読・書【Long/Middle/Short All OK】

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御鏡  2019-03-23 18:45:40 
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このトピは、小説を載せ合うトピです。
(『絵や小説を載せ合うトピ』の
セイチャ版と思っていただければ…)

タイトルに記載した通り、
長編も中編も短編、全て大歓迎です。
読む専でも大丈夫ですし、
小説でなくても、感想等もOKです。

では、皆様のご参加をお待ちしながら、
一筆して行きたいと思います。

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  • No.52 by セシル  2019-08-20 09:54:19 ID:a831823ea

もう一話載せます。

トウキョウクロスロード

case2,戦闘狂

大和、と名乗った青年は【ナニカ】を
圧倒していた。

「…凄いね…」

〈…ぅ、う…〉

伊藤さんは今にも吐いてしまいそうだ。

「…大丈夫?伊藤さん…」

〈う、うん……多分…〉

『おい、お前!』

青年の声に顔を上げる。

『名前。何て言うんだ?』

「ミロク…篠宮、ミロクです」

『んじゃミロク。手伝ってくれ。
これやるから』

青年は僕に刀を投げる。

…本物…!?

一瞬受け取るのを躊躇って、地面に
落としてしまう。

カラン、と妙に軽い音から、模造刀だと
分かった。

『…コイツらにはよ、何でか知らねーけど
本物の武器よりレプリカの方が効くんだわ』

僕は伊藤さんを見る。

彼女を一人でここに置いて、
大丈夫だろうか…?

『お嬢さんは退避してろよ。コイツらは
俺が片付けるからよ』

青年は僕と伊藤さんに悪戯っ子のように
笑ったかと思うと、バケモノに突進していく。

…こんな所でじっとしていたら、
僕も伊藤さんも死ぬだけだ。

伊藤さんはこくりと頷いて、
コンビニに走っていく。

【ミロク。とりあえず何事もやらなくちゃ、
何も変わらないんだから】

僕が5歳の時に死んだ姉の言葉が、
脳を駆け巡る。

僕も覚悟を決めて模造刀の柄を握り締め、
闇雲に飛び掛かる。

「…おらぁ!」

小さめなバケモノの腕を掠めた攻撃は、
バケモノの腕を吹き飛ばした。

僕の顔に、黒い血飛沫が散る。

『…へぇ、中々やるじゃん。
素質あるかもな、お前』

「……素質…?」

『戦闘狂の素質』

彼は本気なのか冗談なのか分からない
笑みを浮かべ、敵に向き直る。

僕らは凄まじい惨劇を展開していた。

その原因は主に大和だが。

『ふー、終わったな。お嬢さん
迎えに行くか。どこ行った?』

「……多分、あっちのコンビニ…です」

『サンキュ。後、敬語じゃなくて良いから。
俺、お前と同い年だし』

「…分かった」

彼はボリボリと髪を掻きながら
コンビニへと進む。

『…なあ、ここで合ってんだよな?』

彼はコンビニの中を覗き、僕に問い掛ける。

「え、多分…」

『…やらかしたな。ここがまずかった。
お嬢さん、殺られちまったな』

彼が指差したガラス越しには、タイルの床に
広がる血溜まりの中で濁った目を大きく
見開いた伊藤さんが、まるで玩具のように
転がっていた。

「………伊藤、さん…?」

彼女はもう答えては、くれない。
僕はこみ上げてくる吐き気を抑えながら、
彼女の名前を呼び続ける。

『やめとけ、無駄だよ。
それより…逃げる方が先だ。ずっとここに
居たら俺らもこのお嬢さんみてぇに
なっちまう』

彼に肩を掴まれ、僕は振り向く。
その顔はどこか哀しげで、それでいて…
とても美しかった。

『…ほぉら、おいでなすったぜ。
お嬢さんはどんなヴィランになることやら…』

彼の言葉に前を向き直る。

倒れている伊藤さんの身体がビクリと動き、
操り人形か何かのように立ち上がる。

ガラスを通してこちらに向けられる、
虚ろな瞳に、背中に氷を詰め込まれたような
寒気が走った。

伊藤さんは薄い桜色の唇をぱかりと開き、
何かを呟く。と、同時に。

彼女の着ている女子制服の背中の生地が
ビリビリと裂け、背中から黒くドロドロに
溶けた汚泥のような色をした羽根が生える。

白くほっそりした腕も痙攣したかと思うと、
あっという間に血管が浮き出て黒くなり、
指がナイフのように鋭くなる。

そして長い黒髪が目元までだらりと
垂れ下がり、顔を覆ってしまっている。

『…随分とお綺麗なヴィランになったなぁ。
やっぱり、お嬢さんだからか?』

彼は鉄パイプを構えて笑う。

同時に『彼女』もゆっくりと
コンビニから出てくる。

「…い、とうさん…」

『…コイツはもう、お前の言ってる
『伊藤さん』とやらじゃねーよ。
衝動のまま、欲望のまま動くヴィランだ。
生き残りたきゃ、倒すしかねーんだよ』

彼の声は真剣そのもので、瞳は鋭かった。

《……………ミロク、くん》

『伊藤さん』が口を開く。

その声は何の変わりもない。

…何だ、やっぱり伊藤さんじゃないか…。

「…どうしたの?」

《…どうして、私を見捨てたノ?》

長い黒髪に隠された表情は、
伺い知れなかった。

「見捨ててなんて…」

『…おい、ミロク!ソイツと長いこと
喋るんじゃねーぞ!』

彼の声が、聞こえる。

《……嘘。キミは、私ヲ…見捨テタ、ヨネ?》

彼女の声が、次第に低くなる。

「…見捨ててなんて、ないよ」

《…ウソ、ダ。………ミロク、コロス……》

彼女が一際低い声で言ったかと思うと、
彼女の腕が僕に降り下ろされる。

「……っ……」

死ぬ覚悟を決めて目を閉じた、その時だ。

『…おらァ!』

彼女の腕が、粘る血と共にどこかへ
吹き飛んだ音が聞こえた。

《………ギャァァ!》

耳を劈くような叫び声が響き、
僕は恐る恐る目を開く。

そこには、片腕を無くして叫ぶ『伊藤さん』と
顔を血まみれにした大和が立っていた。

『…ミロク、情に流されんじゃねぇ!
もう、ソイツはお前が知ってる
お嬢さんじゃねぇんだ。ただの
ヴィランなんだよ』

大和の真剣で、酷く美しい声が聞こえた。

「……でも、伊藤さんは…」

『…ごちゃごちゃうるせぇんだよ!
コイツは!ヴィランなんだよ!敵なんだ!
お嬢さんじゃ、ねぇんだよ!』

大和の叫びに、圧倒された。

『………ッ!』

彼が微かに表情を歪め、肩を押さえていた。
その指の隙間からは、止血しきれない血液が
漏れ出て、彼の服を濡らしていた。

…僕を、庇ったから?

だから彼は、怪我をしたのか?

「…大和くん、怪我…!」

『何とも、ねぇよ…倒す方が、大事だろうが…』

彼は少し荒く呼吸をしながら、鉄パイプを
構え直して『伊藤さん』へと飛び掛かる。

彼女は叫びながらもう片方の腕で大和を
振り払い、地面に叩き付ける。

『……っ、ぐぁ…』

呻きを漏らし、彼が地面に沈む。

僕はただ、腰を抜かしながらそれを見ていた。

怖くて、目を逸らしたくて、逃げたくて…
自分に出来ることなんてなくて。

『……ミロク…ッ!…何、ぼーっとしてんだよ…
テメェの手に、あんのは…飾りかよ…!』

大和の声に、はっとした。

『…何もしなきゃ、テメェも…俺も…
死ぬだけなんだよ…!…それ、なら…
何か…して、死んだ方が…マシだ…!』

彼が叫ぶと同時に、大和の首を伊藤さんの手が
締め上げる。

『…………っか、は…ッ…!』

大和が吐血したのを見て、ナニカが
僕の中で切れた。

僕は模造刀を手に、覚悟を決めて立ち上がる。

もう、怖くない。

もう、目を逸らさない。

もう、逃げない。

ユウに会うまで、死ぬわけにはいかないから。

「……伊藤真理子ぉぉ!!」

恐怖や罪悪感なんて振り払うように、
怒りに任せて彼女の名前を絶叫する。

『伊藤真理子の姿をした化け物』は
勿論反応して、こちらに目線をやって
近付いてくる。

意識を無くしかけている大和の首から
手を放し、汚泥のような羽根で飛んできた。

手を放された大和は咳き込み、地面に転がる。

『…ミロク…クン』

『女の形をしたバケモノ』は
『伊藤真理子』の声で僕に呼び掛ける。

まだ、騙せると思っているのだろうか。


「………もう、オマエに容赦なんてしない!
オマエはただの…『敵』だ!」

その愚かさを、自分の弱さを、意気地無さを。
全て込めて、敵に一撃を放つ。

その一撃は、敵の振り上げたもう片方の腕を
吹き飛ばすには充分だった。

模造刀が敵の振り上げた右腕を、断つ。

『…ギャァァ…!』

粘る血が僕の顔に飛び、思わず顔を
背けそうになる。

冷たく、錆びた鉄のような匂いが
僕の鼻を突く。

「……うっ…」

『…上出来、だ。………ミロク…』

大和の声が微かに聞こえて、敵の
汚泥のような翼が片方吹き飛ぶ。

敵はバランスを崩し、地面に膝を突いた。

「…大和くん!怪我は…」

『……痛いに、決まってんだろ…が…
バーカ…でも、よ。…助かった…ありがと、な』

大和が、初めて笑ってくれた。

あの時の狂ったような笑みではなく、
伊藤さんに向けた愛想笑いでもない、
本心からの笑顔に見えた。

緊張の糸が解れたのか、大和はどさりと
倒れる。

急いで駆け寄るが、息はしているようで
安心した。

「…僕は…大和には、なれないよ…」

こんなに強く、気高く、優しい大和になんて…
いつになっても僕は追い付けないだろう。

僕はまだ動こうとする敵に、妙に冷静な頭で
脳天への一撃を撃ち込んだ。

『…ヴァァ…』

ドロドロと溶け出す敵をちらりと見て、
大和を背負ってその場を後にした。

「……大和、重いなぁ」

身体は細身だけど、鉄の塊みたいな重さだ。

空に、やけに綺麗な太陽が見えた。

「…綺麗だな…」

それだけが、この狂った世界で異質に思えた。

ただ、美しい太陽を眺めながら歩き続けた。

渋谷駅前通りの裏路地にあると噂の、
怪しい女医が営む医院へと。

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