着ぐるみパンダさん 2020-08-02 17:23:34 |
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「そうだったのですね……」
そのまさかだった。難攻不落の要塞を相手取って完全勝利を収めろなどと言われれば、愚痴の一つや二つも言いたくなるはずだ。
淡い水色の瞳がステラの指を追いかける。白い指が指し示すのは、王国首都へ切り込む最短ルート。首都が頻繁に襲撃されるとあっては、国民の戦意喪失も時間の問題だろう。
故に築かれる――不滅の陣地。王女誘拐を目論む輩を撥ねつける防壁。
「無謀としか言いようがありませんね。要塞が力を失うのは、設計者の想定を遥かに上回るような戦力で攻め入られた時か、内側に敵がいた時だけ。前者は非現実的ですし、後者も一朝一夕で実現出来ることではありません」
首都近郊に陣取ろうものなら、王国の継戦能力を身をもって味わうことになる。帝国領土から離れて戦う以上、一度劣勢に追い込まれてしまえば、伸び切った補給線を断ち切られて前線の兵士達が孤立するのは想像に難くない。
「しかし避けては通れない道であることも確かなようですね。定石では天下は取れないのですから」
何にせよ入念な計画と慎重な行動が必要だ。ダウファールに目を付けていることが明るみに出れば、王国は要衝守護のために更なる強固な陣地を築いてくるかもしれない。
私に出来ることなら何でも致します――静かだが、強い意志を感じさせる声で付け加える。
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