読・書【Long/Middle/Short All OK】

読・書【Long/Middle/Short All OK】

御鏡  2019-03-23 18:45:40 
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このトピは、小説を載せ合うトピです。
(『絵や小説を載せ合うトピ』の
セイチャ版と思っていただければ…)

タイトルに記載した通り、
長編も中編も短編、全て大歓迎です。
読む専でも大丈夫ですし、
小説でなくても、感想等もOKです。

では、皆様のご参加をお待ちしながら、
一筆して行きたいと思います。

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  • No.33 by 御鏡  2019-05-25 22:15:45 

「…ああしてると、保父さんみたいだね…ユリウス」
「…まるで、全てを忘れてしまったようにも見える…ねー…」
「……しかし、それは決して有り得る事では無い…何故ならば、全て書かれているのだからな……」

エリックとヴァランタの呟きに、ドロセルは手にしていた本をゆっくりと開いた。有名な小説家、
アラクネアが出版した新書。三人の若者が、自分達の弟妹を救えず後悔しながら大人になり、
そしてその罪を償おうと、今からでも弟妹を救おうとする話。

『一人の青年は、非道な虐待に遭い、
愛されるために自ら心を壊し、道化を演じる』
『一人の少年は、その性格によって残酷な虐めに遭い、
己を守るため、その身の内に新たな人格を生成する』
『一人の少女は、頼れる兄が不在の内に残虐な事件に遭い、
消えた両親と兄の代わりになる人物を、盲目的に信頼する』

「人格者アラクネア…本名はエンスピル・ダル、か…謎に満ちた男だ。私が今後を綴るのに対し、
彼は過去を綴っている。全てを、知っている。誰にも話していない事でさえ、知っている」
「…エレクトロ・エレクトロニカ、か。今思えば、変わった偽名を思い付いたもんだね、ボクも…
…結構気に入ってるんだけどさ。ヴァランタ・ヴィストリック…キミはどう思う?あ、偽名の事ね」
「キミがそう思うんなら、良いんじゃない?キミだって、ボクと同じ意見でしょ?
……マリネッタ・ルーク・チョッカー」
「…懐かしい名だな。嗚呼、ライトニア・ヴェッセント。
キミが満足しているのなら、私も異議はないよ」

互いの名を、改めて呼んでみる。すると、捨てた筈であったのに
懐かしく暖かく、捨てるのが躊躇われた。

「否、私はドロセル。そう、ドローセル・ブラットウェルなのだ…立ち止まる事は、許されぬ…
…綴り続けなければならない…」
「エレクトロ・エレクトロニカ。この名を負って、ボクは社長として会社をより良くするんだ…!」
「ボクは本当の自分を捨てなかったけど…そうだな、お前達が固い信念を持ってるんなら、
協力しねぇワケがねぇだろ。何故なら、ワタシはヴァランタ・ヴィストリック……
大手テレビ局の局長にして、一流のプロデューサーだからねー☆」
「有名になったならば」
「権力を持ったならば」
「それを存分に振るおうではないか」
「「「我等が目的のために」」」

脱ぎ捨てられた虚飾の仮面を、再び被る。それは、過去から眼を背けるためではなく、
過去に向き合い、そして現在を変えるため。三人の権力者達は、スタジオを後にした。

今も尚、綴り続けられる物語の最後には、こう書かれている。

〈罪は消えない。それ故に、罰が常に背を狙っている〉
〈その背を狙うは、罪の証〉
〈手に入れた力を以て、権力者達は弟妹を救う〉


これにて完結。何度も連投してすみませんでしたぁッ!

  • No.34 by セシル  2019-05-28 16:41:51 

皆様、お久しぶりです!

思い付きのものを一つ…


暗い部屋に、スーツを着た青年と
ラフなシャツの青年が向き合って座っている。

「…ゼロ・シャーウッド。1995年、
リベル塔にて…」

スーツを着た青年が立ち上がって呟くと、
目の前の青年はさらさらとペンを動かし始める。

まるで印刷物のような筆記体で、鉄のペン先が
紙を引っ掻く僅かな音だけが響く。

その流麗な文字と筆記速度の実現は、
生者のそれでは不可能である。

無論それは、【屍者】を以て可能となる。

「………フライデー」

呼び掛けに、フライデーと呼ばれた、
年若さを永遠に固定された青年型の屍者は
一瞬動きを止め、ペンを置いてから
えらくゆったりとした動作で首だけをこちらに
回す。

机に置かれた生首が自らの血に滑るように。

細部としての動きは完璧なのに、どこか
生者とは異なっている。

今指令を待って、こうしている間でさえも。

何故か停止している屍者と、死者の区別は
小さな子供にでもつく。

個体識別名…フライデー。

その虚ろな脳に運動制御用エンジンと
拡張言語エンジンを書き込まれた、二重機関の
屍者だ。

「…不気味の谷」

フライデーはこちらを向いたまま、私の発言を
活字に変えて紙へと走らせる。

  • No.35 by セシル  2019-05-28 16:56:31 

連続投稿失礼します。

「さ よ な ら」

君の唇が、そこから発せられるはずである
声は無かったがそう紡いだ。

と同時に、君は屋上の縁へと走り始めた。

「待って!」

僕は必死に走るが、彼女には届かない。

たった数メートルの距離。

それが永遠であるかのように。

「ね え… し ぬ の っ て、 こ わ い ?」

彼女は、柵の外から身を乗り出し、笑う。

「……分からない。でも、死んでほしくない」

僕は彼女にゆっくりと近付く。

僕の答えに満足したのか、彼女はまた笑う。

「そ っ か… あ り が と う」

そのときの笑顔はまるで、女神だった。

その笑顔を顔に張り付けたまま、彼女は縁から
天使のごとく虚空に、飛翔した。

しばらくして、悲鳴が響く。

僕が下を見ると、血溜まりの中心で、
しかし頭が潰れたりはしていない彼女が、
眠るように死んでいた。

最後に彼女は、

「あ い し て」

と呟いていた。

僕の意識は途端に眩み、頭の奥で彼女の笑顔が
フラッシュバックする。


次の日。

僕はまた、彼女を見た。

普通にクラスへやって来て、勉強をしていた。

信じられない。あそこから落ちて、
無事であるはずがない。

…そうか、これは…罰だ。

彼女の代わりに僕が死ぬまで続く、罰。

  • No.36 by セシル  2019-05-28 17:08:28 


「…薫…。」

『はいはい、どうしたん?』

恋人である綾子が、やけに悲痛な声で俺を呼ぶ。

「ねえ、私仕事で失敗しちゃったの…」

『あはは、そらしゃあない。綾子やって
頑張ってんやろ?』

俺が答えると、綾子は笑った。

「ふふ、そうよね。もっと頑張らなくちゃ…」

『せやなぁ。でも無理はせんでええねんで?』

綾子は「私、頑張る!」と元気に言って、
俺にハイタッチを求める。

『はいはい、頑張りや』

俺も手を伸ばしたが、綾子は手が触れる前に
立ち去っていってしまった。

『…何や、変な綾子やなぁ』

俺は不思議に思いながらも、近所のお婆さんに
挨拶をする。

『おはようございます』

ところがお婆ちゃんは、耳が遠いのか
返事をしてくれなかった。

『…?』

俺は家に戻るものの、お腹は空かない。
弟たちも気付いてくれない。

何故だ?

その時、外から話し声が聞こえた。

〔…大変よねぇ。ここの息子さん…………〕

〔そうよねぇ。まだ若いのに、
……………じゃうなんて〕

だがざわざわとしていて、よく聞き取れない。

『…嗚呼、そうか。俺は……


もうとっくに、死んでたんやな』

そうだった。俺は綾子を庇って、
車に撥ねられて死んだんだった。

何故こんな大事なことを忘れていたんだ?

綾子が心配で、成仏できなくて…。

『…幸せになりや、綾子。俺はいつでも
見てるから』

  • No.37 by 御鏡  2019-06-01 21:34:00 

明日、6月2日は我が家の料理長の誕生日、なので…料理長のお話を一つ。
■■には、ご自分のお名前を置換してお読みくださいませ。

『狂ってしまう』

ゆっくりと時間を掛けて、男は手にしたそれを丹念に磨く。男…キドルの相棒。
彼が、異形館で料理を手掛けるのだと決まった時、異形の医師が贈呈した巨大な肉切り包丁。

「…これで、仕事、に…取り掛かれる~…」

蝋燭に灯った炎が揺らめく。並みの人間には到底ない怪力を用いて、包丁を持ち上げる。
それはまるで鏡のように磨かれ、彼の象徴とも言える、頭部の蝋燭を映し出していた。

「やあ、Mr.キドル。調子はどうだい?」
「俺、は上々~…G、こそ…どうだ…?」

厨房に向かおうと、部屋を一歩出た瞬間に、天秤頭のジジャと鉢合わせる。秤を動かしながら、
彼は屋敷の玄関の方角を指差し、和やかに言った。

「勿論!僕も上々だよ。ところでMr.キドル。丁度"彼女"がやって来たようだが、どうするんだい?」
「!!…感、謝…後で、好き、な物を…御馳走する~……」
「それは、嬉しい話だね。では!金と愛と友情と、その質量は全て等しく同じ、同じ。
ゆらゆら揺れて、ストンと落ちる。ここらでお別れだね。金と愛と友情と、その質量は
全て等しく同じ、同じ。ゆらゆら揺れて、ストンと落ちる。金と愛と友情と…」
「耳、に…残る歌…」

舞うように去ったジジャを見て、キドルはポツリと呟いた。そして、厨房に向かい、
冷蔵庫を開けて食材を取り出す。

「今日、こそ…作、れる……一世、一代の…自信、作~…」

ブツブツと呟きながら、キドルは千切りにした玉葱を鍋に投入する。もし、彼の表情を
読み取れる人物がいたならば、きっとこう言うのだろう。
非常に嬉しそうだが、何を企んでるんだ?と。

「今日こそ覚悟して貰いましょうかね人間様ァ!?」
「無理無理無理、絶対無理ーーーーーーーーーーーー!!」
「…騒がしい…料理、が…不味くなる~…」

粗方スピーカー頭のラウディスピックが"彼女"を見つけてしまったのだろう。怒号と絶叫、
そして走り回る足音が厨房まで響き、キドルは静かに愚痴を零した。

「あっ、テメ、そこは卑怯だぞ!」

ラウディスピックのその一言を最後に、屋敷中に響き渡っていた音が止む。

「ど、どうなっても知りませんからね。僕は悪くありませんから。
そ、そうですよ。アイツの仕事場に入ったお前が悪いんですよ…」

ラウディスピックは、怯えた様子で呟くと、周りに誰も居ないのを確認してから、
逃げるようにその場を去った。

「…やっと…静か、に…なった~……」

一方厨房では、キドルが仕上げをしようとしていた。彼が再度包丁を振り下ろしたその時、
背に強い衝撃を受けた。

「………」

液体がそこから溢れ出て、足元に水溜まりを作る。ゆっくりと背後を振り向けば、
そこには"彼女"が、■■がいた。

「あ、あの、えと。ご、ごめんなさいキドルさん、お仕事中とは知らなくて…あの、その…
け、怪我、しちゃいましたよね。大丈夫、ですか…?」

未だ混乱しているのか、それとも今だから混乱しているのか。どちらにしても、
今のキドルにとっては変わらなかった。

「…手元、が…狂った~……」

包丁を振り下ろした瞬間に背中に衝撃を受け、位置が若干左に寄った。つまり、具材を押さえる
左手の上に、包丁が振り下ろされた。敏感なキドルは、咄嗟に振り下ろした腕にブレーキを掛け、
食材を押さえていた手を引いた。とある物さえなければ、キドルの指は傷付かずに済んだだろう。
だが、地球上の全てはそれに逆らう事は出来ない。そう、重力だ。重力さえなければ、切れなかった。

「……イタイ……」

今も尚、キドルの指からはドクドクと血が流れ落ち、彼の隣では■■が慌ててポーチを漁っている。
キドルは痛みに耐えながらも調理を続けていたが、不意に動きを止めた。何事かと思い、■■が
彼を見やろうとした刹那、停電が起きた。

「ひゃ!な、な、な…何で、このタイミングで停電が…っ!?そ、そうだ、キドルさんの蝋燭…!!」

暗闇の中、手探りでライターを探していると、微かな明かりが灯る。同時に、強い力で腕を
掴まれた。突如腕を掴まれた事に驚いた■■が、恐る恐る振り返ると…

「責任、は、取って貰う、ぞ~………」

そこには、前髪で目を隠し、コック帽を被った、長身の男が居た。コック帽の上部には、
蝋燭が付いていて、そこでは炎が淡く燃えている。■■が慌てて辺りを見渡すと、
そこにキドルの姿は無かった。

「え、あの、責任って…それに、あなたは、誰ですか?キドルさんをどうしたんですか!?」
「責任、は…責任~…」

早口で捲し立てる■■の口に、男は左手の指を数本捩じ込んだ。同時に、逃げられないよう右手で
彼女の後頭部を押さえ込む。あまりに突然の事に、■■は混乱し、目を瞑って思考を巡らせた。

(何、この臭い…錆臭い…それに、鉄みたいな味もする…ひょっとして、この人………キドル、さん…?)

薄らと眼を開くと、目の前の男は満足そうな、嘲るような笑みを携え、■■が自身の指を舐めるのを
眺めていた。ゾク、と寒気が■■の背筋を駆け抜け、身体中に危険信号を送る。そんな彼女の心中を
知ってか知らずか、男は彼女の口から漸く指を引き抜いた。唾液はまるで蜘蛛の糸のように引かれ、
蝋燭の光に反射して、雨露のように輝いていた。彼方に飛んでいた■■の意識を戻したのは、
背に感じた鈍い痛みだった。

「今日は俺の誕生日~…欲しいのは、一世一代の最高作だけ~…」
「ちょ、何するんですか…!?」

男の後ろに、蜘蛛の巣が張った、くすんだ天井が見える。どうやら、床に押し倒されたらしかった。
男のブロンドの前髪の隙間から覗く紅い瞳が、爛々と輝いている。男は■■の腕を押さえ付け、
あろうことか小さな彼女の身体に馬乗りになって、彼女のシャツの裾を軽く捲り上げる。

「言った筈だ~…俺が欲しいのは、一世一代の最高作…作るには、最高の材料が必要……そうだろう?」

男が邪気を含んだ笑みを浮かべるのと同時に、■■は意識を失った。

「■■…俺はまた、狂ってしまう…な…だが、全部お前の所為…お前、の所為で、
俺も、俺の手元も狂うんだ……」

出来上がった料理を食べながら、男はボソリと呟いた。



ええ、■■がどうなったかは御想像に御任せしますよ。

  • No.38 by セシル  2019-06-26 13:37:51 

(彼女の言う《白い監獄》とは何処なのか。
優くんは何故、彼女を抱き締めたのか。
彼女は、監獄を出てからどうなったのか。
考えてみてください!)

篠原海里(しのはら かいり)sideーーーー

ここは、白い監獄だ。

私は監獄のベッドで目を覚ます。

腕に繋がれた鎖も、掛けられた毛布も。

小さな鉄格子の小窓から見える、綺麗な海も。

殺風景な部屋も。

何も、昨日と変わらない。

看守たちの話を盗み聞きしたところによると、
私はもう少しでこの監獄を出られるらしい。

監獄を出られたら、何をしよう。

待たせっぱなしのあの子に会いに行かないと。

美味しいご飯も食べたいな。

綺麗なお洋服だって着たい。

ピンクの服を着た看守が、扉をノックする。

《貴女に面会よ》

看守がドアを開けた。

そこには、あの子がいた。

私がずっと待たせていた、優くんが。

「何で君が?」

私が問い掛けると、彼は私を抱きしめた。

『良かった』とだけ言って。

《面会時間は5分よ》

看守がそう言ったのも、
聞こえていないようだった。

「苦しいよ、放して」

私が笑いながら言うと、彼は

『ご、ごめん!』

と言って、私から離れた。

「ねえ、私、そろそろここを
出られるんだって。出られたらさ、
海を見に行こうよ」

『そうだね』

私が思い描いていた計画を話すと、彼は
笑いながら聞いてくれた。

「あの人たちね、私がそろそろ
《ここから立ち去って、海に行ける》って
言ってたの」

私がこう言うと、彼の顔が真っ青になった。

『海に…って』

「どういう意味だろうね?」

彼は、私をまた抱き締めた。

『…海里…僕を置いていかないで……っ』

ぐすぐすと、泣いているみたいだった。

「大丈夫だよ、私は居なくならないよ」

私は彼の背中をぽんぽんと叩く。

『…本当に?』

「うん、約束するよ」

私は彼と指切りをしてみせる。

《時間は終わりよ、出ていってちょうだい》

看守が彼を呼んで、彼は看守と一緒に
出ていった。


次の日、私は看守に言われた。

《海里ちゃん、貴女は安心して寝ていて
良いのよ》

「本当ですか?」

《ええ、本当よ》

看守は何故か、泣きながら頷く。

私が安心して目を閉じると、何だか周りが
騒がしくなった。

耳には、看守たちの声が聞こえる。

《医務長を呼んできて!》

《体調が急変したわ!》

うるさいなぁ。そう思いながらも、
私は寝ていた。

急に目の前が開けて、私は海に居た。

あの小窓から見るよりも、ずっと大きな海。

…そうだ、優くんはどこにいるんだろう。

私は優くんを探した。

でも、どこにもいなかった。

海面を見ると、優くんがいた。

優くんのお家だろうか、部屋で優くんが
首にロープを掛けようとしているのが見えた。

「……優くん、ダメっ!」

私は懸命に叫ぶけど、優くんには
聞こえていないみたいだった。

優くんは笑顔で、そのまま、
首にロープを掛けて、椅子を蹴った。

ゆうくんのからだが、ものみたいにゆれた。

ぶらぶら、ぶらぶら。ふりこみたいに。

ただゆれていて、わらってた。

私がその場にへたり込むと、後ろから肩を
叩かれた。

優くんだった。

いつもみたいにニコニコ笑ってた。

なあんだ、やっぱりあれは違う人だったんだ。

私は優くんに聞いた。

「優くん、来てくれたの?」

『うん。海里に会いたかったから』

(彼)暁優(あかつき ゆう)sideーーーー

僕は、彼女のいる監獄に来ていた。

看守さんに受付をしてもらって、
彼女の独房へと連れていってもらった。

久々に見た彼女は、頭に包帯を巻いて少し
やつれてこそいたものの、元気そうだった。

『何で君が?』

あの綺麗な声も、何一つ変わっていなかった。

「良かった」

僕はそれだけ言って、彼女の小柄な身体を
抱き締めた。

看守さんが何か言った気がしたけど、
分からなかった。

『苦しいよ、放して』

彼女が笑いながら言ったので、

「ご、ごめん!」

僕は急いで離れた。

彼女はそれがおかしかったのか、また笑った。

『ねぇ、私、そろそろここを
出られるんだって。出られたらさ、
海を見に行こうよ』

「そう、だね」

僕は彼女の計画を笑いながら聞いていた。

彼女は、こんなことを言った。

『あの人たちね、私がそろそろ
《ここを立ち去って、海に行ける》って
言ってたの』

海に行ける。その言葉が、刺さった。

「海に…って」

『どういう意味だろうね?』

僕は思わず、彼女をまた抱き締めた。

「…海里…僕を置いていかないで……っ」

僕はぐすぐすと情けなく泣いていた。

彼女が僕の背中をぽんぽんと叩き、言った。

『大丈夫だよ、私は居なくならないよ』

「…本当に?」

『うん、約束するよ』

彼女はその細い小指を僕の小指に絡め、
指切りをする。

《時間は終わりよ、出ていってちょうだい》

看守さんに言われ、僕は看守さんと一緒に
彼女の独房を後にした。


次の日、僕は…自殺した。

監獄から、《彼女が海へいった》との連絡が
来たのだ。

急いで監獄に行って独房を確かめたけど、
彼女がいた場所はぽっかり空いていた。

僕は家に帰ると、ロープを天井に掛けた。

椅子を用意し、ロープの輪を首に掛けた。

椅子を蹴ろうとしたその時、微かに聞こえた。

《……優くん、ダメっ!》

彼女の声に、ひどく似ていた。

僕は頭に浮かんだ考えを打ち消す。

彼女を守ってやれなかった僕に、彼女が
そんなことを言ってくれるはずはない。

だから、僕は…満面の笑顔で椅子を蹴った。

「………すぐ、そっちにいくよ」

息は少し苦しかったけど、気にならなかった。

彼女の居る場所へと、行くためなら。

僕は視界が開けて、海に居た。

向こうに、座り込んだ彼女が見える。

僕は走り寄って、肩を叩く。

彼女は安心したように笑って、僕に聞いた。

『優くん、来てくれたの?』

「うん。海里に会いたかったから」

僕は、笑顔で答える。

首のロープ痕は、きっちり隠せていたかなぁ?

  • No.39 by 御鏡  2019-08-12 05:56:02 

超絶お久しぶりです。新キャラさん(ヤンデレver)とウチの子夢主さん(デフォルト名エマ)との短編を一つ投下いたします…


「おはようございます、エマさん。今日も素敵ですね」

エマの耳に、やや中性的な声が響いた。ぽろぽろと涙を溢れさせ、エマは必死に何かを伝えようとする。

「?一体どうし…嗚呼、失礼しました…ふふ、これじゃ喋れませんよね。ですが、あなたの声を私以外に聞かせたくありませんから。外に出る時は我慢してくださいね」

エマの口に巻かれていた布が外される。何も見えないから怖い。と零すエマに、彼は嬉しそうに言った。

「くすくす、何を言ってるんですかエマさん。私以外を見る必要なんて、ないじゃありませんか。嗚呼、しかしこれでは私も見えませんよね。すみません」

エマの視界を遮っていた目隠しが外される。目隠しを取って初めて見たのは、エマの自室であり、いつもと違うのは四肢のないマネキンの彼がいる事だけだ。

「ふふ、驚きましたか?贋作ではなく、本当にエマさんのお部屋ですよ…ええ。あなたがずっと使ってきたあのお部屋です」

長い間敵だと認識されていた彼がエマの部屋に入るのは容易な事ではない。しかし、彼の身体を見ても傷付いた様子は見られない。

「どうして?そんなのどうでも良いじゃありませんか。大事なのは、私とあなたが同じ空間にいる、それだけです」

一種の恐怖とも、狂気とも呼べる何かを感じたエマは、部屋の外へ続く扉を開ける。しかし、廊下に出た直後、エマの身体は壁に押し付けられた。

「…何故。何故私の話を聞いてくれないんですか?それどころか、あなたは私の目を見ようともしてくれません……一体何故?」

エマの手首を抑え付け、[削除済み]はエマの目を覗き込む。エマが[削除済み]から逃れようと顔を逸らすと、彼はエマの顎に手を添えてそれを優しく持ち上げた。

「あなたは何も考える必要はない。何をする必要もない。ただ私を見て、私の声を聴いて、私の"演奏"を称賛して……そして、私の愛を感じてくれれば良いんです」

エマの唇に、無名の指揮者のそれが触れる。ヒヤリと冷たいそれは、彼がマネキンである事を何よりも物語っている。

「あなたは聞き分けが良いお人です。私の大好きなお人。ですから、お部屋に戻りましょう?ね、エマさん」

彼の言葉に納得しきった訳ではないが、褒められれば嬉しいものでエマは部屋の中に戻る。

「……きっと、これを見ればあなたは幻滅するでしょう。その前にあなたを私で埋め尽くして、私以外の事は忘れさせてしまえば良い。私色に染めてしまえば良い。私がいないと生きられないようにしてしまえば良い!!嗚呼、エマさん。愛しいお人。早く堕ちて貰いたいものですねぇ…♪」

己には視えない紅に染められた廊下を一瞥すると、指揮者はエマの後を追って部屋へと戻った。


【通称】無名の指揮者
【本名】[削除済み]
【性別】男
【種族】マネキン
【年齢】27歳
【身長】175.6cm
【体重】55.7kg
【趣味】舞台鑑賞
【好きな物】舞台芸術 人間
【嫌いな物】人類を滅ぼさんとする者

白い燕尾服に、白い肌、縛れる程の長さの白い髪と、頭の天辺から足の先まで白いマネキンで、
舞台に携わった無数の人物の魂が宿っている。その所為か、舞台に関する事には非常に強い
興味・関心を示し、その能力も舞台関連のもの。四肢がなく、1本の支柱によって身体を
支えている。また、腕はないが手はあり、普段は燕尾服の中に収納している。

一人称は私。二人称はあなた。どんな相手に対しても敬語で話す物腰の柔らかい性格だが、
とある言葉を聞くと、少し機嫌が悪くなる。

以下ヤンデレver(相違点のみ)

【趣味】エマを愛する事
【好きな物】エマ 舞台関連のもの
【嫌いな物】それ以外全て

  • No.40 by 雨露  2019-08-17 08:08:20 

お 久 し ぶ り で す !!!
え ー と、は……え?? ええと何かもうその一言で言うと凄いなッて …… ( 語彙 )
小説も設定もいいです …… ヤンデレごちそうさま …… !
[削除済み]さん、外見は白く内面も白いように見えるんですけど …… ちょッとだけ黒さが見えるのは私だけかな …… ?? ( )
取り合えず好きです。好きです。好きでs ( ry ) ( 好きです )

  • No.41 by 御鏡  2019-08-17 08:12:02 

[削除済み]「私は初めまして、ですよね。ふふ、初対面でもそう言って戴けて、私も嬉しいです。お礼と言っては何ですが、黙示録の歌でもお聞きに「待て待て。黙示録はあかんから」………チッ」

  • No.42 by 水紋  2019-08-17 08:28:09 

そうですね! えッ嬉しいn …… ん ~ ? あれ ~ ? 何か黒い部分が見え隠れした …… ような …… 気が …… ((

あッそうそう、後でうちの子の設定とともに小説を載せる予定です ー 。

  • No.43 by 御鏡  2019-08-17 09:17:49 

楽しみにしてまっす!!あ、[削除済み]さんの容姿がこちらですね。へへへ…
https://i.imgur.com/e0h0Wyv.jpg

以下[削除済み]さんに言わせたい台詞集、台詞の後の()は妄想用シチュ(一応夢小説なので名前は■■スタイル)

「はぁ…はぁ……っ…どうしましょう、■■さん………あなたの事を考えるとっ……無い筈の心臓が、ドキドキしている気がして……わた、私…は、壊れてしまったんでしょうか……?っふ、ぅ、苦し、い……胸が、苦しいです……助けて、ください。■■さん……」(滅茶苦茶切羽詰まった感じで。出来るだけ息荒げて。エッッッッッッな雰囲気にしてやりたいし、そのままそんな展開になれ)

「■■さん。私は常にあなたの事を考え、あなたのためを思い、あなたのためだけに行動してきました。なのに、■■さんは私以外に会いに行くし、私以外に笑顔を見せるし、私以外に愛されている……何故?何故私以外の者と会うのですか?ねぇ、私じゃ駄目なのですか?あなたを満足させる事は不可能なのですか?こんなに…こんなに、愛しているのに…っ」(拳を握り締め、唇を噛み締め、けれど何処か諭すように。ヤンデレ度全開で。「抵抗するなら」と、手錠だろうが何だろうが持ち出してこい)

「……私は、指揮者です。指揮者とは、物事に生命を吹き込む魔術師であり、魂を呼び寄せる祈祷師である存在」-Adagio-「私は……ただの、創られた、もの。どうやったって、本当の生命にはなれない」-Largo-「偽りの生命で出来た私は、本当の生命を生み出す事も出来ない。しかし…」-Andante-「…でも…嗚呼、私は……■■さんの、一番になりたい」-Moderato-「あなたの騎士になりたい」-Presto-「あなたを、■■さんの"騎士"と言う名の特等席で、音楽を奏でたい…!」(無名の指揮者のために、■■のために今、幕が上がる。緩慢な様子で流れていた音楽は、一度更にその速度を遅くすると、段々と確実に速くなって行く。嗚呼、今、終曲-フィナーレ-が鳴り響き、■■の脳内には音楽が溢れ返る事だろう)

  • No.44 by 水紋  2019-08-17 09:30:12 

容姿ぃ …… !! 好きです!!!
セリフもシチュもいいですね …… いやあほんとおいしいです。さッきのヤンデレとはまた違ッたおいしさですね!

  • No.45 by 水面  2019-08-17 11:18:09 

水面と申します。


赤ずきん



 昔、昔。これは、そんなありきたりな言葉で始まる、皆がどこかで知っている、でも誰も知らない物語だ。

 彼に名前はなかった。誰もがその名前を忘れてしまったからだ。
 彼はいつも頭巾をかぶっていた。その下ではとても端整な顔立ちをしているのだが、自分に向けられる好奇の目が心底嫌いで、滅多に他人に顔を見せようとはしなかった。それは彼の透き通るような肌がよく映える、恐ろしく鮮やかな赤色の頭巾だった。
 そのため、彼は名前の代わりに『赤ずきん』と呼ばれるようになっていった。

 ある日、赤ずきんはおばあさんの家へお見舞いに行くため、パンとワインを放り込んた籠を持って森の中を歩いていた。狭い道をずんずんと進む。日が傾くにつれあたりは段々と暗くなり、夜空にぽっかりと浮かぶ満月だけが、進むべき道を静かに、蒼く照らしていた。
 そうしてしばらく歩いていると、突然畦道は途切れ、開けた空間に出た。赤ずきんは足を止めた。夜の薄闇の中に広がるのは、広大な花畑だった。
 そこに咲き誇る色とりどりの花々はこの世のものと思えないほどの美しく、赤ずきんは思わず目を奪われ、感嘆の声を上げた。そして、この花を持っていけばおばあさんも喜んでくれるのではないか、と思い立って、笑みを浮かべながら赤い花の前にちょこんと座った。淡い月明かりを夜露が反射する花畑の中心で、赤ずきんは一輪一輪、丁寧に手折っていく。
 手元が花でいっぱいになったときだった。

「やあ、赤ずきん。どこへ行くんだい?」

 低い声が静けさを破った。
 赤ずきんは、静かに、時間が正常に動いているのか不安になるほどゆっくりと、振り返った。

「こんばんは。オオカミ」

 ぼさぼさの銀の毛並みに、満月のように金に輝く瞳。裂けたほど大きな口に、大きなお腹。そこらの村人ならば途端に逃げ出してしまうような、巨大で恐ろしいオオカミが、木に背を預けてこちらに微笑みかけていた。

「今日は満月だったから、会えると思ってた。僕は今、おばあちゃんの家へ行くところだよ」

 赤ずきんは怯える素振りもなく、にこにこと嬉しそうに答える。

「そうかい。それはいい」

 オオカミもそれを真似するように口角を上げたが、とても笑顔と言えるものではない、醜悪な表情をしていた。それすら気にも留めない赤ずきんは、立ち上がってオオカミに問うた。

「君も、一緒に来る?森は一人じゃ危ないし」
「いいのか?」

 どうやらオオカミは少なからず喜んでいる様だ。

「もちろん!君と僕の仲じゃないか」
「じゃあ、ご一緒させてもらうよ」

 奇妙なことに、赤ずきんはオオカミと一緒におばあさんの家へ向かうことになった。すぐ隣には恐ろしいオオカミがいるというのに、赤ずきんはのんきに鼻歌なんか歌っている。
 オオカミは聞いた。

「なあ、赤ずきん。なぜ歌を歌っているんだ?」

赤ずきんは答えた。

「それは、君に会えて嬉しいからさ」
「そうか……」

 オオカミは少し照れくさそうだった。
 またしばらく、道を歩いた。
 オオカミは問いかけた。どうしてかは見当もつかないが、何故か今、オオカミの腹の内は目の前の少年への疑念に満ちていた。

「なあ、赤ずきん。なぜ俺が怖くないんだ?」

 赤ずきんは答えた。

「それは、君ともう何度も出会っているからさ」

 オオカミはもう一度聞いた。もう既に、オオカミは違和感に気付いていた。

「なあ、赤ずきん。いつ、俺と会ったんだ?」

 赤ずきんは歩みを止めた。

「それはね、オオカミ、

 

いろんな場所で、さ」
「……いろんな、場所……?」

 オオカミには言葉の意味がわからなかった。

「そう、僕は憶えているよ」
「何を……だ?」

 森の木々が、ざわざわと音をたてる。風が、肌を冷たく撫でる。

「君が、僕を食べたこと」
「どういう、ことだ」
「憶えているよ。君はチョークを飲んで声を変えて、母親のフリをして家に入った。君の歯で骨が砕かれる感触を、今でも憶えているよ」
「何を…言っている」
「君が僕や兄弟の家を吹き飛ばして、僕も僕の兄弟も、皆食べられてしまった。君の喉を通っていく感覚を、鮮明に憶えているよ」
「違う、俺は……!」
「憶えているよ。君が僕をさんざん利用して、結局お腹が空いて、僕を食べたことを。君の胃液で溶ける感覚を、確かに憶えているよ」

 赤ずきんの底冷えした冷淡な瞳は、オオカミの目をしっかり捉えていた。

「ね、君も知っているはずだよ」
「違う……」
「本当なら、質問は僕がするんだったよね」
「この話は、本当なんかじゃない……」

 赤ずきんは微笑みを浮かべた。それはそれは美しく、それはそれは恐ろしい笑みだった。

「ねえ、オオカミさん?どうして君はそんなに食いしん坊なんだい?」

 オオカミの喉が、ひゅっと情けなく鳴った。

「やめろ!」

 反響した咆哮に、森は波を打ったように静まり返った。
 赤ずきんは相も変わらず不気味で狡猾な笑みを浮かべている。

「それは…お前じゃない……赤狐だ」

 オオカミは怯えとも、怒りとも取れる表情を見せていた。
 赤ずきんは、より笑みを大きくした。

「違うよ。赤狐達が、僕なんだ」

 赤ずきんは、また歩き出した。足音一つ立てずに。
 オオカミは、一歩後ろからついていった。
静かな森の中を、ただ歩いていった。もう、二人とも話をしようとはしなかった。
 延々と続いているように思えた道も、そろそろ終わるようだった。

「さあ、着いたよ」

 そこには小さなレンガ調の家と、井戸が一つあるだけだった。沈みかけの満月がスポットライトになって、この場所だけを薄闇に映し出していた。

「じゃあ、ここまでだな」
「……」

 赤ずきんは黙して、ただオオカミを見つめていた。

「家には、入らないのか?」

 オオカミは、どこかでわかっていた。

「うん。もう意味ないからね」

 赤ずきんは、もうおばあさんに会う気はない。

「なんでだ」
「僕は、知っているよ」

 赤ずきんは、知っている。

「君はもう、猟師さんを、食べてしまった。」

 もう、自分が助からないことを。

「そうか。……おばあさんは、どうした?」
「……もう死んでると思うよ。一昨日のお菓子に、毒を混ぜたから」

 オオカミは、あろうことか、赤ずきんを食べたくないと、そう思っていた。赤ずきんの切ない横顔は、あまりにも美しく、あまりにも哀れだった。

「……赤ずきん……」

 オオカミがそっと手を伸ばそうとしたとき、一瞬にしてその横顔は歪み切り、全く逆の表情を映した。

「……フフッ……アハハハハッ!」

 オオカミは伸ばしかけた手を戻した。

「な~んてね。全部嘘。全部ホラ話さ。」

 嘘…?そんなことあるか。オオカミはどうしてもわからなかった。あの悲しそうな声も、あの切ない横顔も、全て嘘だなんて、ありえない。それなら、人間は、いや、この世界は、あまりにも醜悪だ。

「……お前は……本当は一体誰なんだ?」

 オオカミの問いに、赤ずきんは不敵に笑った。

「……さあね?でも、しいて言うなら、僕は……オオカミ少年さ。」

 オオカミの中で、全てがつながったような気がした。

「お前は…これからどうする気だ?」

 どうなっても、オオカミは受け入れられる気がした。

「そんなの、決まっているじゃないか。」
「朝が来る前に、君を、殺す」

 わかっていた。
 自分は罪を犯してきた。当然の罰だ。

「……そうか、仕方ないな」

 オオカミは、もう、死ぬのを怖いとは思わなかった。

「……君を、殺す前に、言っておきたいことがある」

 言われることは恨み節だろう。でもオオカミはそれでもよかった。赤ずきんの声を最後に聞いて**るなら、それで。

「何だ」

 赤ずきんの表情は、見えなかった。

「……君は、前回の話で、僕を殺さなかった。まあ、あの話は、君が死なない話だったからだと思うし、町の人は皆死んじゃったけど」

 オオカミは、静かに話を聞くだけだった。

「それで、僕は初めて物語の後日談を生きることができた。そして、僕は初めて孤独を知った。たったひとりで生きるつらさを。
……そして、君が毎日あんな苦しみを味わっていることを」

 オオカミは、驚いた。

「……それで?」

 でも、理解された様な気がして、嬉しかった。

「……もしかしたら、僕は少しだけ、君に同情したかもしれない」
「……それは、ありがたいな」

 オオカミは照れくさそうにそう言った。

「それじゃあ、目を閉じてくれ。オオカミ」

 言われるがまま目を閉じた。
 オオカミの毛むくじゃらの手に、赤ずきんの小さく、冷たい手が触れた。赤ずきんはオオカミをぐいぐいと引っ張っていく。オオカミはその行動を不思議に思ったが、黙って言う通りにしていた。

「目を開けていいよ」

 目を開くと同時にオオカミは手を引かれた。どうやら落ちているようだった。

「……じゃあ、落ちようか。君はこの物語で、井戸に落ちて死ぬのだから」

 オオカミは、自分が死ぬのはもう怖くなかった。
 でも、赤ずきんのことは死なせたくなかった。

「だめだっ!待ってくれ!」

 赤ずきんはオオカミの悲痛な願いを聞き入れない。
 それに、もう、遅い。

「……でも、独りは寂しいでしょう?だから、

一緒に、落ちよう。」

 二人は落ちる。
 ずっと落ちる。
 でも、それは二人が歩いてきた道に比べればとても短いものだった。
 オオカミが最期に見た赤ずきんの表情は、笑顔だった。
 この世の何よりも美しい、笑顔だった。
 山の端から顔を出した朝日が、井戸の中を一瞬、淡い金色に染めた。

  • No.46 by 御鏡  2019-08-17 19:27:27 

ん"っ……水面様の作品を久々に読みましたが、やはり至高……

[無名の指揮者と難聴ちゃん。盲目さんの騎士は忠告する]

「~♪……おや、■■さん…来ていたんですね」

何時ものように指揮棒を振るい、私は身体の中から音楽を響かせる。
手慣れた作業をするのに、視覚から得る刺激は必要ない。私は、目を閉じた。
しかし、小さな声で「指揮者さん」と私を呼ぶ声が聞こえれば、もう目を閉じる必要はない。
指揮をする必要も、ないのだから。

「指揮者さんの演奏は、きっととても素敵なものなんでしょうね。私も聴きたいなぁ」

彼女の笑顔が、私の変化するはずも無い表情を綻ばせる。しかし、同時に彼女の言葉は私を苦しめる。

「―――すみません、調子が優れなくて……■■さんが折角来てくれたのに申し訳ない。風邪かも知れませんから、今日は帰って戴けますか?」

勿論嘘だ。無機物である私は、体調を崩さない。身体が崩壊する事はあっても、体調を崩す事はない。
しかし、■■さんは何も知らないのだろう、疑う事なくそれを信じた。
少し名残惜しげな、残念そうな顔で「また来ますね」と言うと、手を振って帰って行った。

嗚呼、申し訳ない限りだ。彼女がいるのに、演奏をしてしまうなんて。

かつて聞いた事がある。あれは、■■さんと私が出会って間もない頃。
私がここに住むようになってすぐの頃。住人達に挨拶をして回っていた際に、
ファウスト医師から聞かされた事。

「ファウストさん、あのお人が返事をしてくれないのですが……」
「…■■さんは、殆ど耳が聞こえないンですヨ。無視している訳ではないンですけどネ。私の見解では、あれは過度なストレスから発症した若年性難聴と思われます……って言う訳で!彼女の事、よろしくお願いしますネ!!」

そう言って、逃げるようにその場を去ったファウスト医師。追いかけようにも、
脚の無い私は走る事が出来ない。否、出来なくはないが、その下準備に時間が掛かる。
仕方がないので彼女の隣に立ってみるが、当時の■■さんは私を横目でチラリと見ると、
読んでいた本に視線を落とした。

―――嗚呼、可哀想に。きっと、何年も前からこの状態なのでしょう。
―――あまり良く聞こえなくて、聴きたくて。しかし現実が非情で。
―――全てから目を背け、耳を塞ぎ、誰にも心を開かない。誰も、信用できない。

「……成程。壊れた心の修復ですか。私への挑戦とお受けしますよ、ファウスト医師…」

―――音楽は時に、人を狂わせる。しかし、逆に言えば人を癒す事もある。
―――今回は、癒す力を使って彼女の心を開かせれば良い。
―――ただ、それだけの事。

それだけの事、だったのに……何時からか、私は彼女に会いに行く事を楽しみにしていた。
急用で会いに行けず、申し訳ない事をしたと思っていた矢先、
彼女が私の元を訪れて、私の胸が高鳴った。
嗚呼、異常だ。私はただ、舞台芸術のために全てを注いだ異形の筈なのに……私は…
私は彼女に情を抱いてしまった。

少しは心を開いてくれたのか、■■さんは時々ではあるものの、私の元を訪ねるようになった。
嗚呼そうだ、ここで"呪具"としての本領を発揮しよう。二度とあなたの心が壊れないように、
呪いを掛けよう。あなたを守るための呪いを。
私が指揮棒を大きく振るうと、淡色の光が彼女の耳を包み込む。
そうして、私は■■さんを守る"騎士"となった。

「では気を取り直して……おや?」

私が目を閉じて指揮棒を振り上げるのと同時に、ガチャリと部屋の扉が開く音がした。

「どうしたんですか、■■さん。今日はもう帰ったんじゃ『随分と平和呆けしているようだな、シャーデンフロイデ』……何だ、あなたでしたか」

目を開くと、黒髪でスーツを着た男が立っていた。かつての私の同胞だ。

『何だ、ではないだろう。呪具としての使命も全うしないガラクタ如きが』
「失礼ですが、その言葉はそっくりお返ししますよ。マレディツィオーネさん…私より先に役目を放棄したツルハシ風情が、何を言うんですか」
『……所詮動けもしないマネキンが生意気な…脳髄かち砕いてくれようか………っと、違う違う。今日はそんな事は如何でも良い………シャーデンフロイデ。貴様に忠告だ。"騎士"としての私からの忠告だ。如何なる形であろうと我が主を傷付けた際には、問答無用でその心臓部を破壊する。覚えておけ』

主、と言う事は、あの盲目の女性だろう。一度相対したのを覚えている。

「では、私からも一言……どんな理由があろうと、■■さんを傷付けるようであれば私は放棄していた使命を全うする。その所為で私が壊れようと、全人類が滅びようと、構わない。何故なら私は黙示録のシャーデンフロイデ。呪具としての本来の力は、あなた以上である事をお忘れなく」

指揮棒を振るうと、魂魄の響きに乗ってゆっくりとした歌唱が響く。
途端に顔を顰め、マレディツィオーネさんは踵を返して部屋を出た。

沈黙交響詩第16番、第1楽章演奏開始。

  • No.47 by 雨露  2019-08-19 21:14:59 

あ ー …… 好きです …… !!
水面様の作品では赤ずきんちゃんが結構怖い。でも好きです。ちょッと別の童話も入ッてるのも色々考え深まッて面白いです。よすぎてにやけましたすみません。( )
御鏡様の作品ではほんとすげェッてなりました ( 語彙 ) 。お話が …… 色々しゅき …… 、難聴ちゃん可愛いなあ ……

それからお待たせしましたぁ …… 深夜テンションで書いたものを多少修正したものです。色々察してください。



 深夜。
 空が真っ黒に染められ、満ちた月と星が輝いている。
 昔は月も星も夜も嫌いだった。でも今は違う、最高の夜だ。最高の夜が、始まった。
 今日から夜の全てが好きになりそうだ。それほど今日は大切な日……姫も従者も、仲間も揃った。準備も整ったから、後は私が進めるだけ。
 皆を、動かすだけ。

「どうしてっ……!」

 するとここで、従者の……彼の、消え入りそうな声が響く。他の皆も唖然とした顔で見つめるか、憎悪に満ちた目で睨んでくるか、呆れたような表情を浮かべていた。
 ああ、『これ』だ――『これ』を、ずっと、待っていた。
 己の瞳は三日月のように形を変え、口角が歪みを持って上がる感覚があった。
 なんて楽しいんだろう。

「……あは。私がいつ、鬼様に従うと言った? 大多数の人はそうかもしれないけど、私は違うんだよ。わかってるんでしょ、キハク!」

 わざわざ問いかけんな、ということを含めて無邪気な風に言葉を返す。
 自国を含めて五つの国は基本鬼に従い敬う。だが『基本』だ、例外もいる。その例外に当てはまるのが私。ましてや私は姫。それに皆の性格。さっきのような反応するのも分かってた。
 想定内で何かつまらないものも感じるけど、楽しいならそれでいい。
 心の中で楽しさがどんどん募っていく。きっと私の表情は笑顔だけれど歪んでいるのだろう。

「……反逆者。あなたは前から姫らしくないとは思ったけれど、まさかこれまでとはね。失望しましたわ」

 わざわざご丁寧に扇子を持って口を隠し、眉を寄せてはつり上がった青い瞳でこちらを睨んでくる青姫サン。あからさまなところがまた面白い。
 ――反逆者。基本的鬼様信仰なのだが、少数それを拒む人がいる。
 そんな人たちが集まり、やがて反逆者と呼ばれるようになった。
 反逆者の詳細はほとんど知られていない。まあ現に私が反逆者とばらしているのだけど。

「それはありがとうごさいますぅ。だけどこちらにも色々事情はあるのよ。そもそも『色鬼』なんて馬鹿げてる。あんな鬼に何故従うの?」

 にっこりと笑ってみれば顔を真っ赤にしたものが数名。
 儀式名『色鬼』、別名『色姫争奪戦』は簡単に言えば一定期間鬼に姫を捧げるということ。目的は魔力補給。……表向き、は。
 だけれどこれを知らない姫の方々は裏切ったように聞こえるらしい。鬼も酷いよね、伝えないなんて。

「なっ……! 失礼ですよ、貴女! 鬼様はとても尊く素晴らしい御方で……!」

「へえ、そうなんだ? で?」

 肩を震わせ、こちらを鋭く睨んでくる黒姫サン。黒姫サンの隣から舌打ちも聞こえた。
 思い通りなのが楽しくて笑ってしまう。

「……あなた、そんな人……なんて……」

「元々こんな性格なの、知らなかった? ふふ、それとも覚えることができなかったのかしらあ」

 普段大きな動揺はしない白姫サンすらもこちらを睨んでいる……というか目を細めている。
 わざと煽るように言えば彼女は唇を噛み更に目を細めた。白姫を溺愛している彼女の従者もこちらを射貫くようにして睨んでくる。
 怖いんじゃなく面白いのだけれど。

「黄姫、これ以上はやめようじゃないか、まだ、まだ戻れるはずだ……!」

 ……面白いはずなのに、どこか冷めたような感覚が広がる。
 折角下準備したのに、やめようだの戻ろうだのはしない。したら全部が水の泡だ。
 あれ、おかしいな、赤姫サンはもっと賢かったはずなのに。

「……馬鹿だなあんたら。何にも分かってない。あいつの表面だけしか見てないんだろう?」

 自分でも驚くほど低い声が出た。どうやら苛ついているらしい。少し頭も痛くなってきた。
 しかし苛立ちと同時に、愚かな人たちを見て笑いが込み上げてくる。
 思わずくつくつと喉が鳴った。

 従者たちも鬼様を信仰しているようで。こちらを睨んでくる。……キハクを除いて。
 手出してくれた方が面白いんだけど、痛いのは嫌だしなあ。
 ああ、そうだ。反応が見られる言葉がまだあった。自然と頬が緩む。


「……ねえ、みんな。このことを他人に喋ったら、崩壊すると思ってね?」

 にっこりと笑って、仲間以外のこの場にいる人たちに魔法をかけた。なにが、とは言わない。皆承知だろう。
 私の魔法の恐ろしさは昔の事件で知っているはずだ。逆らうなんて自害を望むようなもんだ。自分でいうのもあれだけど、それほど強大だ。
 その証拠に顔が青くなったり白くなったり。忙しい人たちだ。面白くてたまらない。
 この後どうやって動くのやら。予想しながらこの場を去ろうとした。

「じゃあもう用はないよ、さよな……」

「待って姫さん! ……うそ、ですよね? いつもの冗談ですよね……?」

 震えたような声で問われた。そんな声でも足は止まる。
 普段なら明るくヘラヘラとしたようなキハクが、泣くのを堪えているような……そんな気が、した。
 いつもなら、冗談で済ませていた。その冗談で反応を見て楽しんでいた。
 だけど今は今。冗談じゃなくても面白いはずなのに。なのに、どうして。
 ――やめよう、意味が、ない――

「……本気だよ、分かってるんでしょ? 馬鹿だね」

 何で、そんな傷ついたような顔をするかな。ぞわぞわして落ち着かない。貼り付けた笑みが崩れてしまいそう。
 キハクの表情をなんだか見たくなかったから、さっさと行こうと近くにあった木へ向かって飛んだ。
 ミシッと大きな音が鳴ったけれど気にしない。おも……いや、とにかく行こう。気にしない。
 誰か一人くらいは追ってくるのかと思ったけれど、誰も追ってこなかった。
 何故、とは思うが、まあ逃げれたしいい。どうでもいい。きっと仲間がうまくやったのだろう。

 反逆者の集まりに向かおうとした刹那、とても晴れていたのに、雨がぽつぽつと降りはじめた。
 やがて強い雨となり、私たちの髪や服を濡らし、地面には水溜まりができはじめた。
 それでも空は晴れたまま。
 ……我が国名の由来とされる天気だ。特に珍しくもないから普段は濡れても構わなかった。
 だけど今日は違う。最高な、最高な夜なんだ。だから濡れて少しだけ苛ついてしまった。
 まあ天候は変えられまい。取り合えず今は本拠地に行くだけだ。

「……え?」

 突然、雨が降る前感じた違和感が、消えた。
 ……違和感は少しの間だけだったし、気のせいなのかもしれない。
 それにあのとき、確かに感じたあの快感。楽しかったんだ。楽しかったはずなのだ。愉快さが最高潮に達したような感覚、だったんだ。

 そう、だから。
 雨が降る直前、目の前がぼやけて、頬が少し濡れたことなんて気のせいなんだ。





▽ 視点主設定

「面白けりゃなんでもいいでしょう? いいじゃない、別に」

「今ここで選んでね。さあ、自分を取るか、仲間を取るか。どうするのォ?」

【 名前 】
 キョウカ - 通称『 黄姫 』

【 性別 】
 ♀

【 年齢 】
 15

【 容姿 】
 腰まで伸びた黄髪をツ ー サイドアップにしている。瞳はぱッちりとしており、赤から黄色のグラデーション ( 黄色の割合 多 ) 。服は暖色を多く含む ( 主に黄色 ) 、着物をアレンジしたような服。帯から下はスカートみたいにふんわりと広がッている。ミモレ丈。柄は様々な大きさの円。黒タイツに茶ブ ー ツ 。身長163cm。

【 性格 】
 『 日雨ノ国 』のちと狂ッたお姫様。矛盾が激しい。色々な意味で無邪気で、時によッて残酷。幼い子どものよう。子どもッぽいかもしれない。気分屋であり、物事は楽しければ基本的よし、という思考の持ち主である。楽しいことや面白いことが大好き。ものや人を好きになることはあるけれど、執着することはほぼない。興味があるものには構うが、興味のないものは最低限しか接しない。はッきりとしている。愉快犯。

【 能力 】
 『 崩壊 』 .. そのまま。主に精神についてを得意とする。指定が細かければ細かいほど後に全身が痛くなる。

【 備考 】
 隠れ反逆者。『 色姫争奪戦 』もとい『 色鬼 』をよく思っていない。というか過去にあれこれあッたため、鬼自体が嫌い。怪力。一発殴られるとくらッとくるレベル。尚木登りが得意。口調は整ッたり崩れたり。姫としての義務はこなしているつもり。姫です。姫です。 ( 二度目 )

ついでのイメ画。最近描いた絵です。 ( 全身なんて知らない )
https://i.imgur.com/fIopCr1.jpg
https://i.imgur.com/ZVcxPI5.jpg

アナログの方は絵柄を変えてみたかッ …… た …… ( あんまし変わッてない )
キョウカちゃんの表情は描いているといつの間にか似たようになッてしまう …… あッ耳はちゃんと丸いでs 、

  • No.48 by 雨露  2019-08-20 05:51:59 

うわ…… >47、いくつか日本語間違えちゃッてるう …… すみません ……

  • No.49 by 御鏡  2019-08-20 07:31:28 

わーい、雨露さんの小説だあ!!(半分深夜テンション((既に朝

では、自分も>46に関する、ちょっとした設定を。

【三種の神器ならぬ、三種の呪具】
(呪具は"呪"術師の呪術による呪術のための道"具"だよ!効力を発揮すると、呪いが発動するよ!!)

・"黙示録"のシャーデンフロイデ(46登場/年齢27歳)
常時マネキン型の異形。術式(我が家の世界線における魔法)によって強制的に魂をマネキンに定着させているので厳密には呪具ではないが、呪具と呼ばれるのは体内に呪具が埋め込まれているため。また、術式の行使によって人型になる事も可能。普段から指揮棒を振るう事で、体内に組み込まれた音響装置から音楽を演奏する。通常、その音楽は人を癒すために用いられるが、不協和音を混ぜれば、相手の精神を汚染する事が可能。
リミッターを解除した状態、及び製造者による洗脳を受けた状態で演奏すると、必ず"黙示録"を引き起こす曲を演奏する。しかも小さな声で本人の歌唱付き。歌詞の内容は黄衣の王を崇めるもの。
[削除済み]さん。呪具としての力は三人の中でも真中で普通。他の二人に比べて、感情が豊か。

・"終止刑"のマレディツィオーネ(46登場/年齢29歳)
常時ツルハシ型の異形。"黙示録"同様、術式によって人型になる事は可能。意思を持つ呪具だが、製造者に忘れ置かれて、"盲目少女"に拾われる。感情は乏しいが、あまりに危なっかしい彼女を見ていて保護欲に駆られている模様。ツルハシなので当然のように人の頭蓋をかち割れる。と言うより、人型になって自由に行動している時は大概、"素手で"人の頭蓋を割っている。攻防共に強い。
現所有者である"盲目少女"を傷付けられると、ステータスが暴走し、問答無用で急所に一撃必殺を入れてくる。しかも非武装で、老若男女お構いなしに、無差別に。
呪具としての力は他の二人に比べて弱いが、通常の武器としては耐久力がある。

・"終末樹"のアルルーナ(46未登場/精神年齢26歳・外見年齢15歳or16歳)
常時人型の少女だが、桜の樹と同化している辺りやはり異形。三人の中でも特に製造者の事を快く思っておらず、一度は逃亡するものの、製造者に捕獲されてしまった。主人を見つけた他の二人を羨んでいるが、人間は脆くすぐに死ぬと知っているため正直微妙な気持ち。地中を移動する事が可能で、他にも自生している樹木を眷属として操る事が出来る。但し火にはめっぽう弱い。
呪具としての本来の力を解放すると、終末が訪れる。例え訪れても、終了後には再建の余地がある黙示録と違い、こちらは訪れたら最後、どれだけ巨大な都市があろうともそこに残るのは平らな世界と一本の桜の樹だけ。
三人の中で、呪具としての力が最も強い。仲間意識を殆ど感じない上、負の感情が増幅しやすい。しかも地中を移動して瞬間移動…なんて事も出来るから、敵に回すと非常に面倒。対処する時、男性陣二人はこうする。シャーデンフロイデの演奏で牽制→マレディツィオーネが接近して羽交い絞め→シャーデンフロイデが指揮棒の柄で彼女の頭部を殴打。"終止刑"は何の反応も示さないものの、"黙示録"は女性に手をあげてしまったと落ち込むし、"終末樹"を心配して看病もする。実はこの時、行動こそ起こさないものの、"終止刑"は彼なりに"終末樹"を心配している様子。

【相関性】
・シャーデンフロイデ→マレディツィオーネ
「…不器用なお人ですね。もっと素直になれば良いと思うんですが…言っても無駄でしょうね」
・シャーデンフロイデ→アルルーナ
「彼女は強い。しかし孤独で哀れなお人…素敵な主人が見つかる事を願います」

・マレディツィオーネ→シャーデンフロイデ
「指揮者気取りのガラクタ如きが、感情論で諭して来て……大きなお世話だ」
・マレディツィオーネ→アルルーナ
「面倒な女だ。最強の呪具が聞いて呆れる…さて、アイツの好きな花は何だったか…」

・アルルーナ→シャーデンフロイデ
「相当変わってるわね。人間が好きなんて変だわ。どうせ……どうせすぐ、いなくなるのに」
・アルルーナ→マレディツィオーネ
「不愛想な男、どうして私より先に主を見付ける事が出来たの?妬ましい!憎らしい!……羨ましい」

  • No.50 by 雨露  2019-08-20 08:05:32 

深夜テンションは続けば続くものですよ …… ( ?? )
ぱぴ …… すげ …… 御鏡さんの設定は細かいし素敵ですし好きです !! キャラ自体もたまらんのに関係さえも吐血レベル …… あふッッッ ( 遺言 )

…… さて。 ( 蘇生 ) まだ執筆途中の小説がありますのでいッてきます。

  • No.51 by セシル  2019-08-20 09:50:35 

お久しぶりです(。・ω・。)ゞ

ちょっとバトル系を書いてみましたが…
やはり苦手です。

トウキョウクロスロード

case1,絶望

狭い面積になんと人口の3分の2もの
人間を抱え込む日本の首都、【トウキョウ】。

スクランブル交差点は今日も混雑し、
電車には人がぎゅうぎゅう詰め。

〈昨日のテレビ見たー?〉

《見た見た!出雲くん最高だったよねー!》

座席で他愛の無い会話をする同じクラスの
女子たち。

少し物騒だけれど、平穏な日常。

…それが壊れるのは、あまりに突然だった。


電車が酷く揺れる。

[…ミロク、揺れ酷くない…?地震かな]

友人が、声を掛けてくる。

「地震じゃないと思うけど…」

[そうだよね…もう予測出来るもんね。
今日の地震遭遇率、0%だったし…]

友人はスマホを見やる。

「変だね」

[…………]

返事が、返ってこなかった。

「ユウ?」

[……………]

やはり、返ってこない。

隣を見る。

「…ユウ!?」

ぽっかりと、座席が空いていた。

〈…きゃあぁ!〉

聞こえた悲鳴に、周りを見る。

…目を疑うような光景が、そこにあった。

電車の中は血溜まりのようになっていた。

まるで、血の雨が電車の中にだけ
降ったかのように。

生きているのか、死んでいるのかすら
分からない人たちが床に転がっていたが、
友人はいなかった。ただ、同じクラスの
女子が一人、へたり込んで悲鳴を上げていた。

〈ミロクくん…!〉

艶やかな黒髪を腰まで伸ばして気の強そうな
顔立ちをしたクラスのマドンナ、伊藤さんだ。

「…伊藤さん、何があったか教えてくれる?」

〈私が、うたた寝から覚めた時は…
こうなってて、田中さんと宮本さんが…血を
流しながら床に転がってて…〉

伊藤さんは錯乱しているようだ。

これ以上話を聞くのは無理だろう…。

「…出よう、ともかく。立てる?」

〈う、うん!〉

伊藤さんはすっと立ち上がる。

僕は彼女の手を引き、いつの間にか
着いていたらしい【シブヤ】駅のホームに
降りる。

そこには、人に似ているけれどどこかが
決定的に違う【ナニカ】が暴れていた。

〈何、あれ…!?〉

伊藤さんも、僕も、呆然としていた。

だがそこに、血の匂いを纏った一陣の風が
吹き抜けた。

『ボサッとしてんじゃねーぞ!
そこに立たれると殺すのに邪魔じゃねーか!』

茶髪を風に揺らし、鈍く光る瞳をこちらに
向ける鉄パイプの青年。

高校生ではあるのだろう、僕らの
高校ではないが制服を着ていた。

「キ、キミは…?」

『…あ"?俺かよ。大和。水無月大和。
今関係ねーだろ』

彼はぶっきらぼうに吐き捨てると、
鉄パイプを【ナニカ】に降り下ろす。

重い鈍器が【ナニカ】の頭にめり込み、
血を噴水のように流させる。

  • No.52 by セシル  2019-08-20 09:54:19 ID:a831823ea

もう一話載せます。

トウキョウクロスロード

case2,戦闘狂

大和、と名乗った青年は【ナニカ】を
圧倒していた。

「…凄いね…」

〈…ぅ、う…〉

伊藤さんは今にも吐いてしまいそうだ。

「…大丈夫?伊藤さん…」

〈う、うん……多分…〉

『おい、お前!』

青年の声に顔を上げる。

『名前。何て言うんだ?』

「ミロク…篠宮、ミロクです」

『んじゃミロク。手伝ってくれ。
これやるから』

青年は僕に刀を投げる。

…本物…!?

一瞬受け取るのを躊躇って、地面に
落としてしまう。

カラン、と妙に軽い音から、模造刀だと
分かった。

『…コイツらにはよ、何でか知らねーけど
本物の武器よりレプリカの方が効くんだわ』

僕は伊藤さんを見る。

彼女を一人でここに置いて、
大丈夫だろうか…?

『お嬢さんは退避してろよ。コイツらは
俺が片付けるからよ』

青年は僕と伊藤さんに悪戯っ子のように
笑ったかと思うと、バケモノに突進していく。

…こんな所でじっとしていたら、
僕も伊藤さんも死ぬだけだ。

伊藤さんはこくりと頷いて、
コンビニに走っていく。

【ミロク。とりあえず何事もやらなくちゃ、
何も変わらないんだから】

僕が5歳の時に死んだ姉の言葉が、
脳を駆け巡る。

僕も覚悟を決めて模造刀の柄を握り締め、
闇雲に飛び掛かる。

「…おらぁ!」

小さめなバケモノの腕を掠めた攻撃は、
バケモノの腕を吹き飛ばした。

僕の顔に、黒い血飛沫が散る。

『…へぇ、中々やるじゃん。
素質あるかもな、お前』

「……素質…?」

『戦闘狂の素質』

彼は本気なのか冗談なのか分からない
笑みを浮かべ、敵に向き直る。

僕らは凄まじい惨劇を展開していた。

その原因は主に大和だが。

『ふー、終わったな。お嬢さん
迎えに行くか。どこ行った?』

「……多分、あっちのコンビニ…です」

『サンキュ。後、敬語じゃなくて良いから。
俺、お前と同い年だし』

「…分かった」

彼はボリボリと髪を掻きながら
コンビニへと進む。

『…なあ、ここで合ってんだよな?』

彼はコンビニの中を覗き、僕に問い掛ける。

「え、多分…」

『…やらかしたな。ここがまずかった。
お嬢さん、殺られちまったな』

彼が指差したガラス越しには、タイルの床に
広がる血溜まりの中で濁った目を大きく
見開いた伊藤さんが、まるで玩具のように
転がっていた。

「………伊藤、さん…?」

彼女はもう答えては、くれない。
僕はこみ上げてくる吐き気を抑えながら、
彼女の名前を呼び続ける。

『やめとけ、無駄だよ。
それより…逃げる方が先だ。ずっとここに
居たら俺らもこのお嬢さんみてぇに
なっちまう』

彼に肩を掴まれ、僕は振り向く。
その顔はどこか哀しげで、それでいて…
とても美しかった。

『…ほぉら、おいでなすったぜ。
お嬢さんはどんなヴィランになることやら…』

彼の言葉に前を向き直る。

倒れている伊藤さんの身体がビクリと動き、
操り人形か何かのように立ち上がる。

ガラスを通してこちらに向けられる、
虚ろな瞳に、背中に氷を詰め込まれたような
寒気が走った。

伊藤さんは薄い桜色の唇をぱかりと開き、
何かを呟く。と、同時に。

彼女の着ている女子制服の背中の生地が
ビリビリと裂け、背中から黒くドロドロに
溶けた汚泥のような色をした羽根が生える。

白くほっそりした腕も痙攣したかと思うと、
あっという間に血管が浮き出て黒くなり、
指がナイフのように鋭くなる。

そして長い黒髪が目元までだらりと
垂れ下がり、顔を覆ってしまっている。

『…随分とお綺麗なヴィランになったなぁ。
やっぱり、お嬢さんだからか?』

彼は鉄パイプを構えて笑う。

同時に『彼女』もゆっくりと
コンビニから出てくる。

「…い、とうさん…」

『…コイツはもう、お前の言ってる
『伊藤さん』とやらじゃねーよ。
衝動のまま、欲望のまま動くヴィランだ。
生き残りたきゃ、倒すしかねーんだよ』

彼の声は真剣そのもので、瞳は鋭かった。

《……………ミロク、くん》

『伊藤さん』が口を開く。

その声は何の変わりもない。

…何だ、やっぱり伊藤さんじゃないか…。

「…どうしたの?」

《…どうして、私を見捨てたノ?》

長い黒髪に隠された表情は、
伺い知れなかった。

「見捨ててなんて…」

『…おい、ミロク!ソイツと長いこと
喋るんじゃねーぞ!』

彼の声が、聞こえる。

《……嘘。キミは、私ヲ…見捨テタ、ヨネ?》

彼女の声が、次第に低くなる。

「…見捨ててなんて、ないよ」

《…ウソ、ダ。………ミロク、コロス……》

彼女が一際低い声で言ったかと思うと、
彼女の腕が僕に降り下ろされる。

「……っ……」

死ぬ覚悟を決めて目を閉じた、その時だ。

『…おらァ!』

彼女の腕が、粘る血と共にどこかへ
吹き飛んだ音が聞こえた。

《………ギャァァ!》

耳を劈くような叫び声が響き、
僕は恐る恐る目を開く。

そこには、片腕を無くして叫ぶ『伊藤さん』と
顔を血まみれにした大和が立っていた。

『…ミロク、情に流されんじゃねぇ!
もう、ソイツはお前が知ってる
お嬢さんじゃねぇんだ。ただの
ヴィランなんだよ』

大和の真剣で、酷く美しい声が聞こえた。

「……でも、伊藤さんは…」

『…ごちゃごちゃうるせぇんだよ!
コイツは!ヴィランなんだよ!敵なんだ!
お嬢さんじゃ、ねぇんだよ!』

大和の叫びに、圧倒された。

『………ッ!』

彼が微かに表情を歪め、肩を押さえていた。
その指の隙間からは、止血しきれない血液が
漏れ出て、彼の服を濡らしていた。

…僕を、庇ったから?

だから彼は、怪我をしたのか?

「…大和くん、怪我…!」

『何とも、ねぇよ…倒す方が、大事だろうが…』

彼は少し荒く呼吸をしながら、鉄パイプを
構え直して『伊藤さん』へと飛び掛かる。

彼女は叫びながらもう片方の腕で大和を
振り払い、地面に叩き付ける。

『……っ、ぐぁ…』

呻きを漏らし、彼が地面に沈む。

僕はただ、腰を抜かしながらそれを見ていた。

怖くて、目を逸らしたくて、逃げたくて…
自分に出来ることなんてなくて。

『……ミロク…ッ!…何、ぼーっとしてんだよ…
テメェの手に、あんのは…飾りかよ…!』

大和の声に、はっとした。

『…何もしなきゃ、テメェも…俺も…
死ぬだけなんだよ…!…それ、なら…
何か…して、死んだ方が…マシだ…!』

彼が叫ぶと同時に、大和の首を伊藤さんの手が
締め上げる。

『…………っか、は…ッ…!』

大和が吐血したのを見て、ナニカが
僕の中で切れた。

僕は模造刀を手に、覚悟を決めて立ち上がる。

もう、怖くない。

もう、目を逸らさない。

もう、逃げない。

ユウに会うまで、死ぬわけにはいかないから。

「……伊藤真理子ぉぉ!!」

恐怖や罪悪感なんて振り払うように、
怒りに任せて彼女の名前を絶叫する。

『伊藤真理子の姿をした化け物』は
勿論反応して、こちらに目線をやって
近付いてくる。

意識を無くしかけている大和の首から
手を放し、汚泥のような羽根で飛んできた。

手を放された大和は咳き込み、地面に転がる。

『…ミロク…クン』

『女の形をしたバケモノ』は
『伊藤真理子』の声で僕に呼び掛ける。

まだ、騙せると思っているのだろうか。


「………もう、オマエに容赦なんてしない!
オマエはただの…『敵』だ!」

その愚かさを、自分の弱さを、意気地無さを。
全て込めて、敵に一撃を放つ。

その一撃は、敵の振り上げたもう片方の腕を
吹き飛ばすには充分だった。

模造刀が敵の振り上げた右腕を、断つ。

『…ギャァァ…!』

粘る血が僕の顔に飛び、思わず顔を
背けそうになる。

冷たく、錆びた鉄のような匂いが
僕の鼻を突く。

「……うっ…」

『…上出来、だ。………ミロク…』

大和の声が微かに聞こえて、敵の
汚泥のような翼が片方吹き飛ぶ。

敵はバランスを崩し、地面に膝を突いた。

「…大和くん!怪我は…」

『……痛いに、決まってんだろ…が…
バーカ…でも、よ。…助かった…ありがと、な』

大和が、初めて笑ってくれた。

あの時の狂ったような笑みではなく、
伊藤さんに向けた愛想笑いでもない、
本心からの笑顔に見えた。

緊張の糸が解れたのか、大和はどさりと
倒れる。

急いで駆け寄るが、息はしているようで
安心した。

「…僕は…大和には、なれないよ…」

こんなに強く、気高く、優しい大和になんて…
いつになっても僕は追い付けないだろう。

僕はまだ動こうとする敵に、妙に冷静な頭で
脳天への一撃を撃ち込んだ。

『…ヴァァ…』

ドロドロと溶け出す敵をちらりと見て、
大和を背負ってその場を後にした。

「……大和、重いなぁ」

身体は細身だけど、鉄の塊みたいな重さだ。

空に、やけに綺麗な太陽が見えた。

「…綺麗だな…」

それだけが、この狂った世界で異質に思えた。

ただ、美しい太陽を眺めながら歩き続けた。

渋谷駅前通りの裏路地にあると噂の、
怪しい女医が営む医院へと。

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