車掌 2021-01-20 15:39:52 |
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>12 アイリス
( どこか楽しそうな様子を眺めて、つられて頬が緩むのがわかった。一人では無駄にしてしまう時間も、幾らか有意義に過ごせそう。根拠などどこにもないが、自然とそう思えて。「勿論。溢れたぶんは、ちゃんと拾ってあげる。二人でわけあえば、きっと素敵な旅になるんじゃないかなあ」どきどきする気持ち、わくわくと高揚する心。それが伝染したかのように己まで楽しくなってくる気がして、くすくすと笑みが溢れた。緑色の切符に対する食い付きの良さに目を細めて、こくりと頷いて彼女の方へと視線向け。「うん。アイリスも持ってるはずだよ。ポケットとか、鞄とか……どこかしらにあると思うんだあ。なきゃ乗れないし、無賃乗車だめだもん」けらけらと軽く笑って、ふざけた調子で言葉を重ね。それから財布を取り出して、中からちゃりんと硬貨を取り出す。星を模した柄のついたそれは最低限の枚数で、しかし大切な、誰もが持っているもの。地上では使うことのできない特別なお金。透かしてみるときらきらと光る。硬貨のちょうど裏側のところ、窓の外で流れた星に彼女は気付くだろうか )
もし銀河を歩くことができたなら、ロマンチックだろうねえ。ああでも、途中下車はできるんだって。買い物もね……銀河には、乗れないけど。
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