものが美味しそうに見えるはずが、どうやら美味しくはないらしい。食べてみたことあるの?とは尋ねないが。「良いね、驚かせちゃおう」同じように数センチふわりと浮いて、ゆっくりと進む。それはゆったりと、歩く速さと変わらないくらいのもので。「急にどうしたの。楽しいよ、もちろん。もっと此処にいたいし、白くてふわふわした野原にも行ってみたい。だってさ、現実は──つまらないから」不安げに揺れる瞳は儚く消えてしまいそうで、酷く怖く思えた。返す言葉によっては消滅してしまいそうな、そんな感覚に囚われる。それを払拭しようと、ほとんど即答で答えよう。つまらない現実から救ってくれたのは、無色透明な日々に色を与えてくれたのは、間違いなく彼なのだ。「……僕のことは、また列車の中で話すよ。だから今は楽しもう!」話す気のなかった過去も彼には話しても良いと思え、そう真剣な表情で付け加えた後、表情を明るくしてくるりと一回転してみせた。)
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