To My Beloved　【非募集】

今は君に従うとするよ、背後に居るのがスティーブなら小言を食らいそうだしな。だが俺は守られてばかりの軟弱な男じゃない。
(スティーブの仲間だからなのか譲らない姿勢がそっくり、此処は素直に聞かなければ向こうも引くまい。どんな姿になっても見捨てないでくれる英雄も近くにいるのだろうか、難しい顔で指示を出す彼を想像して僅かに微笑み。閉ざされた暗闇から脱出できそうな、そんな一筋の希望を胸に差し出された手をしっかり掴み)

彼はずっと貴方を探してきた。まだ覚えているみたいね、最後に貴方がスティーブを救ってくれたのを。本気を出されたら圧倒的に強いのは知ってる。これを着けて、安全だと分かる場所に行くまで偽名を使いながら私の恋人だという設定でいくから
(あの日からどれ程キャプテンが親友を案じてきた事か。初恋の相手を亡くし親友までも失えば孤独の穴が開いてしまう、だからこそ尚更バーンズに生き抜いて欲しいと真っ直ぐ見つめ。掴まれた手を見て目の力を抜き。喋りながらも次々と脱出の用意を進めカラーコンタクトを渡し。窓を開き人気の少ない通りへと繋がる建物へ予め張っておいたロープを伝って車へ乗り換えようと相手を抱え金具で滑り出して)

あの時は傷付けた相手を放っておけなくなった、知ってる人のような気がしてならなかった。あぁ分かったんだが、君の恋人設定が俺に務まるかどうか。
(ウィンターソルジャーとしてキャプテンアメリカの前に現れた時、ヒドラによって記憶を消されていても彼が気掛かりだった。瞳の色を変え元から部屋に置いてあったキャップを目深に被り、あとは凄腕スパイに黙って従うのみ。着地の直前に見慣れたアメリカ柄のスーツが視界に入ったような、その方角へ向かって敬礼の形を取り)

二人して最期にならなくて良かった。私からもお礼を言わせて。黙って微笑んでおけば後は何もしなくて良いわよ。スティーブ、バーンズを護送する。サムと一緒に良いタイミングで別れてくれる？
(二人の絆はヒドラでさえ完全には断ち切れない。それが羨ましくもあるのだが。姿勢を撒くなんてのはお手の物心配付与とにんまり笑い。車へ先に彼を乗せ自身は運転席へ、通信機の向こうへ語りかけ『了解、ナターシャ気を付けてくれ』青い瞳は確かに親友を捉えており敬礼を返したようで)

ナターシャに礼を言われるなんて、いくら謝っても足りない程に傷つけたのに。じゃあ微笑み掛けるが一つだけ、バーンズじゃなくてバッキーの方が落ち着く。
(恋人役には贅沢すぎる妖艶な微笑みに心臓が撃ち抜かれそうになった事は言うまでもなく。助手席では自然なドライブデートを装うべく周囲に目を光らせる等の過度な警戒はせず、少しの暑さは我慢し長袖の上着から覗くメタルアームの指先はジーンズのポケットに突っ込む事で外部から見えないようにして)

誤字だらけ…！大変失礼いたしました、此方には返信不要です。

上の名前で呼んでくれるのねハンサムさん？二人の間ではバッキーにしておくわ。もう少しその険しい顔を解いたら尚ハンサムよ
(運転しながら時折チラ見程度に視線を向け口角を上げ。確かに恋人を演じるのにファミリーネーム呼びは不自然、あっさりと承諾。男性に対して皮肉屋になりやすい性質が発揮され裏ルートを走り続け、バックミラーにて追跡者に常時神経を張り巡らせ)

律儀なお嬢さん、返信不要と言われたけど俺の誤字も酷くてごめん。返事貰える事が嬉しいから気にしなくて良いぜ？とバーンズ軍曹が申しておりますれば伝言失礼します！

恋人のふりってのは君から言った事だぜ？バッキーでもジェームズでも、バーンズなんて他人の呼び方が寂しいだけだ。顔は… 難しいな。
(敵からの逃亡劇さえ無ければ美しい人の運転する車で微笑みかけ、恋愛映画のワンシーンを切り抜いたよう。口角をむにむに、自然に微笑む事を忘れてしまった兵士には難易度高め。神経のピンと張った状況でも美しいものには目を奪われるのが男と言うもの、窓枠に肘つき赤毛のスパイの横顔を盗み見て)

そうだった、ごめんなさいバッキー。ジェームズ・ブキャナン・バーンズが本名だってのはとっくに知っていたのに気が効かなくて。適当で良いのよそんなものは
(前を見たまま微かに頷きバーンズ呼びはさようなら。少し気障に見えた戦時中の個人情報ファイルでの印象と今の印象がまるで別人。ヒドラの非人道的行為に顔を顰め。どうやら盗み見しているらしい様子にふっと笑い既に別の州へと突入、ふいに口を開き「米軍に従事していたらしいけど顔立ちがヨーロッパ系よね。出身はそっちなの？」記憶は無くても会話としては有効との判断の上で)

昔の俺ならお嬢さんにバーンズ軍曹なんて呼ばれる事にも微笑む事にも慣れていたのに、すっかり辛気臭い爺さんになっちまったな。
(軍曹時代に比べて伸びてしまった髪をぐしゃぐしゃガラスに頭をコツン、道路標識を眺め随分と移動するのだと驚き。突然の問いには目を丸く「分からない、だがスミソニアン博物館には昔からキャプテンアメリカと仲が良かったと書いてあった。スティーブと同じ出身なのかもしれない」完全には取り戻せない記憶を手繰り首を横に、人間の物ではない左腕をそっと撫で)

散々な目に遭ったんだから当然。見た目は30そこそこだしまだデートしようと思えば幾らでもいけるじゃない。小綺麗にすれば本来の顔立ちが分かるからしっかり拝ませて貰おうかな
(ミラー越しのバーンズの仕草に視線遣りゆっくり首を振って。これ以上心痛を増やすのは良くないと判断して半分はジョークではない言葉をかけ。道はいつのまにか都会から遥か遠くに、のんびりとした田園風景が広がる中沈黙が流れ。「今思い出せない分も含めて誰にも奪わせない、二度と」広々とした草原にそったデコボコの道のさらに奥へ進んで決意を目に宿し)

それじゃ先ずは君との恋人ごっこで本来の俺を取り戻させて貰うかな。こんなやり取り、久し振りというか懐かしい感じがするよ。
(記憶の足りないピースが手に入らない内は確かな事は言えないが、何処までがジョークなのか分からない大人のやり取りはかつて得意だったふうに感じられる。可愛らしい戸建ての家から出てきた初老の夫婦が庭の花に水をやる風景に心和まされ「記憶がない分、もっと穏やかな記憶を作っていきたい」開けた窓から流れる爽やかな香りを胸一杯に吸い込み深呼吸を繰り返し)

ねえ、貴方は適当な相手とキス出来るタイプ？スティーブは駄目だって言うの、私には良い友人でいて欲しいって。そろそろ着くから期待して
(ラムロウ率いるストライクチームが裏切ったあの頃、エレベーターでキスした感想を訊いてみたら返ってきた真面目な返答を思い出しては鼻で笑い。同じ事を訊いてみよう、モテ男バーンズ軍曹ならどうなるか興味があるから。さわさわとフレッシュな風が頬撫でる草原の先に白い木製の空き家が登場、此処こそが新しい隠れ家となるべき場所「気に入って貰えそうで良かった。ほら、二人のスィートホームよ」車を停めシートベルトを外し先ずは到着した事に安堵の息吐き)

一部訂正。エレベーターじゃなくてエスカレーターが正解ね。何度もごめんなさい。

今の俺はどうするだろうな、バーンズ軍曹なら真面目なスティーブと違って遊びのキスもしてただろうな。
(言葉の裏に隠された情報がひとつ、どんな状況であった知らないがナターシャとスティーブはキスをしたらしい。掘り下げるのは野暮か真相を聞き出せずムッとした口調でただ聞かれた事にだけ返答し。「ありがとう、素敵な家だ」無事に運んでくれた事への感謝の気持ちを込め、軍曹にも兵士にも縁の無かった平穏な日々を送れそうな家を仰ぎ見て。一人でない、今はその事が嬉しくて堪らず隣に立つ美しい人の肩に頭を軽く乗せ演技だろうと誰かと暮らす事実を噛み締め)

大丈夫、問題ない。知らせてくれてありがとう、内容に嫉妬しているのは突っ込むなよ？

貴方だったらこういう仕事に向いていたかも。因みに特に何の感情も持たないキスだしただの演技。怒らないで
(曖昧な返事もこれまた愉快で含み笑いを浮かべ。どうもお気に召さなかったらしいが理由は『親友にキスをした悪い女』だからという捻った解釈としておき。まだ手入れの余地がたっぷりある家はまるで真っ白な画用紙、其処に彼との生活が明るい彩りを添えますようにと願うばかり。「此処はスティーブも知らない場所、完全に二人っきり」明るい場所では茶色い色素が目立つ髪を軽く梳いてやりながら本人の気が済むまでそのまま立ち続け)

そう思うなら次はスティーブじゃなくて俺がその役をする、機会があるなら。それに怒ってなんか
ない。
(演技とか任務とかだと聞いても何処かモヤモヤするのは目の前の女性に一目惚れしてしまったのだろうか、不貞腐れたままに足元に転がる小石をぽんと蹴飛ばし。「君に迷惑がかからないと良いんだが… 努力はする、暫く宜しくな」髪に触る指も頬に当たるそよ風も心地よく生きている実感とはこの事か、身体を離し白く華奢な手を両手で包み挨拶を)

それは嬉しいけど感情抜きのキスで本当に満足するの？ハンサムさん。それと私は何もキス魔じゃないし遊び人でもないから
(此方を見ない相手をしげしげと眺め極自然にスパイ特有の情報聞き出しモードになってしまった事に気が付き肩を竦め。勘違いされたくない点はスパッと斬り込んでおき。可哀想に生きた腕もメタルアームもまるで今までの悲痛な感情を表しているかのように冷たく、如何に孤独で人として扱われなかった年月の長さを示しており早く温めてあげたい気持ちが膨らみ。「努力は要らない。リラックスして」そのまま手を抜き玄関のポーチへと誘い)

変な改行が入っちゃってたな、ごめん。美人さんが相手だからって落ち着いて返さないと。

主調しなくても分かってる、スティーブにキスしたのも俺に今優しくするのも必要があるからだろ。この話はもう終わり。
(思い返せば今こうして二人で居るのはキャプテンアメリカが命じた作戦に従ったから、彼女の青い瞳に映る己はバッキーではなくウィンターソルジャーなのだ。掌翳し妖艶な女スパイにはこれ以上何も言うまい、哀れな兵士には何も考えるなのブレーキを。「… ありがとう。お邪魔しますとただいま、どっちの挨拶が正しい？」シンプルでいて優しい雰囲気のある隠れ家を前にやっと緊張の糸を緩めた自然な微笑みが生まれ)

なにも気にしていなかったから大丈夫。私の背後もよくやらかす人だし。暗殺者の可愛い面が見れて良かった。

貴方を保護しろと依頼したのはその発言のまんま。優しくする？嫌々やっていると思うの？最低、貴方以外だったら引き受けなかったのに
(噛み付くが如き物言いはやり過ぎだとは思うのだが。エージェントである以上に個人的な関心があったから迷わず協力した、どうしてか初めて会ったような気がしない不思議な縁に引き寄せられたから。扉を開けば最低限の清潔さはあるものの中古の家具があったりと豪華さとはまた違う空間が「ただいまが正解。お帰りなさいジェームズ、長い間迎えに行けなくてごめんなさい」しっかりと施錠して背後から様子を見守り)

違う、君を不愉快な気持ちにしたかったんじゃない。俺はただ… 駄目だ今はまだ分からない。
(優しくしてくれるのは任務の為だと言い聞かせ自分が傷付くのを回避しただけ、そもそも傷付くとは何か失恋とでも言うのか。頭をぐるぐると駆け巡る思考の答えは直ぐには出ず、下がり眉の困った表情で首を横に。初めて入る空間に対して落ち着くという表現は可笑しいだろうか「いいんだ、俺も少し道に迷っていたから」目頭の熱くなる気持ちをどうすれば、リビングへと繋がる廊下をゆっくりした足取りで進み)