穏やかな同僚の秘密（〆）

あぁ、俺も楽しみだ。……あー、お前については言ってたのか
（明日は盛り上げてやるぞと意気込みつつ、相手について言っていたことを知れば照れくさいような気まずいような複雑な心境で目を泳がせて。相手が自分の言葉を「そう？　何だ、俺だけかよー」と残念そうに言いながらも相手の頭を撫でて。相手からの問に「あるある。家で一人で飲んでる時とか、バーからの帰り道とか」と答え。相手と目が合えばにっこり笑って）

言ってたよ、なんならベタ褒めしてたからな。
(どんな内容だったかまでは詳しく覚えていないものの、あまり接点が無いというか遠い存在にすら感じていたのに自分の仕事ぶりをよく見ていて評価してくれていた事には本当に驚き嬉し恥ずかしで目を細めては、発言をまったく覚えていない相手にちょっと憎たらしくも思いちょんと唇を尖らせて。
ふいに頭を撫でられるとびくっと肩を揺らして目を見開き、今何が起きているのかと一瞬思考が止まると言葉を詰まらせながら「っ、え…と、なに…？」例え人肌恋しかろうがそんなこと口が裂けても言える筈がなく意外にもそういうことをさらっと言ってしまう相手に驚きを隠せぬまま、こういう行動も何の気無しにこなしてしまうのかと徐々に恥ずかしさが込み上げてきて、視線が合っての相手の笑顔に不覚にもドキッと胸を高鳴らせ「お、お前…そういうイメージねぇんだけど…。」ギャップ怖っ…と内心でぼやくと照れ隠しにジト目で睨み付け)

うわ、恥ず。愚痴を聞かれるのもあれだが、褒めてるのを聞かれるのも複雑だな
（酒のせいか羞恥からか少し顔を赤くしつつ、苦笑いして。気持ちのよい撫で心地に上機嫌そうに微笑みを浮かべていたが戸惑った様子を見せる相手を見れば「ん？　撫でたくなったから撫でた」と平然と答え。そういうイメージがないと言われればまぁ職場の自分のイメージがあればそうだろうなぁと思いつつ、「素の俺は意外と寂しがりなんだよ」と本当とも冗談とも取れるようににっと笑みを浮かべて相手を見て）

ま、愚痴だったらあの日介抱してやる義理はなかったけどな。
(照れて頬を赤くする様にクスッと笑いつつも冗談目かして言い。大人しく撫でられるもこの状況にどうしたらいいか分からずガチガチに身を固めて「俺は猫でも犬でもない…」視線を落としてはブツブツと呟き、次から次へと露になる相手の素性にいったいどれだけ自分を押し隠して生きているんだと内心で思えば「…たまになら俺が付き合ってやるよ。」寂しがりがどれだけ本気なのか分からないが一緒に飲んでて楽しいのは分かったしいつも料理はご馳走になってるしとやたら口実を考えては自分に言い聞かせて、こちらに笑みを向ける相手にチラッと見ればポツリと述べて)

はは、そりゃそうか。……まぁ、あの時いたのが結城で良かったよ
（相手の言葉に笑いつつ、恥ずかしそうに顔を背け、少し言いよどんだ後ポツリと言って。満足したのか相手の頭を撫でるのを止めると、猫という単語に反応したのか「猫と言えば、今度猫カフェに行ってみたいって思ってたんだ。一緒に行くか？」と言って。たまにならと言う相手に少し驚いた様子を見せれば「あぁ、頼む」と穏やかに微笑んで）

(居合わせたのが俺で良かったと言う相手に何もそう思って貰えるようなことは何一つしていないのだが…と内心で思いつつ。撫でられていた手が離れると少しホッとしたような、でも寂しいような複雑な気持ちで肩の力を抜くと猫カフェの言葉に驚きと興味に目を輝かせて)
…うそ、お前猫好きなの？俺スゲー猫好きなんだよ！
(一気にテンションが爆上がりするとスマホを取り出していじりだし相手の方へ軽く身体を傾けるとスマホ画面を見せながら「俺の実家で飼ってる猫。マジで癒し…可愛いっしょ？」茶トラや八割れなど数匹、アルバムにある猫写真を指でスライドしてはいろんなアングルの写真を見せてにへらっと眉尻を下げてはあー可愛いーと呟き、「猫カフェ行くなら行く！」と最後に威勢良く答えて)

飼ったことはないから自分ではまだ分からないが、撫でたいし顔を埋めてみたいって思ってる
（相手が猫好きで思っていた以上の反応が帰ってくると少し驚きつつも、興味があると答えて。相手がスマホを取り出すと何だろうと思いながら画面を見れば、表示されたのは数匹の猫でありその画面にくぎ付けになりながら「やば、可愛い」と言って。相手も猫カフェへ行くことに積極的な様子であることを感じれば、「あぁ、いつにする？　行こうと思ってる猫カフェの場所は……」と行く予定の猫カフェのホームページと地図を表示して。会社の帰りに行ける場所であり、料金もそこまで高くはなく）

ははっ、そりゃ猫カフェ行ったらド嵌りするやつだな。
(猫への興味だけで行きたいと言ってる割に埋めたいと思っている辺り猫を好きになる素質があると思い笑いながら言い。猫の写真を見せるなり可愛いと言われれば満足したようににかっと笑みを浮かべて、猫カフェの詳細な情報を見ては確かにそこにあったなと思い出して「俺は別にいつでもいいけど…」場所を考えるなり仕事帰りに寄る感じなのかな？と思いつつも会社の人間に見られたりしないだろうかと相手の事を少し心配しながらちらっと顔を見て)

マジか、楽しみだなぁ
（ド嵌りすると言われれば楽しそうに言って。実家で猫を飼っているのであれば猫の扱い方もお手の物だろうし、猫カフェに行った時には猫と仲良くなる方法や抱き上げ方などを聞いてみようかと思って。別にいつでもいいという相手に「だったら火曜日の帰りにどうだ？」と提案し。場合によっては会社の人間にも見られるかもしれないが、言い訳も難しくないだろうと思って）

ああ、じゃあ火曜に行こう。仕事終わらすわ。
(だいぶ楽しそうにする相手にこちらも自然と笑顔になり思いの外無邪気にする姿にはギャップの宝庫だなと内心で呟き。早速予定が立てば来週のスケジュールは軽かった筈だから定時で上がれるだろうと思い承諾すれば、「…そろそろ出るか？」そこそこ飲んだし明日もあるし遅くまで長居するのはお互い負担だろうと腕時計を確認してはそう呟いて)

あぁ、お互い仕事頑張って終わらそうな。猫の扱いが分からないから躊躇ってたんだ。心強い
（もしまた木原に何か言われたとしても、本当に予定があるわけだし断りやすいとも考えていて。相手からいい時間だと言われれば自分の腕時計に目を落とせばもうこんな時間かと思いつつ「あー、そうだな。明日もあるし、二日酔いになりたくないもんな」と相手の言葉に同意し。マスターにお会計を頼むと財布を取り出し自分の分を払おうとして）

俺が教えてやるから任せろ。
(自信満々でにかっと笑えば親指を立てて。マスターに声をかける相手に鞄から財布を取り出しては焦ったように手を掲げて「あー大丈夫、ここも俺が持つから！今日は奢るって言ったろ？」財布を仕舞うよう促して笑みを向ければ伝票と共にカードを渡して、コートを羽織マフラーを巻きながら「今日は楽しかったよ、ありがとな。」突然の誘いにも快く受け入れてくれた相手に礼を言って、支払いが終われば財布を仕舞い「マスター、料理も美味かったです！また来ますね。」と自分も常連になる気満々で挨拶をし)

頼りにしてるぞ！
（自身たっぷりの相手に安心した様子で言って。相手が奢ると言えば、申し訳なさそうにしつつも財布をしまって「ありがとな」とお礼を言って。自分も店を出る準備をすれば「俺も楽しかったよ、ありがとう」と答えて。マスターに対してもお礼を伝え、また来ると言えば手を振ってバーを出て）

「良かったです。またお越しください」
（料金の精算を行えば微笑み挨拶を返し、水沢に手を振り返して）

あー美味かったー…。
(共に店を出れば外の寒さにぶるっと身震いして縮こまりながら笑顔で声を上げると白い息をはぁっと吐き出して、相手の横に並んで自宅方面へ歩きながら何か話題…と考えれば「水沢、さっきバーからの帰り道は人肌恋しいとかって言ってたけど…今日は俺がいるから寂しくないだろ？」先程の話を思い出ししては冗談めかして笑いながら相手の顔を覗き込むようにして述べ、かくいう自分もほろ酔いで気分が上がっている中こうして飲みの相手と話しながら帰るのは楽しくて)

な？　料理も美味かっただろ？
（外の寒さに少し顔をしかめるも、気を取り直せばバーの料理について話して。相手から話題を振られれば「あぁ、全然寂しくないな」と答え、にっかり笑うと相手の肩に腕を回そうとして。バーでは他の客の目もあったが、今は外ということもあり人通りもそうないため気持ちが大きくなっており）

うん、オシャレだし美味いし高級レストラン行くより良い。
(真剣な面持ちで言えば高級レストランなんて行ったこともないのに比較してみてはバーを絶賛して。笑顔で寂しくないと言われると自分でも少なからず役に立てているのだと思い嬉しそうに笑って「俺も寂しくないぞー」、酔いで無駄に楽しくなっているせいかにこにこ楽しげな表情を崩さぬまま相手の行動には何の不審も抱かず「ん？」と首を傾げて見つめ)

気に入ってもらえて俺も嬉しい
（自分も気に入っているため、相手にも気に入ってもらえたことが嬉しくて笑顔で言って。相手が寂しくないぞと言ったのを聞くと「あ、実は寂しかったのか？」と相手の方を見て。相手の肩に手を回すと「今日は楽しかった、ありがとな」と言って相手の肩をポンポンとして）

…はぁ？全っっ然、寂しかねーしっ！
(言葉の文だというように強調して言うとじと目で相手を見返して、その手が肩に回れば「お？」と声を漏らし距離が縮まる相手に目をぱちくりさせるも楽しかったと礼を言われればにぃっと笑みを浮かべて「おう、よかった！」こちらも相手の腰にガシッと腕を回せばじゃれるように身体を寄せて、「会社の飲みはめんどくせーって思ってたけど、水沢がいるなら行ってやってもいいって思える。」ぷくくっと笑いながら都合の良い事を言ってまるで友達と絡むようにはしゃぎ)

あー、おう、そうか
（強調して否定する相手になだめるように苦笑いしつつ。腰に手を回されることに少し驚きつつも、相手が近くなれば暖かさを感じてながら「ほんとにな。酒入れつつ演技しなきゃいけねぇって大変なんだよな。周りへの気遣いも必要だし。でも結城がいるならいいかもな」と会社の飲みは面倒くさいと同意しながらも相手がいるなら気分も変わると言って）

酔ったら素も出ちまいそうなもんだけど、ほんと器用…。でも仲良い奴いるのって違うよなぁ。
(同じ意見に嬉しそうに笑ったまま自分なら酔った勢いで無礼講になってしまいそうだと思うもどこまでも演技を通せる相手はやはり他の奴とは違うと賞賛してはくっついていた身体を離して、「…じゃ、俺こっちだから。また明日夕方行くよ。」相手の自宅とは反対の方面を指差してはパッと手を掲げて明日の約束をし、妙な名残惜しさに笑って誤魔化すとおやすみーと一言残し背を向けて自宅へ歩き出し)