トピ主 2021-09-01 18:06:46 |
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キルティ)そうか・・・学園長には人の子が近々、オンボロ寮に行くことは話してないのに。
キルティは不思議に思った。学園長が自ら、頼んだということは、ゴーストから話を聞いた線は低い。それに麗奈が周りにオンボロ寮に行くことは言いふらしていない。そして、学園長が、ディアソムニア寮に用もなく近づくとも思えない。
キルティ)何でだ?
キルティは軽く薪を入れると、魔法で火をつけた。
キルティ)これでよし。
キルティは、暖炉の様子を見て言った。そして、改めて部屋を見た。
キルティ)壁紙も床も本当に新品だね。補強では見れないね。
キルティ)だが、薬学は得意らしい。そうだ、人の子。
キルティは何かを思いついたらしく、麗奈の方を向くと不敵な笑みを見せた。そして指を鳴らすと、眼の前に簡単な実験道具が現れた。
キルティ)人の子の知っているもので構わない。何か魔法薬を作ってくれ。それから・・・
キルティは、麗奈の肩に触れると、麗奈の姿が実験着になった。そして、笑って言う。
キルティ)実験中は眼鏡を外さないこと。私とゴーストはじっくり見させてもらおう。部活の成果を見せてくれ。
ゴースト:将来の夢?
麗奈:魔女の家に住むこと
ゴースト:いまいちぴんとこねぇな
麗奈:こういう家です(写真を見せて)
ゴースト:絵本に出てくるような家か
キルティ)そこに住んで、薬などを作って、皆の役に立ちたいって言っていてな。それで、次のホリデーに我が故郷へ招待することにした。茨の谷には珍しいものがたくさんあるからな。是非見てもらいたいんだ。中には、寿命を伸ばす木の実や果物、飲み物だってあるんだ。
キルティは嬉しそうな顔で笑った。
キルティ)そう言えば、前にヴィルに会ってこんな話をしたぞ。
【回想】
放課後、キルティは寮に帰ろうとしていた。
キルティ)そろそろ帰ろかな。ガーゴイルも十分見たし。
ヴィル)キルティ
キルティ)ヴィル、こんなところで会うなんて、奇遇ね。
ヴィル)ええ。ねぇ、あのこじゃがサイエンス部に入ったって本当なの。
キルティ)ああ、そうだよ。
ヴィル)なるほどね。あの子、元から薬学得意だったから、凄いとは思ってたんだけど、さらに腕を伸ばすのね。
キルティ)叶えたい将来の為に一生懸命なんだよ。
ヴィル)そうね。どうせなら、初めて合うのがアタシだったらうちの寮に入れたかったわ。
【回想終了】
キルティ)薬学や呪術に秀でているのはポムフィオーレだからな。自分達でも実験してるようだし。まぁ、私達に比べたらあの程度だけどね。
麗奈:あ、だけどサイエンス部はたまにヴィル先輩の部活の手伝いをすることもあるって。なんでも演出の関係とかで、ルーク先輩が勝手に映研会に行っちゃうんです
キルティ)ヴィルじゃなくてルークが?
キルティは、ルークの話を聞いて呆れていた。
キルティ)油断も隙もないなぁ。
キルティは、そう言いながら暖炉に目を向ける。そして、麗奈達にこう言った。
キルティ)話は変わるが、小腹は空いてないか?
キルティ)材料はジャガイモとバターです。暖炉の火を使って調理するよ。
キルティは魔法でジャガイモとバター、そしてフォンデュフォーク(長い棒状のフォーク)を出した。
中の人)フォンデュフォークとは、主にチーズフォンデュにパンや肉などをディップする際に使う普通のフォークとはちょっと形状の違うフォークのこと。分かんなかったら、検索してね。名前は間違ってないよ。
キルティ)まずはジャガイモの皮を半分まで剥く。皮はそのまま付けて切り落とさないようにするよ。
キルティは小さなナイフを出して、ジャガイモの皮を半分まで剥いた。
キルティ)ジャガイモの芽は必ず落とす。
キルティは器用に芽だけを取り除いていった。
キルティ)よし、これをフォンデュフォークに刺して、暖炉の火の上で軽く焼く。この時、炎の中に入れないように気をつけて。入れたら、一瞬で真っ黒になってしまうからね。
キルティはフォンデュフォークをゆっくり回して一周したところで取り出した。
キルティ)焼くとは言ったけど、炙る程度で十分。あとは、真ん中にバターを乗っければじゃがバターの出来上がり。言った通り、お手軽でしょう?皆もやってみる?
キルティ)お手軽レシピを見た時、やってみたいと思ってね。ただ、私の炎は強いし、加減が難しくてね。それに距離感も難しいから、下手にじゃがいもを真っ黒にするのも気が引けて出来なかったんだ。でも、ここなら暖炉もあるし、うまく調節も出来るから、やるには最適だよ。うちの寮の空調は既に過ごしやすいようにしているからな。
キルティ)それは嘘だよ。単にレオナはうちが気に入らないだけ。本当にそうなら、家の寮にあんなに茨なんざ生えないよ。せいぜいキノコと苔が生える程度だ。寮内の空気はいつも綺麗にしているよ。だから、気にしなくていいよ。
キルティは笑った。
キルティ)う~ん、信じていい部分と信じてない部分があるなぁ。魔法なら、確実にこちらが上だ。だが、私達は今は学生。つまりは上に従う者。たとえ寮長でも教師には逆らえないよ。
ゴースト:あんまり聞いてなかったけど、家がどうとか…(学園長と暮らす家なのか、麗奈の生活のサポートをする意味なのかまでは聞けず)
キルティ)(人の子は卒業後は、我が故郷に住む予定なんだが・・・学園長には言ってなかったな。今の話は、学園長に詳しく聞いてみるか)
キルティは、そう思いながらじゃがバターをおかわりする為に、もう一度暖炉に近づいた。
ゴースト:麗奈が1人で暮らすって言っても、どこで暮らすかにもよるけどなぁ
麗奈:茨の谷に住む予定だよ
ゴースト:茨の谷!?
キルティ)茨の谷には、他の場所にはない珍しい草花や薬草も木の実も食べ物だってある。食べると少しだけ寿命が伸びる物も。将来のことを考えるなら、我々のところがうってつけだと思ってな。
ゴースト:そうなのか。茨の谷は行ったことねえからなんとも言えねえけど、マレウス・ドラコニアが支配してる国ってのは知ってるぞ~
キルティ)いや、レオナと出掛けたら、そのまま寮に持ち帰られそうだと思ってな。
キルティは、そう言いながら、じゃがいもを炙っていた。
キルティ)君達も、レオナの性格を知っているだろう。私達はあまり二人を一緒にしたくないんだ。
キルティはそう言って、じゃがバターにブラックペッパーを少々振り掛けた。
キルティ)良かったら掛ける?
キルティ)私の一存では出来ないな。マレウス様に聞いてみないと分からない。だが、私はマジフトの大会ぐらいなら、足を運んでもよいと思う。
キルティ)ん~、そうだな。茨の谷の者と分かれば、夕焼けの草原に行ったとしても、そう簡単に手にしようとする者もあまりおらぬだろうな。
キルティは、そう言った。
キルティ)極力一緒にバイトをいれるつもりだ。この間は、私も予定あったし、人の子も全然バイトについて話さなかったから、一緒になれなかったんだけど・・・
キルティはショーを見せた日を思い出しながら言った。
キルティ)結果、大成功だったけどね。
ゴースト:それはよかった
麗奈:ゴーストたちも店にきてよ
ゴースト:働いてるところ見られて緊張しないのか?
麗奈:もう慣れたよ
キルティ)しかし、あのアズールがゴーストだけを特別扱いするか・・・毎回客からマドルをぶん取ってるやつだぞ。
キルティは、少し心配していた。
麗奈:ゴースト、お金って持ってるの?
ゴースト:俺たちは腹も空かなければ金も必要なくなったからな
ゴースト:だけど今、人間がどんなものを食べてどんな店があるのかは気になるな~
キルティ)ゴーストは痛覚に空腹、痩せたり太ったりみたいな感覚はないからな。まぁ、ここのゴーストは魔法は多少、夜になればゴーストに触れることも可能だからな。この通り。
キルティは軽く浮くとゴーストと手を繋いだ。
キルティ)実はスケアリー・モンスターズの翌年、私達は、ゴーストに取り憑かれ、ゴーストの国に行ってしまったのだ。私も異変に気づいてな、急いで、近くにいる者たちに知らせに行こうとしている最中だったんだけど・・・
キルティは思い出しながら、頭を抱えた。当時の記憶をしっかりと覚えているのだろう。
【回想】
ハロウィーンウィークの真っ最中、キルティは空を見て異変を感じていた。
キルティ)時間が、おかしい。というより、動いていないようにさえ感じる。取り敢えず、近くにいるものから、声をかけて、寮長たちと一緒にいるようにしたけれど、まだ、残ってるかもしれない。気をつけながら、探さないと。
キルティはそう言いながら、走り出したが、その途端、何かがキルティの中に入り込んだ。
キルティ)えっ?
キルティは走るのをやめ、踵を返すと、フラフラと歩きながら、何処かに行ってしまった。そして、行った場所がゴーストの国だったのだ。
【回想終了】
キルティ)思い出すだけでも、気分が悪くなるな。
キルティ)あまり詳しいことは分かってないんだけどね。気がついた時には、既に事態が収束していたし、取り憑かれたり、連れて行かれたりと嫌な思い出だから、誰も口にしないから、よく分かっていない。
キルティは、そこまで言うと、先日麗奈に取り憑いたゴーストを思い出した。しかし、麗奈が傍にいる状態で話すのは麗奈が怖がる可能性がある。
キルティ)(人の子自身、覚えてないからな・・・かといって、怖がらせたくない・・・そうだ!)人の子、人の子の作ったオリジナルドリンクが飲みたいから、キッチンで作ってくれる?私とゴーストはここで待ってるから。材料は既に置いておいたよ。
キルティは、人の子を遠ざけるためにそう提案した。
キルティ)実は・・・
キルティはゴーストに麗奈に取り憑いたゴーストの話をした。もちろん、麗奈には聞こえないよう遮断魔法を掛けて。
キルティ)・・・というわけなんだ。
ゴースト:そ、そんなことあったのか?
ゴースト:俺たちもそんなやつ見たことないが、麗奈に取り憑いてそんな卑劣なことを…許せねぇ!
キルティ)そっか、ゴーストでも分からないか・・・
キルティは、手を組んで、他の方法を考えた。
キルティ)やっぱり一度、学校の図書室で調べてみるしかないな。
キルティは、そう言ってため息をついた。そして
キルティ)怒る気持ちは分かるけど、君たちには、怪しい笑みが似合うよ。
と、ゴーストに言った。
ゴースト:学園に住んでいるのは俺たちぐらいだけど、外部からも過去に来たことあるんだ。
ゴースト:ハロウィンの時とゴーストのお姫様の時だな(ゴスマリ)
麗奈:そんなゴーストがきたの?
キルティ)あの時、イデア大変だったなぁ。花嫁に拉致られて・・・
キルティは思い出しながら言った。
中の人)ゴスマリイデア、マジ尊い
麗奈:え?!
ゴースト:ゴーストのお姫様の理想だったみたいだしなぁ
ゴースト:けど、死者の国に連れて行かれなくて良かったぜ
中の人:ルークも良かったですね
キルティ)最後は、別のゴーストを好きになったおかげで、イデアは開放されたけど・・・それまで死にたくないオーラが出ていたってエース達言ってたよ。
キルティは困った笑顔で言って続けた。
キルティ)いくら、死者の王の勤勉な精神に基づいていたとしても、そのまま死者の国に連れてかれては、大変だからな。
キルティは、なんとも言えない顔をしてふぅっと息をついた。
中の人)というかゴスマリメンバー、全員尊死するレベルなんですが!?
麗奈:それどころか、学園で死人が出ちゃまずいですよ…(話を聞いていただけでも助かってよかったと安堵し)
中の人:エースもかっこよかったですね(ニヤニヤ)
キルティ)いや、心配はしてくれているよ。あれでも学園長だからね。本当に危ない時には、あの人の本気は凄まじいと思うよ。人の子、学園長のこと、何歳ぐらいに見える?
キルティ)いい線はいっているな。まぁ、実年齢は知らないよ。聞いてもサバ読みそうだしな。まぁ、理事長から学園長を任されるという事は、それなりの実績や強さ、そして魔力もあるということだよ。それに、あの人、普段はあの姿だけど、たまに違う姿になるからね。
キルティ)ああ、学園長はある動物になれるのさ。ゴーストは知ってると思うけれど答えないでね。さぁ、人の子。何だと思う?
キルティは不敵に笑って聞いた。
キルティ)いつも着ているものな。だが、学園長のカラスの姿は、他のカラスとは比べ物にならない程大きいよ。マレウス様の身長でさえ、超える大きさだよ。足も大きいし。
麗奈:そうなんですか? 学園長が魔法を使っている場面なんて指で数えれる程度ですからあまりわからないんです。私がバルガス先生と言い合いになった時は魔法を使わず強引に間に入ってきたような感じでした
キルティ)それは、魔法を使う程のことではないと考えているからだろう。それに、喧嘩での魔法を使うのは禁じられている。必要なときでしか、攻撃魔法の許可もされない。そもそも喧嘩を止める際に普通魔法なんて使わないよ。
キルティは、不敵に笑って言った。そして
キルティ)何も考えてなさそうだけど、あれでも生徒のこと、教師のこと、学園のことを考えてくれてるんだ。そうでなければ、君をここに入るのを特別に許可しないだろう。さっさと追い出したに違いない。仮面被ってるせいでいつもどんな顔してるのか知らないけど、楽しいときは、楽しそうな顔してるし、真剣な時は真剣な顔してる。誰かが困難を乗り越えて何かを成し遂げた時は、感動して、褒め称えるほど。それ面では、流石だなと思うよ。だから、人の子もそう学園長を邪険にするのはやめておけ。
セベク)お帰りなさいませ、キルティ様、人間。
キルティ)ゴーストたち、人の子とゆっくり話せて喜んでいたよ。
セベク)そうですか。まぁ、魔力を持たない人間と話すなんて、滅多にないからな。
キルティ)それもあるけど、あそこのゴーストは友好的だから、話し相手が出来て嬉しいのかもしれない。
キルティは談話室でセベクの入れた紅茶を飲んで、一息ついていた。
キルティ)ふぅ、やはり、紅茶は美味しいな。
キルティは、紅茶の香りを楽しんだり、菓子をつまんだりしていた。
セベクは、早く起き髪の毛のセットをしている。
セベク)若様の護衛たるもの、身だしなみもしっかり気をつけなくては。
キルティ)よく寝たなぁ。
キルティは伸びをした。
中の人)キルティの容姿変更をします。容姿変更と言っても、髪の毛をツインテールから、黒髪で肩までの長さのショートにするだけです。これから、そうしていきますので、把握の方をお願いします。
マレウス)今日は、朝から飛行術だな。キルティとアジームのクラスと合同か。
マレウスは、制服に着替えながら、今日の時間割を思い出していた。
セベク)シルバー!さっさと準備しろ!
マレウス)楽しんでくるといい。キングスカラーも人の多い場所で危ないことはしないだろう。あれでも王族だからな。ちゃんと弁えている。
マレウスは少し不満そうな顔で言った。
キルティ)確かに、この学校という囲いの中でもあまり事を大きくはしない。学校の外で事を大きくすれば、警察沙汰だ。そうなれば、学校もサバナクロー寮にもレオナの家族にだって迷惑がかかるからな。
キルティは真剣な顔で言った。
セベク)だが、僕らがいないと何をするか分からない。あまり信用するな。帰る時は、ちゃんと言え。サバナクロー寮に行くのはきっぱり断るんだ。
セベクも気をつけるように言った。
キルティ)さてと、そろそろ行こうか。マレウス様、今日は合同で、飛行術です。シルバーも一緒です。
マレウス)そうだな。行こう。
セベク)僕は今日は魔法史からだったな。
セベクは教室に向かってる最中、呟いた。
その頃、外では
マレウス)流石に3クラス合同だと人数が多いな。
キルティ)そうですね。だいたい2クラスが殆どですから。
エース)おーっす、麗奈。元気か?
キルティ)皆、いつも通りに見えるけど・・・微かに、バルガスを気にしている様子も感じられます。
キルティは、辺りを見た。しかし、バルガスの姿は見当たらない。
マレウス)なかなか来ないな。体調を崩したのか?なら、代理の教師が来るはずだが・・・
キルティ)バルガスの場合、体調ではなく、精神面でしょう。人の子にかなり怯えていました。
キルティはリリアと出かけた時のバルガスの様子を思い出しながら言った。
麗奈:おはよう。うん。ゆっくり休めたよ
デュース:それはよかったな
バルガス:お前ら、待たせたな! 学園長に捕まって遅くなっちまった。俺がいなくても自主練に励め!まずはグラウンド5週だ!(首に傷はあるものの、いつも通りだった)
シルバー:…いつも通りでしたね
キルティはジッとバルガスを見た。本人は元気そうだが、影に妙な感じがした。しかし、本人はそれに気づいていない。
キルティ)あのゴースト、本当に厄介なやつだな。少々、手荒だが取り除こう。傷つけずバルガスを縛れ!『茨の縄(スオン・オブ・ロープ)』
キルティはそう言って、バルガスを縛った。
キルティ)切り裂け『茨の剣(スオン・オブ・ソード)』
キルティは剣を出すと、ものすごいスピードで、バルガスに近づいた。
キルティ)バルガス、伏せろ!
キルティは、バルガスの影に潜んでいたゴーストを真っ二つに切った。
キルティ)弱ってるところをつけ込んだな。茨、もう解いていいぞ。
キルティがそう言うと、茨の縄は、バルガスから離れ、空気に溶けるように消えた。
ケイト)今の何だったの?
キルティ)恐らく・・・な・・・ん?
キルティは近くに何かを見つけた。手拭いで取ってみると、それは欠けたガラス片だった。
キルティ)あのゴースト、このガラス片に魔法を掛けていたな。でなければ、バルガスの影に潜むわけがない。
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