車掌 2020-02-25 21:27:29 |
通報 |
>パルカ
(楽しげにぐいぐいと引っ張られるとどうしたものかと少しだけ考える。同じように、同じ速度で飛んで、遊んでいたはずの彼はまだ元気一杯。対して自分はまだ疲れが残っていて本調子ではない。「僕ちょっと疲れちゃった。パルカは元気だなあ……空から見たらきっと綺麗だろうね、こうしてるだけでも凄く綺麗なんだから」呟くくらいの声はきっとはしゃぐ彼には聞こえないだろう。そこで矢継ぎ早に告げられる説明を聞きながらああ、楽しそうだ、勝負に勝って良かった、と嬉しく思う。牢屋見学ツアーよりもずっと楽しいことだろう。「そんなに飴屋さんがあって喧嘩してないの凄いね。競争しあって潰れそうなものだけど」家でなかったことの驚きよりも、その店の多さに目を奪われる。確かに店からきらきらした宝石のような飴を持って出てくる人が何人か見受けられる。もしかして此処に売られている飴も飛べるやら透明になるやら、何らかの効果があるのだろうか。魔法が起きることへの抵抗は既になくなっていた。「え、これが飴?いやいや、さすがにそれは……」嘘でしょ、と続けようとしてぴたりと止まる。明らかに虚偽であると思う反面、嘘とも言い切れない程の美しさを持つ石は飴だと言われても不思議ではない。普段見ているのが灰色の薄汚れた砂利であるからこそ、余計にそう見えるのかもしれないが。「うーん、ほんとは全部叶えたいところだけど……わっ、こら。まったく、急に抱き付かないの」提案されたものはどれも楽しそうで、ひとつに絞りきるのは難しい。どこから見ようか。選択権を渡されると迷ってしまうのは優柔不断の悪いところだろう。彼の温もりを感じながら思案すること数秒、頭の中で纏めた答えを出し。「そうだなあ、少し飛びながらこの辺りを散策、お散歩しようか。それで、気になるものがあったら止まって、疲れたらお菓子を買って休憩しよう」それは模範解答にでも聞こえるだろうか。面白味のない答えであったが、すべてを叶えたい欲の捨てられない大人になりかけの子どもの願いでもあり。それで良い?と確認するべくちらりと視線を向けて。)
トピック検索 |