花 宵 　／ 　非 .

そうねぇ……新しい髪飾りが欲しいわ。目一杯可愛いものをお願いね？
( 余った片方の手袋は自身の右手に嵌め、頬を綻ばせる彼女のあどけない表情を見ると此方まで心が暖かくなるのを感じ、美しい隻腕を守ることが出来て嬉しいと心に優しい想いが溢れてきて。しかしそれも一瞬で、其処に聞こえてきた相手のお礼という言葉に欲が出てしまい、己と違って器用な技術を持つ相手を常々羨ましく思っていたこと、そろそろ今所有しているアクセサリーに飽きが来ていることも相俟って駄目元で一つおねだりを。それに対する彼女の返答の是非に関わらず、四肢の末端を地面について腰を上げれば用向きを言い置いてから外へ向かってゆっくりと歩き出し )
それじゃあ、私、お化粧を落としてくるわね。

そんなもので良いの？勿論よ！
( となればウェーブの掛かった綺麗な髪や顔つき、瞳の色に合わせて彼女と合致する物を作らなければと意気込んだ様子で上記。モチーフは何にするか、材料、大きさ、色、とぐるぐる頭を働かせていたものの時刻は既に丑三つ時に近づき頭にも霞掛かってきているのか幾度となく欠伸を漏らし。余りの眠さに堪忍したのか綿など入っていないに等しい薄い布団を仕事仲間が敷いてくれているであろう小屋の奥の小さな部屋を欠伸による涙を溜めた目で見つめ、化粧やら着替えやら何もかも投げ出して其方へ向かおうとした時に届いた声にひらりと手を振って応え。 )
えぇ、行ってらっしゃい。


(　／　取り敢えず場面が終了しましたので、次は仕事中に移そうと思っているのですが…、いかがでしょうか？　)

(一旦足を止めて相手の見送る言葉をしっかりと聞き届けてから歩行を再開し、小屋の外に出ると地面には僅かに雪が積もっており、これは凍傷になるのも納得だと冷静に思う反面冷たく張り詰めた空気と両手足から伝わる湿った感触が更に体温を下げていき、犬猫のように一瞬全身を震わせて。これは早いところ所用を済ませた方が良さそうだと判断し、急いで水場に向かい先程の宣言通り化粧を落とし軽く口内を濯いで洗浄した後、お手洗いへ立ち寄ってから小屋の中へ戻り。それなりに時間を要してしまったので、己が床につく頃には彼女は既に眠っているだろうか。いずれであっても「お休みなさい」と静かに声をかければ無いよりはマシな程度の粗末な布団に潜り込み、瞼を閉ざして夢の中へと )



( / 場面転換了解です！
この後の展開なのですが、何かご希望御座いますでしょうか？幾つか思い付いたものがありまして、提案の一つとしてお目通し願いたく存じます。
・白ちゃんか朝顔か、どちらかが風邪を引いて看病をする。
・新しい団員が入りひと悶着。
・酒に酔った座長がまたしても白ちゃんに言い寄り…。
・灯油もしくは毛布など、防寒具が足りないため街に買い物へ。 )

(　／　提案ありがとうございます！此方としては、街へ買い出し か 風邪の看病 が良いかと…。風邪なら良ければ白が朝顔ちゃんを看病する形でさせて頂きたいと思っております…！　)

( / 白ちゃんが看病してくださるのですか…！光栄の極みで御座います( 涎拭き )
どちらも捨て難いので、街へ買い出しの後、朝顔が風邪を引いてしまう流れで如何でしょうか…？差し支えなければ、買い出しは二人きりの方がデートみたいで良いかなと思ったのですが荷物が問題ですね( ぐぬぬ )　)

(　／　ぐへへ弱った朝顔ちゃんを食べちゃうぞお ( 屑 )
良いですねそれ！街に出るのでモブさんの陰口悪口も出しちゃって大丈夫でしょうか？荷物…確かに持てる量が相当少ないですね……、小屋で着払いはダメですかね ( 阿呆 )

取り敢えず差し障りのない誘う所から出しておきますね！ )



… 座長さん、私寒くてお人形も縫えませんわぁ。ね、ね、ここらで一つお毛布でも買いませんかぁ。
( 昼下がりになれども一向に上がる気配のない気温に痺れを切らしたのかいそいそと奥の部屋から毛布を引っ張り出したのは良いものの、穴だらけで薄っぺらいそれはとても暖かみを感じられるものではなくどうしようかと考えを巡らせて。仕方なく座長に思い切り媚を売り上記、日中だと言うのに既に酒臭い座長から多めにお金を巻き上げると満足げに頷き。又々奥の部屋から小さな肩掛け鞄を取り出してそこにお金を詰めると、お目当ての相手に寄って耳元で楽しそうに囁き。 )
朝顔ちゃん、お買い物行かない？お金はたっぷりあるの！

( / 陰口後ろ指なんでもござれです！白ちゃんの悪口言っちゃう輩が居たら朝顔が後ろ足で蹴っ飛ばしてやりますっ( ふんす )
紐を駆使して朝顔の背中に括りつける…とかも考えましたがそれでも限界ありますねえ……着払いで良いと思います( 親指ぐっ )

あわよくば何かお揃いのものが欲しいなと思いつつ、背後はこれにて失礼しますね！　)


＿＿＿＿。
( 寒さは堪えるけれどもただ布団の中でじっとしていても体が冷えるだけで、何より退屈なので他の団員にねだって譲ってもらった楽譜を開いては新しい歌の練習を。と、サビのフレーズに苦心していたところへやって来た隻腕の少女の誘い文句に顔ごと視線をそちらに向け、その明るく楽しげな声と提案は自身の燻った心を弾ませるのに十分なもので、しかしながら彼女の発言には疑問点があることも確か。杖代わりにしている椅子の背凭れに軽く身を寄せ、首を少しばかり右側に傾けて前向きな姿勢を示しつつ金の出処を問い掛け )
あら、楽しそうね。お化粧水も補充したいし…でも、お金はどうしたの？へそくりかしら。

(　／　お揃い……！もちろんですもちろんです！
それではこちらも失礼します〜　)



……んふふ、同意の上なの、
( 仲間内でも人気の彼女の歌声は聞き覚えのないメロディを奏でており、難しいのか険しげな顔をしていた為機嫌を損ねぬかと思ったもののどうやら心配要らない様で。金の出処を聞かれると悪戯が成功した子供のように笑みを浮かべ頬を赤らめたまま客寄せをする座長に目をやりちろりと舌を出し。久し振りの外出故興奮気味な気持ちを抑えつつひぃふぅみぃ、と仲間から頼まれたものを指折り数え。口紅が欲しいやら櫛が折れたやら仕事中に関わらず好き勝手口を出す彼らに呆れた様子で頷くものの確りと頭に刻み込み、一通り確認し終えると微笑みながら彼女に目線を送って。 )
準備出来るまで待つから、ゆっくりで構わないわよ。

ええ、少し待っていて。
( 彼女が向けた視線の先に居る酒の入った座長と含みのある返答、悪戯っ子を思わせるお茶目な笑顔を認めては彼女が何をしたのかある程度予測がつき成程と得心の微笑を浮かべ。ならば早速支度をせねばと体を床に下ろすも買い出しの呼び掛けを聞き付けた盲目の男に邪魔をされ、露骨に邪険にあしらいつつ相手に断りを入れた後、鏡台の前で髪を一括りにし小振りなリュックを背負って今一度しっかりと見目を確認してから待たせてしまった彼女の傍らへ歩み寄り )
お待たせ。
……私、髪型変じゃないかしら。纏め髪はあまり慣れてなくて…

新鮮ですごく素敵、朝顔ちゃん可愛いんだから自信持てば良いのに…
( 普段下ろされている髪が珍しく纏められている様子に素直な感想を抱き口にして。何処か日本人離れした顔立ちに纏められた緩やかなウェーブを描く髪がよく映えるのに関わらず相変わらず謙虚な姿に苦笑し白い袢纏の様な羽織を持って是又5センチ以上あるであろう底が丸くなった厚いぽっくりを履くと外の寒さにふるりと身体を震わせ。久し振りの外出の為に久しく履いていなかったぽっくりの感覚を確認するようにかぽかぽと踏み締めた後関節の形状故四足で進む彼女は冷たくないのかと靴置きから数歩進んだ所から不安げに視線をやり。 )

あら。そんなこと言ったって、私のお財布には一銭も入っていないわよ。
( 相手の小さな紅い唇から紡がれた賞賛の言葉に胸を撫で下ろすだけでなく、小屋を訪れる男性客からも評判の高いお人形のような愛らしい容姿を持っている彼女からそのように外見を褒められると光栄というもの。口先では敢えて惚けた調子でおどけて見せるも己の容貌に浮かぶ喜色は隠しきれておらず、予備として所持している丈夫な革製の手袋を両手にしっかり嵌めてから両足に洋靴を被せ、付着していた砂を軽く指先で払っては改めて四つん這いとなって相手の足元に並び )
さ、行きましょう。

はいはい、照れ屋さんだこと。
( 巫山戯た言葉の端々にも嬉しさが隠しきれておらず思わず頬が緩むのを感じながら束ねられた髪に軽く触れ。手足が不安だったものの彼女にとっては些細なことだったらしく安心すると敢えて触れずにのんびりと足を進めながら辺りを見回し。此処から歩いて約5分、然し彼女と2人きりの時間の心地良さを思い出してはこの時間が出来るだけ続けば、なんて惚気けたことを考えていた所に鼓膜を揺らした言葉には舌打ちしそうになって。 ｢ ___ 気持ち悪い ｣ 顔の火傷跡か欠損かその対象は定かではないが言われ慣れてきた言葉を真顔で笑い飛ばすと風で揺れた髪を手櫛で整えて近くの相手に民衆を思い切り馬鹿にしたような顔で口を開き。 )
ふふ、それでも顔は私たちのほうが大分可愛らしいんだから笑っちゃうわ。

ふふ、そうね。
私達が羨ましいのよ、きっと。
( やはりろくな防寒着も無しに外出するとなると冷えた外気が素肌に刺さるようで、けれどそれは相手も同じだろうと思えば今は二人きりのお出かけを堪能しようと。周囲の人々が遠巻きに自分達を窺い見るのも悪し様に罵るのも相手同様耳に蛸が出来るほど聞き飽きていて、動物のように歩くため他者より目線が低く顔色が見え難いのを良いことに、耳朶に触れた彼女の強気な声に同調して自らも唇に淡く嘲笑を浮かべ、彼らその他大勢が口にする「醜い」という言葉は彼ら自身の自己紹介に過ぎないと胸中鼻で笑い。さて、余計なモノを視界から外した時に見えたのは硝子の向こうに飾られた色鮮やかな反物で、梅の花をモチーフにしたシンプルながら粋なデザインに目を惹かれて思わず立ち止まって嘆息を零し )
……わあ、綺麗……

…凄い……！
( 陰口を意ともせず街を見回し楽しんでいた際斜め下から聞こえた声の向かう方向に目をやると思わず立ち止まり。反物が数多く並ぶ硝子窓の向こうにある一際美しいそれは立春を迎え雪解けとなる今の時期を祝う様な暖かさ、優しさが垣間見得るデザインで。そのあまりの美しさに彼女同様に感嘆し見つめていると、店内に置かれた様々な髪飾りや帯飾り、更には洋風の装身具を見つけ。肩に掛かった鞄の中を覗きお金に十分に余裕が有るのを確認すると彼女の目線の位置までしゃがみ込み、この寒さの中わざわざ買い物に来たのだからと笑みを浮かべつつ人差し指を立てて1つ提案を投げかけ。 )
朝顔ちゃん、私ね、朝顔ちゃんと何か同じ物が欲しいの。……どうかしら？

同じもの？白ちゃんと？
( わざわざ自分と目線の高さを合わせるために膝を折り曲げて話しかけてくれる相手の然り気無い優しさに癒された次の瞬間、耳に飛び込んできた言葉を思わず反復してしまい。一座の中では一番仲良くしてくれていると勝手ながら思ってはいたのだがまさかそのような申し出があるなんて予想出来る筈もなく、驚いて瞬きを数回、問い返すその顔に浮かぶきょとんとした表情は幾らか間抜けだったかもしれない。事実が飲み込めてくると徐々に嬉しさがこみ上げてきて、溢れる感情が笑みとなって零れ、片手を上げて相手の着物の裾を摘んで急かすように引っ張り )
――勿論！私も欲しいわ。ささ、そうと決まったら早く行きましょう！可愛いものはすぐ逃げちゃうのよ？

ふふ、そうね。何がいいかしら。
( 滅多に見ることのない彼女の驚いた顔とその後の笑みに安心したように胸をなで下ろし。早く早くと裾を掴む相手の愛らしさに妹が出来た気分になりつつゆっくり店内へと足を進め、自分の目線の位置に合わせて作られた棚に並ぶ髪飾りや指輪を1つ1つ手に取っては少し下にいる彼女に見せるというのを数回繰り返した頃。先程の梅の花が描かれた反物の傍に乱雑に積まれた髪飾りを見つけ。何処と無く反物に描かれた梅の雰囲気を感じさせるそれは薄桃色をした縮緬のリボンに乳白をした薄い布で作られた梅が付いており、その可愛らしさに思わず目を輝かせて。然し彼女も欲しいものが有るだろうし、今日くらい沢山買ったって撥は当たらないだろうからとまたしゃがみ込んで彼女の意見を求め。 )
どうかしら、何かお気に召すものはあった？

うーん、そうねえ。みんな可愛いけれど……
( 冷たく吹き荒ぶ寒風がないだけ足を踏み入れた店内は外よりも暖かくて、何より久しぶりに見る女の子らしく煌びやかな雰囲気に気分が高揚するのを感じ、それも隣にお友達が居るなんて。貴族の家で暮らしていた頃もアクセサリーに不自由はしなかったけれど一方的に与えられるばかりで、思えば一度も選ぶ権利なんて与えられたことがなかった。目的を忘れた訳ではないにしても姿勢の低い己に見えない商品を目の前に運んでくれるなど優しく気遣ってくれる相手との買い物はそれだけで価値があり、それは見世物小屋という存在を忘れさせんばかりの輝きを放つ時間で、だからこそ彼女の問いへ逡巡する仕草を見せる自身の声はそれと自覚出来るほど幸福感に満ち溢れていて。実のところ店に入る前から一番欲しいものは決まっていて、これぞ一目惚れというものだろうと思いつつ陳列棚の一つに手を借りて腰を上げ、反物の近くに纏めて値引きされている縮緬のリボンを指差し。それには乳白色ともう一つ色素の落ちた水色のものがあり、価格も他に比べればそれほど高くもないだろう。 )
私、あれがいいわ。とっても可愛いし…それに、なんとなく、白ちゃんと私みたいじゃない？

……！！ほんと、言われてみればそう見えるわ。すごく可愛い。
( 少女が下劣な今の小屋に来る以前だなんて野暮なことは今まで聞いた事がない。然しこんな店に来る事も珍しかったのか普段より些かトーンが上がり目を輝かせて店内を物色していた彼女が指さしたリボンは偶然か必然か先程見ていたもので、幾つか置かれた中並ぶ乳白と水色のそれを思わず手に取って目を細め。明らかに日本人離れした透き通る青い瞳を思い出させる淡い水色のリボンは確かに彼女にぴったりだったうえに、縮緬のため着物は勿論よく着ている洋服にも合うシンプルで洒落たデザイン、値段も良心的。これは良い買い物だとほくほくしつつしゃがみ込むと彼女の前髪の生え際当たりにそっとリボンを当て。思った通りと満足げに首を縦に振って立ち上がり、お金を払って新品の髪飾りを彼女に手渡し。 )
ふふ、初めてのお揃い。やっぱり嬉しいものね。

ふふ……白ちゃんのファンに嫉妬されちゃうわね。
( 支払いを終えた相手から先程のリボンを受け取って、感慨深くそれを見詰めつつ相手に同意を示す意味でも微笑を浮かべ、冗談めかしてぺろりと舌を出し。されど一座でも特に人気の高い彼女目当てに足繁く通い金銭を落とす固定客が居ることも確かなのであながち冗談という訳でもなく、本心を言えば今すぐにでも着けたかったが自身の身体の問題を考えれば断念せざるをえず、帰ったら鏡の前で着けてみようと思いつつ縮緬のそれを洋服のポケットへ。この店での目的は概ね果たしたか、そう判断してペタペタと歩き通りに出るとまたしても冷たく肌に刺さるような風が吹き付けてきて、思わず肩を竦ませて。 )
憎たらしいぐらい寒いわね……早く毛布を買わなくちゃ、凍えてしまいそう。

やだやだ、朝顔ちゃんのファンだって物凄いわよ
( 自分に毎日毎日大金を使う有り難ぁいお客様も居ない訳では無いが何処か他人事のような彼女に呆れて上記。己もその類稀なる美貌と境遇で幾度となく客を落としているのに関わらずあっけらかんとした様子に思わず笑を零し。家でゆっくり付けようかと鞄に買物を仕舞い再び外へ出ると、先程まで暖かかったからだろうか、末端がみるみる冷えていくのを感じて息を吐き。彼女の言葉に首を振って同調し本来の目当てである布団屋へ向かう。小さなその店は幼い頃から座長の御使いで通った店で、暖かい毛布や布団が手頃な価格で売られている所謂穴場、付いた途端に店内へ入り。 )
さ、早いとこ暖かい毛布を買わないと、みんな凍え死んじゃうわ。