ミステリー同好会

───残念ながら、亡くなってるわ。

頚部圧迫の痕跡は無し…だとすると、薬物による毒殺の線が濃いけど……ああ、憶測はダメね。
詳しい死因は解剖をしてみないと分からないわ。それと、死後硬直の度合いから見て、亡くなって三時間以上は経過してる。(脈拍が確認できないと分かれば、平然とした様子で死因を探るように遺体の状態を確認し始め)

ブロンドの女性、年齢は20代後半から30代前半ってところかしら。服装はこの寒い季節に薄手のワンピース１枚。周囲に争った形跡も目立った外傷も見られない。死因についてはさっきも言ったけど、解剖してみないと詳しくは分からないわ。
大体こんな感じだけど、大丈夫かしら？他に聞きたいことはある？(現状を知りたいと言う盲目の少女に対し、自分が確認した限りの情報を知らせ)

……すごいな……。東雲さんだったね｡探偵みたいだ。
（淡々と確認している東雲の姿に感心したようで、非現実的な出来事に少しのおののきがありながらも賞賛の言葉を送る｡また､怖がっている三条に気づき、その前に立つようにして自身の体で視界をさえぎり）

あ……そうだ､通報しなければ！
（自分の革鞄からスマートフォンを取り出す。手の震えを誤魔化しながら操作するが、電波が届いていないことに気づき汗が頬を伝って）

フーッ。・・・殺人の可能性を考えないといけない、ってわけですか。
(自分を落ち着かせるように息を大きく吐くととりあえず辺りを見回して)

ありがとうございます、説明も大変お上手ですね。毒殺であれば…効き目の表れ方によっても異なるのでしょうが苦悶が表情に残るかと。季節外れの服装に身元不明のブロンド女性。──成る程
(しっかりと相槌を挟みつつ脳内でイメージを組み立て、現時点で分かっている情報を見えない付箋に書き込むように反芻。冷静な知識人がいることで全員がパニックに陥るという最悪な事態は避けられた、死後からさほど時間が経過していない見込みだがブロンド女性は館の関係者なのだろうか)
電波も届かない…ですか。硬直後はご遺体が緩んでいきますし一旦は適切なお部屋になど運ぶのはどうでしょう？警察との連絡手段は私も一緒に考えます
(若い男性の一声で表情を曇らせるも優先すべき事項を提案。握ったままの三条の手はそのままに彼に顔を向け頷き)

ふう…探偵なら良かったんだけどね。
私は、仕事柄ご遺体に対面することが多いから手慣れてるってだけよ。(賞賛の言葉にこの場に居合わせたのがたまたま自分であっただけだと軽く肩を竦めて見せ)

いいえ、大したことないわ。
そうね、大抵の毒物は何らかの痕跡が残るけど…このご遺体は綺麗なまま、なのよね。まあ、死因の特定等はさておき、ご遺体を移動させるなら現場の写真を何枚か撮っておかないとね。
世名城くん…だったわね。確か、カメラ持ってたでしょ？ 貸してもらえるかしら？(天古の発言に同意しつつ、視線を世名城へと移動させ先程まで心霊写真云々と騒いでいた筈だと思い出してそう問いかけ)

あ、はい！はい…,どうぞ…
（ボーッとして直立不動であったが名前を呼ばれハッとしたように素っ頓狂な声を発しては慌てたように鞄をゴソゴソ掻き分けてカメラを取り出すと東雲に差し出し）ミステリなら面白い展開だけどなぁ…ポアロかシャーロックか金田一がいたら絶対良いのに…（落ち着かない様子で不自然に視線を上下左右に泳がせて指先は忙しなく絡ませたり揉んだり叩き合わせたりと置場所を見失っていて瞬きも多くなっていて明らかにストレスを感じているようだ。震える声帯を本能的に脳髄は現実逃避しようと働かせては不謹慎にも思えるが己の好きな架空の探偵の名を連ねて）

あっ、そうだそうだ。
(ふと思い付いたように背負っていたリュックを置きゴソゴソと中の物を見始める。取り出したのはゴム手袋とマスク。テキパキとそれらを身に付けるとブロンド女性に近づき彼女のワンピースの中など何かをしまえそうな場所を徹底的にあさり始め)

え、ちょっと何してんの？てか、あんま素人が死体に触ったり動かしたら捜査の撹乱になるんじゃ…、
（最初の衝撃から少し時間がたてば心は本来の落ち着きを取り戻して挙動不審もゆるやかに収まってきていたが海堂の行動に目を見開き口は力が抜け大きく開き唇は細かな振動を止めないが上の言葉を発した。先程から何人かがが死体に触れている事に気付いては自分等が集団殺人犯として逮捕されるという最悪な想像をすれば息を飲みそれを振り払おうと頭皮を両手の爪で掻き散らした後目を瞑り深く呼吸をして）こういうときは何もせずに離れるのが良いんじゃないかな…（皆の姿を一人一人見回しながらそう言えば階段を降り死体から距離を置いて）

死体を確認したらまず何か持ち物を持っていないか確認すべし。身元が分かる物などは早めに見つけておいた方が後々便利ですしもし時間が経ってしまえば犯人に繋がる証拠が持ち出される可能性もあります。って、先生の受け売りなんですけどね。
(世名城の言葉をよそにせっせと女性の持ち物がないかを確認し、「うーん、ないなぁ。」と腕組みしながら顔を少ししかめて)

何の為にキミからカメラを借りたと思っているの？
現場写真は撮ったから、動かしても大丈夫よ。それに、彼は指紋が残らないように手袋もちゃんとしてるわ。(動かされる前の状態を収めた写真を既に撮り終えていたので、海堂が遺体を検分しても問題ないと口にし)

まあ、小説やドラマの中ならいざ知らず一般人がこんな場面に出会すなんてまずないもの。取り乱すのも分かるけどね。(世名城の様子を一瞥すれば、遺体を前にしていくら慣れているとはいえ平然としている自分が何処か可笑しいのではないかと苦笑を漏らし)

「正気か！？警察いらずだなこりゃ…流石ミステリー好きだよ…まるで探偵気取りだ。まあ僕も好きなんだけどね。あなた方は検視官かなんかですか？それとも医者？刑事？はたまた名探偵か？もう好きにしておくれよ,僕は責任を取らないからな」（死体を見ても動揺せず躊躇なく触りまくり現場を発見時の状態と違うように動かす様に気が遠くなるようで思わずそう問い質せば自分が何をいっても駄目だと言うことを察して無意味に皮肉混じりな言葉を長々と小さく呟いてはなんだか腹の奥底から笑いが沸々と込み上げてきて仕方なくなり気抜けて力のない笑いを口から溢した。この際どうでも良いように思えてきて上を見上げては高い天井に豪華なシャンデリアがついていて暖かな色味の照明がなんともこの状況に不釣り合いでおかしくて堪らないのだ。段々とぼやけて曖昧になる光が八方に伸びてきてゆっくりと目を閉じ下を向いた。何かを決心したのか又はプライドを捨てたのか今度は先程とは真逆に死体のある方に戻って「僕も手伝うよ。」と感情の無い声色でそう海堂に伝えると「手袋もういっこない？」と積極的に続けて）

皆すごいな……。俺はまだ今の状況が信じられないよ。
（皆がてきぱきと行動している中、その状況に入っていけず、その誰にも聞こえないようにポツリと呟き）

この状況、俺が第一発見者ってことになるね。一番怪しい立場じゃないか。あ､もちろん犯人じゃないが……。
（言っている途中、自らが歩いてここにきた、と自称していたことに気づいて冷や汗を垂らす。明らかに一番容疑者に近い立場だったからだ｡誤魔化すように言葉を続けるが、どこかきまり悪げで）

死亡推定時刻から考えて先ずあなたが犯人だとは誰も断言しませんよ、大丈夫です。彼女は見つからなければ独り朽ちていくばかりだったのですから…彼女自身がそれを望んだ可能性も否めませんけれど
(即興探偵団によるガサ入れの場から離れ、視力の代わりに発達した聴力がバツの悪い独り言を捉え側に歩み寄り。精巧な蝋人形のように睫毛さえ動かさない女性は不気味であり、また神秘的にうつるかもしれない。運悪く第一発見者となってしまった青年の懸念をそっと払い)

……ああ､ありがとう。かよさん？だったかな。とても心強いよ。すまない､名前は漏れ聞こえただけだから間違っていたら言ってくれ。
やれやれ、こんなにいたいけなお嬢さんにまで気を遣わせるなんて､俺としたことが。
（少女めいた風貌の天古に、見えないとわかっていながらも苦笑する。少女の言葉に安心したのも事実であり、少女に慰められる自分を情けなく思ったのもまた事実。少し落ち込みながらも､感謝の意を伝えるため、少女と思っている天古の頭をぽんぽんと軽く叩き）

そう言えば、百原さんってこの邸の雰囲気に似合いますよね。その執事みたいな服装とか。
（百原の誤魔化すような言葉は怪しげに感じられ少し違和感を覚えた。百原の方を振り向きジーッと見つめると何か意味ありげに笑いながら上記の言葉を投げ掛けては己が事件の核心に迫り犯人を追い詰める探偵のように思いこめて推理小説のようなこの状況に悦に浸っている。世名城にとって燕尾服は執事のイメージが強く紳士的な振る舞いもこの邸の住人であるかのように感じていて）

……
（先の天古歌夜の慰めで少し心を落ち着け、椅子にという言葉にうん…と小さく返して一人椅子に座り静かに皆の様子を眺めて）

……演出は大事だと思ったからね。ミステリには怪しい人物がつきものだろう？せっかくなら、演じてみるのも悪くないと思ったんだ。
学校公演が中心の劇団ではあるんだが、俺は一応プロの役者をしていてね。それなりに舞台にはこだわりたかったんだよ。燕尾服は衣装だ。まさか､本当にこんなことが起きるなんて思わなかったけどね……。
（世名城の言葉に､まあ､自分が一番怪しいだろうと推測しながらもそう説明する。ネタバラシをしているようなものだから､あまり言いたくはなかったんだが､と頬をかき）

ふーん、なんーだそうだったんだ…。まあ良いや。（自分の推理は外れてたようで少し肩を落として静かにため息をつき勝手に落胆すればまた勝手に納得して死体の顔から足先までをじっくりと見ては黙りこくり頬に手を当てて首をかしげる。「そう言えば海堂君。犯人に繋がる証拠を持ち出される可能性もあると言ってたけど僕らの中にそんなことをするやつがいると見ているの？最初にこの女性の亡骸に手を出して体を探ったのは君じゃないかな。君なら隙を見て犯人に繋がる証拠とやらを持ち出せるのでは？普通なら遺体は発見当時のままを保存しとくべきだと思うんだけど。僕は君を信用して良いのかい？」唐突にまた世名城の探偵気取りが始まり今回の疑いの矢は海堂に射って放たれ質問責めする。素人が言うことだから戯れ言に過ぎないのだがワクワクしているようで目を細め白く光を反射する綺麗な歯を覗かせた得意気な笑顔が癪に障るかもしれない。海堂の一挙一動に期待を寄せるように見つめていて）

あー、なるほど。そういう見方もありますね。確かに僕なら証拠を持ち出そうと思えば持ち出せますし。（世名城の意見に納得したように頷く。が、すぐに「でもそれなら何故皆さんの目の前で死体に触るのです？疑われる可能性が高まるのに。」とすぐ後ろに続けて）犯人というのは自らが疑われる状況を例外を除いて作らないものだ、と先生もおっしゃってました。（「それでも僕が犯人である、という仮説は捨てきれませんが。」とすまし顔で言って）

ええ、仰る通りで間違いありません。お名前は百原さんなのですね。今更ながら把握しました。役者さんとはまた素晴らしい才能をお持ちで
(一日前の嬉しい出来事を思い浮かべたような微笑で応え、また一人名前を記憶して頷き。いたいけなお嬢さんという表現にただいつもの通りの笑みが口元を弓形にするばかり。少年探偵の詰問に耳を傾け両者の様子を観察、最後に褒め言葉を加え)
それと海堂さんに…名探偵さんのお名前は何かしら。ご遺体を調べた方ともう一人いらっしゃると思うのだけど
(次の尋問のターゲットの怯えていた時とは違う口達者ぶり、少年の名探偵ぶりに関心しながら拝聴。三条の様子をも気にしつつ展開される場面を耳で見守り)