《ヒプマイ》せんせえ、お呼び出し！《オオサカ》

　

あほぉ、そんなお高いもんは求めてへん。もっとカジュアルなもんが欲しいねん（明るい声が鼓膜を打って、けれどその内容に苦笑が浮かぶ。オーダーメイドてどれくらいするんやろ、薄給の教師には聞くのさえ怖い。彼が自然と隣に収まればゆったりと近隣の商業施設の衣類売場へと足を向けつつ 柔らかな声にぴくりと反応して。そわり、落ち着きなく目を泳がせたならほんの微かに頬上気させ）そんな染み染み言われると恥ずかしいねんけど。…当たり前のこと、しただけやし。礼を言われるほどのことやあらへん（口内でもごもごと言葉を返せばそんな気恥ずかしさ誤魔化すように顔へ力入れて顰め面…、）

　

あっはは！そういうとこ…ほんま好きやで。ありがとお（若い頃はキッと尖っていた彼、今でこそ その凛々しさは残すものの己に負けず劣らず眉の表情が豊かになった気がする。一緒に居ると似てくるってこういう事なんかな。白黒ならぬ、頬が白赤するのも可愛らしいし、それを誤魔化す顰めっ面も不器用で愛おしい。伝えねばならぬことはしっかりと直球で言葉にしなければならないのだと、俺も歳をとって学んだ。話は逸らさずまろい声でそっと告げる感謝は愛情に包んで贈って。後は空気を変える様にパンッと手を叩いては明るく声上げて、）カジュアルなぁ、よっしゃ任せーい！うちの盧笙は土台がええから何でも似合うし、選ぶんも楽しみや！（うりうりと右隣の彼を肘で突きながら歩み進めて、）この感じやと、もう夏物も置いてんのやろなぁ…俺もええのあったら買お。

　

…簓のアホ（柔らかく真っ直ぐ届けられる愛情が照れ臭くて安易な憎まれ口しか叩けず、それでも己が彼を憎からず思っているということは傍から離れない自身の態度と顰めた顔の緩みでわかってくれている筈。――鳴らされる手にパッと雰囲気変われば表情もまた晴れやかに。小突いてくる肘を軽く遇いながら戯れるように肩同士ぶつけ返してみたり、）せやなぁ、暑なるんもどうせ直ぐやろ。夏物中心で見ていこか（ぽやり考えてはのんびり言葉零しつつ、ふと動かした視線の先に施設案内板を見つけたなら手早く目を通して）…っと、メンズ服はこの階の上やな。エスカレーター乗ろ（ちょん、と手を繋ぐ代わりに彼の服の裾掴んでは緩く誘導する様に引っ張り、）

　

（憎まれ口を受け止めて悪戯っぽく笑う。楽しげに密やかな戯れ合いを交わしながら歩けば、デートっぽいなぁ、いやデートやけど、なんてどうしてもほわり嬉しさが脳内を支配する。マスクの下はゆるゆると幸せに緩みがちだ、）ほいほいーっ（軽い返事をして彼に誘導されるままエスカレーターへ。彼へ先を譲り、ちらり乗りすがら案内板へ目を通してあっ靴下見たいな なんてふと思いつつ彼の背を見詰めた。俺より少し高い背が、更に高くなって男として何だか憎らしくもあるのだけれど その大きな背中から滲む安心感にほっと小さく息を吐いた。そしてさっきのお返しに、何とはなく彼のカーディガンをそっと摘んで引きながら階に着くのを待って…、）

　

（エスカレーターへ乗るなり自然と右側に立ち、ゆったりと目的の階を見上げる。…と、不意に服が突っ張る感覚。そっと後ろ手に犯人の手を掴んでやる。何食わぬ顔で きゅ、と優しく包む様に触れたまま辿り着いた階でエレベーターから降りれば、再び緩やかに手を解いて彼の右隣を陣取り。一先ず色々見回ってみようと様々なブランド店立ち並ぶ通路を歩き出し、）……外出着は勿論欲しいけど、後で部屋着も見たいな。夏用に薄くて軽くて着心地ええやつ（とは言えいつもの様に引っ付いて眠るならそれもどうせ暑過ぎて脱ぎそうだけれど。一応、念の為。ふわふわ頻りに視線を動かして最近の流行りをチェックしながら、目星を付けていた店までの道を進み ）

　

（密やかに交わす触れ合いにキュンと胸が高鳴る。優しく握り込まれた手が解かれた後も自然に隣に、定位置に立ってくれる彼が嬉しくて胸の高鳴りは小さな甘い痛みに変わった。何ぼ一緒に居っても初恋気分やなんて、どうなんやろ…と心の中で呆れ気味にふはり笑って。彼と居ると些細な事にも一々幸せを感じてしまう。俺も可愛らしいもんやで――）あっ、ええな。俺の常夏Tシャツもヨレヨレやねん。俺らいっつも部屋着 適当なん着とるやろ？一個くらい上下セットのやつとかあってもええよなぁ（過ぎ行く店を眺めながらふと、未だに高校のジャージを引っ張り出している事を思い出して彼に歩み合わせつつふふっと笑み混じりに提案、）ま、普段シャキッとしとる分 古着とか緩いの着てる盧笙結構好きやけどなぁ（くふ、）

　

上下セットは確かにあった方がええなぁ。部屋着や思て適当に着るから組み合わせとかぐちゃぐちゃで、そんな格好やと近所のコンビニもよう行かれへんもんな（彼の提案に首肯して見せれば頭の中の買い物リストに追加。こうやって考えてみると存外欲しいものは多いのかもしれない。一人暮らしなら多少の不足程度何も気負わずに居られたものの、彼と暮らすとなれば身の回りの物はきっちり揃えてやらねばと思うのだ。芸人なんて職業は規則正しい生活とは言えない。だからその不規則さをせめて自宅ではリセットさせてやりたいと思う。決まった時間に寝て起きて、朝昼夕の食事はきちんと摂って。準備万全な状態で活躍する彼を見たくて――）いやだって、家ん中でまで堅苦しくしてられるかっちゅーねん（好きという言葉が耳に入れば何だか気恥ずかしくてむっと唇僅かに突き出し小さく返答。そうこうしているうちに自身のお目当ての店に到着。揺らり視線動かしのんびり物色し始めて、）

　

せやろ？やから、俺は何着とってもコンビニ行けるで！別に高校のジャージでもヨレヨレTシャツでも仲良う手繋いでいけるし、おつかいだって熟したるし（でもそれ盧笙がさせへんもんなぁ、と横から緩り首を傾げて柔く問い掛けながらくすくすと楽しげに笑う。人前に出る仕事をする以上身なりにも気を付けるし、世間体だって一応大事にはしている。が、彼はそれ以上に、自分の事の様に過保護にすらなってくれるのだ。「マスクせぇ」「ちゃんと帽子被れ」「あんまりデカい声出すな」とか、此処へ来るまでの電車内だってそうだった。正義感があって、自分の決めた事を真っ直ぐに信じていて、そして優しい彼が大好きだし、俺ん中の太陽はいつだってお前や！――と思うのだ。そんな彼の後を離れず着いて行きながらも自身もキョロキョロと視線巡らせ物色。時折立ち止まり商品にそっと触れて、じっくり観察して品定めしながら久々のゆったりしたショッピングに心躍らせ、）

　

（彼が同じ様に服見始めたならそっと話を切り上げあれやこれやと気に入るものをゆったりとした足取りで探り回る。様々な服に囲まれたカラフルな店内。明るい色や特に紫を見れば簓にどうやろ、なんて自然と考えてしまうのは当然とも言えた。俺が選んだものに囲まれて四六時中 俺のことが頭から離れんかったらええねん。ふふ、と密かに笑いを零す。既に俺好みな彼をもっと俺色に染めたい、そんな独占欲と所有欲。匂わせなんて小賢しい真似をするつもりは無かったけれど、周りにそう取られるのならそれはそれで彼を誘惑する人たちを遠ざける目的は果たせるし一石二鳥。……よし、簓の服選んだろ。布地を優しく撫でて着心地確認しつつ、自分の服選ぶ振りしながら彼をちらり見遣りサイズ確認…、）簓ぁ、何かええ感じのあるか？

　

（自然と目に入るのは馴染みのある紫のものばかりだった。Tシャツ、パーカー、帽子…何処を見ても何だか紫色に惹かれてしまって、そして彼の顔がほわり浮かぶ。キリッと鋭くも見える切れ長の瞳、その夕焼けがとろり緩まる瞬間が大好きで、そこから連想するのは矢張りチームカラー。怪しさこそあるが気の置けない頼もしい仲間、そして頼れる相方が居て、守るべき己の居場所。オレンジに惹かれるのは半ば願掛けの様なもので、）ん、見て見て盧笙ー！コレめっさええ感じやん？（濃い紫の布地にオレンジ色の小さなワンポイントのブランドロゴが入った薄手のトレーナー。今時風のシンプルでいて洒落たデザイン。彼の服を見に来たというのに、手に取ったそれは自分の身体に当てがいながら‘似合う？’なんて問い掛けて。サイズ別もTシャツタイプもあるから、彼が気に入ってくれたなら俺よりもきっと似合う筈と思考しつつ）盧笙もカッチリした服多いやろ？こう言うカジュアルなもん増やしてもええんちゃう？（ふへ、）

　

ん？――ええなぁ、洒落とるし…布の質感も気持ち良さそうや（彼が自身の身体に宛てがう様を眺めながら吟味、手を伸ばして布地に指先滑らせたなら着心地もきちんと確認。紫も彼の髪色が映えるような濃さで主張はし過ぎず、けれど存在感が薄いわけでもない丁度良さ。オレンジのワンポイントもええアクセントでより締まって見える。好きな色達に包まれる彼を見てふわり微笑み零せば「ん、似合っとる」と柔らかな声色で答えて）……まあ、学校ではあかんけど外出着としてならええ、かな（外で生徒に見られても恥ずかしくなければ大体の服は許容範囲。それにこれからのラップバトルでも矢張り広報は大事で、普段から身嗜みに気を付けなければと思っていたところ。教師としての服装とのギャップを見せつけることでファンを増やすことも出来るのでは、なんてひそり考え。近くのTシャツタイプ手に取れば緩く自身にも宛てがい、）…こういうカジュアルなん着るん久し振りやさかい、ちょお恥ずかしいな（くふ、）

　

（色や見た目だけでなく質感までしっかりと確認するところがマメで、その真面目なところが盧笙らしくって何だか可愛らしい、）俺もスーツにはこだわりあるしな。お前のシャツ姿好きやけど、まだ若いんやしこういう年相応なんも…ええなぁ、唆るわぁ…。あっ、でもサイズは一個上がええかな（己に宛てがっていた服を今度は彼へ。肩から腕の先、そして少し顎を引いて全体図を確認。うん、顔がええ。――じゃない、ちゃうちゃう、よう似合う！宛てがいつつそのまま彼に押し付けてしまえば己は何処から探し当てたのか、一言で可愛いとは言い難い 絶妙なデザインの緩いクラゲのような謎のキャラクターのキーホルダーちょん、と彼の手に乗せて）今ならコレも付いてきますぅ！コイツは買いや。二個買ったろ、お揃いにしようや（黄緑色のマスコットをもう一つ、全部で二つ彼の手の上に。初っ端から目的にない余計なものをこうして選んでしまうのは悪戯心か、性格か。ひひひ、と小さく笑ってマスクとキャップの隙間から覗く眦緩ませて、）

　

唆るて何言うてん、…あほ（年相応、と言われればそんなものかと頷くしかない。と言うのも平日は自身から十歳程下の子ども達や五歳から三十歳程上の他の先生方ばかりに囲まれているため、何時しか自身の年齢感覚がよくわからなくなってくるのだ。同じ年頃で絡むのは簓か、たまぁに養成所時代からの知り合いくらいだろうか。うんうん考えつつ押し付けられたトレーナーをきちんと預かり、ふと手に乗せられた物体を何気無しに見て――）あ？……なんや、コレ…クラゲ…？（キーホルダーにしてはちょっとだけ大きめ。しかも何やふにふにしとる。ほんまになにコレ…。眉根に皺寄せた微妙な表情でそのキャラクターをじっと見詰めながら、それでもお揃いならまあええかと思ってしまうのは偏に恋人が選んだものだからだ。付けるにしてもどこへつけたろ、と頭悩ませながら笑み浮かべる彼を呆れ顔で見遣り）ハイハイお買い上げな。ほんましょーもないもん選んできよるな、お前は。

　

クラゲ？宇宙人？知らんけど、なんや緩こくて可愛いやん？（彼に‘しょーもない’と称されたふにふにのシリコン製で作られたクラゲ(？)をそっと摘んで彼の掌の上でひっくり返す。どうやら正面が下になっていたらしく、線で描かれたふんにゃりとした笑顔の表情が見えた。緩い山形の目と、口角を上げるべく波打つ様に描かれた口が何とも言えぬ緩い雰囲気を醸し出している。あ、ちょっと俺っぽい？いや俺の方がカッコいいけどな。ノリで持って来た物ではあったが、きっと彼はこの‘しょーもなクラゲくん’も大事にしてくれるのだろう。彼に見せる様に摘み上げて、ストラップ部分を自身の指に引っ掛ければ二つ譲り受けて己がレジまで連れて行くことを示唆。彼に押し付けた服については陳列棚へ視線をやりつつ、向かい合っていた彼の横にぴとり移動して）なぁ、それTシャツバージョンとかもあるで？…ってか、色に惹かれて取ってもうただけやねん、…他も見るやろ？（衣類についてはいくら似合っていても趣味でないものを押し付ける気はサラサラない。照れ臭そうに理由告げつつ、ちらり）

　

可愛い、か…？　だいぶアホっぽい顔しとるやん（向きが変えられ漸く覗いた顔。彼の批評聞きつつわからないとばかりに首傾げてはチクリ刺すような言葉をさらりと述べた。アホっぽくて見ると気が抜けるあたり簓みたいやな、という言葉は敢えて控えておくことにした。再び彼の手元へ戻っていくクラゲを存外優しげな目線で見送ったなら、隣へ移動してきた彼の方を同じ様にちらりと見て）…いや、お前この服気に入ったんやろ？要らんもん一々見るけど決めるんは結構早いやん。他のも見るけど取り敢えずこれも買お。俺の分はそのTシャツバージョンにするから（きっぱりと購入宣言したなら陳列棚からTシャツタイプをサイズ確認して手に取り、先程彼に押し付けられたトレーナーと共に腕の中へ。あと欲しいものは…と辺りに視線動かしては緩やかにまた歩き出しとある陳列棚にて足を止め、）サマーニットか、……欲しいな。

　

あっ、んー…待って！俺もTシャツにする！（彼がTシャツ選んだ後暫くその姿見詰め考えあぐねていたものの、意を決し彼の腕からトレーナー受け取れば丁寧に畳み直し陳列棚へ。Tシャツタイプの同じサイズを手に取れば彼の後着いて軽く駆け足。ちゃっかり彼と同じTシャツを買う事にして、お揃いをゲットした、）そうそう俺は即決タイプやねん！決めた事は曲げへんっ、それが俺のモットーや！ほな、もっとー買い物しよかーっ（はしゃぎ過ぎて人の目を集めぬように、彼に届く程の朗らかな声でマスクの中、上機嫌で洒落を飛ばす。生まれてこの方デートの経験がない訳ではないが、十代の終わりからお笑いに打ち込んできた所為で純粋な恋愛の楽しさとかそう言うのは暫く無縁だった。――今、めっちゃ楽しい！！溢れる愛情と楽しい気待ちを抱え切れず、ぽぽぽっと周りに振り撒きながら彼の視線に割り込んで覗き込み、）…あぁ、サマーニット？やっぱニットは外せへんの？（かちゃ、と無い眼鏡を整えるフリして）

　

もっとー、なぁ。…今日ぐらいおもろない駄洒落は止めてくれますぅ？（彼の楽しげな様子は見ているともうそれだけで此方も楽しくなってくる。落ち着きや、と彼の頭をぽふりキャップ上から撫でたなら その手は彼が手に持つTシャツをさらりと奪い取った。まるで荷物持ちは俺の役目や、とでも言いたげに。――視界に入り込んできた彼を再び見遣っては彼のジェスチャー見てくふり笑い、此方も今は無い眼鏡フレーム押し上げる振りをしながら片眉上げ）いや、言うていつものベストとはまたちゃうやん。この七分袖の、ええなぁ思て……（マネキンが着る青みの強いエメラルドグリーンの七分袖サマーニット指差したなら、それこそ色に惹かれたのが丸わかりな気がして一瞬気恥ずかしげにそわり揺らす瞳。語尾は最後もにょりとまごつく様に姿を消し…、）

　

おもろ、なく、………ないやろって…（キャップの上からぽふん、と乗った重みが嬉しくて顔綻ばせながら反論しようとした刹那、腕の中のTシャツが奪い去られる。取り上げられたのではない、購入する事を却下されたわけでも無い。荷物持ちを買って出てくれたのだと悟った瞬間きゅうぅ、と甘く痛む胸。反論すべく飛び出た言葉は力を失って消えて行った。カッコええ、そんなん狡い、ただのスパダリやんけ…。うぐぐと悔しげに密かに頬染めつつ、彼が示すサマーニットを見上げた。爽やかなエメラルドグリーンが夏っぽくて良い。マネキンが着ているものは良く見えるものだが、彼の容姿を以ってすればマネキンよりもさらりと着こなして見せるだろう。頭の中で彼に服を着せたところで微かな既視感に気付く。緑？似合うやん？緑のブランケットも持ってたし…、あっ待てよ 緑のブランケットってそもそも…、）ええやん…！もお盧笙俺のこと好き過ぎちゃう？俺色ーっ！…て、なははっ…なんちゃって…（ぺし、と彼の肩を叩いてはキャップからはみ出る髪の毛摘んできゃるん、と首傾げて戯け彼に見せるも、揺れる瞳に気付き即座に察し。ふわふわと此方も語尾漂わせつつ、たはは…とから笑い。その頬はほんのり赤らんで、）

　

っ――…おま、…お前に言われたないわッ、盛大なブーメランやぞ！（彼の柔く色付く頬とは違いぶわっと勢い良く火を吹く様に紅潮する頬から首元。ようわからんグラデーションした緑髪が好き、だなんてことが露呈してしまった瞬間である。ギャンッと噛み付きながら、せやけどしゃあないやん 緑が傍にあると落ち着くんやもん。なんて稚い語調で内心言い訳をして彼の発言責めるように、若干泣きそうな顔をして見詰めてみる。）……緑、合わん？　違うのにしよか（先程とは打って変わった小さな声で言い終わると同時に羞恥から逃げる如く眼差しは再びマネキンを羨ましげに眺め――それから下を向いてハンガーで吊るされた別の色へと手を伸ばし。淡いペールトーンの紫色をそっと撫で）

　

おっ俺はええの！ブーメラン怖くてお前に毎日好き好きビーム送れるかっちゅーねん…！（真っ赤に茹だる彼の可愛らしさと言ったら。ギュウウ、とマスクの下の顔を歪めて込み上げる愛おしさに悶絶。彼の表情の変化と一連の挙動眺めていれば、そっと身を引いて別の服へ手を伸ばし撫でるではないか。あわわ、と眉吊り上げればその手をがっしり握って包み込み、）あ、アホ！浮気は許さへんでっ…似合わへんなんて一ッ言も言うてへんやろがい！お前には緑がよう似合う、緑の相方勤まんのはお前だけや！（彼の手握り込んだまま、後半やや主旨のズレた内容を力説しながらふんっと鼻を鳴らし。パッと彼から離れくるり、振り返っては近くを通りかかった店員に向かって‘すんませんっ！コレとおんなじの、一個上のサイズで一つ！あとこのクラゲくん、レジに置いといて貰えます？もうちょい回ってから会計行きますわ’と、ひらり大きく掌を振って和かに話しかけ。ぺこり、丁寧にお辞儀を一つすればエメラルドグリーンのサマーニットとクラゲ二匹については、俺が買う！と意思表示。ドヤァと目元だけで満足げに笑み湛え再び彼の横へ、）…あのニットは俺から贈りもんになりました！…アレな、盧笙やったら絶対似合うねん。いや、盧笙しか似合わへん！…帰ったら着て見せてくれる？（ふふ、）

　

緑の相方て何やねんアホ――…って待て待て待ってください！あ、あぁぁ…（店員の手に渡るクラゲ(？)二匹と取り置き頼まれた件のサマーニットに今度は此方が慌てた様子を見せるも、微笑ましいものを見たとばかりに店員はにこり笑ってすげなく去っていく。ぐるっと首動かし再び彼へと視線を向けたなら今度は満足気な笑顔が目に入った。…何やねん、ほんま！赤くなった顔は困った様に歪み、じとりと不満げに――けれども何処か嬉しさ隠せぬ眼差しで彼を睨め付けて）……わかった。けどこのTシャツは俺が買うで。ほんでお前にもコレ着せる、腹立つからお揃いにしたろ（‘コレ’と指したのは先程触れた薄紫のサマーニット。マネキンが着ているものと同種の色違い。顰め面で ふふん、と得意気に鼻鳴らせばサイズ確認して手元へ取り置き。つん、と素っ気無く顔逸らせばそろそろ次の店へ行こうかとゆったりレジへ足を向け）

　

へっ、コレ紫もあんの？……いや俺の分のTシャツくらい俺が…うわ、え、ちょっ待ってぇや！（エメラルドグリーンも爽やかで良いけれど、紫も涼しげで格好良い。でも着るのは盧笙でなく俺だと言う。思い掛けずお揃いのアイテムが二つも手に入ってしまいそうだ。そっと手を伸ばしマネキンが着用するそれに触れてみた。さらりと軽くて着心地も良さそう。たまにエメラルドグリーンも借りる事にしよう。密かにそんな事を企てながら、ふふんと鼻を鳴らして行ってしまう彼の後ろを再び駆け足で着いて行く。人目を盗んで再び彼のカーディガンをくい、と引いて彼の注意も引く。嬉しくてゆるゆると口元が緩んでしょうがない。彼が耳を傾けてくれる様にそっと小声でその背中に声を掛けて、）…なぁ、ろしょ。その紫の、俺似合うかなぁ…？

　

（彼の制止も聞かぬ振り。ゆったりとはいえズンズン大きい歩幅で歩き出せばレジなんて直ぐそこ。なのに後ろからカーディガン引かれれば注意は自ずとそちらへ向けられて歩幅も少し小さくなった。そうして投げ掛けられた問いにはたった一言、振り向きもせずにさらりと答えを返す。）お前に似合わんモンを俺が選ぶと思うか？（口元に笑みが浮かんでいることなんてきっと後ろを歩く彼は知らないだろう。視線の先、真向かいに立ちレジで待ち侘びる店員は何も知らずに笑みを返してくる。残り数メートルの距離を彼引き連れて歩けば、先ずは己が手に持つ分の衣服を店員に手渡した。スキャナーでバーコード読み込まれるのをのんびり待ちながらメッセンジャーバッグから財布を取り出せば 告げられた金額分をきっちり丁度で支払う。丁寧に折り畳まれた衣類はブランド名が明記された袋の中へ入れられて手渡され、後は彼が購入し終わるのを待つのみ。レジ前からそっと退けば入れ替わる様に彼をレジ前へ促し、）

　

（自信に満ち溢れた返答がまた心を甘く揺らす。ふへ、と幸せの笑みが思わず零れ買い物だってまだ済んでいないのに、もうすっかり満たされた気分。レジに到着すれば引いたカーディガンを離し、不自然でない様に一歩距離を取って彼の背中をぼんやり見詰めた。彼が商品の入った袋を受け取れば己もウエストポーチから小さな三つ折りの小銭入れ兼カード入れを取り出す。マスクをしているからこそ愛想無く、感じ悪くならない様に和かに対応してしまうのは最早癖か。取り置きをしてもらった旨を伝え店員が僅かにレジを離れると、隣の空きレジに立っていた若い女性店員ともう一人の店員が何やらひそひそ声を潜めながら少し離れたところに立つ盧笙へ視線を向ける。せやろ？俺の盧笙、カッコええやろ…！心の中でふふん、と得意げになりながらテキパキとレジを熟す店員に明るく‘あ、カードいけます？’と声を掛け。ピピッと機械音がなったらスムーズに会計を済ませて、‘おおきに！’と明るく挨拶を残して彼の元へ、）盧笙っ、ほい！これ（さっそくレジでタグを取ってもらったクラゲ(？)を１匹からに手渡し、もう１匹はウエストポーチに括り付けながら）これ暗いとこで光るらしいで！…次どこ行く？部屋着見るか？食器行く？

　

（店員から向けられる視線に気付き向ける目線、ぱちりと目が合えば動揺した様子を見せてくるから緩く小首を傾げつつも眉下がりな微笑みで会釈。…何やろ、俺の格好変やないよな。なんて気にしてしまうのは彼女らがアパレル店員だからだ。そわり落ち着き無く気恥ずかしそうに身動いでいれば恋人の明るい声が聞こえ、はたと意識はそちらへ向き――）…っえ、今付けるん…？　あ、りがとお…、光るんかお前…（手渡されたクラゲ(？)さんをさて何処に付けてやろうか。考えながらも彼の方を見れば倣う様にメッセンジャーバッグへと括り付け、ゆらり揺れるのをきちんと確認してから続く問いにふむ…と考える。ゆったりとした足取りで一先ずその店から出たならきょろり通路を一瞥、適当にアタリをつけてその方向指差しつつ）あっち向かおか、部屋着見よ。

　

ふは！おもろ！ええやん、盧笙の隙のない男前コーデの唯一の抜け感や。ええ仕事しよるなぁお前ー（お互いのクラゲ(？)が鞄に付いた事にふわり嬉しさで頬緩ませながらも吹き出しては、彼の黒いメッセンジャーバッグで存在感を放ちながら揺れるそれを執拗に指先で突いていじった。シュッとした男前がこの緩いのを付けているアンバランス感というか、そんな緩さが己のツボにハマる。これは学校に持って行かへんよな…？‘せんせー可愛いわぁ！こんなんどこで見つけてん？’なんて、きゃいきゃいと囲まれる相方を想像しておもろさ半分、愛しさ半分。そこへちょっとの妬きもち。でも今はそれを覆う大きな嬉しさに心躍らせながら足を踏み出して、）おう！行こか。部屋着なぁ、…盧笙のよう着てたあのスケスケのやつ…お気に入りの真っ赤のランジェリー。肩紐切れ掛かっとったもんな（大事そうに抱えていた紙袋を左手に。彼の左隣歩きながらぼそり、言葉遊び。彼にボ.ケを投げてみて…／）

　

あほぉ。俺の子に話しかけんな、変に弄うな。突くんやったら自分の子にせぇ（ふん、と僅かに鼻息荒く抗議の言葉を紡ぐ。その内容と声音にはもう既に愛着が湧いているらしいことがわかるだろう。クラゲ(？)さんを優しく握り揺れを止めては彼咎める様にむすりとした表情を向け、そうしてふいと澄まし顔で部屋着購入へ向けて歩き出した。…多分これから何処へ行くにもこのキーホルダーは手放せないと思う。否、きっと手放さない。御守り代わりにずっと持ち歩いてしまう。こんなものを付けるなんて柄じゃないとは思いながら、それでも愛しいと思ってしまったから。――じわりと笑みを湛えた口元。誤魔化す様に開こうとした口はしかし、続く彼のボ.ケ拾って火が着いた様に勢い良く回り出した。但し恥ずかしいので声は小さめ…／）そうやねん。ひらひらした上品なレースとリボンも付いてて折角一目惚れして買うたのにお前が…いっつも、強引に脱がすから……（泣きそうな顔でまさかの悪ノリ。不満気にじと…／）

　

いやそれ俺の子でもあるんですけどぉ。いや、元はと言えば俺の子やん？（ぺし、と右手の甲を彼の左肩にぶつけて抗議しつつも、‘可愛いか…？’と首を捻っていた彼が優しい手付きでクラゲ(？)を可愛がる姿が愛おしくてしょうがない。対象が何であれ、例え無機物でも感情豊かに接してしまうのは関西人の性だがしっかりと優しさを注いで慈しむその真っ直ぐさ、昔っからこういう奴やったなぁ…と心の中でぽそり。ふにゃりマスクの下で口元緩めつつ、次いで返ってきた悪ノリに思わず芸人のスイッチが入る、）この前、お尻んとこのレースも破いてしもたしなぁ…堪忍やで（吹き出して笑い出してしまいたいのはグッと抑え、彼の不満気な視線に少し慌てた様に、そして同じく恥ずかしげに肩竦めあわあわと…、／）や！ちょお…！こんなとこでソレ言わんといてや…。しゃあないやろ、言うなればあのランジェリーは…鰹節や！お前というたこ焼きを引き立てるスパイス！ガッついてしまうのはもう本能やん。不可抗力ってモンやで…、新しいの買うたるから、なっ？機嫌直してや（しょも、と眉下げて申し訳なさそうに彼を見上げてみる。その様子はあたかも本当に彼がランジェリーを愛用しているかの様な口振りで、駄目押しに両手を合わせごめんのポーズを、／）

　

そんなん言うなら鰹節も吹き飛ばさんと大事にしたってや…っ、たこ焼きはソースでお化粧して青のりで香り付けして、最後は鰹節を纏って出来上がりなんやで…！　お前は荒いし適当過ぎるから、いつも優しくして言うとるのに……っ（くしゃりと歪めた顔ですんすん鼻鳴らし、如何にもな泣く寸前といった様相演出。然し勿論声が大きくならぬ様にと調節を忘れず、その泣くフリも精々態とだとわかる程度に控えておく。新しいのを買ってくれるという彼をじっと悲しげに見詰めたなら軈て――…スン、と真顔に切り替わる。流石にこのノリを公共の場で続けるのは羞恥心が煽られ憚られたのだ。ツッコミ入れる前に強制終了をその表情でお知らせしたなら、声色も普段のそれにしれっと戻して／）そう言えばお前ずっと前に俺のお気に入りのパンツ履いたやろ？　だから新しいの買うてや。俺もええ感じの選んだるから（良い事を閃いた！とばかりに打って変わって晴々とした笑顔を見せれば、早速きょろりと視線を巡らせる。下着店は直ぐ視界に入った。向かう先は一直線、目的を定めた男の足は速い。が、その速度を気にしなくていいのは彼が相手だからだ。ちゃんと着いてきてくれることはわかっているし、簓が俺から目を離すことは無いと知っている。安心してズンズン歩みを進めたなら店の中へ…）

　

（くしゃり顔を歪める彼の肩に空いた腕を回してさすさすと摩るその姿は、デート中何らかのアクシデントでぐずる彼女のご機嫌取りをする腰の低い彼氏宛ら。マスクをして糸のような目元だけを覗かせた顔だと言うのに、百面相の如く、彼の紡ぐ言葉を聴きながらあわあわと焦ってみたり、照れり頬を赤らめてみたり。‘ちょちょお…！それは言わない約束やん…’とか‘しゃあないやん優しく出来ひんくらい…むっふふ…’とか相槌を入れつつも――終了の合図を察知すれば即座に彼に合わせ真顔へ。が、彼の提案にハァ！？と声上げればパタパタと駆け寄り彼との距離埋めつつ…、／）何でやねん！俺が履いてプレミア付きになったのに何で新しいのを求めんねん！アレ履けや 破れるまでッ！（彼に追い付いては、優しく追突。そのまま流れるように彼のカーディガンをキュッと掴んで今日一番、強く引いて擦り寄せる半身。でも確かに、お互いに下着を選び合うのはアリやな。するりと視線は商品棚へ滑らせ、）ほな聞かしてみぃや、どんなんがええのん…？はへぇー…今は男もんのTバックとかあんねや…（ほー、）

　

いやそれ誰にも自慢出来ひんプレミアやな。…ちゅうかお前が関わることでプレミア付くんやったら勝手に着られた俺の部屋着もプレミアもんやん…（傍から見れば戯れているだけの様な触れ合い、それでも外で距離が近くなると妙な気恥ずかしさがある。ああ、俺からも触れたい。密かに燻らせた欲を瞳の奥に隠したなら彼の言葉にさらりと言葉を返しつつ、つられたように視線は商品棚の方へ――）穿き心地重視、ボクサーかトランクス。……Tバックなぁ。スキニーとかタイトなズボン履く時はええらしいけど、何や布面積無いと落ち着かんわ。下着はちゃんとケツを守ってほしい（自身の要望口に出したなら彼が眺めるそれ するり手に取って眺めつつ渋い顔。教師の仕事するのにこんなん穿いていくのは完全にアウトな気がして直ぐ様元あった場所へ直し、むむ…）そういうお前はどういうのがええんや？

　

わははッ！やめてや、盧笙がそんな紐みたいなん履いとったら笑い転げる自信しかないわ！…んー、俺もスーツ着るしな。あんまり中でゴロゴロしたら嫌やし、ぴっちりしたボクサーとかええなぁ…（確かにケツは守られたい！と付け足せばからからと楽しそうに笑って。ひひ、と笑いの余韻に浸り立つ腹さすさすと撫でながらTバックから離れ…お互いの目当て、布地が多めの商品の元へ足を向けて）ほな色とか柄は？今はパンツもファッションの一部やからなぁ…。敢えて見えてもええようなイカしたやつも多いらしいで（今は芸人も『おしゃれ芸人』だ何だと取り上げられる時代。然も、仕事柄脱いだり脱がされた時に露わになりやすいそれ。面白さを狙うのか、控えめにしておくのか悩みどころではある。未だ紐パンツを纏う相方想像してはぷくく、と肩揺らしつつ視界に入った元気なオレンジ色の下着そっと手に取って吟味して、）

　

あほぉ、笑うなや（楽しげに笑い零す彼に思わず片眉上げたなら それこそ簓が穿いとった方が笑える気がすんねやけど、なんて内心ぼやいてみる。まあ洒落た店内でキレの良いツッコミかます程空気が読めないわけではないので軽く睨むだけに留めるが…。彼の後追ったなら続く問いは真剣に考えて発言を、）無難なのって言うたら黒とかグレーやけど…まあ、仕事ん時でも履ける程度に地味っちゅうか落ち着いた感じのが助かるな。トイレ行って生徒と搗ち合った時恥ずかしなかったらそれでええ（お洒落もそりゃあ大事ではあるのだが、就いた職を考えるとあんまり派手なんはあかんよなぁ…と躊躇の気持ちが前に出る。腕組みつつぽつぽつ語ったなら視線を彼の手元へ向かわせ――途端にぎょっと口角引き攣らせて、）派手ッ…いや、確かにそれはチームの色やけども…。

　

えっ、あかん？このギラギラで盧笙のろしょくんを守ってくれる思うねんけど！学校に着て行く服結構大人しめやろ？せやったらパンツくらい、こう…バシィッ！て決めてもええんちゃう？（あ、でもなぁ……ううん…これは色が強過ぎか…パンツに履かれてまうかぁ…。ぴらり、見本品指先で摘んで彼に見せるその顔は楽しげに綻んでいて。意気揚々とお勧めしつつも、一人でごにょごにょと思い悩む。割と真剣に考えているようで、片目を閉じ(？)遠目からパンツを彼の下腹に当て嵌めて脳内試着。これはちょっとな、とそっと棚へ戻せば同じタイプの落ち着いたカラーを探しつつ――…パッと目にたまったのは。一見濃いグレーのボクサーパンツ。腰のゴム部分は黒に、緑字でスマートにブランドロゴが刻まれている。濃いグレーの布地には薄らとワントーン明るいグレーで市松模様が施されており一見地味だが洒落ている。これなら変に奇抜でもなくて良いのでは、と彼に手に取って見せつつ）これなんか洒落とるわ！なさそうでちゃんと柄ある！手触りとかも大事やろ、ほら（彼の手取ればそこへパンツそっと乗せて、）

　

いや、俺はあかんわ。見せつけるわけやないしそんな決めんでええねん（断固拒否、といった姿勢で軽く身を引けば嘆息ひとつ。話切り上げる様に視線外したなら簓にはどれが合うかと頭切り替え思考。こいつやったら多少派手でも似合うし見られる可能性も考慮して――）んぁ、もう見つけたん…？（ふと手に置かれた下着へゆったり目線落としたなら先ずはきちんと触れて確かめる。あ、確かに着心地良さそうな布地やな。納得いけば次は見た目。…緑、が先に視界に入ってじんわり温まる心。こんなところでも自分の色を選ぶだなんて、簓の！と言わんばかりの主張の強さ。恥ずかしい様な照れ臭い様なで密かに口元もごり。とまぁそこは置いておくにしても、なかなかに洒落たデザインだ。然り気無い模様も これならば、と思わせる。こくり、小さく頷いたなら口開き）なるほど、結構ええやん。落ち着いとるけど格好良いし気に入ったわ。お前真面目に考えたらええセンスしとるのになぁ…。

　

はー？俺はいつでもセンスピカイチですぅー、…因みにココんとこオレンジもあるけど、ちょおイカつない？ピンク…も、ええんちゃうか？（ドヤ、と鼻息鳴らしつつそのままパンツは彼に持たせて、ブランドロゴ文字色の色違いを候補に挙げればここ最近で最も真面目な顔を見せつつ時折顎に指を添えてふむ…と唸る。彼に色を選ばせながらもう既に違うスタイルのパンツに目を向けているところを見ると、中々に悩んでいる予想。けれどその横顔には隠し切れぬ楽しさが滲んでいて、）――んん…あかんわ。こんなんやったらちゃんとサイズ測って、ゴムんとこも柄も、ここの縫い糸の色も！全部俺が一からカスタマイズしたいわぁ…（へにょり、見えない耳を伏せながら小さくはにかんで。無意識に熱が入っていたことにふへ、と照れ臭そうに苦笑して誤魔化しつつ緩り視線は彼に戻して、）

　

あんさん、オフモードの自分のギャグ省みてからそれ言うてくれますぅ？…ったく。お前が俺に穿かせたいやつ選べばええんちゃう（色違いを見せられても己は緑を真っ先に選ぶ。が、今回は彼のセンスを見込んで全部任せてみることに決める。問いかけをさらりと流したなら彼の楽しげな様を窺い見た。緑やなくても簓が選んでくれたことに意味があるわけだし…、なんて。手に持ったままのそれを手持ち無沙汰気味に撫でつつ、軈て彼が照れ臭そうに笑うまでを愛おしそうに眺め）…ふ、ははっ、パンツのカスタマイズて何やねん。オーダーメイドで作ってくれるん？（くすり柔らかく笑いを零し眦和らげたなら彼の頭片手で撫でり、ぽんぽん…）一から十までお前のこだわり詰め込んだパンツとか、それこそプレミア付きそうやん（ふふ、）

　

ええやん？世界に一枚のパンツやで、……あ。プレミア付いとるから言うて絶対メ◯カリとかで売ったらあかんで（ギャグへの指摘については 何やと？と片眉上げたものの、にひひ 悪戯っぽく両の眉を上げて笑って見せる。会話しながらそろり視線を動かして、更に自分が抱くイメージに合うパンツ探しつつ数歩彼から離れ――そこで吸い寄せられるように目を惹く深い藤色。パッと其方へ視線を向け数秒凝視。手に取って肌触りを確かめて、サイズを確認。‘これや！’と声上げれば彼の元へ駆け寄り手渡したままのパンツを引ったくり、）コレは！買い！んで、もう一個…もう一個は帰ってからのお楽しみや、プレゼントにしたる！（急遽、彼の下着は×2になった。ま、パンツなんてなんぼあっても困らへんし！彼に贈る納得のいく品を見つけたその表情は晴れやか、）よっしゃ、先会計済ませて来よかな。盧笙ちょお、この辺見て待っといてくれるか？

　

収入を得る、いう目的ならメ◯カリさんで売るんも副業に入る可能性はあるし、そんな危ない橋はもう渡らんつもりや（ふふん、と何故か得意げな澄まし顔で言ってのけたなら彼が足運ぶ先をきょとりと眺め――けれど手際良く確認し手に取った物の正体はよく見えず、挙げ句駆け寄ってきた彼に手元のパンツ取られてはさらに唖然。思わず声を漏らしてら）えっ、あ、…ええん？二枚も（強請ったのは一個だけだというのに、なんて眉を下げてみせるも素直に有り難さも感じており。…軈てふにゃっと顔綻ばせたなら彼の言葉にこくりと静かに頷き、）わかった、ありがとお。俺もお前にええの選んだるから、楽しみにしててな（に、）

　

かまへんかまへんっ、日頃の感謝やん！盧笙のも楽しみにしとるで（自分の持ち物や衣服にも拘りを見せる方だから、誰かへ贈るプレゼントを考えると言う行為は嫌いじゃない。否、相方が相手であればプレゼントとまで行かずともコンビニでプリンを選ぶ瞬間ですら心躍ってしまう程楽しいのだ。彼がどんな顔をするか想像するだけで楽しい。軽やかに楽しそうに口を回して矢継ぎ早に言葉を紡ぎ‘あ、ゾウさんパンツはやめてな！持ってるから’と付け足せば ほな！と小さく手を振って忙しくレジへ。――レジにはさっきと打って変わって若い溌剌とした男性店員。‘あ、こっちだけプレゼント用に包装してもらえます？’と声を掛ければ元気な返事がかえってくる。紙袋に入れてもらったなら去り際に、‘おおきにー！’と挨拶がてら癖でぴょこり、キャップを上げて頭を下げた。緑の髪揺れて、店員の‘あ’という声が聞こえたが、咄嗟に相方にどつかれるのだけは避けなければとサッと身を翻してその場を離れ、）…ろしょー、どや？ええの見つかった？（ひょこり彼の肩口から手元覗き込んで、）

　

いやゾウさんパンツは恥ずかしいから要らん言うんか思たら持っとんのかい！――っ、はぁ…あいつ…（溜息は半ば吹き出すような響きで溢れ出る。ほんま、しょうもないけどおもろいな。あいつと居ったら元気になるわ。口にはしないけれど好意的にボ.ケを受け止めつつ、彼がレジへ向かった隙に早く良さそうな物を見つけねばと目線を辺りに泳がせて――）簓、は……ローライズで格好良く決めてほしいよな。脱ぐことあってもそこらのモデルに負けんくらいスラッとした脚見せつけてやったらええねん（アホみたいな格好をして‘笑われる’のは好みではない、格好良く決めて‘笑わせる’彼が見たい。そういう心持ち故に巫山戯た商品は選ばないつもりだった。あ、でも愛嬌のあるキャラクターものなら似合いそう。猫とか狐とか…。考えながらもふと視界の隅に心の琴線に触れる物を発見。一直線に其方へ足を向けてサイズ確認すれば即決定。手に取ればお次はキャラクターものが置いてある商品棚へと歩み寄り…、）…おっ、和風なの可愛いな。これ招き猫か…左手上げとるし縁起良さそ――…っわ！ちょお、吃驚したいきなり声掛けてくんなやっ（肩口から聞こえ来る声にビクゥッ盛大に肩揺らせばドッドッと速く高鳴る心臓。胸元押さえてゆっくり一息ついたなら、じとりと顔だけ彼を振り向き）…おう、見つかった。けど俺のも帰ってからのお楽しみな。

　

わははっ、堪忍！えっ、帰ってからのお楽しみ！？どんなん選んでくれたんやろ、めっちゃ気になるやん…！（帰ってからも楽しみやなんて幸せやなぁ。ぼそり、マスクの中で幸せそうに独り言をぽつり。眉下げぴしっと指先揃えて利き手を上げればすまんすまん、と顔の前で縦にした手小さく振って見せ。彼の背中に張り付いたまま、周りに配慮して抑えた声を楽しそうに弾ませて笑って見せる。もう既に包装され紙袋にも入っていると言うのに彼に見えないよう後ろ手に身体の影へ紙袋隠して、）さーてさて、盧笙もレジ行ったらあと何や？部屋着と食器？あと何処回ろか――あッ！ろしょ、帰ったらそろそろ もうオコタのお布団直さんとあかんな！？もうエアコンさんの時期や（二人で回るデートコースに思い馳せたかと思えば、ふと思い出したリビングに鎮座する炬燵の話題に転移しつつ。彼が己の為にものを選んでくれた事が嬉しくてあからさまに調子良く口回して、）

　

あー…どうどう、落ち着けチワワ。フローリングでめっちゃカシャカシャ滑っとる音聞こえるで。時間あんねやから一個ずつ話しや（文句ありげな表情も彼の滑らかな口回りに思わず笑顔へと変わる。まあまあ、と上げかけた手を寸前で止めたなら選んだ下着見えぬようにと彼と同様後ろ手に隠しつつ、言葉を続け）っと、先に取り敢えずレジ行ってくる。お前も見たいもんあったら遠慮無く寄り道してええからな。何処へでもお供したるわ（こっそり選んだ物たちを腕に抱え直したならそっと彼に背を向けて入れ代わり立ち代わりレジへと足を向ける。ふと目が合った店員が何故かハッとした様子で此方を見るから戸惑いながらも会釈。そろり会計を進めて合計金額見れば先ずはお札を出して…けれどもこのままではかなり小銭が増えてしまう。「すんません、20円あります」と慌てて財布の中身漁っては小銭も支払い、プレゼント包装終えた商品を手渡されたなら丁寧に受け取って再び会釈。くるり反転しては急ぎ足で愛しい人の元へ向かい――）ささ、お待たせ。……家帰ったらコレ、交換しよな（ふふ、）

　

おう、おかえりっ。今を時めく若きイケメン教師がどんなパンツ選んでくるか、楽しみでしゃあないわ…（彼の柔い笑みに、同じく此方もふっと微笑みながら進行方向へ身体を向ける。後ろ手にさっき会計を済ませた紙袋を持って、彼の真似をして隠すようにしながら至極楽しげに無邪気にくすくすと肩を揺らした。歩き出しにそっと彼の方へ一歩にも満たない距離を詰めて、優しく肩をぶつけスキンシップ。今日この日、どの瞬間を切り取っても楽しくて嬉しくて仕方がなくて。勿論欲しいもの必要なものを見つければ彼の申し出に甘えて寄り道する気では居るけれど、彼の横を着いて歩けるだけでもう充分満たされていて。つい楽しそうに交わす会話を紡ぐ声音はふんにゃりと緩みがち。ふわふわとスキップでもしそうな程軽やかな足取りで彼の横を歩き店を出て、）

　

ただいま。…てあほか、俺に変な期待をするなや（彼の発言にむっと困り気味に顔顰めては呆れた様に溜め息ひとつ。ぶつかる肩を此方からも軽く押しやれば再び澄まし顔で彼と共に店を出た。…さて、残るは部屋着と食器類。このフロアからなら次も衣類、部屋着の購入を進めてしまう方が楽だろう。隣並ぶ彼よりほんの少し先導してみせたなら良いものはないかと視線辺りに巡らせながら足を進める。と、暫し歩いた後にふと目を引く店を発見。カラフルなパステルカラーの可愛らしい品揃えだがこれも部屋着としてならなかなか楽しくて良いかもしれない。そっとそちらへ惹かれたなら足取りを緩めて隣の彼へと視線をやりつつ、食指で店の方ちょんと指差し）ささ、あそこはどうや？趣味とちゃうかもしれんけど、俺は気になる。

　

ほお…？かいらしいお店やなぁ、…ん、メンズのんもあるんや。盧笙興味あんなら入ってみよ！（此方からぶつけた肩やんわりと押し返されたなら、反応が返ってきたのが嬉しくて心なしか足取りもピョン、と跳ねてしまう。スキップになりきれない軽やかな足取りで店の外観に近付く。ディスプレイの彩りはパステルカラー、柔らかくて可愛らしくていつか彼が描いてくれたイラストをふと思い出して彼が気になるのも頷けると思った。自分一人であれば入る事はないであろうデザインが趣向らしいが、どれどれ…華やかに着飾られたマネキンの中に男性タイプの物もあるのを見ると男二人が入ってもおかしくはなさそうだ。それよりも彼の興味のあるものに触れたいから。先導すべく少し前を歩いていた彼の手首をぱし、と大きく掴み優しく引いてはぶわり笑み綻ばせ）もっこもこの肌触りええヤツとかあるんかなぁ？でもやっぱ落ち着かんからTシャツも欲しいわ、シュッとしたヤツ?！

　

ん、おおきに（店に近付くと存外男の姿もあるから安心――とはいえカップルでの来店が主のようだが、まあそれは隅に置いておく。変に目立たず相方の正体に気が付かなければそれで良いのだ。興味あるなら、と快く希望を受け止めてくれた彼にそっと感謝告げては掴まれた手首に思わず斜め後ろを見遣る。マスクの下、太陽の光を浴びて花が咲く様に破顔する彼の楽しげな様といったら胸が痛くなるくらいに愛おしくて、）……部屋着ならサラッとしたやつがええよなぁ。あと、洗濯してもよれたり縮んだりしにくいの（間を置いて返事をしてしまったことに自分でも気付かぬ程じっと見蕩れていた。はたとしては再び歩みを遅くして彼の隣へ並び立ち、そのままぶらりと店内へ。見回せば様々な色に溢れているが、それでも汚くなったり色同士喧嘩にならないのはトーンが合っているからだろう。優しい色合いに密かに胸躍らせたならTシャツが並べられたラックへ歩みを進め）…値段も安いしサイズもピンキリあるな。なかなかええやん。

　

　

今日ばっかりは、
余計なこと言わんと二言だけ（ふ、）

お前に出会えてほんまに良かった。
誰よりも何よりも愛してるよ、簓。

　

下げたって無駄やぞ！
こちとら通知オンにしてんねん（ひひ、）

まぁたクサイことしよって…ほんま。
見付けてくれて、おおきにな。
誰よりも何よりも…、そっくりそのまんま返したるわ。

盧笙！大ッ好き！毎日ありがとお！

　

……、簓。堪忍な（落ち込みがちな気分のまま愛しい人と言葉を交わすことはどうにもはばかられて昨晩は寂しいながらも声をかけずに眠った次第。目が覚めた後は淡々と仕事の用意を済ませ、ベッドで眠る彼の傍らへ腰を下ろす。乱れた髪とあどけない表情――柔らかな頬へそっと手を滑らせたなら上体をゆっくりと倒し、今は静かなその唇に優しい口付けをひとつ贈ってみせた。夕焼けのような瞳を淡く揺らしながら、への字に曲がる己の唇を隠す様にマスクを上げて。軈て再び音も立てずに腰上げたなら呟くような声色でぽつりと落とす退室の言葉、）…行ってきます。

　

ん…、……っあか…ん…寝過ぎた。ッ盧笙！…は、もう行ってもうたかぁ…（薄暗い寝室。昼時ともなれば陽の光がカーテンの隙間から入り込み微睡むには程良い暗さで、とろとろと未だ眠気残る頭を緩く振りつつ上体を起こした。スマホに手を伸ばし時間を確認。今日はオフだが些か寝過ぎた気がする。付き合いの飲み会が終わって帰宅、シャワーを浴び歯磨きを済ませいつもの如く彼が眠る布団へ入り込んで――…。淡く耳に残る‘行ってきます’は夢か、現実か。どちらにせよ、あの優しい声が恋しい。少し冷えた大きな手の感触だって足りない。そんな事を思う反面、自己中心加減にふっと自嘲の笑みが溢れた。昨晩は彼を満足に労うことも、声を掛けることも出来なかった。気分が落ち込めば、一人ではどうにも出来ない事もある。布団を捲り上げ冷えたフローリングに足を下ろしながらメッセージアプリを開く。起床後のウォーミングアップを兼ね頭を回しつつ立ち上がれば寝室を後にして――…。）