車掌 2020-02-25 21:27:29 |
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>篠宮花音
い、嫌じゃねェが……!その、苦しいだろ!
( 貴女に触れられた。その事実だけで大混乱なのに、こぼされた笑みに試しの言葉までかけられては、かしこくない男の頭はオーバーヒートを起こす。染まった頬にいまさら気づいて、見られてはいないだろうかと咄嗟に顔を背けた。「だ、だから、俺は花音の話が聞きてェだけだ」もう一度繰り返したのは、目的を達しようという意思と、この格好悪い姿から逃れようという思惑が混在した言葉。貴女の表情は複雑ですべてを読み取ることはできなかったが、とても美しくて思考が麻痺した。麻痺したが故というわけではないが、放された両手を未練がましく見てしまったのは失敗だ。……失敗だけど。
誰かに触れられた。しかもその誰かは紛れもなく想い人。
「……な、聞かせてくれ」例えようもない多幸感なんてものが心に溢れる。「どんなこまけェ話でもいいんだ。花音の口から聞きたい」どこかで貴女が言ってくれたような、そんな台詞を繰り返して微笑んだ。なんだか薄暗くなった部屋。貴女の顔はそれでも尚綺麗に見える。不思議で理由はわからない。男自身ででもわからないまま、「嫌なことは言わなくていいからよ」と、どこか陽気な部分が少しだけ顔を覗かせていて )
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