車掌 2021-01-20 15:39:52 |
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>11 リタ
(怖そうな大男は恐らくはいないと聞いて、ほっと息を吐き出して。未知の体験に何が起こるか分からない不安を抱えていたが、リタの登場と言葉に幾分か払拭されたらしい。差し出した手を無碍にすることなく掴んでくれたことを喜んで「ふふふっ」くすぐったそうに肩を上げてご機嫌に笑い。改めて隣同士の席へと着けば「隣にいてね、リタ。だってあたし今、すっごくドキドキワクワクしてて一人じゃ抱えきれそうにないの」ぽっかりと穴が空いた不良品のような心の器を、素敵な汽車の旅が満たしてくれるのではないかという期待が胸に満ちて苦しいくらいで。煌々とした紫の瞳は、今なら見る物全てが新鮮に、一つ一つの輪郭さえくっきりと映る。その一つ、緑色の切符を目にすると物珍しそうにそうっと顔を近づけぱちぱちと瞬きをし。話を聞いた次の瞬間顔を上げ、興奮で頬を染めて「まあ……! そういうの大好きよ! 乗客ならみんな切符を持っているの?」小さく首を傾げ。行きたい場所は具体的に思いつかず、しかし抽象的に〝ずうっと遠くへ行きたい〟と、ふっと窓に映る夜空を見つめて考え。代わりに思ったことを口にし)
行きたい場所は分からないけど……、例えばそう、あの銀河の上を歩けたなら最高にロマンチックで素敵だと思うわ。
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