世界の偽神 2021-07-11 18:36:21 |
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>>青葉くん
うん。フロイトとユング、どっちもだね。だけど、二人の夢分析は微妙に違ってて、フロイトは「夢は欲求や願望の現れ」だと論じてるんだ。
それに対して、ユングは「夢は無意識からのメッセージ」だと解釈してたんだよ。夢を見た人の抱えている悩みとか、その人への警告を意味してるんじゃないかって。
(自分の好きな心理学の話を振られると、落ち着いた口調でありつつも瞳をキラキラさせて。いったんスマートフォンをポケットにしまい、左手の人差し指を軽く振りながら少々得意げにかいつまんで説明し。話し終えてふぅと息をつけば、少し困ったように笑って、「青葉くんの言う通り、意味のない夢かもしれないけどね。俺はなんとなく意味があるかもって思ってる」と小さく肩を竦め)
>>宮野さん
──山田くん?
あの、小春先輩。彼は俺のクラスメイトです。体育館で怪物を見たって話していました。
(体育倉庫から現れた男子生徒を見下ろしながら、両目をぱちくりとさせて。刀の柄からそっと手を離し、警戒を解きながら相手に視線を向けて淡々と話し。山田と呼ばれた男子生徒は、頭を撫でようとしてくる相手に敵意がないと気づいたのか、次第に落ち着きを取り戻すと床に座り込んだまま三白眼の目でこちらを見て、「お、音原と…三年生の人か? 二人とも見た目がすげぇ変になってるけど……いや、今はそんなことより怪物だよ、怪物! 早くなんとかしてくれ!」と緊迫した表情で縋りついてきて。怪物と言いながら、彼が指差しているのは体育館の天井で。その指の先には、成人男性の一回りほど大きく真っ黒な毛並みの狼が一匹、天井付近の空中に浮かんでおり、鋭い目つきで男子生徒を睨んでいて)
>>不二くん
……! そう、だったんだ。
(植物状態という言葉に衝撃を受け、瞳を見開くと絶句して。話を聞くうちに自分の胸がズキッと痛むのを感じ、悲しげな様子の相手から一度目を逸らすように俯くが、彼の父親の名前が耳に入ると顔を上げて。ゆっくり頷けば、「不二誠一郎さん、だね。わかった、とりあえず親戚のフリをしておくよ。教えてくれてありがとう、行ってきます」と真剣な顔つきで相手からの助言を受け止めつつ、出発の決意を固め。読もうと思い、先ほど手に取った本を元の位置に戻し、閲覧テーブル端の椅子に近づくとリュックに手を伸ばして。リュックをそろりと背中に背負い、図書室の出入り口に向かおうと歩き出し)
>>来生さん
うん、俺もΔっていう名前の少年から力をもらったんだ。正確には、俺の後悔を力に変えた…らしいけど。どうして俺に力をくれたんだって訊こうとしたら、Δはすぐに消えちゃってそれきり会ってないよ。
(受け取ったハンカチをパーカーのポケットに戻して。礼儀正しく挨拶と自己紹介をする相手に、にこりと微笑みかけながら応答し。区切りのいいところまで話すと、微糖のコーヒーを一口飲んで、静かに息をついてから「那智ちゃんもΔに会ったんだよね?」と首を傾げて。相手の口から改めてΔの名を出されたので、やはり先ほどの独り言は自分の聞き間違いではなかったようだと内心で呟き、今度は自分が相手にΔについて尋ねてみようと)
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