匿名さん 2018-06-10 12:20:27 |
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……は? え……?
(自分にとってごく自然な憂慮を述べれば、相手の反応は何故か微妙で。面食らっているうちに淡々と紡がれた台詞を、一拍置いてからようやく理性で解釈すれば "……こいつ、オレのことを見下してやがるのかッ?" という新たな疑問がぽこんと生まれ。まぁ確かに、相手の言葉は強引に悪意を以て理解しようとすれば、そうできなくもないものなのかもしれないが、そこで即座に噛みつく気にならなかったのは、ここまでの振る舞いから得た印象があったからか、それとも、ただぶっきらぼうなだけということが実は節々から伝わっているからなのか。
ともかく、ぽつぽつとしか民家がない田舎ならまだしも、コミュニティーが成り立っていたり、それなりに栄えていたりする街中で、人間たちがどのように暮らしているのか、知識に暗いのも事実であり。まともに何か受け答えすることができないうちに話を終えた相手に手を引かれては、うやむやで掴み所のない、しかし特に不快でもない妙な感覚を抱えたまま、何だかんだ大人しくついていく羽目になって。
* * * * * *
やがて、相手はあつらえ向きの宿を見つけたらしく、時折こちらに質問のような言葉を投げつつも、返答するよりも先に手慣れた様子でするすると受付を済ませ。結局、半口を開けてぽかんと突っ立っているうちに何やら一通りのことは終わってしまったらしく……人間と宿に来たことは、本当のところ、初めてではなかった。だが、二人部屋を取られたのは初めてである。今までの経験上、馬小屋にでも居ろと言われるか、仮に客室に上げてもらったところで、そこは主人を気取る人間のための一人部屋に決まっており、部屋の隅でてきとーに寝ていろ、と言われるのがデフォルトで。
購入したミルクを手に、とっとと客室へ向かおうとする相手の背を見やりつつ、ぼそりと「……訳分かんねーやつ」と呟けば、受付に佇む、ふっくらとした顔立ちで人の良さそうな主人らしき初老の男が、悪気はないのであろう好奇の瞳を向けていることを感じ取りつつ、あくまで気にしない態度でツカツカと歩を進めて、相手の後に続いていって。
客室に辿り着けば、室内は少々手狭なくらいであり、立て付けも簡素な印象を受けるものながら、使われている木材は傷んだ雰囲気もなくしっかりしており、清潔感もあって、手入れが行き届いていることが察せられ。ベッドは部屋の中央にある窓を挟んで両脇に配置してあり、それも梯子を使って上る形式で、下には物書きができるスペースと、ベッドと一体化しているテーブルに、ランプと背もたれのない椅子も一人分ずつ、備わっており。部屋の入り口から、それら中の様子を確認すれば、仏頂面のまま、低調な声で)
……すげぇな。オレが入っていいのか?
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