不死の少女(戦闘アリ/異能/途中参加・初心者歓迎)

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「ダウファール攻略は戦争終結への重要なファクター……帝国のためにもやり遂げなければなりませんね」

前髪を弄りながら呟くステラの言葉を、コクコクと小さく頷きながら聞き漏らさないようにする。
帝国は自分を底辺の泥沼から拾い上げてくれた。統治体制や上層部の方針に思う所がないわけではないが、忠義を尽くす対象として疑うには至らない。

「なるほど。この私に相応しい任務というわけですか」

ステラの案は非常に理に適っている。兵士達の絆、彼らの好意――王国を王国たらしめている要素を逆手に取った、実に合理的な作戦だ。
これは自分だからこそ受けられる使命だとゼクシアは確信する。スラム時代、幼くして反社会勢力の末端として扱き使われ、駆けずり回った経験を活かせるのだから。
それに正式に帝国軍人として籍を置き、地位を確立した者には少々荷が重い部分もある。自分のような傭兵ポジションが秘密裏に引き受け、誰にも知られず成し遂げるくらいが丁度良い。
しかし同時に、失敗は許されない責任重大な任務でもある。同じ手は二度と通じないし、かの帝国が負傷兵に化けた小娘を差し向けて目論見を看破されたとあっては、国全体の威信にかかわる。
目標が目標だけにしくじった場合のリスクも大きい。まさに乾坤一擲の策である。

「何でも致しますと言った手前――是非もなし、です」

ステラの提示するプランを飲んだ瞬間、ゼクシアの脳内は作戦遂行のために必要なことで一杯になった。
傭兵の身分と言えど"天魔"の名にはそれなりの知名度がある。鎧を着こんだ程度でノコノコと出ていけば、正体を見破る者が出てきて当然。
髪型を変えるのは良いにしても、問題は常々着用している仮面と厚着だ。意地でも傷と肌を曝したくない手前、これらを外して出歩くと考えただけで蕁麻疹が出そうになる。
しかし背に腹は代えられない。肌は鎧と王国に流通している衣服で限界まで隠し、傷に関してはより負傷兵らしさを醸し出すためのメイクで塗り潰す他ないだろう。

(しかし……帝国にそこまでさせる第一王女、マチルダ・ヴァレンタインとは一体何者なのかしら？不死の少女を手に入れて帝国は何がしたいの？)

大役を任されたというのに分からない事ばかりだ。そしてその答えは、帝国領内で頭を悩ませたところで導き出せはしないのだろう。安全圏の外へ出て、実際に交わり、触れない限りは。
どんな人物、どんな世界であれ、触れることで何かしら得るものがある。過去の凄惨な経験が今回の任務に活きてくるように、あらゆる物事には意味があるのだ。
王国。マチルダ。不死の少女を取り巻く者達。いずれその全てに触れ、解き明かすことを胸に誓い、ゼクシアはゆっくりと顔を上げる。

「このゼクシア・ファルベ……天魔の名に懸けて、必ずや成し遂げて御覧に入れます」

人知れず灼熱の炎が噴きあがる。白い肌の下で、水色の瞳の奥で、そして静かな声の裏で。