むかしむかし、あるところに魔王に囚われたお姫様がいました。
「なにが昔々だ、コラァ!ふざけんなっ」
「ダメだぞ?お姫様がそんな乱暴な言葉をつかちゃあ」
「うるせぇ!現在進行形で私を拐ったお前が言うな!変態野郎!」
「これから素敵な素敵なお話が始まるんだから、お姫様らしくしないと」
「どの面下げてほざいてんだお前は!」
誰もいない、世界のどこかの、静かな鍾乳洞の中で繰り広げられる二人の会話。どこか緊張感が抜けてしまう、この妙な状況。
「だって、仕方ないじゃないか。僕は中途半端に封印解かれちゃって力出ないし、一部の人間が望んで行ったことを僕のせいにしないでよ」
「私が怒ってんのは、そこじゃなくてお前が有無も言わさず連れ去ったこの状況だ!」
「え、だって。お姫様がいたら僕世界壊せないじゃない」
「壊すなよ!」
「いや、僕そういう仕様だし」
「仕様てなんだよ!?どんな理屈だよ」
天然の柱に繋がれてしまった少女は、目の前に立つ諸悪の根源である魔王を睨んだ。
「いいから、私を帰せ!お前の事情なんか知らん!」
「そんなこと言われても、僕だってこうして動けるようになったからには、やることやらないと……」
「やらんでいい!お前は大人しく再度封印されてろよ!」
「ごめんね?もう遅いんだ?だってその柱に、お姫様が繋がれてるというか、埋まってる時点で僕と同化してるもの」
「……は?」
魔王はにっこり微笑んで明るく告げた。
「だから僕を封印したら、もれなく封印の要たるお姫様も封印されるよね!」
「な、な、な」
「だからと言って、封印を壊してしまえば僕は完全復活、お姫様は死んじゃう。さて、人間たちはお姫様を助けると思うかい?」
「き、貴様……汚いことを……」
「そのために、僕はお姫様をここへ連れてきたんだ。お姫様を助けようとしてくれる人、現れるといいね」
魔王の非道な言葉に、少女は抗うことを諦めたかのように項垂れた。
もう魔王と同化してしまった封印を司る少女を助けてくれる者など、居はしない。少女は、自身の宿命を呪うことしかできなかった。
「僕のお姫様。これから素敵な素敵なお話を綴っていこう……」
魔王は静かに少女の頬にキスを落とした。
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