ふたりで、おにごっこ

もやっ…！
酷いなぁ、これでも定期的に鍛えてるし、ランニングもしてるんですけどぉ？脱いだらすごいって言われるんですけどぉ？……なんてねっ
何か行き詰まった時、無心で走ってたりトレーニングしたりすると、良いのが思いついたりするんだよねぇ。

（態と拗ねた子どもが文句を言うように抗議しつつも砕けると "でもそれ結構言われるよ" と笑い現実を打ち明ける。研究者はどうしても日の当たらないイメージが強い為に非力なレッテルを貼られがちだが、そんな自身の意外な一面を見ると驚かれる事は多々あった。そんな事を思い出しつつ横目で彼を見ていればどうやら複数のデザートを作っている事に気付く。一つはコーヒーゼリーだとすぐ理解したが、それは何だろう…？と疑問に持つも、後の楽しみにと中身を聞く事はせず。その間、こちらもパスタが茹で上がれば湯切りし手早くフライパンへ投入、軽く混ぜ合わせると食器棚から白い皿を2枚取り出しパスタを盛り付け残り具材を見栄え良く並べた）

でーきたっ！
結構良いんじゃない？見た目は美味しそう！

おお、本当ですね。すごく美味しそう……理仁さんはそう言ってますけど、横で見てて変な材料使うこともないし手際も良いので味も楽しみです。

(態とらしい言動に微笑ましく思いつつふふ、と笑みをこぼす。自分の体型について意地を張ったような言い方だが、本当に継続的に体を整えているのだと彼の言葉に嘘はないと信じていた。
料理が完成したことに聞くと、お店で出てくるような見栄えにと皿に盛られたパスタの美味しそうな匂いに楽しみしていると、2人分のフォークとスプーンを用意して)

んー…料理に関しては、変に創意工夫してマズくなるの嫌だから何もしないかなぁ。他の事は結構何でもしちゃうけどね！

（2人分の皿をダイニングテーブルまで運び、向かい合うように配置するとスプーンとフォークを用意してくれる彼にありがとう、と一言添えて。ただ、それだけを見ると何かが足りない違和感にハッと気づきキッチンへ戻ればレタス、ミニトマト、パプリカを使ったグリーンサラダを即席で作る。2人分のガラスの器に、仕上げはパルメザンチーズとオリーブオイルをかけてそれを運ぶと、欠けていた緑色に納得するよう頷き彼にどうぞ、と促した。と同時に自身も席に着くと胸の前で手を合わせ）

あはは、サラダ忘れてた、ごめんごめん。
＿＿じゃ、食べようか？　いただきまーすっ

いえ、俺も忘れてましたし。ありがとうございます。
…いただきます。

(彼に言われてみれば何か足りないことに気づき、先に自分の方が手が空いたのだから作ればよかったと申し訳なく思った。しかし、素早くグリーンサラダを作る手際にまたまた凄いな、と思うと彼に感謝を述べては胸の前に手を合わせていただきますを述べて。
ナイフとフォークを手に取りパスタを絡めとると口に入れる。ニンニクの匂いやトマトの甘い酸味がパスタと上手く絡み合っててその美味しさに目を輝かせる。具材もぷりぷりとして彼の料理の上手さが分かり、素直に味の感想を伝えて)

理仁さん、凄く美味しいですっ。

ほんと？それは良かった！…ん、想像よりは美味しいかも。
＿＿何か、こうやって誰かとご飯食べるの久し振りだなぁ。最近までちょっと缶詰状態だったし……いいね、この感じ。

（キラキラと美味しそうに食べる彼を見ていては、誰かに料理を振る舞うのも案外悪くないと感じつつ自身もスプーンの上で一巻きし口に運ぶ。なる程、そこまで悪くはないという感想を抱きながら食材の新鮮さには店員の目利きに感謝し、もう一口とフォークを進めて。相変わらず美味しそうに食べる彼に、ふと1人じゃない食事の久しさに驚きながら最近の生活を思い返し、やんわり瞳を細め柔和に笑い）

誰かとご飯食べるとより美味しく感じますもんね。研究室のメンバーとご飯食べたりしないんですか？

(パスタを食べながら時々サラダを口に入れさっぱりとちゃうどいい塩梅の味に舌鼓をうつ。彼の言葉に1人での食事は案外味気ないものだと、自宅で食べる時やバイト先で賄いを食べる時の気持ちを思い出し頷く。友人たちと食べている時にはどんなメニューでもより美味しく感じられて楽しかった。今彼は、最近缶詰状態だと言っていたが研究室の人達と食べることは無かったのかと思い尋ねて)

ああ、研究室の奥に更に僕専用の部屋があって、そこに一人で籠るから…入らないでね！って札も掛けるし誰も来ないんだよね。気付いたら、そっと差し入れがあったりとかかなぁ？
出てくる時は冬眠明けって言われる！

（集中すると何も入ってこなくなる質な為に迷惑をかけたりかけられたりする事があった為に、大学側とかけ寄り専用の個室を作ってもらったのはいつだっただろうか？と軽く首を傾げ考えつつ食を進め。その間の食事は持ち込んだ常備食や差し入れで軽く繋いでいる事をチラつかせつつ自分の自由奔放さに合わせてくれる周囲の人の良さを改めて感じた。そんな話をしていれば、ふと目の前の彼の口端にソースが付いている事に気づき、息を抜くように笑い自然と腕が伸びて親指でそれを拭い取り、付着したソースをぺろりと舐めて）

ふふっ、ソースついてたよ？

冬眠明けって…熊かなんかなんですか？
って、うわ、ありがとうございます……気づきませんでした…。

(彼専用の部屋で研究するならば人と関わることは無いだろう…しかし、研究で缶詰になったことを冬眠と例えるとはどれだけ篭っているのかと、また研究室のメンバーたちは彼のことを熊かなにかと考えているのかと笑ってしまう。くすくすと笑っていれば気を抜くような笑い声が聞こえ、彼の手が伸びてくる。どうしたのかと思っていれば口端にいつの間にかついていたようでソースを拭い取られ指を舐めとっていた。一瞬キスをされると思ったが、汚れを取ってくれただけだと分かり、恥ずかしさで頬を軽く赤くしながらお礼を述べて)

あははっ、熊ね！
そうだなぁ…冬眠明けの熊は食べ物を求めて活発になるって言うから…気をつけるんだよ？

（例えられる動物と自分の生活を比較しては、あながち間違いではないかもしれないと笑い視線を合わせれば、少し赤面する彼がいた。一瞬の思考後、その原因が自身にあると理解すると揶揄いたくなる衝動に少し意地悪く微笑んで見せて。熊は己、食べ物は彼と例えながら、彼の空いている手を取り軽くこちらへ引き寄せれば、やや上目で見つめつつ口を開き食べる真似をし）

……じゃあ食べ尽くされないよう、予めお腹いっぱいにしておかないと駄目ですね。

(自分の手を食べるような真似をする彼の様子を見るとどうやら自分が食べ物らしい。彼が熊ならば…ということだろうか。頬の熱が冷めてくるとまた自分を揶揄っていることが分かり、意地悪そうにする彼を軽くあしらった。自分が食べ物でもそう簡単に食べられてはやらないことを伝えると、引き寄せられた手で軽く彼の鼻をつまみ。うわっ、と驚く彼の様子をくすくすと笑って楽しんで。)

ぅわっ……やられたぁ。
でも、食べちゃダメ、じゃないんだね。
＿＿理仁くまさんは貪欲だからなぁ…食べたいと思ったら、絶対食べちゃうからね？

（摘まれた鼻を軽くさすり態とらしく痛いと笑いながら主張し。ただ、くすくす笑う彼はこちらの発言に否定はしなかったなと思いながら改めて彼を見つめ直すと軽く口端を上げて。ひょいとこちらをあしらってくるが、それでもどこか隙だらけな彼が見ていて本当に飽きず、再度煽るような発言をしながらサラダを完食させた）

ふふ、やばそうだったら殴ってでも止めますから。痕残っても怒んないでくださいよ？

(彼の発言ににっこりとして返すと、腕に自信があります、と拳を握って見せる。本気で行きます、グーでいきます。と口では言わないがそんな空気を醸し出して。タダではやられまいと得意げすればふと、大前提として言い忘れたことがありそれに、と続ける。)

俺が本当に怖がったら止めてくれるでしょ？理仁さん、案外優しいから信じてます。

(んふふ、と笑って彼を見る。まだ一緒に過ごして数時間だが彼の優しさを何度か経験してきていたから言えたのだ。自分もパスタを間食させ皿に取り分けて残ったサラダを食べるとご馳走様でした、と手を合わせて)

きゃー、怖いー！
かーくんってば、そんな暴力的な子だったのぉ？
僕泣いちゃうーッ

（ありありと拳を見せつけられれば、三流映画のヒロインのようにキャピキャピと泣き真似をしつつ笑う。案外心地よい空気感とテンポの良いレスポンスにストレスを全く感じない、自身が感じる相性の良さに有り難さを感じながら自然な笑みが溢れ。すると同時に思い掛けない言葉を掛けられ軽く瞳を丸くさせれば、何か考える間を含みつつ唇を開く）

＿＿何言ってるの？僕程優しい人間なんていないよ？
大体…恋人に優しくない人なんていないでしょ。

（初めて彼に嘘をついた、と思った。貴方は無関心の上を優しさで隠しているのね、と言われた事を思い出す。タチが悪いのは重々理解しているが、興味が無いからこそ面倒を起こしたくない気持ちをパスタと共に飲み込み。ただ、彼に興味が無いわけではない、だが目の前の彼からは素直な気持ちと信頼が伝わってくるのがどこか痛く、それを隠し繕うように笑いながら彼の頭をやんわり撫でその手を引くと、此方もご馳走様、と手を合わせた）

ふふ、そうでもないですよ。恋人を自分の所有物だと勘違いして手酷く扱う人だっていますし。だから理仁さんが優しくて安心感しました。

(恋人だから優しく接する。それが彼の中での恋人の扱い方なのだろう。それでも世の中には違う考えを持つ人もおり、友人にはそんな人と付き合ってしまった人もいた。片手で数えられるほどだが相談にのることや、助けに入ることもあった。だからこそ、自分への好意がなくてもただの恋人としての接し方を表してくれている彼の言動に安心していた。適当に扱うことだって出来ただろうに、真摯に自分と関わってくれる彼の優しさを噛み締めていた。)

さ、片付けしてお風呂入りましょうか。デザートもその頃には固まってると思いますし、ゆっくり過ごしましょう。

(彼も料理を食べ終わるのを確認するとパッと空気を切りかえて入浴を促す。料理を作って貰ったのだし、自分は後片付けをしようと皿を纏め始めた。冷蔵庫に入っているコーヒーゼリーもシロップもその頃にはいい塩梅だろう。それを食べながらマリカーでもして過ごすのを楽しみにして)

あはは、その信頼を崩さないように頑張りまーすッ
＿＿あ、お皿ありがとっ

（利益の為に優しくする事だってある、大体先程勝手にキスをして慌てふためいていたのに、それでも信頼を置いてくれる彼は深く疑う事は無い純粋で真面目な性格なのだというのが伝わってくる。良い子だなぁ、とぼんやり思いながら皿を片付けてくれる彼に感謝を述べて自身も席を立ち）

そうだね、じゃあ僕お風呂入れてくるよ。
あ、お皿は全部食洗機の中に入れておいて！
…ふふっ、お風呂はちょっぴりサプライズあるから楽しみにしててよ！

（食器を全てキッチンに運ぶ彼を見ては、備え付けの食洗機に全て入れるように声を掛けた。彼にお風呂の提案をされれば待ってましたと言わんばかりにニコニコ笑い率先して準備する旨を伝えて。少し不思議そうに見る彼を目尻に足取りは軽く、風呂場へ行くと準備を開始し湯船に湯を張り出した）

？、はーい、分かりました。

(シンクでお皿の汚れを軽く水で洗い流していればお風呂にサプライズがあると言われ不思議に思いながら返事をする。サプライズとはなんだろうかと首を傾げながら食洗機にセットすると蓋を閉めてボタンを押し。ちゃんと機能し始めたのを確認するとコーヒーゼリーの様子を見ようと冷蔵庫を開けて固まっているかを見る。軽く揺らして表面が固まっているのが分かると1度取りだし、今度は上にかけるクリームを作ろうと冷蔵庫の扉を閉めた。生クリームと砂糖を取り出しとろみがつくまで混ぜ合わせ、ゼリーの上にかけるとまた冷蔵庫へと戻した。使ったものを手早く洗って布巾で拭くと、彼がお風呂から戻るまでソファーに座って待つことにした。暫く時間がかかると思い部屋のバッグから本と眼鏡を持ってくるとソファーに座り直して )

んっふふー、ただいまぁ！お風呂できたよ！…って、あれ？何読んでるの？

（お風呂と言えばー、と笑いながら浴槽のへりに黄色いアヒルを並べながら湯が溜まる様子を眺めていた。予め投入していた入浴剤は、勢い良く出るお湯のおかげで白い泡がどんどん膨らみ一面を覆っていく、所謂泡風呂が姿を見せ満足そうに笑いながら持ち込んだアメニティをセットして。この湯船を見た時、彼はどんな反応をするだろうか？と、子どものようにワクワクさせながら湯船のコックを捻りリビングに戻るとソファーに腰掛ける後ろ姿を見つけた。どうやら読書をしているらしい彼の後ろに立ち、そのまま雪崩れるように彼の首に緩く腕を回し頬を寄せて）

んぇ、あ、おかえりなさい。小説ですよ、海外の本を翻訳したやつですが……読んでみます？

(時計の音をBGMに本のページを捲っていれば後ろから抱きつかれ頬を寄せられる。びっくりして変な声を出してしまったがどこかご機嫌な様子の彼に冷静におかえりなさいを告げ本に栞を挟んで表紙を見せた。若干恋愛を含んだホラーもの。海外特有のギャグも入っているので難しく考えることがなく気軽に読んでいるもので、彼にもどうですか？と誘ってみて。)

へぇ、面白そうだね！
折角だから貸してもらおうかな？　あ、今度で良いからね？
それより、お風呂！一緒に入ろ？

（彼が読んでいるもの、内容も面白そうで勧められた事もあるが、それより自然と同じものを共有してみたいと感じていた。誰かと何かを共有したい、だなんて滅多に考えない事であるが、ただそれに気付く事なく相変わらず密着を続けていれば、彼の目の前に黄色いアヒルを見せつけそれを押し込む。オモチャ特有の "ぴぃ" という音と共に彼をお風呂に誘いながら、当たり前のように一緒に入る提案をし無邪気な笑顔を見せて）

えっ、一緒に、ですか…？それはちょっと恥ずかしいのでご遠慮したいんですが……。

(自分の読んでいる本を読んでみたいと言われ、同じものを共有できる嬉しさにはい、と笑って頷いた。そこでお風呂を一緒にと誘われ恥ずかしさから拒否をした。男の友人ならば笑いながら了承しただろうが、今の彼と自分は恋人同士なわけで…。お風呂は楽しみだが一緒に入ってはガチガチに緊張することになるだろうと想像して)