『無一物』/非募

いいえ。役に立てたのならなによりよ。
（己の推測どおり相手が女性とあまり関わった事がないことがわかりそれに言及することなく相手が述べた事件の概要を聞いて不定期ということでもしかしたら解決には時間がかかるかもしれないと相槌を打ちながら聞いていて）

…何事もなければ、ね。
（何事もなければという相手の言葉を聴いた瞬間、嫌な予感というか妙な胸騒ぎがし気のせいだと切り替えるように相手の言葉を復唱しつつ相手の後を追って歩き始める、その時の胸騒ぎが的中するなどと思わずに）

……不吉なことは言うもんじゃないな……ちっ…！
(何事もなければ、そう言っていた時から二時間ほど経った今。「神隠し」をしていた妖怪を見つけて戦闘に入るも、それは相手の作戦で。幻術にかけられて葵と離れてしまい一人で敵と交戦中で。魔戒天浄を放つ余裕もなくジリジリと追い込まれていて。無駄口を叩く余裕もそろそろ無くなってきた。一発、二発、銃声が響くも肉に当たる音は聞こえず)

…そうよ。あの人はもう、この世には…っ。
（何事もなければ、そのとき感じた悪い予感は見事的中し戦闘に入った際相手とともに敵の幻術にかけられ己は亡き恋人の幻を見せられ思わずそちらのほうへと駆けより相手と分断という形になりふと耳に届いた銃声に己が見ていたのは幻だということに気づた瞬間、幻術は消えうせており恋人が亡くなったとき散々泣いたというのに涙が自然と溢れるが服の袖でごしごしと涙を拭うと銃声が聞こえた方向へと走り出し、距離が縮まるとともに気配と妖気を極力殺し敵を背中から襲える位置をとると時二つで一組となる鉄扇を取り出し鉄をも切り裂く鋭利な氷の刃を纏わせるとタイミングを見計らって背後から敵を鉄扇で切りつけようとし）

…そうよ。あの人はもう、この世には…っ。
（何事もなければ、そのとき感じた悪い予感は見事的中し戦闘に入った際相手とともに敵の幻術にかけられ己は亡き恋人の幻を見せられ思わずそちらのほうへと駆けより相手と分断という形になりふと耳に届いた銃声に己が見ていたのは幻だということに気づた瞬間、幻術は消えうせており恋人が亡くなったとき散々泣いたというのに涙が自然と溢れるが服の袖でごしごしと涙を拭うと銃声が聞こえた方向へと走り出し、距離が縮まるとともに気配と妖気を極力殺し敵を背中から襲える位置をとると時二つで一組となる鉄扇を取り出し鉄をも切り裂く鋭利な氷の刃を纏わせるとタイミングを見計らって背後から敵を鉄扇で切りつけようとし）

…！
(妖気と共に感じる冷気。神隠しの犯人による攻撃でないことを察せばその冷気の持ち主はただ一人。そしてその冷気を帯びた奇襲は惜しくも致命傷にはならなかったが、隙を作るには充分だった。「……オン マニ ハツ メイ ウン！魔戒天浄！！」ゴゥッと音を立てて肩にかけている経文が敵妖怪を襲い、それと同時に薄暗かった辺りが徐々にハッキリしてきて。経文が元に戻ればその場に敵妖怪は居らず、葬りされたようで)
…お前と来て正解だったな。
(パンパンと法衣についた土を払いながら立ち上がると、相手に方は向いて労いのつもりの言葉をかけて)

（己がかけた奇襲は敵に致命傷を負わせる程ではなかったが隙は作ったようで、そのタイミングを見計らい相手が何やら呪文を唱えると相手の肩に掛けられていた経文が敵を葬り去ったのをみて見聞きした程度だが三蔵法師というは凄い力を秘めている経文の守り人であると、もしやその経文が相手がもっている経文ではないかと戦いが終わったため余裕ができた頭でふとそんなことを考えていて）
いえ。情けない所見せちゃったわね。
（まさか狐である己がたかが幻術ごときに惑わされるとは、つくづく人を愛する気持ちは厄介だ多くは語らずに苦笑気味の表情で鉄扇に纏わせた氷の刃を解き閉じると所定の場所のように懐に二つとも閉まって）

それはお互い様だ、幻術使いとの戦闘はもうコリゴリだな…
(情けない姿、正確には相手がどのような幻術をかけられたかは見ていないため予想が付かず。ふぅとため息を付きながら言うには幻術使いが嫌いになったらしい。「…何を見せられたのかは知らないが…気にするな、所詮まやかしだ」どこか浮かない顔をした相手に何かみたのかと思ってそう言い)

狐は化かすのが十八番だからね。まさか化かされるなんて思わなかったのよ。
（己も幻術ではないが様々な人や物に化けるためそれを踏まえた上でそ情けない姿とどうして言ったのか説明をしつつ「…そうね。ただの幻、ね。」まやかしだという相手にただの幻といえど愛しき人を見せられたため心が揺らぎ、その結果惑わされてしまったので気持ちを切り替えるように相手の言葉を復唱してから薄く目を伏せ小さく息を吐くと浮かない顔は露のように消えうせておりいつもの表情を浮かべて「さ、帰りましょうか。」と仕事は終わったため来た道を戻るようにくるりと踵を返し歩き出して）

…ちっ、眠れねぇな…。
(仕事を終えて寺院へ帰り、その後はいつも通り書類に判を押して夕食を取り、風呂に入って就寝…のはずだった。だが昼間見せられた幻術、自分が見たのは師を守れなかった過去の記憶、それが今も目に焼き付いて離れない。乗り越えたはずのものだが、忘れられない重い過去の出来事をこうも鮮明に見てしまったのでは今夜は眠れそうになかった)
………。
(こういう時は、タバコを吸うに限る。そう思い窓から庭園の見える場所へと移動して、そこで一人、タバコを吸い始めて)

…眠れない…。
（仕事が終わり寺院で変わりのない時間を過ごし、夜の帳が下りあとは眠るだけなのだがベットへ入り目を閉じても昼間に見せられた幻術の影響からか中々いつもどおりに眠ることはできずに小さくため息をつくとベットから起き上がりそのまま降りてから椅子に掛けてあった薄い青色の羽織りを寝間着の上に羽織ると随分と年季の入った美しい装飾が施してある煙管を小さな鞄の中から取り出すと中に刻み煙草があることを確認すると窓枠に腰掛け煌々と妖しくも美しく輝く月を見ながら女性が好むとは思えない古びたジッポーを煙管の雁首に近づけ火をつけるとゆっくりと煙草を味を楽しむように肺まで深く吸い込むとゆっくりと口から吐き出しつつぼんやりと争いの中で生まれ争いの中死んだ亡き恋人とのごく普通で幸せな日常を思い出していて）

…？
(臭う。己のものとは違うタバコの臭いが鼻を横切る。臭いは煙管に似ている。何にせよ、この寺院内で自分以外にタバコを吸うような者は居ないはず。誰かと少し考えるとその人物の顔が頭に浮かんでくる。同じく眠れない夜を過ごしているであろう彼女の顔が、あの時、一瞬悲しそうな表情を浮かべていた彼女の顔が。残り数本となったマルボロ、明日新しいのを買いに行こう、ついでに刻みたばこも買っておいてやるか、なんて思いながら殆ど先がなくなったマルボロを灰皿にすり付けて自分はベッドへと戻っていって)

…せめて墓参りぐらいはしないと、ね。
（死んだ恋人が残した形見ともいえる竜胆の花を象ったネックレスに愛おしき人に触れるようにそっと優しく撫でてから己の手に握られた古びたジッポーを見てぽつりと呟くとふと鼻に届いたのは己が吸うタバコと違う臭いに相手も己と同じように眠れない夜を過ごしていると思いどこか懐かしさを感じる臭いにあぁ、あの人が吸っていたタバコもこんな臭いだったと火のついていない火鉢に煙管を灰を落とすように数回軽く叩きつけ火皿に灰が残っているため空吹きし灰を飛ばすと窓枠から降りて煙管とジッポーを小さな鞄の中にしまい羽織っていた羽織と綺麗に畳んでから机の上に置き再び眠るためにベットの中に入って静かに目を閉じ眠りにつき）

…行くか。
(朝、目が覚めると早々に部屋を出て街へと出かける。タバコの販売機は流石に寺院内にはなく、街へと買いに行かなければならなかった。街まで下りると自販機は素通りし、タバコも扱っている店へと向かう。そこでマルボロ赤と刻みたばこを購入すればそれを持って寺院へと戻ってきて。「…葵、居るか？」こんこんと相手の部屋をノックして)

今いる場所がここで墓があるのはここらへんね。
（朝、昔の悪夢ともいえる忌々しい出来事を夢に見て昨日見た幻術のせいと己に言い聞かせるようにいつもと変わりない時間を過ごしていたがこの度の目的である亡き恋人の墓参りをするためにその親族から貰った地図を机に広げ多少の地理は頭の中に入っているため墓がある場所につけられた墓の印をなぞりながら確認していると部屋の扉をノックする音ともに聞こえた相手の声に一旦机から離れ相手を招き入れるために扉へ近づくと「どうしたの？」と扉を開けてから相手を見ながら問いかけて）

昨日の仕事の報酬のようなものだ。
(開かれた扉を完全に開き、目の前に居る彼女に先ほど買ってきた刻みたばこを渡す。昨日臭ったものと同じ種類のものだ。「まぁ今回だけだがな、次の仕事からは報酬はない。」照れ隠し？のようにごほんと咳払いをしてからそう言い放てばじゃあな、と言い相手の前から去ろうとして)
ん…？どこかへ出掛けるつもりか？
(相手の机の上に置かれた地図が目に入り、出掛けるのかと尋ねて)

あれ、私が煙草を吸っているってなんで…あ。
（己に渡された物は確かに己が好んで吸っている刻みたばこだが一言も煙草の事を話していないためなんで知っているのかと問いかけようとしたが昨晩の相手が吸っていたタバコの臭いに相手も同じようにタバコの臭いでわかったのだろうと納得したように「ありがとう、三蔵。」と目を細めて微笑みながら初めて相手のことを名前で呼び見送ろうとそのままでいて）
ううん。別にすぐというわけじゃないけれど近々墓参りがしたくてね。
（相手の視線を追うように机の上におかれた地図をちらりと見てから旅の目的を話したときの表情に酷似しているがどこか儚げで憂いを含んだ表情と声色で問いに答えて）

…一人で行くか？
(墓参り、気持ちの整理のために行くものなのか、その墓に眠る者の死を乗り越えるために行くものなのか、それは分からないが、全く知らない自分がついていっても良いものなのだろうか。そう思い、一人で行った方が良いのではと考えて。)

え。でも外出するときは三蔵が一緒っていう約束だったから迷惑でなければその時は一緒に来てくれる？
（恋人と住んでいた村では許されなかった墓参り、相手と出会わなければ一人で済ませまた当てのない旅を続けるつもりでいたが現状は己の予想とはまったく違った結果になり相手の問いかけに最初相手から言われたことを律儀に守ろうとして）

別にお前が良いなら構わんが…
(なら墓場までは一緒に行くことにしようと考える。それにしても真面目な奴だなと相手のことを思えばふぅとため息を付いて。「…しかし、随分遠い場所に墓があるんだな…お前の恋人というのは桃源郷の出だったのか？」彼女の出身地から言えばなかなか遠いこの地に墓参り、どうやって出会ったかなど気にはなるがあまり深い詮索はせず軽い質問をして)

…あの人は自分を生んだ両親や故郷を知らなかったの。名前だって孤児だった時にちょうど咲いていた花の名前からつけられたものだったし。
（故郷を聞かれ、自分には両親や故郷の記憶がないと寂しげな表情で語った恋人の顔が脳裏をよぎりどこか憂いを含んだ表情で己が知っている範囲での情報を語り）