燈籠に照らされた走り書き 2021-02-05 16:01:59 |
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>11 黒
ありがとう…っと悪い。手ぬぐいは洗って返す。少し待っていろ。
( 自分を見ていたのが黒だと分かると普段より幾許か穏やかな声で「こんにちは。」と挨拶を返し。此処に人間が迷い込むことは長く生きていれば珍しくもないが、まだ赤子同然の黒が此処にやってきた時は驚いたものだ。あれから17年経った黒が人間では妙齢だと知っていても、ナウリにとってはあまりに短すぎてどうにも口調にも行動にも子供扱いが抜け切らない。手ぬぐいのお礼を言いながらも、つい怪我をしていない方の手で黒の頭を撫でようとして既の所で止め。手ぬぐいで傷口を縛りながら一瞬店に引っ込むとすぐに両手に物を持って顔を出し。 )
花と星好きな方を選べ。中は同じだ、本職に食わせるには拙いがな。側は枕の下にでも入れて寝るといい。
(手ぬぐいの礼に、右手に洋風の花のレースが繊細な白いハンカチの包み、左手には同じく洋風のグレーにチェック柄の入った質素なハンカチの包みを持ち、「花」で白、「星」でグレーのそれをあげて見せる。ハンカチはどちらも此処では見られない美しい光景の記憶が入った物で、洋風のデザインにミスマッチなナウリと同じ香がふわりと香り、中身はシンプルな焼き菓子である。そのメルヘンさと表情筋が死んだような仏頂面の持ち主とはどうにもアンバランスな妙な風体で。)
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