201号室（ 〆 ）

…其れと、そうしたら何処で何してたって否が応でも忘れられないだろ…？…＿本当、僕の前でそんな事遣って退けるのはあんた位だよ。（　肩口に鼻先を寄せる相手に愛しさ感じ、以前緩んだ双眸を茶化しによって意地悪く歪めると肯定且つ加えて零し。眼前で行われた一連の動作に虚を突かれ、得意気な面持眺めてたが軈て緩緩と溜息吐き。呆れ声で皮肉れば笑いそうになるのを灰を落とす仕草で隠し、仄かに絆された儘"気になるも何もあんたが忘れてるだけ"と視線合せて漏らし　）

…あー、そりゃ狡い。普通に真似したくなるでしょうが、そんなの。…許してくれんのも俺だけだろ、なんつって──…何だろうなあ、君の代わりにショッピしゃぶって我慢するとは言ったけども。出張ん時に。（ いじらしい言葉が付け足されれば心臓が痛む程の高揚に密かに眉根寄せ。溜め息で発散させつつこつんと側頭部に頭を添え、髪の香りを混ぜるようにぐりぐりと冗談めかした頭突きをし。皮肉を自惚れで躱してみせるも視線重なると口を噤み、手元の煙草を見下ろし考え始めて ）

僕が狡いの何て今更でしょ、ッふふ…真似と言うか、其れ猫とかがやる付け方じゃないか＿＿……もっと前の話。序に言うけどあんたが僕にくれたんだよ。（　横目に僅に寄った眉根を捉えれば気を良くし、頭を押当てられる儘冷静に言おうとするが髪の感触と胸中に広がる喜色の擽ったさに小さく笑声を上げ身動いで。自惚れには太太しく鼻鳴らして一蹴りし、思考巡らす相手を見詰める傍ら煙草を吹かす合間合間に呟きへ返し　）

猫みたいなモンだからねえ、このクレバーな頭脳含めて。っつーか本当意味無えな、今やおんなじシャンプーなんだから。…有り余るレベルの煙草寄越すほど太っ腹だっけ、君の恋人。ただでさえ暑いってのに知恵熱出そう。（ 擽ったげに身動ぐ姿が一層愛おしく、乱れた黒髪を手櫛で整えれば"こっちのが良いや"と仕上げにキスを落とし。ぽつぽつと足されるヒントがより謎を深め、灰が落ちる寸前まで腕を組んで悩み。灰皿へ手を伸ばしながら他人事じみた口調に諦め滲ませ、咥え煙草でだらりと寝転んで ）

未だ言うか、其れ…意味云々は兎も角悪く無かったからまァ良いんじゃない。＿…そうだね、出血大サービスだって気前良く1箱くれたよ。下らない謝罪代わりに…何て、此れ以上は口も滑らないけど。（　髪を通る指と口付け某受し、疼く幸福感に振り向けば未だ近い其の鼻頭に唇寄せ。相手が懊悩してる間に満足したのか微妙に長い煙草を揉み捨て、両膝抱え顎を埋めて。灰皿へ伸びる手を視界端に捉えつつ諦めの滲む声を聞けば、相手が寝転んだ後徐に其の言葉に乗る形で答え"暑いならくっ付かなければ良いのに"等とさも平静を装い　）

あれで悪くなかったんなら猫確定よ、諦めな。俺はてっきり"馬鹿やってんじゃないよ"的なツッコミが返ってくるかと。…謝罪ねえ…シガリロ持ってった事はあったけど、ありゃ遡りすぎだなあ。俺らの歴史で言やあ紀元前レベル。（ 涼やかな表情と口調を真似て戯けるも、緩んだ唇が鼻先へ触れるとそこではないと首を振り、小さくリップ音立て口付けて。座り直す相手を横目にぼんやりとした声で記憶辿り、ふいに喉奥鳴らせば懐かしげに目を細め。話を脱線させつつ尤もな指摘など聞かない振りで腰元へ寄りかかるように寝返りを打ち ）


悪い、うっかり寝落ちちゃったんでもうちょっとだけ、今夜一晩このまま続行でひとつ頼むよ。何ならこざっぱりとカットしてくれて良いからさ、ちゃっかり掃除サボってだらだら駄弁ってるけども。そんじゃあ問題無けりゃこっちは蹴っちゃって、今日も今日とてどうぞよろしく。

其れと此れは別でしょ…あんたの奇行の数々を認めてる今、その指摘するって其れこそ馬鹿だろう。……、口が滑らないから何とも言えないね。後、暑いんじゃないの (　己の真似た戯れへの反論も早々に首振って口付ける相手を見、甘やかな悦びに薄く笑うとリップ音立て触れた唇に唇を合わせ。喉鳴らす音に答えが出た事を察すれば寝返り打ち、再び此方に寄る相手に目は遣らないまでも片手伸ばし。指に髪を絡ませながら回避し態とらしく繰返して　)

…いつの間にやら良い感じに染まってない？嬉しいなあ春彦さん。…ただの思い出話よ、思い出話。あの極寒の日々が懐かしいわ…今やイチャつくたんびに汗だの熱中症だの気になる季節だもんなあ。（ 薄く笑んだ唇が再び重なれば僅かに口を開いて甘く食み、その柔らかさを堪能してからようやく悪戯に冷やかして。髪を梳く手に接近阻まれ、仕方なくその場で頬杖をつきながら小狡く口角吊り上げて。紫煙混じりに遠回しな肯定添えると"水風呂でも入る？"と煙草の先で浴室の方を指し ）

…そうだよ、だから人の事をこんなに変えさせた責任は取って貰う訳…。＿…あぁそう、その問題は今の所あんただけだけどね。僕は漸く過ごしやすくなって安心してる（　唇を甘く食まれる儘頬に手を添え、煙草の香を味わう様に此方も食んで応えると悪戯な冷かしに扇情滲む瞳を向けて囁めき。相手の返しに思わず僅に眉寄らせ、素っ気無く流しては髪を弄る手を離し。言葉を続けつつ熱のない掌で温い頬を挟むと提案には僕は結構、とばかりに緩く首を振って　）

そりゃそうだ…変えるどころか傷までつけといて放っとけるほど、無責任でもクールでも無えよ、残念ながら。──あー、だから汗一つかいてない訳ね。助かるわ、今年の夏は冷えピタ要らずで。（ 艶めかしい囁きに笑みを意地悪く歪め、濡れた唇を指で拭いながら下世話な言い回しに僅かな執着を隠し。さらりと流される話題への抗議より冷えた手の心地良さに声を上げ、その手を包んで暫し涼しさを味わって。己の熱が相手の掌に移った頃にようやく満足し、ゆったり起き上がると煙草を揉み消してから窓を閉めに行き。シャツの襟を顎元まで摘み上げつつ呟いては相手の前を通り過ぎ、後ろ手を振って浴室へ消え ）…まあ、そういう話なら余計気ぃ遣わないと。っつー事で芳樹くんが入んないなら俺が水浴びしてくるわ、君はベッド冷やしといて。みっちり手伝ってくれたお陰で安眠出来るレベルにゃなってるし、…多分。そんじゃ返事は要らねえからゆっくり寝てちょうだい。本当、毎度毎度朝っぱらまでありがとね──お礼はまた今度、時間ある日にたっぷり弾んどくよ。

（ 不要な家具を知人へと譲り渡した帰り道、コンビニの駐車場にてアイスコーヒー片手に携帯開き『本日もクソ暑い中お疲れ様。こんだけ暑いと仕事にならないし、一足先に君んちで涼ませてもらいます。じゃ、道中くれぐれも気をつけて』ちゃっかりピースサイン付きのメール送ればひとつ伸びをしてから車のエンジンをかけ ）


…この頃謝りっぱなしなのが何より面目無いけども、今週一杯仕事カツカツで早寝必須になっちゃってね、急な話で申し訳無い。で、カツカツだろうが芳樹くんとは一分一秒でも長く話してたいんで、短めでサクサク回すかいつもみたく持ち越しにするか、そこらへんお好みで良い感じにやってもらってもいいかな。いきなりな我が儘だけどよろしく頼むよ、っつー事でこっちはスルーしてくれてOK。

(　会議で時間が押し、深夜帯に会社を出ては既に届いてる絵文字付きのメールを読み『其方こそお疲れ様、好きにすれば良いけど冷やし過ぎない様に』とだけ返信すれば心持ち家路を急ぎ。エレベーター内で遅くなった事に息零しつつカードキー携え、部屋に着くと静に開扉し中に入って　) ＿＿…ただいま。

別に気にしなくて良い、僕こそ折角あんたから返事貰ってんのに連日寝落ちてる事を謝らないといけない訳だし…取り敢えず了解した。ロルの件は臨機応変にするとして…話してくれるのは正直嬉しいけど只でさえ生活リズムが乱れてるんだ、其れで支障来されても困るから自分の体を優先しなよ。今日も既に日跨いでるし無理せず寝て構わない、じゃあ今度こそ蹴って。

（ すっかり我が物顔で風呂上がりの格好のままソファへ腰掛けるも、扉の開く音を聞き膝上のPC退けて立ち上がり。今更指摘通りに冷房の温度を下げて玄関へと向かい、相手の姿に緩むような安堵の笑みを浮かべて ）──おかえり。自粛明け早々残業とは容赦無いねえ、流石芳樹くんの会社。どっかでぶっ倒れてんのかと思ったわ。


ん、本当ありがとうね、色々と。お互いリズムガッタガタだからね、寝落ちしてでも寝てくれるくらいがちょうどいいからそこんとこは無問題。俺も3時回った辺りで泣く泣く布団潜るんで、芳樹くんも無理くり返事しないで休んでちょうだいよ──ってつい返事しちゃったわ、無類の寂しがり屋だから。そんじゃあ三度目の正直でスルーしてやって。

（　もう就寝していると思ってた為に現れた相手を見捉えては、嬉しい誤算に喜色が表情に滲みそうになり。咄嗟に今し方脱いだ靴を揃える事で隠すと安堵の笑みを浮かべた相手と相対し、僅に片眉上げた仏頂面を対面させ　）！……＿自粛で滞ってた分、一気に回ったからね。軟弱者でも有るまいしそんな事ある訳無いだろう。

…意外とこう、充電切れるまで頑張ってパタっといきそうなイメージがあんのよ、床とかに。だからほら、一日の終わりに急速チャージは要らんかね。（ 目が合った瞬間ほんの僅かに明らむ表情に気付けば心臓が跳ね、相手が俯く間にどうにかにやけ面を整えて。普段通りを装う姿に笑いと愛おしさを堪えて語るも、我慢出来なくなればゆるりと両腕広げ ）

…まァ…例えそうだとしても家以外じゃ先ず無いだろうし。斯うして帰って来たんだから良いでしょ…＿要るけどやるならベッドでね、何か家の中寒いし。（　当らずとも遠からぬ予想立てと、仄かに愉快さが窺える笑顔に見透かされた心地がし。防衛から眉根の皺を一層深めつつ言葉を濁し、情動堪えては拡がる両手首を掴んで束ね、半ば連行する様に寝室へ向かって　）

…ギリギリまで付き合わせて御免、でも待っててくれて有難う…お休み春彦さん、今週大変だろうからぐれぐれも体調には気を付けてよ。 (　ベッドに着くなり共だって寝そべると抱き合い。湯上がりらしい肌の匂いと温かな熱に包まれる充足感で満たされ、暫時味わった末に寝息が聞こえて来ればそっと顔を上げて寝顔を眺めて。上記控えた声量で呟き前髪を梳き流して額に口付けを落とすも其れだけでは足りず、耳裏に以前もしたハート型の朱痕施し。漸く満足気な其の顔を離し物音立てぬ様ベッドを下りると、細心の注意を払いつつシャワーを浴びに寝室を出てって　)

（ 仕事に一区切りつき、相手からのメールの有無を確かめると文字を打つ時間も惜しんでそのままマンションへと向かい。昨夜の不完全燃焼な記憶が歩を速めれば玄関開け、馬鹿でかい独り言と共に靴を脱ぎ ）…はー、駄目、俺の充電が残り2パー。可愛い子ちゃんのチューが無けりゃもうテコでも1歩も動けねえわ。

(　残業も含め漸く業務終わると、昨夜同様に手早く一応端的なメールを送ってから帰路に着いて。相手も今頃帰宅した事など露知らず自宅に到着すれば、扉を開けた所で丁度家内へと踏み入る其の背中を発見し。後ろ手で閉扉しつつ仄かに双眸緩めては声掛け　) ん…。…お帰り、あんたも今帰って来たのか。

うわビビった、…ただいまアンドおかえり、芳樹くん。聞いてた？今の。（ 不意に扉が開けば片足浮かせたまま振り返り、柔らかな眼差しを丸めた瞳で見つめながら頷いて。廊下へ足を乗せる傍ら普段の声調を取り戻し、相手と対面する形で軽く小首を傾げて尋ね ）